クラスメイト K [本編&おまけ完結]   作:ちびっこ

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鋭すぎる指摘

 数え切れないほどの悪夢を見た。特に最初は兄に刺される夢を何度も見た。

 

 まだ刺されるだけならいい。私の意識が残っていて、必死に手を伸ばして兄を掴めば、自身が何をしたのか気付いたらしく、悲鳴のような叫びを聞く夢を見たこともあった。はっきり言って最悪である。

 

 しかし、ここまで悪夢を見続けるとわかることがある。

 

 私が飛び起きるのは兄に殺される時のみである。正しく言うと兄に殺され、あの男が現れ飛び起きる。兄の悲鳴のような叫びを聞く夢もあの男が現れたしな。

 

 兄に刺される以外の悪夢というと、所謂事故という内容で私が死ぬ。問題は場所である。メローネ基地なのだ。

 

 近づくつもりはないと結論付けていると、行かなければ沢田綱吉達の誰かが死ぬ夢を見た。これは私に行けという意味なのかと本気で考えるぐらい内容が酷かった。というのも、1度の夢で数パターンの誰かの死を見たのだ。ディーノに起こしてもらわなければ、ずっと見続けていたかもしれないと思うとゾッとした。

 

 そして悪夢を見続けて、ディーノとリボーンに内容を話す日を過ごし気付いた。何度も見続けのでわかったのだ。沢田綱吉達は私の顔色の悪さに心配しかしてこない。だが、あの2人は初めから私の夢の内容をを真剣に聞いていたのだ。これを心配性だからといって切り捨てることが出来なくなった。

 

 案の定2人に話を聞けば、予知夢の可能性が高いという話だった。特に1番最初に見た夢の内容は2人の身に覚えがあったようだ。兄に会いたいという私の希望を叶えるため、イタリアに渡るか相談していたらしい。

 

 ここまで来るとバカにすることも出来ず、私は覚えてる限りの内容をノートに書き始めた。もちろんその夢を見て私が思ったことや、今日の出来事を書くことにした。夢の内容に繋がると気付いたからである。

 

 そして今までの夢から考えた結果、ありえないと思いたいが私は兄に刺されるためイタリアには行ってはいけない。他には私がメローネ基地に行かなければ、誰かが死ぬ。そして、行けば私が死ぬ可能性がある。

 

 私がメローネ基地に行かなければ誰かが死ぬと断言したのは、起き上がることもなく1度の夢で見続けたこと。行った場合は死ぬ前には必ず何か選択していたこと。

 

 つまり、間違った選択をすれば死ぬと考えられる。

 

 それなら大丈夫かもしれないと思ったが、夢なのだ。場面が飛びすぎて、どこでどの選択をすればいいのかわからない。さらに難しいのが、同じ夢を見たことがあると思った時に、その時と逆の選択をした場合も死ぬことがあるのだ。

 

 どちらを選んでも死ぬのかと思ったが、その次に見た夢では逆の選択で生き残ったのだ。もっとも、その後の選択を間違って死んだが。

 

 正直なところ、お手上げ状態である。ディーノとリボーンも糸口さえ掴んでないようだった。

 

 そんな風に毎日過ごしていると、寝つきが悪くなった。まぁ当然だろう。眠れば悪夢を見るのだ。ぐっすり眠れるわけがない。少しだけ人の気配がすれば眠りやすくなることがわかったため、不規則な生活をおくっている。

 

 所謂、昼夜逆転生活である。

 

 ディーノの修行中または食堂などで眠ったり起きたりを繰り返し、夜は資料室で時間を潰している。もちろん彼らは私の生活を心配している。が、どうしようもない。それが1番楽なのだ。

 

 それに資料室というだけあって、いろんな本があった。私は小説も読むこともあるので、活字に抵抗はなく片っ端から読み始めた。

 

 今のところ1番期待していた死ぬ気の炎については私の持っている知識とほぼ代わりは無い。1番の成果は、確認されてる匣兵器の資料があったことだ。これは役に立つだろう。ただしフミ子のように大空の炎を注入して、本来の属性の炎を出すという匣は載っていないが。

 

 他はこのアジトの仕組みがわかった。ジャンニーニにパスワードや鍵、他にも認証などをしなければならないが、それさえわかれば少しぐらい操作できるだろう。それぐらい機械に強くなった。

 

 これほどの記憶力があれば、テストも楽な気がすると一瞬思ったが、興味の違いで不可能だと気付いた。やはり10年後の最新機械と考えると、興味が湧くのだ。スラスラ覚えることができた。まぁ資料を片手に操作機器を見れたのも大きいだろうが。やはり本物を見比べれると覚えやすい。時間はたっぷりあったしな。

 

 ……さらに女子力が低くなったと思うのは気のせいである。

 

 集中力が切れたので、腕時計を見る。そろそろ笹川京子達が起きる時間だろう。彼女達の料理を作る音を聞きながら一眠りすることにしよう。私は食堂に向かったのだった。

 

 

 

 

「っ!?」

「きゃっ!」

 

 ガバッと飛び起きると可愛らしい悲鳴が聞こえた。すると私の目の前には三浦ハルが居た。周りを見渡すと全員揃っていたので、朝食が出来たためいつものように起こそうとしたのだろう。

 

「わ、悪い。大丈夫か?」

「ちょっと驚きましたけど、ノープロブレムです! それよりサクラちゃんの顔色が……」

「夢見が悪いだけだから」

 

 大丈夫という意味で笑えば、彼女の目が潤みだした。これはまずいと判断し、何とかして安心させようと思い、口を開く。

 

「だ、大丈夫だ。眠れない時は薬を飲んでるし……」

「え!?」

「薬ってどういうことだ!」

 

 ……墓穴を掘ったようだ。元々私は口下手なのだ。原作知識と関係ないところではなんと言っていいのかわからない。

 

「薬は私が処方してるわ。それにリボーンも知っているわよ」

 

 姉御!と心の中で称賛する。彼らはビアンキが言ったからなのか、渋々納得した。やはり怒らせれば1番怖い女性の言葉は大きい。

 

 ほっと息を吐き、夢の内容を考える。今日の夢はいつもと雰囲気が違う。そして腕時計で時間を確認する。

 

「何をみた」

 

 眉間に皺を寄せる私にいち早くリボーンが気付いたようで声をかけてきた。彼女達がいるので、言葉を選びながら返事をする。

 

「夢で兄をみた」

 

 最近は兄が出てくる夢を見ていないことをリボーンとディーノは知っている。これだけで重要度がわかるはずだ。

 

「……ご飯食べる。いつも助かる」

 

 正直、時間が惜しい。が、これからのことを考えると食べるべきだ。席をつき、手を合わせて食べ始めた私を見て、沢田綱吉達も空気を察したのか、慌ててご飯を食べ始めたのだった。

 

 

 

 

 作戦室に移動し、内容が内容なので草壁哲也にもきてもらった。集まったところで私はポツポツと夢で見たことを語る。まだ予知という力を自身でも信用していない。夢を元に動いていいのか不安なのだ。行動すれば、大きく原作とずれるかもしれない。

 

「骸がやられる!?」

「別にそこは驚くところじゃない。本来なら今から7日後に、白蘭にやられていた」

 

 私の言葉に沢田綱吉は言葉を失ったようだ。

 

「のっとってる身体の実体化が取れなくなって、かなり弱ったが骸は生きていた。問題は助け出され回復するまでの間、クロームへの幻覚が切れたことだ」

「やべぇな」

「ん。7日後なら彼女はこのアジトに来ていて、雲雀恭弥の助言により彼女は生き延びた」

「恭さんの!?」

 

 驚かれたが、草壁哲矢を呼んだ理由はそこじゃないんだけどな。雲雀恭弥達は六道骸がのっとっている人物をマークしている。そのため動きを調べてほしいために呼んだのだ。まぁ彼なら何も言わなくてもこの情報を話すだけで調べるはずなので、いちいち口に出してツッコミしないが。

 

「やられた原因は同じだったが、もし今、六道骸がやられればクロームは助からないかもしれない」

「助けに行かなくちゃ!」

「クロームは入れ代わった姿で、黒曜ランドに居る」

「その、骸は……?」

 

 沢田綱吉の性格を考えると両方だと思った。だから六道骸について話さなかったかもしれない。

 

「確実に六道骸を助けるなら、兄を倒せ。私の夢では、骸をやったのは兄だ」

 

 沈黙が支配する。話の流れで倒すのは白蘭だと思っていたのだろう。私も言葉を選んで話していたしな。

 

 ポンっと頭の上に手が乗る。席が足りないので立ちながら話を聞いていたディーノの仕業だろう。

 

「助け出されるまでの間ってことは、その方法を知ってるんじゃないのか?」

「……連絡するつもり。彼しか助けることが出来ないと思うし」

「彼って誰なんだよ」

 

 獄寺隼人に聞かれ教えてもいいのか少し悩んだが、問題ないと判断し話す。

 

「暗殺部隊ヴァリアーに所属している骸の弟子、フラン」

「えーー!?」

 

 沢田綱吉の絶叫が響き渡り、ラル・ミルチにうるさいと怒られていた。ドンマイである。

 

「中身はかなり残念だけど、腕はいい。術士で考えるとトップ3に入るレベルだ」

「フランの名は聞いたことがあるが、それほどの腕という情報はないぞ!」

「言っただろ。中身がかなり残念って。六道骸の頭にパイナップルの幻覚を作るのは彼ぐらいだ」

「ぶっ!」

 

 何人かが吹いた。彼らも内心で、パイナッポーと思っていたのだろう。

 

「なら、オレ達はクロームを優先すべきだな」

 

 全く動じなかったリボーンが話を戻した。流石である。

 

「それと誰が黒曜ランドに残るか、だ」

「残る?」

「タイミングが少し怪しいが、六道骸がグロ・キシニアにクロームが黒曜ランドにいると情報を流す」

「なんでそんなことを骸が!?」

「彼の中ではクロームが倒す予定だったんだ。本来なら倒せていたしな」

 

 本当にタイミングが怪しい。正直グロ・キシニアが来なければ、困る事態が起きる。夢だと六道骸が倒された時間は夕方だった。白蘭はどちらを向かわせるかの判断を骸にさせるのだろうか。……白蘭の性格を考えると可能性は高いな。あれは遊んでいる。

 

「グロ・キシニアに骸が倒されたこと――骸が乗っ取っていたことを知られれば、その情報は怪しむんじゃねーのか?」

 

 リボーンの意見はもっともである。誰かが残り、大量の人数を送り込まれればまずいからな。

 

「まずグロ・キシニアは情報を得ても誰にも話さなかった。怪しんだとしても六道骸がやられれば、クロームの持ってるボンゴレリングを手に入れるのは容易い。手柄という意味で大きい」

「そのグロ・キシニアが半年ほど前に六道骸を倒したという噂がたっています。真意は不明ですが、何者かに憑依した骸と戦ったことがあるのかもしれません。相当腕の立つ強物なのは確かです」

 

 草壁哲矢の補足により、グロ・キシニアが1人で来る可能性が高いと思い始めたようだ。さらにダメ押しする。

 

「そして、グロ・キシニアはクロームに興味がある。一途な想いをブチ壊して、トラウマを植えつけるのが好きらしい。後、悲鳴が好きだと思う。骸の前でいたぶりたいらしいぞ」

「……そんな奴ばっかりかよ……」

 

 ディーノにはバーズの趣味も話したこともあるので思ったのだろう。まぁそれに関しては私も深く同意する。

 

「話はわかったが、危険を冒してまで残る理由があるのか?」

「12日後のメローネ基地への殴り混みの時に困る」

「殴り混み!?」

「それも12日後!?」

 

 なぜ驚いてるのだろうかと首をひねる。するとディーノに、そういうことは早く言ってくれと言われた。

 

「君達の修行の進み具合から見て問題ない。それに本来なら今から殴り混みすると決めたのは5日前だった」

 

 そうなのだ。現時点で原作の5日前レベルまで修行が進んでいる。はっきり言って余裕だ。

 

「あ、でも。グロ・キシニアと戦った日から5日後に殴り混みすることになるかもな」

「5日後と考えて行動したほうがいいみてーだな」

「オ、オレ……全然ヒバリさんに勝てる感じがしないんだけど……いでぇーー!」

 

 沢田綱吉は弱音を吐いた瞬間にリボーンに蹴られていた。ドンマイである。

 

「そろそろ雲雀恭弥からヒントをもらえるはずだぞ」

「え? ヒント?」

「……私が言うと答えになる。頑張れ」

 

 沢田綱吉の修行は雲雀恭弥に任せていいだろう。戦っている彼がタイミングを間違えるとは思えない。

 

「とにかくグロ・キシニアと接触したい。彼と接触出来るかで殴り混みの勝機が大幅にかわる」

「いつ接触できるかわからねーのか?」

 

 リボーンの言葉に頷く。本来なら彼は今から7日後に来る。が、ズレる可能性が高い。骸がやられれば、グロ・キシニアが早めに移動するかもしれないからだ。

 

「オレが残るぜ。ツナ達が残ればその間に修行が出来なくなっちまうからな」

「私も行くから頼んだぞ。ディーノ」

 

 反対するディーノの声は無視する。しょうがないことなのだ。沢田綱吉達も何か言いたいオーラが出ているが、反対することは出来ないのだろう。

 

「覚悟は出来てんだな」

 

 リボーンが確認してきたので頷く。目が覚めたときから覚悟はしていた。

 

「クロームを迎えに行くのは沢田綱吉とラル・ミルチに任せていいか?」

「ああ。問題ない」

「わ、わかった」

 

 本当ならラル・ミルチを外に出したくは無いが、危険を回避できる可能性があり、今の実力でもなんとかなるのはこの2人だろう。

 

「ジャンニーニ、大きくてもいい。無線のようなものがほしい」

「わかりました」

「じゃ、用意してくる」

 

 まだ反対するディーノを無視し、私は部屋に戻る。すると、リボーンが追いかけてきた。

 

「本当に覚悟は出来てるのか」

「大丈夫」

「おめーもグロ・キシニアの趣味の対象に入ってるんだぞ」

「……わかってる」

 

 2つの意味をちゃんと理解し、私は返事をしたのだった。


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