「どこいったのー!?」
修行に身が入らず家に帰ってきたツナは叫んだ。なぜなら、修行に身が入らなくなった原因のランボが家にいないのだ。誰にも何も言わずに出かけてしまったらしい。
ツナはパニックになったが、これで良かったという気持ちもあった。ランボが戦うこと事態がツナはおかしなことだと思っていたからだ。
「――サクラを探すぞ」
「神崎さん?」
リボーンがつぶやいた言葉にツナは首をひねる。しかし、ツナが聞き返してもリボーンは答えようとせず、外へ向かってしまう。ツナはリボーンの様子とサクラのことが気にかかり、慌てて追いかけるはめになったのだった。
リボーンが真っ先に向かったのはラ・ナミモリーヌだった。リボーンが店を入るところを見えたツナは考える。京子とハルがこの店のケーキが好きだったことは知っているが、サクラが好きだったのかはわからない。そのためリボーンの行動に首をひねりながらも追いかけるしかなかった。
リボーンはサクラのことを一番知っているのは桂だと判断し、店に向かったのだ。もう店は閉店している時間だったが、桂は居た。リボーンがサクラを探している理由に想像がつき、桂は協力することにした。
桂は購入時に勝手に設定したケイタイのGPS機能をつかい調べると、サクラは家に居た。ケイタイを忘れた、もしくはわざと置いて行った可能性があったため、電話をかける。もちろん桂は悟られるようなミスはしない。余ったケーキがいるかという内容でかけたのだった。
ツナが店に到着すると、リボーンは店から出たところだった。やっと追いついたツナは抗議をする。
「リボーン! 先に行くなよ!」
「サクラの居場所がわかったぞ。サクラの家だ。灯台下暗しだったわけだ」
「? そりゃ、神崎さんは家に居るだろ」
ツナも修行がなければ家に帰ってる時間なのだ。何も知らないツナにはその言葉の意味が到底理解できるものではなかった。
――――――――――――
チャイムの音が聞こえ、嫌な予感がする。普段はこんな時間にチャイムは鳴らないのだ。
「ねぇねぇ、これなぁにー?」
「……ん。これは――」
ランボの問いに答えようとしたが出来なかった。部屋のドアを開き、リボーンと息の荒い沢田綱吉が居たからだ。とりあえず、文句を言うことにする。
「――ノック」
「ご、ごめん!!」
リボーンに文句を言ったつもりだったが、沢田綱吉に謝られた。許してあげたい気持ちがあったが、部屋にはマンガとゲームが大量にあるのだ。今すぐ出てってほしい。
「サクラ、今日はランボの試合だぞ」
恐らくリボーンは私が知ってるのをわかっている。あえて言ったのだろう。
「断る。彼は小さいんだ」
「相手はもうランボをターゲットにしちまっている。棄権しても意味ねーぞ」
そんなことは知識でわかっている。わかっているが、誰も手が出せなくなる試合よりは安全なのだ。
「や、やっぱりランボを試合に出すのは――」
「いくいくー」
沢田綱吉が味方についたと思ったが、本人が行きたがる声を出した。頼むから意味をわかってから言ってくれ。
「ランボ、行くと痛いし泣くことになるんだぞ」
「オレっちは最強のヒットマン!」
「ランボはチビでガキだが、守護者ってわかってんだ」
リボーンの言葉に私と沢田綱吉は黙った。絶対わかってないという意味で。
「――君に頼みがある」
「え? オ、オレに?」
「手を出せば失格になるが、迷わずランボを助けてくれ」
沢田綱吉は私の顔を見ながら「うん。わかった。約束する」と答えた。これで少しは安心出来る。真剣に話した時の返事では、彼はウソをつかないからな。
「行くぞ」
「ん。用意するから、ちょっと待って」
「ええええ!? 神崎さんも行くのー!?」
沢田綱吉の叫びを無視し、私は雨に濡れても大丈夫な服装に着替えたのだった。もちろん、彼らは部屋から追い出したぞ。
学校に着くと山本武達に驚かれた。相手をするのは面倒なので建物に入ることにする。
「おい! どこに行くんだよ!?」
「屋上」
「なんでそんな場所――」
獄寺隼人が私に文句を言おうとしたところでチェルベッロが現れた。すぐに戦闘フィールドが発表されるだろう。聞く必要がない私は屋上に向かったのだった。
屋上へ向かってる途中で彼らに追いつかれ、山本武に話しかけられる。決して私の足が短いからではないと思いたい。
「神崎も小僧からマフィアごっこのことを聞いたんだってな!」
マフィアごっこでスクアーロに斬りかかる山本武がおかしすぎる。ツッコミたいが、面倒なことになるので頷くだけにするが。
「極限に、桂はここに来ていることを知ってるのか?」
真っ先に兄の話題が出るとは、どれだけ仲がいいのだ。少しドン引きしながらもまた頷く。出かけようとした時に兄が帰ってきてしまったのだ。心配だといい、許可しないと思ったが意外にもあっさりと了承した。恐らくリボーンと沢田綱吉が責任を持って家まで送ると約束したからだろう。
屋上につき、彼らが驚いてるのを横目にチェルベッロのことを観察する。私でも彼女達のことはよくわからない。未来でミルフィオーレとともにいたが、白蘭の味方というわけでもないのだろう。なぜなら、ボンゴレ15代目の時にもチェルベッロらしき人物が登場している。敵とも味方とも思わないのがベストだな。
「やはり来たのか……」
門外顧問達が来たようだ。しかし、知識より来るのが早い。恐らく小さな子の場合は手を出すということを言っていたので、予想していたのだろう。私がここに居ることに、何か言われると思っていたが、何も言ってこなかった。確かにそれはありがたいが、沢田綱吉が私達が知り合いなことに驚いてるフォローもしてほしい。私に「なんで知ってるの!?」とか聞かれても困る。
「……この前、会った」
「おう。そうだぞー」
ウソはついていないが、なぜか罪悪感が出た。門外顧問の方は堂々としすぎだろ。
私たちが話している間にランボはバトルフィールドに興味津々だった。それを見てチェルベッロが説明していた。本人は全く聞いていないぞ。ドンマイである。
獄寺隼人がランボの角に「アホ牛」と書いてる間に私は移動する。門外顧問の後ろで隠れさせてもらおう。
「ん? 神崎はどこ行ったのだ?」
「ここに居るぞー」
「おお! ここにおったのか!」
あっさりと教えるな。笹川了平に引っ張られながら、門外顧問に「覚えてろよ」と吐き捨てる。間抜けな格好で言ったが、効果があったようだ。焦っている。恐らく、私にはいろんな知識があると知っているからだろう。
肩を組まれ、逃げれないので早く終わらせる。獄寺隼人と一緒で無言だが。
なんとか無事に終わったが、私は精神的ダメージを受けたようだ。雨ではなければネガティブホロウ状態になった自信がある。テンションが下がってる状況だったが、知識で同じでもう一度沢田綱吉がランボに大事な話をしていたので、そこに邪魔をすることにする。
「もう一度いうぞ。ランボ、私は反対だ。君は痛い思いをすることになる。だから一緒に帰ってケーキを食べないか?」
「ランボさんは強いもんね」
ケーキを使っても意思は変わらないようだ。……終わればケーキを食べると言われたが。
「わかった。行ってこい。必ず彼が助けてくれる」
「それはなりません。失格になります」
「失格になってもいいなら、助けていいんだろ?」
チェルベッロは何も言い返してこなかった。ヴァリアーが私のことをバカな奴のようにを見ているが、珍しく気にはならない。ただ、レヴィ・ア・タンが私を見て、鼻で笑ったことには腹が立つ。変な目で見られるのも嫌だが、これはこれで腹が立つ。少し苛立ちながらも必要なことを済ませる。
「チェルベッロ、確認だ。ギブアップと宣言した場合とフィールドから出てしまった場合はどうなるんだ?」
「その場合は相手側の勝利になります」
20年後のランボを説得すれば、まだ可能性があるかと思いながら、バトルフィールドから離れる。顔を見ると腹が立つからな。
フィールドに雷が落ち、ランボの泣き声が響く。
――他にも方法があった。
試合に出さないためだけならば、もっといろいろ出来たのだ。それなのに私はしなかった。レヴィ・ア・タンの技を獄寺隼人に見なければならない。という気持ちもあったのだ。結局、私は原作通りに行かなければ怖いのだ。自身が死にたくないためだけに――。
急に肩に衝撃がきた。どうやらリボーンが私の肩に乗ったようだ。
「ランボが自分で選んだ道だ。おめぇは何も悪くねぇ」
何か返事をした方がいいと思うが、私が何かを言うのは間違ってる気がして、黙ってランボの様子を見ることしか出来なかった。
目を向けると、ランボが泣きながら10年後バズーカを使うところだった。ドカンという音で現れた大人ランボは私の知識と違い、餃子ではなくパスタを食べていた。……微妙な違いすぎて何ともいえない。
「やれやれ、せっかくご馳走になっていたのに」
現れた時のセリフも違っていた。これも微妙な違いすぎる。しかし、沢田綱吉が大人ランボと入れ替わってしまったことについて、謝ってる姿は一緒だった。知識通り、前日に大人ランボに止められていたのだろう。
「やれやれ、謝らないでください。わかっていましたから。それに若きボンゴレ、こう見えてもオレはやる時はやる男ですよ」
「うん。知ってる……知ってるよ!!」
感動的シーンのはず。この後にすぐやられると知ってる私からすれば微妙すぎるが。少し微妙すぎて肝心なことを忘れていた。早く大人ランボに助言を言うべきだ。そう思ったが、声が出たのは「は?」という言葉だった。
「えええええーー!?」
沢田綱吉が叫ぶのは無理もないだろう。あの感動的シーン後、ランボはあっさりと「では」といい、自身に10年バズーカを撃ったのだ。残念すぎる。
しかし、悪いことではない。むしろ良いことだ。20年後のランボが戦える時間が長くなる。そういえば、先程の大人ランボが、この時代に来るのはわかっていたというようなことを言っていた。これは未来の私が助言したからかもしれない。未来の私は気が利くようだ。流石である。
20年後のランボが現れ、知識通りにこっちを見て沢田綱吉達との再会を喜んでいた。白蘭が攻略してしまった未来では沢田綱吉達は死んでるからな。無理もない。ただ、私を見て泣きそうになるのは止めろ。君は何歳だ。その前に……似たようなことがあったな。嫌な予感がする。今度は何だ――。
「気をつけて――」
20年後のランボの声が止まる。レヴィ・ア・タンが痺れを切らして攻撃してきたのだ。しかし、何を言おうとしたのかはわかった。また「気をつけてください」だ。
どういうことだろうか。大人ランボは私の姿を見ても何も言わなかった。未来が変わったのだろうと勝手に判断していた。違うのだろうか。それともまた別の問題が起きたのか。
――何か、何か重要なことを忘れている気がする。
激しい音が聞こえ、思考が途切れる。20年後のランボが電流を地面に流したので、先程の音は相手の技だったのだろう。獄寺隼人が無事に技を見たので、もしもの時は大丈夫だと思った。
ランボの大技のリーチが伸びる。そして、時間はまだ残っている。
勝てるかもしれない――。
……1番フラグがたってるのは、ランボじゃない?
そう思ってしまう、今日此の頃ww