クラスメイト K [本編&おまけ完結]   作:ちびっこ

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短いため、もう1話投稿したかったけど時間がなかった!
すみません!!


彼の思い

 夜中のことである。

 

 ディーノは眠らなければならない時間だが、カーテンに視線が向く。正しくは、カーテンの向こう側にいる人物が気になって眠れないのだが。

 

 カーテンの向こう側にいる人物はスヤスヤと眠っているため、起こさないようにディーノは息をゆっくり吐いた。

 

「さっさと寝ろ」

 

 注意され、ディーノはカーテンの向こう側の気配を探る。起きた気配はないようで、安心して小声で返事をする。電気は消えているが、ハンモックの上からディーノを覗いているリボーンの姿がはっきり見えた。

 

「……起こしちまったか?」

「オレはボディガードだからな」

 

 ニヤリと口角をあげたリボーンを見て、ディーノは少し苦い顔になる。布一枚を挟んだ状況で異性が眠っていることを考えれば、お互いに監視するのは当然のことなのだが、それほど信用がないのかと思う気持ちもあるのだ。

 

 もっとも、ディーノはなぜ同じ部屋に異性と一緒に寝ることになったのか、未だに理解出来ていないのだが。

 

「なぁ、リボーン」

「なんだ?」

「……なんでもねーよ」

 

 喉から出そうだった言葉を辛うじてディーノは呑み込んだ。これだけは言ってはいけないと判断したのだ。

 

「選んだのはおめぇだぞ」

「……わかってる」

 

 ディーノの気持ちなど、リボーンには筒抜けだった。

 

 

 

 眠るために目を閉じれば、昨日――この時代に来てからの行動を思い出す。

 

 最初は頬が赤く、熱があるのかと思った。だけど、よく見ると目が真っ赤で腫れていた。余程怖い思いをしたのかとすぐに理解できた。ただ泣き止んでいて、この時代に来た時に自身の目の前に居たことを考えると、10年後の自身が何とかしたと判断した。だから、何があったのかを聞くのはやめた。無理に思い出させない方がいいと思ったのだ。

 

 問題はこれからの行動だった。どうすればいいのか、わからないのだ。意気込んで未来に来たのはいいが、助けるために来たはずの目の前の少女を頼らなければ何も出来なかった。

 

 この時代に来てすぐのことだからと言い訳はできる。だが、10年後の自身ならば、何も問題なかったのではなかったのではないか。一瞬、頭をよぎった――。

 

 無事にアジトに着き、会議が開かれた。少し前に来たツナ達もまだこの時代の戦い方をよく知らないため、守護者を集めつつ鍛えるという方針に決まった。

 

 少なからず安堵する自身がいた。

 

 まだ十分取り戻せる。リングを使っての戦い方は知っていて、部下達と訓練をしていた。匣兵器の扱い方や対処法を覚えればいい、そう思った。

 

 その日の夜、リボーンにこの10年に何があったかを聞いた。少女に10年後の自身から聞いた情報をその都度補足してもらい、今日の会議の内容に話が繋がったのだった。

 

 もっとも、同じ部屋で寝ることになるとは予想できなかったが。もちろん、アジトを抜け出したことを考えると誰かが見張った方がいいとだろう。しかしそれならば、同性のビアンキで問題ないのではないだろうか。少女のためにしっかりとそれを伝えれば――。

 

「……効率の問題」

 

 かえってきた返事に首を傾げたのだった。

 

 

 

 

 

 次の日、修行が始まった。

 

 ムチに炎を纏って振れば、驚いた顔を向けられる。問題なく使いこなせているらしい。しかし、それだけでは10年後の自身には及ばない。予想通り、匣兵器は後回しにこのまま鍛えたほうがいいとアドバイスをもらった。

 

「それに君は肉弾戦の方が好きらしいからな」

 

 桂の匣兵器との意思疎通に悩んでる姿を見て、少し納得する自身がいた。

 

 しばらくすると、どこか疲れた様子だったので、休憩を入れる。この修行場には2人しか居ない。ツナ達の修行がズレることに恐怖を抱くだろうと判断し、一人で鍛えるべきだと判断したのだ。しかし気を遣いすぎたせいか、自身の修行の進み具合が気になるようで、この部屋で自身と一緒に過ごすことにしたらしい。少女を1人にするのは不安なので、そのことについては口を挟まなかった。

 

「どうかしたのか?」

「……その、兄がつけそうな名前を考えていたんだ」

 

 話を聞けば、名前を教えてもらわなかったらしい。桂の匣兵器なので、新しく名前をつけるわけにはいかない。そのため、悩み疲れたのだろう。

 

「サクラ……じゃないのか?」

「そ、それはもう試した」

 

 顔を真っ赤になりながら否定する姿を見て、余計なことを言ってしまったと思った。自身の名前をつけたと思って呼び、否定の反応をされれば、かなり恥ずかしいものである。誤魔化しを含めているが、自身の本音を伝える。

 

「大丈夫だ。お前なら必ずわかる」

「……ディーノ」

「なんだ?」

「いや、後でいい。だから夜に時間くれないか?」

 

 二つ返事で引き受けた。

 

 

 

 その日の夜――数時間前のことである。

 

「疲れてるのに、悪い」

「問題ねーぞ」

「ああ。気にすんな」

 

 寝る直前に声をかけられた。修行が終わっても話そうとしないので聞いてみれば、リボーンと一緒の時がいいと言ったため、こんな時間になったのだ。

 

 もっともまだまだ起きれるので、リボーンの言ったとおり問題はない。少女の口を開くのを待った。

 

「兄に――兄について教えてくれ。兄がミルフィオーレ――マフィアに居ても、君達は驚きもしなかった。君達の方が兄のことをわかっているみたいなんだ」

 

 意味を理解するのに数秒かかった。

 

 声が震えていた。顔を見れば無理して笑っている。……この時代に来て、何日たってる。

 

 問う勇気も無かったのかもしれないが、ずっと知りたかったはずだ。

 

 『後でいい』はいつからだ。いつから、どれだけ気を遣わせていた。

 

 この時代に来て何も知らなかった自身のために――。

 

「ディーノ、オレから話すぞ」

 

 リボーンの言葉で我に返る。何も話そうとしない自身を、いっぱいいっぱいだった自身を、目の前の不安そうにしている少女に悟らせないように、リボーンは自身に声をかけたのだ。

 

 まだ頼ろうとしてくれてるんだ。堂々としなければならない。これ以上、1人で無茶させるわけにはいかない――。

 

 

 

 

 

 

「教えてくれてありがとう」

 

 話を終わると礼をいい、すぐにカーテンを閉めようとする行動を止めることは出来なかった。

 

 何度か泣いている姿を見たが、今はこのカーテン分の距離がある。電気を消してあげる優しさしか出来ない。

 

 電気を消そうとした時にリボーンから視線を感じる。

 

 ――強くなれ。

 

 声はなかったが理解出来た。

 

 リボーンはこのアジトから出れない。だから1人で外に出るという無茶をした。そして、過去から来た自身には、今までのように頼ることが出来ないのだ。

 

 強くなれねーと――。

 

 悔しい気持ちを抑え、一刻も早く強くなることを誓ったのだった。

 




ディーノさんは恋愛感情はないという話。
後、地味にディーノさんの前では泣いてますが、主人公は滅多に兄の前で泣くことはありません。
それだけ桂さんはサクラを守ってたってことです。

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