クラスメイト K [本編&おまけ完結]   作:ちびっこ

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作戦会議

 詳しい話をしようと思ったが、笹川京子達の乱入で中断になった。ビアンキ達と一緒に来たので、もう帰っていたらしい。ずれているのは雲雀恭弥のバトル時間が長くなったからだろう。

 

 それにしても柔らかくていい匂いがする。これがヒロインの力なのか。

 

 少々思考が脱線したが、この状況をなんとかしなければならない。今の状況は自業自得だからな。

 

「ごめん。君の気持ちも考えればよかった」

 

 私を抱きしめている笹川京子の背中をポンポンと叩きながら謝る。滅多に泣かない彼女が泣いているのは、私が脱走したのは自分のせいかと思ったのかもしれない。

 

 ついに耐えきれなくなったのか、三浦ハルも泣きながら私達を抱きしめた。そういう趣味は全くないのだが、こういうのも悪くないと思った。

 

「あなた達が無事でよかったわ」

 

 私達全員に優しくビアンキが頭を撫でた。カッコ良くて優しい姉御である。

 

 密かにビアンキに憧れていると、ドアが急に開き驚く。それは私だけでもなく、彼女達も状況を確認した方がいいと判断し、自然と離れた。

 

 ドアの方向を見ると獄寺隼人と山本武が居た。所々に傷があるが、大きな怪我はないようだ。

 

「神崎! オレらが組めねぇって勝手に決めんじゃねぇ!」

「ははっ」

「てめぇ何笑ってやがる!」

「だってよ、本当に最初は全然息が合わなかったじゃねぇか」

「う、うるせぇ! 今は問題ねぇだろうが!」

 

 一体どういうことかと首をひねってると、リボーンが私の肩に乗り説明してくれた。私は手紙で今回の件はコンビネーションが良くなるきっかけが起きるが、死ぬ確率が高いから外に出すなと書いた。それを読んだリボーンが2人のコンビは最悪で足手まといになると言ったらしい。そのため沢田綱吉とラル・ミルチは外に出たが、彼らは外に出れなかったらしい。そして、もうこんなことがないように修行を始めたようだ。

 

 ちなみに沢田綱吉とラル・ミルチは外に出てたのは、雲雀恭弥に会いに行くためだった。私の手紙通りに起こってるとは限らないという判断でだった。もっともディーノが私を助けるという連絡があったため、リボーンの判断で彼らの留守番が決まったらしいが。

 

「でも君達が外に出なくて正解だったと思う。逃げるスキをつくるためにγを挑発したから」

 

 静まり返った。笹川京子達も私と一緒でよくわかっていないようで、首をひねっていた。いったいどうしたのだろうか。

 

「む、無茶すんじゃねぇ!」

 

 獄寺隼人の言葉をきっかけに、私は盛大に怒られたのだった。

 

 

 

 

 

 結局、私への注意はラル・ミルチが帰ってくるまで終わらなかった。10年後のディーノが居たから挑発したのだが。まぁいろいろ思うことがあるが、文句は言わない。今回は私が悪い。

 

 ラル・ミルチから紙袋を受け取る。手紙に彼女達の分の買い物を頼んでいたが、私の分も買ってきてくれたようだ。彼女は私が戻ることに反対していないということなのだろうか。聞きたい気持ちもあったが、ばっさりとリボーンの指示だと言われそうなので止めた。

 

 

 そして私は今、情報交換の場に参加している。雲雀恭弥は今日はもう来るつもりはないようで、原作通り草壁哲矢が参加していた。そして、獄寺隼人達も参加していた。大怪我がないので当然のことである。

 

 黙って話を聞いていたが、私と知っている内容とはほぼ変わらない。違うのは敵のAランク以上の人数が増え、そこに兄の名前があったぐらいだろう。

 

 彼らは一通り話し終わったため、私に視線が集まる。私の番だろう。

 

「私が知っている未来と少しずつズレている。それをしっかり頭に入れてくれ」

 

 話をちゃんと伝わっていたのか、私が未来のことを知っていること誰もにツッコミせず、真剣に頷いたのだった。

 

「君達の持ってきた情報はほぼ間違っていないだろう。ビアンキが持ってきた場所から潜入していた。相手の主力の戦闘スタイルは後でまとめて紙に書いてリボーンに渡す。どこまで教えるかは君の判断に任せる。それとさっきも言ったが、γを挑発したため彼の行動は要注意」

 

 草壁哲矢の話で雲雀恭弥がγの相手をして咬み殺したとは聞いた。が、彼は原作通りに酒を飲んで暴れてはいないだろう。それぐらい私の言葉は彼にとって重要なことだった。その時間さえ惜しいはずだ。

 

「問題は戦力の低下と第14トゥリパーノ隊」

「トゥリパーノ隊?」

 

 沢田綱吉が質問してきたので、本来なら10年後のディーノが相手をしていると教えた。

 

「でも第14トゥリパーノ隊なんて無かったと思うけど……」

「ええ。第14チリエージョ隊だわ」

 

 情報収集に長けている2人から思わぬ言葉が聞こえてきた。顔も能力も知らない相手だったが、私の知識とのズレに恐怖を覚える。少し落ち着くためにお茶を飲もう。

 

「サクラ――」

 

 ディーノに名前を呼ばれ、コップを落とし割ってしまう。大惨事である。慌てて拾い集めようとすれば、危ないという理由でビアンキに止められた。申し訳なさ過ぎる。

 

「大丈夫だ。なっ?」

「……君のせいだ」

 

 私が落ち込んだと思い、声をかけてきたディーノに責任を押し付ける。彼が私の名前を言わなければ大丈夫だったのだ。私は間違ってはいない。

 

「すまん」

 

 だが、ディーノが真剣に謝ってきたので焦る。ただ今まで呼ばれなかったことと10年後のディーノの行動を思い出すだけで、別にディーノが悪いわけじゃない。別に名前ぐらい呼んでも問題ないのだ……と、頭の中でグルグル思考が回っているとリボーンの言葉に我に返る。

 

「チリエージョはイタリア語で桜だ。……14番隊長が桂なのか?」

 

 ただの私の勘違いである。恥ずかしい気持ちが一瞬出たが、兄の名前が出たため耳を傾ける。しかし、誰も何も答えようとしない。恐らく私に気を遣っているのだろう。否定もないからな。

 

「――問題は戦力だけと考えていいか」

「ったく、もう少し素直になれよ……。桂のことが心配なんだろ?」

 

 視線が突き刺さり、私は観念し話し始めた。

 

「10年後のディーノの話ではもう日本にいない可能性が高いって言ったんだ。私を逃がすために別れてからは少しはいたと思うけどって……」

「どこへ向かったとかは言わなかったのか?」

「イタリアだ。はっきりとは言わなかったが、人質の私がいなくなったのだ。本部に向かったのだろう」

 

 沈黙が流れる。この現状で白蘭がいる本部に乗り込むことは不可能なのだ。まして私は本部のことはわからない。私のわがままで動くことは出来ないのだ。

 

「兄のことは彼に任せるしかないんだ」

「えっと、彼って誰なの?」

「六道骸」

 

 私が名前を出せば、彼らから「骸!?」と声を揃えて返事がかえってきた。草壁哲矢が叫ぶのは珍しい。

 

「私が知ってる未来では、骸が倒されたのはデマだ。彼は今ミルフィオーレの本部に潜入している」

「骸は復讐者の牢獄から出れたんだ!」

「喜んだところ悪いが、まだ牢獄の中だ。のっとった身体でってことだ」

「そっか……」

 

 少し落ち込んだ沢田綱吉を見て、本当に六道骸のことを心配しているんだなと思った。

 

「雲雀恭弥の方で怪しい男の情報は掴んでるんだろ?」

「っ!」

「その男が動いているはずだ」

「……わかりました」

「後、さっきの戦いで雲雀恭弥が指輪を何個使ったか知りたい」

「雲雀に伝えておきましょう」

「それだけでも十分だ」

 

 たとえ教えてくれなくても、指輪の残り数が重要なことだとわかるだろう。彼は頭がいいからな。

 

「話を戻すぞ。気になる場所があるが、今の君達では無理だ。ラル・ミルチに頼んでもいいが、君達を鍛えれる人物がいなくなる。それに彼女がこれ以上外に出るのは反対だしな」

「気になる場所はどこなんだ?」

「私の家の地下だ。10年後のディーノがそこで住んでいたと聞いたんだ。兄と連絡を取っていたことを考えると何か手がかりがあるかもしれない」

「サクラの言うとおり、話はこいつらを鍛えてからだな」

 

 チョイスが始まる前の時間に行けば安全かもしれないが、その時にはもう遅いかもしれない。私のワガママだが、少しでも情報がほしい。私の考えていることがわかったのか、ディーノが私の頭を乱暴に撫でた。任せろといっているのだろうか。

 

「君が1番心配なんだけどな。本来ならこの時代に君は来なかった。だから、どうやって君を鍛えればいいのか私にはわからないんだ。ただ、私は君の奥義や匣兵器の能力は知っている。少しは役に立つはずだ。他にも彼らの怪我がない分、修行時間が長くなったのはラッキーだった。確か獄寺隼人と山本武が回復するのに10日かかったからな。そして、この匣兵器だ」

 

 沢田綱吉に向かって投げれば、慌ててキャッチしていた。投げた私が思うのも変だが、落としていれば殴っていたぞ。

 

「晴の匣兵器だが、君とディーノなら開けれるだろ」

 

 私がいいたことを察したのか、沢田綱吉は炎を注入した。

 

「パフォ!」

「怪我の治療ができる分、効率は良くなるはずだ」

 

 沢田綱吉のところから、すぐさま私の足元に来てじゃれ付くパンダをみて思う。このパンダは兄の匣兵器だな。懐き方が尋常じゃない。

 

「私はプラスマイナスゼロだと思ってる。後は君達次第」

 

 立ち上がり動き出した彼らを見て、仲良くなって本当に良かったと思えた。

 

 私が感動に浸っていると、廊下からガジャーンという音が聞こえて、ある意味もっとも重要なことを忘れていたと気付く。

 

 ――ロマーリオが居ないんだった。

 


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