どうしてそうなる!?と何度叫びたくなったか。
解毒薬を渡せば、彼らが死ぬ確率が下がると思っていた。だが、私の考えは初っ端から否定された。
まず笹川了平のポールの倒し方が問題だった。なぜ派手な技を使ったのだ。XANXUSに気付かれただろ。まぁ私がポールの倒し方を予想していなかったのが1番の原因だったのかもしれないが。
本当に、対抗手段として嵐・雷・霧のポールが倒された時はどうしようかと思った。
嵐のポールを倒されたのは原作通りだったが、ベルフェゴールと獄寺隼人が対峙することになってしまったのだ。つまりランボの命が危険になる。観覧席で見ているだけの私にはどうすることも出来ないのだ。冷や汗しか流れなかった。
本当に雲雀恭弥が化け物で助かった。ちなみに、これは褒め言葉である。
恐らく原作より、ポールが倒されるのが早かったはずだ。沢田綱吉とXANXUSのガチンコ勝負後すぐに晴のポールが倒れる音が響いたのだ。その後、XANXUSが行動したことを考えると、少しの違いかもしれないが早くなったのは間違いない。雲雀恭弥がなぜすぐに解毒できたかはわからないが、彼がいなければランボは助からなかったかもしれない。グッジョブである。
「おい、女」
恐らく私に言ってるだろうが、私は女という名前ではないぞ。まぁ怖いので、顔は向けるが。
「どこで知った」
はて?という意味で首をひねる。XANXUSはいったい何について言ってるのだろうか。心当たりがありすぎて、わからない。
「オレが用意した。武器の持込が可能なんだ。ルール上は問題ねぇはずだろ」
どうやら解毒剤についてだったらしい。そして、Drシャマルは女好きじゃなければ、もっとモテるだろうに……と、思ってしまった。まぁ本人の自由だが。もちろん私は遠慮する。
庇ってもらってるのに失礼なことを考えていると、沢田綱吉がXANXUSに「オレとの戦いに集中しろ」と言った。もの凄くありがたいが、私を庇ってくれる人物が多すぎだろ。今まではこんなことがあっただろうか。兄を優先する人物しかいなかった気がする。いや、少しは自惚れてもいいかもしれない。私がかわったから、周りもかわったのだと。
ザッと土の音が聞こえたので、振り向くとディーノがいた。スクアーロはどうしたのだ。その前に、よく一人でここまでたどり着いたな。
「悪い、遅くなった。大丈夫か?」
「微妙」
ディーノが観覧席に入りながら聞いてきたので、戦況を教えた。原作より良いとは言えないが、悪いとも言えない。マーモンも解毒してしまったので、クロームがピンチだからな。まぁクロームが解毒できていなければ、もっと戦況は悪かったと思うが。
ディーノは私の言葉を聞いて難しい顔をし、ムチをかまえたようだ。確かに微妙と言ったが、戦闘態勢になるほどではないぞ。謎である。
「内部からの攻撃で爆発する仕組みだ」
「そうか」
返事をしたが、わかっているのだろうか。ムチはなおしたようだが、警戒を解いた気がしない。
「微妙だが……――」
口を閉じる。危うくXANXUSの勝ちは絶対にないと教えてしまうところだった。そんなことを口に出せば、殺されるに決まっている。ディーノのせいで、死にかけたな。どうも滅多なことで怒ったりしないディーノがピリピリすると、話してはいけないことまで教えそうになる。
「確かに戦況は微妙だが、彼らは大丈夫。だろ?」
「ああ」
問いかければ、沢田綱吉が返事をしXANXUSへ向かっていった。頑張れと心の中で呟き、見送っているとディーノがボソっと呟いた。
「微妙って戦況のことかよ……」
それ以外に何があるのだ。しかし、ディーノが脱力し、Drシャマルが声を殺すように笑ったので、何かあるのだろう。気になる。私の気持ちに気付いたようで、Drシャマルが教えてくれた。
「可愛い子ちゃんがピンチだと思ったんだろ」
そういえば、ちょうどディーノが来た時はXANXUSが私を睨んでいた気がする。つまりディーノは勘違いしたのだろう。ドンマイである。
沢田綱吉の戦いに目を向けると、もうスピードが追いつけなくなっていた。やはり私のせいで、XANXUSが本気になるのが早い気がする。沢田綱吉にXANXUSの連射攻撃が当たり、落ちていく。レオンの装備があるため大丈夫と思うが、目の前で見ていると心配になる。
「目障りだ。消えろ」
寒気がした。今まで何度か殺気をあてられたが、その何倍もの恐怖を肌で感じている。気づけば、炎がこっちに向かって放たれた。コロネロがぶっ飛ばそうとしたが、内側からの攻撃で爆発すると助言したため、私の肩から降りたリボーンが他の方法を考えろと言っている。
「何か考えがあるのか!? コラ」
「赤外線センサーもろともぶっ飛ばす威力だ。壊れてから撃つ方法があるが――」
視線を感じ、悟る。どうにかしてくれと他人任せだったのが、仇となったらしい。私だけ死ぬかもしれない。恐らく至近距離で迎え撃つことになれば、私の身体がもたないのだろう。彼らの反射速度なら、逃げることも出来るだろうしな。
「すまん!」
ディーノの声が聞こえたと同時に温もりを感じる。ちょっと待て、その助け方はどうなんだ。もちろん、抱きしめられてることには怒ってはいない。緊急事態なのだ。それぐらいはわかる。だが、それではディーノがヤバイだろ!?
「しっかり捕まってろよ!」
どうやらディーノは私を抱きかかえながら、逃げる気のようだ。それならば、私はディーノの言うとおりにするべきだろう。邪魔になるわけにはいかない。
恐怖で震える手に力をいれ、服にしがみつく。怖くて目は開けれなかった。
「っ!」
ディーノが息を呑む声を聞こえると、すぐに衝撃が来た。が、私が予想していたより遥かに少ない。それに移動した気配もなかった。気になるので、ディーノからさっさと離れ、現状を確認することにした。
……状況は何となくわかった。彼が軌道を逸らし、助けてくれたのだろう。だが、なぜこのタイミングで。確かに話を聞いていた彼ならば、使える可能性はある。更に彼の戦闘センスがあれば、防ぐのは不可能でも逸らすことが出来るだろう。しかし、まさかこのタイミングでリングに炎を灯すとは予想できなかった。
「恭弥……お前……」
ディーノがもの凄く感動しているが、雲雀恭弥の機嫌は最悪のようだ。相手がリングの力を使っていない状況だからな。悔しいのかもしれない。まぁXANXUSがリングを使った状況であれば、軌道も逸らせなかったと思うが。
彼がリングに炎を灯せたのは、やはりディーノの行動が大きいのだろう。そうでなければ、彼がこのタイミングで炎を灯すことは出来ないはずだ。もっとも、ディーノに影響を与えたのは私だと思うが。
少し考えていると、頭にコツンと何か当たったので見上げる。……ちょっと待て。逸らすなら、ちゃんと逸らしてくれ。声にならない悲鳴をあげる。モニターの一部が落ちてきそうだぞ!?
「果てろ!!」
スローモーションのように、はっきりと空中で爆発が起きたのが見えた。先程の声を考えると獄寺隼人がダイナマイトを投げたのだろう。一部が小さくなったのはありがたいが、その小さくなった一部が当たっても私は死ぬ気がする。それぐらい微妙な大きさなのだ。
すると、目の前が真っ暗になり、次に明るくなった時には全て終わっていた。どうやらリボーンが赤外線に当たらないよう上手く銃で砕き、死ぬ気になったバジルが器用に掴んだようだ。グッジョブである。
「おめーのどでかいライフルでは、出来ねぇからな」
「んだと、コラ!?」
状況が状況なので、2人の言い合いは本気じゃなさそうなので放置する。私は目が痛いのだ。ギリギリにディーノが服を使って守ってくれたようだが、細かいのが入ったらしい。パチパチとまばたきしていると、Drシャマルが目薬をくれた。本当に至れり尽くせりである。
目薬をさしていると、地響きが起きた。モニターは白黒になっていたが、何とか映っていた。
クローム髑髏とマーモンが戦っていたはずだが、いつの間にか笹川了平が原作のように体育館をぶっ飛ばしたらしい。ただ、地面に向かって殴ったように見えるのは気のせいだろうか。まぁ無事なら問題ないか。
「10代目、こっちは任せてください!!」
「すまない」
獄寺隼人の言葉を聞き、沢田綱吉は死ぬ気の零地点突破を使うことにしたようだ。炎を放出しだしたからな。
「気をつけろ!」
沢田綱吉に向かって叫べば、視線が集まった気がする。が、XANXUSは私を見ずに沢田綱吉の炎の動きを見ていた。もうすぐ、本気になる。
さっきの状況でも見えなかったのだ。本気のXANXUSの動きが私に見えるわけがない。光ったと思えば、いつの間にか沢田綱吉が倒れていた。
復活するまでの時間が長く感じる。私のせいで、もし何かあったらと思うと、怖いのだ。
急にガシガシと頭を撫でられる。この状況で何をしてるんだと思ったが、私のせいらしい。不安で無意識にディーノの服を掴んでいたようだ。
「大丈夫だ」
「……ん。それは私が1番わかっている」
私のせいで何かあるかもしれないが、沢田綱吉は負けないと言ったのだ。私はそれを信じればいいだけである。
だから、沢田綱吉が復活したのを見て、泣きそうになったが我慢する。その代わりに「ありがとう」と呟くのは許してほしい。私が彼らのそばにいても大丈夫と証明してもらった気がしたのだから――。
サクラには恋愛の「れ」の文字もないようです……w