原作通り、沢田綱吉が超直感で零地点突破・改を生み出した。もう大丈夫だろうと安心していると、他の守護者達も揃ったようだ。仕向けたのは私だが、本当に原作より早い。
「霧の相手はこっちにきてねーか?」
「いねぇのか!?」
「ああ。リングも見当たらなかった」
よりによって厄介な相手を逃がしてしまったようだ。術士に対抗できるのはクロームぐらいしかいない。だが、その肝心のクロームは眠っているようだ。笹川了平の大技によって、気絶したのだろう。
「……タイミングが悪い」
「どうかした――スクアーロ!? 意識が戻ったのか……」
私がボソっと呟くとディーノが気になったようだが、現れた人物に意識がいったみたいだ。
さて、どうしたものか。もし私の目にマーモンがみえれば、教えるべきだろう。ギリギリだが、ルールはセーフのはずだ。今までの試合で何度か助言してるからな。ただ、スクアーロが至近距離にいる状況でも大丈夫なのだろうか。
結局、観覧席にいる人物達を信頼するしかない。
「任せた」
全く困ったものである。私のたった一言で観覧席にいる彼らは警戒する。どっちが信頼しているのかわからない。……お互い様か。
探している間に、XANXUSの手が凍ったようだ。しかし、まだマーモンの姿はない。私に見えないだけなのだろうか。それとも本当に現れていないのか。答えがわからない。
「零地点突破、初代エディション」
沢田綱吉の声が聞こえた時、マーモンが見えた。声を出そうとすれば、口を塞がれる。
「なっ!?」
驚いてる彼らを安心させよう。やはり幻覚と理解している私には効果がないらしいのだ。だが、得体の知れないものに巻きつかれてる姿を彼らに見られるのは嫌だな。さっさとやめてほしい。
「大丈夫。マーモンはそこ」
居場所を教えれば、スクアーロの抗議の声が聞こえるのは気のせいである。私はさっさと倒してほしいのだ。
「僕に手を出さないほうが君達のためさ。観覧席に仕掛けた罠を発動してもいいのかい?」
獄寺隼人達の動きが止まった。そして、リボーン達からは私へ視線が集まる。が、迂闊に答えることが出来ない。私が知っている罠は赤外線が解除できないことだ。しかし、私の行動のせいでヴァリアーの警戒が強まっている可能性がある。絶対に大丈夫とは言えないのだ。
「観覧席には爆弾をしかけていたのさ。発動させたくなければ、リングは渡してもらおうか」
チェロベッロの1人が、ヴァリアー側の不正を止めようとして殺られた。原作と同じ人物のようだが、いい気はしない。
肩に手を置かれ、見上げるとディーノだった。何とかするから安心しろと言っている気がした。恐らく、予想外のことが起きていると気付いたのだろう。
少し冷静になったので、口を開く。
「リングを渡せ」
「バカ! そんなことにすれば……クソっ!」
獄寺隼人がイライラしながら、マーモンにリングを投げつけた。他のリングも投げたため、全て相手に渡る。しかし、まさか雲雀恭弥があっさりと投げるとは思わなかったな。
「バカばっかりで助かったよ。これでボスは再び復活する」
バカとは失礼な。XANXUSの復活は予定通りなんだぞ。このまま試合が終われば、私が復活させた。だから、あっさりとリングを渡せといったのだ。
「君の予想通り、リングには秘められた力がある」
「わかってて渡せと言ったのかい? 本物のバカがいたようだね」
「わかってないのは君の方だ。ボンゴレリングには正統後継者を選ぶ力があるんだ」
「正統後継者? ボス以外に相応しい人物はいないね」
マーモンがXANXUSの方へ向かったようだ。獄寺隼人達は動かない。私とマーモンの言い合いに獄寺隼人達は唖然としているからな。いったい何を言ってるのかわからないのだろう。いや、私がこんなことを知っていることに驚いてるのかもしれない。ちなみに、微妙に知っている雲雀恭弥は気にせず、追いかけていった。まぁ何かあると気付いてるため、まだ手を出すつもりはないらしいが。
「……止めるなら今だぞ。スクアーロ」
「てめぇ……まさか……」
暴れると察知したのか、ディーノの部下が更に銃をつきつけた。しかし、彼は気にせず暴れ始める。すかさずディーノが私の前に立ち、彼を拘束した。よく見えなかったが、恐らくスクアーロは私を殺そうとしたのだろう。
「離せぇぇ! 跳ね馬ぁ!!」
「それは出来ねぇ」
ディーノは私にスクアーロの姿を見せないよう配慮もしてくれたようだ。今の彼を見れば、私は恐怖しか感じないはずだ。直接見ていないにも関わらず、私を殺したいという思いがビシビシと伝わってくるからな。
モニターに視線を移すと、マーモンがXANXUSのところへたどり着いたようだ。それを見て、慌てて獄寺隼人達も向かった。もう少し詳しく話してもいいだろう。
「もっと早く、伝えればよかったと思う。怒りに狂ってるように見えるが、彼も本物の大空だ。君の思いも、包容する器があった」
彼の炎は嵐も混ざってるかもしれないが、大空なのだ。揺りかご事件から目を覚まし、怒りを増大させても、闇の炎はうまれなかった。この意味はとてつもなく大きい。
「……まぁ黙ってた私が言えた義理じゃないか」
だからといって、言わなかったことに後悔はない。私は沢田綱吉達の味方になることを選んだ。それに私は元々器用な人間ではない。協力を得てる状況で、家族と沢田綱吉達で精一杯なのだ。これ以上は無理である。
そっと目を閉じる。XANXUSの血を吐く声が聞こえた。恐らくリングが拒んだのだろう。もう私に出来ることはない。後は彼らに任せるしかない。
――――――――――――――
「邪魔しないでくれたまえ!」
珍しく桂は苛立っていた。こっそりサクラを見守っていると、謎の集団に襲われたのだ。
桂は知らないが、相手は幹部の次に強いヴァリアー隊だった。しかし、所詮は幹部より弱いのだ。桂には及ばないはずだった。
「君達、鬱陶しいよ!」
サクラのことが気にかかるのもあるが、問題は桂が苛立つほどの数なのだ。ヴァリアーは桂がどこかで見ているだろうと予想し、大量に送り込んでいたのだ。
桂は了平のような集団にも使える大技を持っていない。桂の戦い方は超高速自己修復能力と炎を使っての身体能力強化である。
ツナの戦い方を見て、桂は炎による高速移動も出来るようになった。が、放出するのは活性の炎なのだ。了平のような技を覚えなかったのは、相手に向かって撃てば、治療してしまうという大きな欠点があったからである。もちろん、炎を放出できなくても桂は集団に対抗できるほど十分に強い。が、1度に大量の人数を倒すことは出来ない。
桂からすれば、とても戦いにくい相手だった。しかし、それは相手も同じだった。
数で攻めても簡単には当たらない。たとえ当たったとしても、すぐに回復するのだ。戦う時間が長ければ長いほど、恐怖は増幅する。少しでも桂が疲れた姿でも見せれば精神的に楽になるのだが、そんな様子は一切感じさせない。むしろ、回復する時間が早くなっていく。
「化け物……」
相手の呟きに桂の動きが止まる。桂は生まれた時から、なぜか人に好かれやすい。だが、能力を使えば、手のひらを返したように必ず化け物と呼ばれるのだ。
サクラはそんなことをしないと頭では理解している。が、桂は話す勇気はまだ持てなかった。
「ぐっ」
桂は血を吐いた。動きを止めたことによりスキが生まれ、桂の心臓に槍が刺さったのだ。それでも、桂は死なない。槍を引っこ抜けば、すぐに治るのだ。ここまでくると桂自身でもどうすれば死ぬかはわからなくなった。もしかすると脳がつぶれれば死ぬかもしれないが、治る可能性もある。
「僕も怖くなってきたよ」
思わず桂が弱音を口に出てしまうほど強大な能力だった。それでも桂が狂わないのは、サクラを守れる力になるからだ。ふと頭をかすめる。もしサクラが自身の力を必要としなくなるほどの相手を見つければ、どうなってしまうのかと――。
桂はすぐさま打ち消した。サクラが幸せなら、自身も幸せになるはずだ。それにまだサクラは自身の力が必要なのだ。
「……早く君達を片付けないといけないね! 君達を見逃せば、サクラが危険になりそうだからね!」
サクラの幸せのために、依存し重荷になってはいけない。一方で、まだ大丈夫という2つの心に揺れていたことに桂は気付かなかった――。
謎の集団を片付け終わったころ、1人の男が桂の前に現れた。
「確か君は……」
「ランチアだ。お前がやったのか?」
「そうだよ」
「……ボンゴレに礼を言いにきたが、遅かったようだな」
ランチアは桂の強さを覚えていたため、驚きはしない。そして、桂に恐怖も抱かなかった。
「ならば、頼んでもいいかい?」
「なんだ?」
「こういうのを用意していたからね。向こうの様子を見に行ってほしいのだよ」
ほぼ初対面のランチアに桂は頼み事をした。桂にとって、初対面の相手に頼み事することはよくあることだが、自身の力を知っている相手に頼むのは珍しいことなのだ。頼もうにも恐怖を抱かれるため出来ないといったほうが正しいが。
「お前は行かないのか?」
「僕はこのような有様だからね」
血で汚れた服装を指し、もっともらしい言い訳を桂は口にする。ただ、サクラに会う勇気がないだけなのだが。
「……そうか」
ランチアは深く聞かない。力があれば、それ相当の悩みや考えがある。ならば、自身はできることをするまでである。
「ありがとう」
桂は礼をいいながら、ランチアを見送った。ツナ達の仲間は自身に恐れない。サクラには及ばないが、桂にはありがたい存在だった。
私の気分によって変わりますが、後1話か2話でVSヴァリアー編は終わるでしょう。
70話ジャストを狙ってたんですけどねww