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連日繰り返される手合わせのレベルを超えた戦いに、ディーノはどうするべきかと悩む。フミ子と基地に戻ってきた了平のおかげで傷は治り、さらに強くなっていくため止める口実がないのだ。それにお互い明日にはメローネ基地に殴りこむことを忘れてないようで、作戦会議までに決着をつけるという話だった。
ならば、ディーノがわざわざ悩む必要がないように思えるが、戦っているのは獄寺とγで2人が戦いだしたきっかけは、サクラの独断でγを仲間にしたのが原因なのだ。毎度の如くサクラに後処理を押し付けられているディーノが気にかかるのは当然のことだった。
一方、その原因を作ったサクラはというと、いつの間にか起きていたようで隅の方で資料を見ていた。一応、責任は感じてるらしくγ達の動向を監視する役目を受け持ってるディーノと離れる気配はない。が、止める気はないらしい。ツナに賛同を得た時点で問題ないと判断したようだ。
ちなみにサクラはγの監視ではなく、ディーノのドジを防ぐ監視をしているのだが、ディーノはそのことに気付かず責任は感じていると勝手に勘違いしているだけである。
一向に気付く気配のないディーノが、それにしても……と、サクラの手元の資料の内容を思い出す。γと別れ、アジトに戻ってきた次の日にサクラは雲雀のところへ向かい、家の地下への行き方を聞いたのだ。サクラは雲雀が10年後のディーノの世話をしていたと気付いていたにも関わらず、雲雀に聞けば見つからずにいけるという可能性に今更ながら気付いたのだ。なお、気付いたきっかけはサクラが夢でみたからである。
地下には機械があったが、何に使われるかわからず触ることが出来なかった。そのため資料を持ち帰ったのである。しかしその資料もはっきり言って理解できる内容とは思えない。ディーノが軽く見ただけでも5ヶ国語以上の言葉が使われていて、数式をみてもわからなかった。恐らく10年間に発見された公式も使っているのだろう。ディーノですらお手上げなのだ。サクラにわかるはずがないのである。
しかし、それでも桂のことがわかるかもしれないと思い、サクラは辞書を片手に資料を読むのをやめない。ディーノやリボーンも手伝ってはいるが、成果はないといっていいレベルだった。
正直、ディーノは止めさせたいと思ってる。この時代に来て明らかにサクラは痩せた。ぐっすり眠れない日も続き、目には隈が出来ている。何より、精神が弱っている。泣いているのが日常になりつつあるのだ。そんなサクラが強がり、γに啖呵を切った時は見てられなかった。
少しでも休んでほしい。資料を取りあげるのは簡単だ。だが、それをすればサクラは壊れるかもしれない。資料を読むだけで気を紛らわせることが出来るのだから――。
「おめぇら、そろそろ時間だぞ」
ハッと声をしたほうへ振り返り、時間を確認する。熱中した2人を止めるのがディーノの役目なのだが、サクラのことで悩み気付かなかった。
「すまん。リボーン」
「まったくだぞ。って言いてぇが、気持ちはわからなくもねぇからな」
リボーンの目から見てもサクラの限界が近いと思うのだ。行動を共にする時間が長いディーノの方が、心配になるのは当然のことだ。
視線を向けられているサクラは熱中してるようで気付かない。ペンを必死に動かしてるところを見ると、辞書を見ても理解出来ずメモをし、後で質問するつもりなのだろう。2人は顔を見合わせ、一緒に声をかけに向かった。
「サクラ、作戦会議が始まるぞ」
リボーンが声をかけてもサクラの手が止まらない。再び2人は顔を見合わせる。目で会話しディーノが肩を揺らすと決まった時、サクラの手が止まり、立ち上がった。
「よし、行くか?」
ディーノの言葉を聞き、サクラが頷き歩き出す。いつもよりサクラの歩くペースが早いのは時間に遅れてるからだろう。慌てて追いかけようとしたとき、ディーノの足に何か引っかかる。
「パフォ!」
フミ子だった。サクラが置いていってしまったのかと思い、抱き上げる。肩にはリボーン、腕にはフミ子を乗せ、ディーノは慌てて会議室に向かったのだった。
会議室に足を踏み入れた途端、ディーノ達は空気が変だと気付く。γ達がいるからかと一瞬思ったが、この空気の中でカタカタと鳴り続ける音に違和感を覚えた。
音の発信源を見れば、サクラだった。機械を操作しているらしい。画面を覗き込んだが、プログラムのようなものをうっていることしかディーノにはわからない。
「こ、これは……」
ジャンニーニの驚く声が聞こえ、この場にいるサクラ以外の人物が視線を向ける。
「し、侵入しています。恐らくメローネ基地のコンピューターに……」
一斉にサクラへ視線が向かう。そのサクラは気にもならないようで、手を止める様子はない。
「サクラ……じゃない」
ツナの声にサクラの手が一瞬止まる。が、再び何もなかったように動かした。もちろんその変化を見逃すはずがなく、ツナ以外は戦闘態勢に入る。
これに慌てたのはツナだった。
「ちょ、ちょと待って! 怖い感じはしないんだ!」
「ですが、10代目!!」
「ジャンニーニ、こいつは何をしてるんだ?」
警戒を止めずに、リボーンは確認することにした。もめている時間はないと判断したのだ。
「……ミルフィオーレのアジトの図面が流れてきています」
「え? でもそれは必要なくなるんじゃ……」
サクラから入江正一の匣兵器を聞いていたツナは疑問を口にした。γはサクラに頼まれある程度のアジトの図面を覚えて来た。そのため骸から資料が届かなかったが何とかなるだろうと判断したのだ。たとえ完璧な図面があったとしても、途中から使えなくなり意味がないというのが大丈夫と判断する理由だった。
「……必要なんだ。これがないと彼女――この子が死んでしまう」
答えたのはサクラだった。もっとも今の言葉でサクラ本人ではないと白状しているが。
「お前は何が目的だ?」
殺気を隠そうともせず、ディーノは質問した。ディーノも正直に答えるとは思っていない。が、サクラの口から、本人の意思と関係なしに発せられたことに怒りを覚えたのだ。言葉使いが似ていることにも苛立つ原因の1つだ。
「悪い。この言葉使いの方がいいと思ったんだ。……これは嫌でしょ?」
「っ!」
明らかに違う口調に驚いたわけではない。ディーノは心が読まれたことに驚いたのだ。
「読んだわけじゃないぞ。そっちをつかった未来をみただけだ。……質問に答えるか。ある人物を救うためだ」
「それはサクラじゃねーんだな」
リボーンが確認する。先程までサクラのことは『彼女』もしくは『この子』と言い、サクラの死を阻止するためにミルフィオーレのサーバーに侵入しているのだ。サクラだった場合、今更ボカす意味はない。
「ああ。これ以上は話せない」
「さっきから黙って聞いてりゃ……神崎の身体を使うんじゃねぇ! おめーが出てきてすりゃいいだろうが!!」
「お、おい。獄寺……」
「ぼ――私が直接出てくるためには条件が整わないと無理だ。まぁ心配するな。彼女の身体を使うのはもう難しいだろう」
「そうなの? ……あ!」
緊迫している状況にも関わらず、いつもの口調でツナが質問してしまう。ふとサクラが笑い、目が合ったツナは赤面した。見下して笑われたからではない。まるで優しく見守られているように微笑んだからだ。
「彼女が壊れるんだ。いくら相性が良くても、私達の力の差がありすぎる」
「え!? サクラは大丈夫なの……?」
「今は彼女が弱ってる。だから出来たんだ。抵抗する中で実行してしまえば、彼女が廃人になってしまう。まぁ他にも条件はあるが、知らなくていい」
「わ、わかった」
ツナの返事にサクラは満足そうな顔をする。が、すぐに引き締め口を開く。
「彼女を出来るだけ休ませてくれ。今日1日は私の影響で予知が見れないだろう。それとこれを……君に渡しておく」
ふわふわと紙が浮き、ディーノの手元に来る。よく見れば、先程まで何か書いていた紙だった。
「フミ子は持ち主の死ぬ気の炎とリングの炎を混ぜ合わせて注入すると大きくなる。だから属性の問題じゃない。彼以外に最大限の力を発揮することはできないんだ。そこで、だ。君にも最大限に発揮できるように彼女のアジトにアクセスして、その匣をアップデードできるようにした」
チラリとディーノは抱えているフミ子を見る。サクラがのっとられてる状況でもフミ子は平然としていた。フミ子は随分前からサクラじゃないと気付いていたのだ。だからディーノに運んでもらった。そのことに今更ながら気付く。冷静なら気付くことが出来たはずだ。ディーノは深呼吸してから質問をする。
「……それをオレに言ってどういうつもりだ?」
「彼女にこっそり渡そうとすれば、彼女はアップデートしないだろう。私が勝手にしようとしても、ここでは無理だ。だが、君に渡しても君1人ではその紙に書いてる意味が理解できない」
「あいつにこれがわかるのか?」
「……心当たりないのか?」
ディーノは否定できなかった。10年後にきてから――予知をみてからサクラの物覚えは良くなった。今までのサクラではアジトの構造を覚えることが出来るとは思えなかったのだ。それでもあの資料を見たときはさっぱりわからなかったので、気のせいと思っていたのだ。
「時間はかかるかもしれないが、理論がもう証明されているんだ。彼女は理解出来るようになる」
「……そうか」
これでまたサクラの価値があがった。恩恵を受けている身ではあるが、本人が望まない力が増えるのは祝福できるはずもない。
「後もう1つだけ伝えておく。私と出会ったことにより、私と同等の力を持つ者の存在を認識できるようになった」
この言葉の意味に気付いたのは、サクラの話を聞いていたディーノとリボーンだ。
「ただし効果が強すぎる。魂に刻まれてしまうんだ。例を話せば、未来の笹川了平としか会っていないにも関わらず、過去にいる笹川了平にも見えるようになってしまった。……これを良いと言えるかは正直私にはわからない」
「つまり過去にいる了平があの男を見つけてしまって危険な目にあう可能性があるというなのか?」
サクラは首を振り「それはない」と言った。その話が本当なら特に悪い点があるように思えない。が、彼女はとても悲しそうに呟いたのだった。
詳しく話を聞きだそうとしたときに、廊下からこの部屋に向かっている足音が聞こえてくる。京子達かもしれないと意識が向いた時に、サクラは再び口を開いた。
「……君達の幸せを願ってる」
呟き終わった途端、膝から崩れ落ちるサクラ。ツナ達が慌てて手を伸ばそうとした時に、風が通過する。
――サクラは地面に身体をうつことはなかった。
誰もが驚き口を開かない。先程到着したばかりで1番サクラから離れた位置にいたはずだ。だが、誰よりも速かった。男の身体能力を考えると不可能ではないが、普段の行動からは考えられないのだ。
「…………」
男は無言でサクラを見下ろしていたが、興味がなくなったらしくディーノにサクラを渡し去っていく。普段の男に戻ったようにも見えるが、その手つきが割れ物を扱うようだった。
しばらく男が去った後もツナ達は動けずにいた。あまりにも衝撃が大きすぎたのだ。それはサクラの身体がのっとられたことすら霞んでしまうほどだった。
「……寝かせてくるぜ」
いち早くディーノが復活し、サクラを部屋に連れて行く。
ベッドにサクラをおろした後、サクラの頬を撫でる。普段のディーノならば、撫でても頭だっただろう。ディーノ本人は自身の行動の変化に気付かない。無意識だった。
「ぜってぇ守ってやるからな」
1番初めに誓ったのは公園の時。あれから何度も泣かせたし、治ったとはいえ怪我も負わせた。当然ディーノが全て悪いわけじゃない。夢で泣くことなどは防げるものではないし、サクラが原因も多々ある。だが、ディーノは全て守ってやりたいと思い、何度も誓うのだ。
しかし今回はいつもと何かが違った。
きっかけは今までの行動の積み重ねかもしれないし、先程の教え子の行動だったのかもしれない。
答えはわからない。
が、この日をきっかけにディーノの中で何かが変わった。
いろいろ、すみません。(何がとは言わない)