クラスメイト K [本編&おまけ完結]   作:ちびっこ

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白旗

 暇である。黒曜ランドに行くまでは忙しかったのだが。

 

 まずヴァリアーの説得。向こうの代表がスクアーロだったため、ディーノが間に入り話を進めた。といっても、すぐに信用するわけがないので雲雀恭弥の時のようにヴァリアーの個人情報を話した。

 

 しかしそれでも簡単に信用しなかったため苛立ち、スクアーロの髪のヒミツを暴露した。面白半分に話を聞いていたベルフェゴールが爆笑していたのは気のせいだろう。後でスクアーロがブチ切れても私は知らない。話を聞いてもらえるようになるのが重要なのだ。

 

 そして話を聞いてもらった結果、フランを向かわせるかはヴァリアー側の判断に任せることになった。こっちの心情としては六道骸を助けてほしい。が、ヴァリアー側を危険に晒すことは出来ない。元々状況をフランの耳に入れておきたいだけで、その判断には全面的に同意だった。

 

 だが、少しでも助けれる時間があるようにそっちに向かうのは恐らくヴィオラ隊と教える。他にも数日後に6弔花の1人と戦うこと。その時にXANXUSのワガママでスクアーロが苛立つというどうでもいい情報まで教えてあげた。またもベルフェゴールが爆笑していたのは気のせいだろう。

 

 そして私達が動くことにより、大規模作戦は早めた方がいいかもしれないと伝えた。恐らく今頃ボンゴレと同盟の首脳が作戦を立てているはずだ。もし本来の時間通りにするならそれはそれでいい。が、私達のアジトは奇襲されるのを逆手にとってミルフィオール日本支部の主要施設が破壊出来る。そのため、グロ・キシニアに出会う日によって大幅に早まり、そちらと足並みを揃えることは難しいということは知らせておくべきだと思った。もちろんこっちの成功率をあげるためにも、笹川了平に早く戻って来いと伝えるのも忘れなかった。

 

 正直、ヴァリアーやボンゴレ、同盟の首脳がいったいどれほどこの情報を信用するかはわからない。原作でも過去から来た沢田綱吉達のことも半信半疑だった。少しでも信用してもらえるとすれば、ディーノの存在だろう。

 

 ディーノは私の能力を知っていた。つまり、彼らは勘違いしてくれるのだ。ディーノは私の能力の重要さを理解し、味方を騙してまでスキを見て助け出そうとしていた、と。

 

 まぁそんなに話が上手く行くわけがないと思うが。私は兄の妹なのだから――。

 

 そのため、イタリアで何が起きる――6弔花がどの方角から攻めてくるというような詳しい話はしなかった。私の情報で引っ掻き回すのは良くないからな。ただ日本――沢田綱吉達は私の情報で動くということは伝えることが出来ただろう。

 

 次にクロームの説得。といっても、あまりこれは苦労しなかった。話を沢田綱吉に任せたのもあるし、骸の救出については考えていることを伝え、何よりクロームが死んでしまえば、六道骸が救出された時に動けなくなると伝えれば覚悟を決めたようだ。

 

 それでも最善ではなかったが。なぜなら、クロームと六道骸が話せれば1番良かったのだ。それさえ出来れば、危険になることもなかったはずだ。

 

 これについては無視する六道骸が悪いと思うことにした。原作でも無視をしていたのだ。流石にこれも私のせいと考えれば精神的に疲れる。

 

 他にもいろいろ問題が起きた。例えば黒曜ランドの電波障害が酷いが、離れれば無線が使えた。もちろん私とディーノは一緒に移動し無線を使っている。1人残ってグロ・キシニアと会うとか勘弁だ。ディーノのドジも発動しても困るしな。後は風呂に入れないという問題ぐらいだ。水があったので、濡れたタオルで拭いたりするので我慢している。思い出すとキリがない。が、なんとかなっている。

 

 ……いろいろ振り返って現実逃避をしているが、そろそろ現状を受け入れるべきである。どうすればいいのだろうか。そもそも、私は普通に寝ていたはずだ。

 

「……………」

 

 ダメだ。全く言葉が思い浮かばない。言葉が出てこないので身じろいでみた。

 

「ん?」

 

 どうやら気付いたようだ。と、一瞬安心したのが間違いだったのか。優しく頭を撫でられた。いつもと変わらないのだが、これほど恥ずかしいことだったとは……!

 

 しばらくの間心の中で悶えていたが、まぶたが落ちてきた。そういえば、さっきは普通に目が覚めた気がする。久しぶりに悪夢を見なかったのか……。

 

 頭に乗る手の安堵を覚え、私は今の現状などどうでも良くなり再び眠りに落ちた。

 

 

 

 

 

「……すまん。起きてくれ」

 

 ディーノの声に目を開け、慌てて膝から降りる。私が目をこすってる間にディーノは窓の方へ行き、外の様子を窺っていた。どうやら人の気配がしたようだ。

 

 すぐに動けるように立ち上がる。が、ディーノがいつもの雰囲気で戻ってきたので大丈夫のようだ。

 

「もう1度、寝るか?」

 

 地面に座り膝をポンポンと叩くディーノを見て、遠い目をしたくなった。とりあえず無難に「目が覚めた」と答える。ディーノの行動にツッコミするのは野暮である。なぜなら、彼は下心はなくただの親切心で言ったとわかってるからだ。

 

「……確かに、負けだな」

 

 ボソっと呟く。昔、沢田綱吉に教えたことを思い出してしまったのだ。まさか自身で体験することになるとは思わなかったが。

 

 頭を切り替えよう。もう目を逸らすつもりはないが、今はそれどころではない。考えることは山積みなのだ。少し水でも飲むべきか。

 

 顔を見て口を閉じる。先程と違い、再び真剣な顔に戻ったディーノを見て緊急事態と理解したのだ。案の定、すぐに私を庇うように立ち入り口を睨んでいた。

 

「オレから離れるなよ」

 

 何度も首を縦に振る。声に出して返事をした方がいいかもしれないが、緊張でカラカラに喉が渇き、上手く出せなかったのだ。

 

 そんな私の様子に気付いたのか、ディーノはフミ子の匣を開けた。元気良く出てきたフミ子は私の足元でゴロゴロし始めた。可愛いが、残念すぎる。

 

 匣を開けたディーノの方が気まずいようで、心の中でドンマイとエールを送る。ちなみに正式な匣の持ち主は私の兄ということは忘れることにした。私は都合のいい頭をしているのだ。

 

 ただ、フミ子がこの状況でダラダラするだろうか。まだ敵が現れていないので、声をかけることにした。ディーノならば、話しかけられても集中は切れないだろう。

 

 しかし、それは叶わなかった。ディーノが先に口を開いたからである。

 

「向こうは1人じゃねーみたいだ」

 

 私の予想が外れたらしい。だが、問題ない。こうなる可能性も考えていた。そもそも残るのはディーノと誰も反対しなかったのは修行のこと以外にも、逃げれる可能性が高いからだ。彼にはスクーデリアがいる。

 

 しかし、ディーノは匣を開かない。思わず服を引っ張る。

 

「……ああ、悪い。相手は2人みたいなんだ」

 

 納得しかけたが、2人でも危険ではないのか。足手まといの私がいるのだ。私の疑問の答えを教えよるようにディーノが言葉を続けた。やはり私はどこかで怖いと思ってただろう。結論を急ごうと焦っていた。

 

「少し変なんだ。2人が戦っている。今オレ達が動けば刺激する。どう転ぶかわかねぇ」

 

 動きたくても動けないってことか。この戦っている2人のどちらかが味方の可能性もあるが、心当たりがないのだ。笹川了平にはまっすぐアジトへ行けと伝えている。沢田綱吉達の定期連絡ではこっちに来るという話はなかった。

 

 つまり危険を犯してまで助けに行く必要性がないということになる。ここに私ではなく、ロマーリオがいれば、ディーノは行ったと思うが。

 

 しばらくすれば、私の耳にも戦闘音が聞こえてきたが、静かになった。いったい何が起きてるのだろうか。もの凄く気になるがディーノに全て判断を委ねる。

 

「こっちに来る。1人だ。いつでも逃げれる心構えをしてくれ」

 

 1人ということは、倒したということだろう。とにかく私はディーノの言うとおり、咄嗟に掴まれても驚かない心の準備をしておこう。

 

 ジャリっと歩く音が止まる。いつの間にかフミ子がディーノより前に出ていた。

 

「っ!」

 

 扉の方から姿を現した男を見て、声が詰まる。今のディーノは直接会ったことはないが、資料で顔を知っていたので戦闘態勢になっていた。

 

 やはり私は疫病神かもしれない。余計なことをしすぎたのだ。怪我を負ってまで彼がここに現れたのは私が原因だ。

 

 必死に頭をめぐらせる。同じ手は何度も通用しないだろう。フミ子が眠らせようとしないのが証拠だ。しかし、出来れば戦闘は避けたい。敵なのだが、彼に死なれては困るのだ。

 

 思わず舌打ちしそうになる。ディーノに伝えておけば良かった。このタイミングに10年後のディーノが使った行動を教えることは難しい。だが、それでもしなければならない。それが私の役目だ。

 

「ディ――」

「待て! オレはお前達と争うつもりはない! ……今は」

 

 相手の声に遮られ、口を開いたまま状態のまま固まる。ディーノが動いた微かな音に我にかえる。

 

 もしかして今のはディーノが試したのだろうか。相手の出方を伺うために――。

 

 ディーノは彼から視線を離さないため、残念ながら確認は出来ない。が、ディーノがヘマをすると思えないので間違いないだろう。

 

 彼の言ったことは本当なのだろうか。知識があるため判断が鈍る。私は彼が後に仲間になることを知っているため、無条件に信じそうになるのだ。

 

 ポフっと足に柔らかい感触した。視線を下げれば、遊んでほしいらしくフミ子が駄々をこねていた。フミ子は警戒を解いている。

 

「……ユニのことを聞きたいんだな?」

「ああ」

 

 ディーノに視線を送れば、頷いた。ディーノは警戒を解かずにいてほしいというのが伝わったのだろう。

 

「指輪を外せ。君は中距離戦闘もこなせる。それにコルルとビジェットが厄介だからな。念のため警戒はしているが、こっちも争うつもりはない。理由はユニのためだ」

 

 私の言葉に動揺したようだが、γは戦闘態勢をとることはなく指輪を外した。

 

 さて、どこまで話すべきか……。


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