クラスメイト K [本編&おまけ完結]   作:ちびっこ

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※ いらない気もしますが、流血?注意です。




 目の前の光景を見て、叫んだ。

 

「私は、こんな未来を望んだんじゃないんだ……!」

 

 私はただ沢田綱吉にモスカの中に9代目といると教えただけなのだ。教えれば、9代目を傷つけずに助けれると思ったからである。

 

 だが、この状況はどうだ。

 

 沢田綱吉は無事に9代目を助けた。が、傷つけずに助けたことにより、XANXUSが暴走したのだ。そのため、背後から沢田綱吉は攻撃を受けた。私の目の前で――。

 

 私はわかっていたはずだ。XANXUSはいつ暴走するかわからないことを。そして、沢田綱吉は修行で疲れている状態だったことを――。

 

「違う! 違うんだ!」

 

 涙で視界が歪む。私は沢田綱吉達の負担を減らそうと思ったんだ。少しでも、彼らが傷つかないように……!

 

「ぶはーはっは!!」

 

 XANXUSの笑い声が響く。まるで最初からこうすれば良かったんだと言ってるようにも思えた。私は怖くて――この光景を見る勇気がなくて、目を開けることが出来なかった。

 

「ぶっ、ははは!! 最高だ!」

 

 崩壊の音が響く。そして、笑い声も大きくなっていくように感じた。まるでこの世界が壊れることに喜んでいるように聞こえる。

 

「お前、最高」

 

 耳元で囁かれた。いったい、誰にだ。そして、気付く。さっきまでの笑い声はXANXUSじゃない。性別は同じようだが、声が違う。いつの間に変わっていたのだ。慌てて振り向いたが、目を手でふさがれた。

 

「み、る、な」

 

 これは誰の声だろうか。聞きなれた声だった。この1年で会話したことがある声だ。声フェチの私なら冷静に考えれば、すぐにわかることだった。私の目をふさいだ手がベットリ濡れて、独特な臭いがしなれば――。

 

 この臭いは知っている。怪我をしたりする時に嗅いだことがある。だが、鼻につくほど強烈に感じたことは今まで1度もなかった。

 

 私はついに声も出せなくなる。なぜなら、私の目をふさいだ手が、徐々に下がっていくのだ。まるで力尽きたように――。

 

 景色が見え始める。笑っている男の顔を見て、目の前が真っ暗になった――。

 

 

 

 

 

 私は目を開け、身体を起こした。そして、ビッショリとかいた汗が不快と感じだ。

 

 嫌な夢を見た。……夢だった、と思う。あまりにもリアルすぎた。それにあの男はなんだ。恐怖の塊だった。決して、逆らってはいけない。そう身体が、脳が一瞬で理解した。

 

 ガタガタと身体が震えだす。もし私が話したことによって起こる未来だと考えると怖くなった。

 

「サクラ、わりぃーが起きてくれ。ツナが行っちまった」

「あ……あ……」

 

 リボーンが、扉の向こうから呼んでいる。返事をしようとしたが、喉に何か引っかかったようにうまく言葉が出てこない。ガチガチと歯の音が響く。

 

「サクラ、しっかりしろ」

 

 私の様子がおかしいと感じたリボーンが、扉を開けて見に来たようだ。優しく頬を叩かれる。

 

「リ、ボーン……。わ、私の、せいで……」

「大丈夫だぞ。ツナ達は無事だ」

「ち、違う! 私が話してしまったせいで!!!」

「……わりぃ、サクラ」

 

 リボーンの呟きが聞こえた後すぐに、首に何か衝撃が走ったのだった。

 

 

 

――――――――――――

 

 リボーンはそっとサクラを寝かせ、涙を拭った。その後、すぐに優先順位を考える。ツナの行き先は見当がつくため、あっさりと後回しにし、電話をかける。

 

「シャマル、今すぐツナん家に来てくれねーか? 精神安定剤が必要かも知れねぇ」

 

 誰が、とは言わない。Drシャマルも聞き返しもせず、「すぐ行く」と返事した。

 

「ママンかビアンキに頼むべきだな……」

 

 サクラの汗を見て、呟く。精神状態が不安定な時に風邪をひけば、サクラの容態が酷くなると思ったのだ。

 

 事情の知らない2人に、もしサクラが起きてしまった時を考えると少し心配だが、男に着替えを任せることは出来ない。自身が付き添ってもいいが、サクラはリボーンも大人と知っているのだ。サクラのことを思うと、扉の前で待機するべきと判断したのだった。

 

 そうと決めればと、リボーンはビアンキと沢田奈々に声をかけるために行動したのだった。

 

 

 

 安心し待合室で眠ってるツナに軽く殺気を放ちたくなるのを我慢し、リボーンはディーノのところへ向かう。

 

「んだよ、リボーンか……」

 

 ディーノは気配を消して近づいた人物の正体がわかり、ほっと息を吐く。が、リボーンの真剣な表情に気を引き締め、どうかしたのかと尋ねた。

 

「さっき、サクラに精神安定剤を打った」

 

 ディーノはリボーンに問い詰めたい気持ちもあったが、サクラがそこまで追い詰められていることに気付かなかったことはディーノも同罪なのだ。必死に我慢し「わかった」と返事をしたのだった。

 

「今、サクラはぐっすり眠ってるぞ。それにDrシャマルがそばについている。安心しろ」

 

 そんなディーノの葛藤に気付いたようで、リボーンはサクラの状況を教えた。その言葉でディーノは多少たりとも安堵し、冷静になる。

 

「……いったい、何があったんだ?」

 

 サクラが不安定になる可能性があったのは、ディーノも理解している。だが、何かきっかけがあったと考えたのだ。サクラは出来るだけ試合を直視しないようにして、精神バランスを自身で調節し保っていた。それに気付いたからこそ、ディーノは雨戦の時に本を返したのだ。そのサクラが精神安定剤を打たなければならない事態になれば、何かきっかけがあったとしか考えれなかった。

 

「おそらく予知夢をみた」

「それは――」

 

 絶対にないとディーノは続けれなかった。サクラ本人の話では予知ではなく、自身がいない未来がわかるだけと言っていた。サクラは否定するだろうが、この世界のマンガ――原作があることを知らないディーノ達からすれば、それは予知と変わらないことだった。サクラの言葉だけを信じて、予知ではない能力と考えたこと事態がおかしかったのだ。

 

「サクラは話してしまったせいでと、言った」

「話したことで起きた未来をみちまったのか……」

 

 精神が不安定になるほどの未来を――。サクラが混乱した姿を想像し、ディーノは何も出来なかった自身が悔しくなった。

 

「問題は何を話そうとしたのか……」

 

 サクラが話すときはツナ達のため。それを十分に理解しているからこそ、2人は内容の重要さに気付く。だが、サクラから聞き出すことは出来ない。たとえ、サクラが大丈夫と言っても話させない。2人は確認せずとも、これは決定事項だった。

 

 2人はサクラの言動を思い出す。そして、たどり着く。

 

「9代目」

 

 声が重なり、顔を見合わせ2人は頷いた。それしか、ないと。

 

 ヒントはあった。『ディーノに恨まれるかもしれない』、『幼い相手以外のことは黙ってる』、『XANXUSの企て』そして、サクラが話した方がいいと思う内容。伝えた相手とこの戦いに関することを考慮にいれれば、限られていく。

 

 最大のヒントは、『9代目は影』と言い、本物の9代目のことは話さなかった。もちろん知らない可能性もある。が、それならば知らないと話しているだろう。サクラは自身のせいで誰も死んでほしくないと思っているのだから……。更に、サクラは助言の時、曖昧な言葉は使わないようにしている。もし使う時は『かも』『はず』という言葉を必ず使う。自身の言葉がどれだけ重要なのか、理解しているからだ。そのサクラが言わなかった。黙っている可能性の方が高い。

 

「だが、これでは動けねーな」

 

 9代目についてサクラが話そうとしたということは恐らく当たっている。が、それ以上のことはわからない。下手に動いて、身動きが出来なくなるのは本末転倒だった。

 

「ああ。そして、手がかりはイタリアにあるってことか……」

 

 ディーノはサクラが『9代目は影』と自身に教えたタイミングが気になっていた。サクラは家光に会った時になぜ言わなかったのか。そのためディーノは緊急連絡を入れることになった。どこかサクラらしくない。先に知っていれば、争奪戦が終わってからでも本部を乗り込むことも出来たのだ。乗り込む直前で知れば、影をそのまま放置することはできない。今ならわかる。サクラは家光が本部に乗り込むのを待っていた。そして「影とわかっても、本部に突入しなければならない、だろ?」と念を押し、誘導していた。

 

「家光の連絡を待つしかねーな」

「ああ」

 

 焦る気持ちもあるが、自身達にも重要な案件がある。ディーノはスクアーロの存在を隠し治療すること、リボーンはツナを鍛え上げることだった。

 

 

 

 リボーンはディーノと別れ、待合室に向う。ぐっすり気持ち良さそうに眠っている姿を見て、溜息が出た。

 

 気付いてるようで、気付かないツナを一発殴る。いつもより力が強くなるのは、サクラのことを考えれば、当然のことだった。

 

「起きろ、バカツナ!!」

「いってぇーー!?」

「行くぞ」

 

 痛がってるツナを銃で脅す。もう時間がないのだ。

 

「行くってどこにだよ!?」

「修行に決まってるだろ。バカツナ、もしもの時、どーすんだ?」

 

 ツナとリボーンでは『もしもの時』のとらえ方が違う。ツナにとっては雲雀が負けてしまう未来。リボーンにとってはサクラが話さなくても、起きるかもしれないサクラが怯えた未来だった。もちろん、リボーンは違いに気付いている。時間があれば、リボーンはサクラのことを教えていただろう。しかし、その時間すらなかった――。

 

 

――――――――――――――

 

『ごめんなさい……』

 

 目をあける。耳元で誰かに言われた気がしたのだ。しかし、あたりを見渡してもDrシャマルしかない。今のは女性の声だった。謝られていたのに、心地よい声だった。出来れば、もう1度聞きたい。夢だったのだろうか。

 

「目が覚めたのか……」

 

 その言葉に頷くと、パジャマが変わっていることに気付く。……治療行為の一種とわかっているが、一発ぐらい殴ってもいいだろうか。

 

「オレじゃねーよ。ったく……リボーンの奴め。手を回しやがって……」

 

 ちゃんとリボーンが手配してくれたようだ。流石である。恐らくビアンキか、沢田奈々だろう。もしくは両者かもしれない。

 

「今、何時だ」

「まだ眠ってろ」

 

 Drシャマルが教えようとしないので、自身で確認することにした。が、近くに時計がない。

 

「今、何時だ」

 

 もう1度、問う。首を横に振るだけでDrシャマルは何も言わない。時計を隠している可能性に気付く。カーテンも閉め切った状態で、昼なのか夜なのかもわからない。慌てて起き上がろうとしたが、Drシャマルに肩をつかまれ、動けなくなる。

 

「ドクターストップだ。後はあいつらに任せろ」

 

 それは出来ない。私の知らない男がいたのだ。思い出すだけでも恐怖を感じるが、今動かなければ何のために私がいるのかわからない。

 

 力を抜き、深呼吸する。Drシャマルは私が諦めたように思ったのだろう。残念ながらそれは違うぞ。

 

「きゃああああ!」

 

 Drシャマルは滅多に大声を出さない私の悲鳴に驚いたようだ。が、驚いてる隙に動くとわかったのか、すぐさま私の肩を抑えた。

 

「諦めろ。可愛い子ちゃんの力では、オレには敵わないぜ」

 

 確かにそうだろう。一般人の私が殺し屋に敵うと思うほど、バカではない。私の狙いにDrシャマルが気付いたのは勢いよく扉が開かれた時だった。

 

「ポイズンクッキングⅢ!!!!」

 

 ピクピクと痙攣しているDrシャマルに罪悪感を覚えながら、パーカーを掴み部屋から出ようとする。

 

「まっ、待て!」

「女の敵、滅びなさい!」

 

 流石、ヒロイン達の姉貴分である。たいして仲が良くない私を2度も守ってくれるとは……。若干、ドン引きしながらも、礼を言う。

 

「いいわよ。いくらリボーンの頼みだとしても、この男と2人っきりにさせたのが間違いだったのよ」

「……カ、カッコイイ」

 

 思わず呟いた。ヒロイン達が慕う理由がわかる。もう1度、礼をいい。私は外に飛び出したのだった。走りながらケイタイを見る。時間は11時を少し過ぎていた――。




……シリアス……だと!?
(多分、私が1番驚いてますw)

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