私がフラグを立てたせいなのだろうか。まだ決着がつかない。いや、正しくいうならば、20年後のランボは圧勝だった。無事に攻撃が決まり、レヴィ・ア・タンは意識があるようだが、身体が痺れて動けなくなってるからな。
「ランボ、相手の首にかかってるリングを集めれば終わりなんだ!」
「アホ牛! 急げ!!」
彼らの必死の説明だが、残念ながらランボは入れ替わる前に受けた雷でグズっている。両手に飴を持っているようだが、難しい話を聞けるような状況じゃないぞ。そして、この状況でもモスカがレヴィ・ア・タンに止めを刺さないのはまだ勝てる可能性があるからだろう。痺れが取れてしまうとランボの負けは決定だからな。
「チェルベッロ。沢田綱吉を応援している私がフィールドに入ってしまった場合は?」
「勝負への妨害とみなし、雷のリングならび大空のリングはヴァリアー側のものになります」
大空のリングは責任ということでらしい。全く、面倒なルールである。
「ランボ、こっちに来い。ケーキ食べるんだろ?」
「バッ!」
フィールドに入らないギリギリのところでしゃがみ、手招きをすれば、獄寺隼人は私の言動に驚いてるようだ。相手が起きてしまえば、ランボは終わりと考えれば、この選択は悪くないはずだ。
「オレも神崎に賛成なのな。問題ねぇって、オレ達が勝てばいいだけの話だろ?」
「そうだ。昨日のオレの試合は勝ってるのだ。振り出しに戻っただけで、焦る必要はない!」
「……オレもランボがリングを揃えれるとは思えないし、もう1度バズーカに使うかもわからないし、神崎さんに賛成かなーって……」
「……そうスね。アホ牛の分はオレが勝てば問題ねぇ。アホ牛、さっさと戻って来い!」
彼らはあっさりとランボは負けてもいいという選択をした。恐らく、最初の方に容赦なく殴られてるシーンを見たのと、勝負には勝ったからだろう。
もう1度、名を呼べばランボはグズりながらもこっちに来た。鼻水を垂らしながら抱きつかれるのは勘弁なので、ティッシュがポケットにあって良かったと本気で思った。
「危ないっ!」
ランボが私にたどり着く直前に沢田綱吉の焦った声が聞こえた。目線が低かった私は、顔をあげると何か黒いものが目の前に迫ってるのが視界に入った。そして、その後から記憶はない。
――――――――――――――――――――
サクラとランボを抱きかかえながら、2人ともに怪我はなく気を失っただけの様子に安堵する。その一方で、先程の相手の行動を思い出し、ツナはいつもより眉間に皺が寄る。しかし、眉間に皺を寄せたはツナだけではなかった。なぜなら、レヴィがサクラに向かって電気傘を投げたのだ。
「……ありがとう。リボーン」
周りが自身の炎に驚いてる姿には目もくれず、ツナはリボーンに礼を言った。いち早く気付いたツナがサクラを助けようとしたが、超モードにならなければ間に合いそうになかったのだ。
『!?』
濃厚な殺気がこの場に居るものに向かって放たれる。先程までツナの炎の大きさに驚いていたヴァリアーが、戦闘体勢になるほどのものだった。
「あいつの仕業だな」
「ああ」
リボーンとツナは心当たりがあったため、驚きはしない。だが、ツナはサクラを抱きかかえる手に力が入る。ここで離れてしまえば、サクラとはもう会えない……そう、直感した。
「なぜサクラを狙った」
ツナの問いには誰も答えようとしない。ヴァリアーからすれば、濃厚な殺気の方が重要で、ツナの疑問はたいしたことではなかったのだ。サクラへの攻撃は、ただ試合を終わらせないために、ランボの足止めだった。直接ランボを狙わなかったのは、すぐに殺ってしまえば、レヴィの気がすまなかったからである。
「オレは友達……仲間のために戦う。ボンゴレリングや時期ボスの座のためには戦えない。でも、この戦いの結果で、仲間を失うというなら、オレは……オレ達は負けない」
ツナの言葉の意味は、ヴァリアーへの宣誓布告。そして、殺気を放っている人物に向かっての宣言だった。
「ほざくな」
濃厚な殺気にものともしないXANXUSは甘い言葉を吐いたツナに殴りかかる。原作と違い、濃厚な殺気により空気が張り詰めていたことや、超モードがとけていない状況だったため、XANXUSの行動にツナは気付いていた。が、避けようとしなかった。ツナが避ければ、サクラ達に負担がかかる可能性があったのだ。
「ぐっ!!」
超モードでの死ぬ気のコントロールの修行はまだのツナだったが、ぶっつけ本番でやってのけXANXUSからの攻撃を軽減する。そのことに表情には出さなかったが、リボーンは驚き、そして再認識する。ツナは守りたいという気持ちで強くなるということに――。
突如、濃厚な殺気が止む。
信頼してくれたかはツナにはわからない。だが、覚悟は伝わったようだ。しかし、XANXUSはツナの覚悟を一蹴し、笑い飛ばす。超モードが溶けてしまったが、ツナは睨み返したのだった。
XANXUSはツナの様子を見て、9代目と同じような感覚を覚え、原作通り9代目と同じような目に合わせるような意味深な発言をしたのだった。
その言葉に反応したのは沢田家光とリボーンだった。しかし、反応は様々だった。初めは両者ともにXANXUSを警戒していた。が、沢田家光は何かを思い出したようにツナを見つめたのだ。正しくは、ツナに抱きかかえられているサクラだったが。
「家光」
リボーンはXANXUSを警戒し目を離さなかったが、サクラを守るように移動する。それはヴァリアー側が違和感を覚えるには十分なことだった。そして、唯一この中で似たような場面に遭遇した人物がいた。
「う゛お゛ぉい。随分、その女を大事にあつかうじゃねーか!!」
「何か知ってるのかい?」
「跳ね馬が護衛をつけるほどだぁ!」
証拠はなかった。カマをかけただけである。しかし、それだけで十分だった。先程より、リボーンと沢田家光の警戒が強くなったのだ。
状況がわからないツナ達だったが、サクラに危険が及んでることだけは理解し、戦闘態勢に入る。
チェルベッロはこの状況に焦り、「お止めください。ここで戦えば、リング争奪戦の意味がありません!」と、声をだす。しかし、お互いに警戒を解くことはなかった。そんな中、呑気な声が響いた。
「さぁくらー!」
声が聞こえる方を向くと、桂がいた。状況がわからないように桂は首をひねるが、サクラの姿を見ると嬉しそうに笑う。
「沢田君、サクラは疲れて眠ったのかい?」
「え……。あ、はい」
「それは迷惑をかけたね! 学校に忍び込んで、サクラが肝試しに行くと言った時に止めればよかった。遅いと思って僕が迎えに来たのは正解だったね!」
「は、はい……」
桂はツナと話しているが、サクラにしか目が向かない。そんな桂の迫力にツナは押され、よくわからないまま話をあわせたのだった。
「サクラは今日も可愛い寝顔だね。記念に写真を撮っておこう」
言ったそばからパシャッとケイタイで写真をとる。口元を緩め写真とサクラを交互に眺めている桂は、よく知っているツナ達でもドン引きの行動だった。
「おっと、僕としたことが……いつまでも沢田君にサクラを抱かせてるとは! まだお嫁にはいかせないよ!」
「え……」
「どうしてもというのなら、僕を倒してからにしたまえ! さぁ、かかってくるがいい!」
「あ、あの……」
「ふっ。少し言ってみたかっただけさ!」
ツナは脱力しながらサクラを引き渡す。桂に振り回されてるとしか思えなかったのだ。桂はツナの気も知らず、サクラを受け取ってすぐに「さらばだ!」といい、去ろうとする。ツナはもう桂の行動にツッコミを入れる気力はなかった。
「…………っあ!」
ツナは声をあげる。XANXUSが背後から桂に殴りかかったのだ。サクラじゃなく桂を標的にしたのはXANXUSの直感だった。
ツナにはXANXUSの行動は不意打ちにしか見えなかったが、桂はあっさりと避け、フェンスの上に器用に立っていた。
「やはり、簡単には行かないね」
呟くように桂は言った。ツナ達が桂を軸として見ることがないため、ヴァリアーも桂の行動で全て誤魔化せない可能性も考えていたのだ。
「今度ははっきり言うよ。サクラに手を出そうと考えるならば、僕が相手になる。かかってくるがいい。返り討ちにしてあげるさ」
桂はXANXUSの目を見ながら、大きな声で宣言した。それは隣の屋上にいる人物にも聞こえるようにするためだった。
挑発に乗ろうとしたヴァリアーだが、桂の姿が消える。屋上から飛び降りたのだ。慌てて地面を見るツナだったが、桂とサクラの姿はもうなかった。
「また腕をあげたな」
リボーンは桂の足から死ぬ気の炎が出ているのが見えていた。知らぬ間に治療以外の炎の使い方を桂は覚えていたようだ。
「あいつ……強かったのよ……」
「ははっ! 負けてられねーな!」
桂の強さをよく知らなかった二人は唖然としたが、受け止める。了平は桂の強さを知っていたので、山本の言葉に頷くのだった。
桂とサクラが居なくなり、場が落ち着いたところで、チェルベッロが進行を再開したのだった。
試合の結果は、サクラを助けるためにツナはフィールドに入ってしまったため、大空と雷のリングはヴァリアー側のものになったのだった。
しかし、ランボの怪我は少なく、軽く手当てすれば治る程度だった―――。
ある意味、安定の桂さんでした