クラスメイト K [本編&おまけ完結]   作:ちびっこ

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フラグ乱立

 時はサクラが未来に行ってしまったところまで遡る。

 

 何となく電話をかけたディーノだったが、サクラのおかしな様子に慌てて動き出す。日本に行くのは決定事項だが、あまりにも時間がかかる。そのため、ディーノはリボーンに電話をかけたのだった。

 

 しかし、かえってくるのは機械音。1日前にリボーンは未来へ行ってるため、繋がらないのは当然のことだった。

 

 次にディーノが電話をかけたのは弟分のツナだった。今度は無事に繋がり、今すぐサクラのところへ向かってくれと頼む。

 

「助けてくれって言ったんだ。嫌な予感がする。今すぐ向かってくれねぇか?」

『もしかしてサクラの身にも何かあったんじゃ……』

 

 ツナの言葉にディーノは珍しく眉間に皺を寄せる。他の誰かにも何かがあったと言っているのだ。無理もないことだった。

 

「ツナ、そっちで何が起こってるんだ」

『そのリボーンが――』

 

 ツナの話を聞き、ディーノはリボーンと連絡を取れなくなった理由を知る。そして、ツナはちょうど大人ランボに話を聞こうとするところだった。

 

「事情はわかった。先に大人ランボから話を聞いてくれ。もしかすると、あいつは巻き込まれたのかもしれない」

 

 あれほど念を押して、何かあれば連絡しろと言った。そのことを考えると、サクラが予期せぬことが起きたとディーノは推測したのだ。

 

 そして、いくら待ってもツナからの返事はなかった――。

 

 

 

 ディーノが日本についた頃には一歩遅く、山本達もすでに居なくなっていた。しかし、桂と雲雀には連絡がついた。

 

 桂の話では壊れたケイタイが見つかっただけで、サクラの足取りはまだわかっていない。そのため、笹川了平と共に日本中を探し回るつもりらしい。雲雀も似たようなもので、足取りは一切わかっていないようだ。

 

 並中の応接室に邪魔をしていたディーノは雲雀を見る。雲雀はディーノがいることに鬱陶しそうな表情をしていたが、気にせず声をかけた。

 

「恭弥、もしかするとあいつらを探しても意味はない」

「……君は何を掴んでるの?」

 

 先程までの態度が一変し、探るようにディーノを見る。並中の生徒がいなくなったことは、雲雀にも見逃せないことなのだ。彼らの心配ではなく、風紀が乱れるという理由で。

 

 わかっているからこそ、ディーノは雲雀に声をかけたのもある。もし自身の推測が正しければ、守護者の彼も関わってくる可能性が高い。そして、話を聞いても愛弟子は冷静だと思えたのだ。

 

「オレの勝手な予想だ。あいつらは10年後の世界へ行ったかもしれねぇ」

 

 雲雀は何も返事をかえさない。普通ならば一蹴するが、発言したのはディーノである。バカバカしいと切り捨てることは出来ず、沈黙を貫くしかなかったのだ。

 

「もしそれが本当ならお前も行くことになるだろう。といっても、10年バズーカを持ってるランボも消えたことを考えると、その方法がわから――」

 

 途中で言葉を切ったディーノに不審な目を向ける。

 

「――そうか、その方法があったのか!」

 

 1人納得しているディーノに雲雀は殺気を放つ。ちゃんと話せという意味もあるが、ディーノの様子に苛立ったのだ。

 

「わ、悪い。10年バズーカを使えば、10年後の世界にいけると気付いたんだ」

 

 雲雀は話が見えなかった。話の流れで10年バズーカというものを使えば、10年後の世界にいけることがわかる。しかしそれを持ってるのは10年後へ行ってしまったランボという人物である。どうすることも出来ない。もっとも、あのリボーンがヘマをするとは思えないことと、自身も行く可能性があることを考えると黒幕の存在がいるかもしれないが。もし居たとしても、その黒幕がわからないから、どうしようもない事態になっているのではないか。

 

「なるほど、ボヴィーノファミリー!」

「ああ。そうだ、ロマーリオ。ボヴィーノファミリーなら、持ってるはずだ」

「はぁ……。そのボヴィーノなんとかって何?」

 

 先程まで黙っていたディーノの部下とディーノが盛り上がり始めたので、ついに雲雀は呆れながら話を促した。風紀の乱れを戻せる可能性があるため、聞かないという選択は出来ないのだ。

 

「その10年バズーカはボヴィーノファミリーに伝わる武器で、ランボはボスから預かってる。恐らく予備、最低でも弾があるはずだ」

「ふぅん。じゃぁそのボヴィーノなんとかを咬み殺せばいいんだね」

 

 場所もわからないのに出かけようとする雲雀をディーノは慌てて止める。相手は中小マフィアなのだ。手を出せば、どうなるかはわからない。

 

「落ち着け。たとえお前が咬み殺したとしても、10年バズーカは秘匿されている武器だ。殺されたって口を割らねぇよ」

 

 不満そうな顔をして雲雀は席に着く。リング争奪戦で雲雀がマフィアというものを少しは知ってて良かったと、ディーノは心底思った。

 

「じゃぁ、どうするつもりなの?」

「ん? 頼むんだよ」

 

 ディーノは咬み殺すより簡単なことだという態度で言う。秘匿されている武器と言ったのはディーノではないのかという意味で、雲雀はさらに呆れた。見かねたロマーリオが補足する。

 

「これでもオレ達キャバッローネは、巨大マフィアのボンゴレの同盟国の中でトップ3に入る。対して向こうは中小マフィア。次期ボンゴレ10代目の守護者の中に部下を入れてもらっている立場と、他のマフィアからはそう見られている。ボスが頼めば、無下にする事は出来ないんだ」

「まっこういうのはしたくねぇんだけどな」

 

 簡単に言えば、力関係を利用し、お願いするのだ。ディーノが好まないのも無理はない。

 

「褒められることじゃねぇからな。それにその方法だと使えるのはボスだけだ」

 

 いくら力関係が上だとしても、条件が提示されるだろう。秘匿されている武器を使わせてもらうのだ。当然のことである。そして、その条件の一つに秘匿を守るためキャバッローネのボスのみという条件が必ずある。2人はそう確信していた。

 

「そういうわけだ。オレから連絡がなければ、あいつらも10年後に行って帰ってこれねぇことが起きてると考えた方がいい。そして、お前も巻き込まれる可能性が高いと思ってくれ」

 

 雲雀の返事はまたもなかった。納得できない気持ちもあるのだろう。しかしディーノを止めなかった。情報が少ない中で、可能性が1つつぶれるだけでも、風紀を守りたい彼にはありがたいことなのだ。

 

 そして、提示された条件を全てのんで、ディーノは10年後の世界にやってきたのだった。

 

 

 

 

――――――――――――――

 

「……君はバカか」

 

 話を聞いて本気で呆れた。確かボヴィーノファミリーはイタリアにあったはずだ。何度、飛行機に乗ったんだ。そもそも簡単なように話しているが、他のファミリーに頼む時点で話が大きい。私が想像しているより、はるかに凄い力が動いてる。つい本音を言ってしまった私は悪くないと思う。

 

「助けるって約束したからな」

 

 顔が真っ赤になったのがわかった。10年後だったが、同じ人物が言ってるのだ。意識するなというのが無理な話である。

 

 しかし、意識するのは私だけなようで、ディーノは私の体調を心配していた。無性に腹が立ったので、殴った。ぽふっという弱々しい音しか鳴らないが。

 

「何か持ってるのか?」

 

 痛くはなかったようだが、感触で何か持っていることにディーノは気付いたらしい。手には10年後のディーノが使っていた指輪と匣兵器がある。そういえば、説明の時に渡されたままである。――かなり運が良かった気がする。

 

「……ディーノ、リングは持ってないよな?」

「ん? あるぜ。恭弥の戦い方を見て、やっぱりこれからの時代に必要と思ってな」

 

 つまり、敵に見つかるということではないのか。炎をともしてないので、近くにゴーラ・モスカが現れない限り大丈夫だと思うが、チェーンは巻いたほうがいい気がする。

 

「ディーノ、このリングに見覚えは?」

「見たことはねーな」

 

 少し悩み、このリングはここに置いて行くことにする。チェーンが1つしかないのだ。優先するのは強力なリングである。諦めるしかない。とりあえず、ディーノに巻けといってる間に、出来るだけ見つからないように土に埋めることにしよう。場所は忘れないように覚えておこう。

 

 土を掘りながら溜息がでた。彼を置いていけばドジを発動し、最悪の場合は殺されてしまう。かといって、この時代の戦い方を知らぬ彼と一緒に乗り込むのは危険だ。私の命だけならまだしも、ディーノを巻き込むわけにはいかない。もうアジトに戻るべきだろう。

 

 それに10年後のディーノの話では、兄はイタリアへ行ってる可能性が高いらしい。私が無茶しないように兄はディーノに頼んだという話だった。どうやら兄は私が会いに来ようとすることを読んでいたらしい。ディーノがすぐにボンゴレアジトに来なかったのは、私を油断させるためだった。1人で無茶すると思ったのだろう。失礼である。……間違ってはいないが。

 

 ちなみにタイミングよく現れたのは、兄の匣兵器の炎のレーダーを見て動いたからだった。兄に細工をしていると聞いたが、それは敵のミルフィオーレだけのようだ。それもそうだな。味方にする必要がない。まぁボンゴレアジトにはやっていたらしいが。そもそも私の家の地下はどうなってるのだ。今は無理かもしれないが、見に行ったほうがいい気がする。これも覚えておこう。

 

 無事に埋め終わり手をパンパンと叩いてると、ディーノにハンカチを渡された。手が土だらけになることに溜息が出たと思ったらしい。まぁ汚れるのは1人でいいと私が言ったことや、彼の優しさから来た行動かもしれないが、遠まわしに女子力が低いと言われる気がする。……悪かったな。

 

 ――何かがおかしい。

 

 そもそも、だ。別に女子力が低くてもいいじゃないか。有り難く借りるのが私なのだ。いつもならそうしていたはずだ。なんだ、このモヤモヤは……!

 

「……ディーノが悪い」

「オレが悪くていいから、状況を教えてくれ」

 

 ディーノの言葉に我に返る。考えてる場合じゃないのだ。急いでアジトに帰らなければならない。ここからだと……並盛神社が1番近いな。もしかすると10年後のディーノは雲雀恭弥のアジトを目指していたのかもしれない。気のせいかもしれないが。

 

「道案内はする。だけど、私達は追われてる。上手く切り抜けれるかは君の腕にかかってる」

「わかった。任せろ」

「……君にばっかり負担をかけて、ごめん」

 

 ディーノが急に屈み、私と目線があう。そして、頭をガシガシと撫でながら言った。

 

「覚悟の上だ。さっきは約束したからって言ったが、それはオレが守りたいって思ったから約束したんだぜ。だからオレは勝手にこの時代へ来たんだ。お前が気にすることじゃねーんだよ」

 

 確かにディーノが自分で決めてこの時代に来た。原作と違う行動であるから間違いないのだろう。しかし、それは私がいるせいなのだ。彼に何が起こるかわからない。生き残るために、彼は必死に鍛えなければならない。

 

「っ!」

 

 頭を強い力で撫でられた。お人よしのディーノにしては珍しい行動だった。

 

「大丈夫だ。なっ?」

「……もう1つ、約束してくれないか?」

「ああ。いいぜ」

「死なないでくれ。自身を大事にしてくれ」

 

 お願いだから死なないでくれ。ユニのおかげでみんなが生き返るとしても、私のせいで死なないでくれ。ディーノが死んだと聞いて、私は自身の存在がとてつもなく怖いものだと思ったのだ。だが、自ら死ぬ度胸もない。危険な外へ飛び出したのは兄に会いたい気持ちもあったが、生きてるのが怖くなったのだ――。

 

「わかった。約束する」

 

 真剣に返事をしたディーノの様子に安堵する。10年後のディーノは私に特別な気持ちがあった。確定するのはどうかと思うが、ほぼ間違いないだろう。だが、今のディーノにはない。そのことが、私を安心させるのだ。

 

「オレからも1ついいか?」

「……なんだ?」

「誰かが死んでも、それはお前のだけのせいじゃねぇ。たとえ誰かがお前をかばって死んだとしてもだ。そこには必ずそいつの意思がある。全部お前のせいにしちまうと、そいつの意思はどこに行くんだ? そいつの生きていた証を忘れないでやってくれ」

 

 すぐに言葉が出なかった。だけど、返事をしないといけない。そう思って私は口を開いた。

 

「――死亡フラグがたった」

「お前なぁ……」

 

 今度はディーノが項垂れたのだった。


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