クラスメイト K [本編&おまけ完結]   作:ちびっこ

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門外顧問

 昨日は沢田綱吉と帰ってしまったせいで、今日の予定が詰まってしまった。少し面倒と思いながら、いつもより早めに家を出ることにすれば、兄に声をかけられた。

 

「珍しいね。日直なのかい?」

「違う。用事があるんだ」

「……僕も一緒に行ってもいいかい?」

 

 なぜ兄は学校に用事があるんだ?と思い、首をひねる。

 

「今日からしばらくの間、笹川君との走りこみは休みになったのだよ。ゆっくりしてもいいのだが、朝の空気は吸いたくてね」

 

 笹川了平はコロネロとの特訓があるからな。朝のランニングは中止になって暇になったのだろう。特に断る理由がなかったので、一緒に行くことにした。

 

 

 

 

「やはりサクラと歩くと空気がいつもより綺麗に感じるよ!」

 

 一緒だぞ。と心の中でツッコミをする。

 

「そういえば、今日のサクラの用事はなんだい?」

「……先生に頼んで用意してもらったものを取りにいく」

「ふむ。そうだったんだね! てっきり僕は――」

 

 言葉が続かなくなったため、兄を見ると頭を撫でられた。恐らく誤魔化そうとしたのだろう。残念ながら、続きを私が気になってしまったのでそれは不可能である。睨めば兄は観念したようだ。

 

「――僕はサクラの騎士だからね! サクラの歩く道を守るだけさ!」

「話、繋がってない」

 

 睨んでも兄は私に宣言したことで満足してしまったようだ。1人で勝手に完結するな。話を戻せなくなったが、兄の言葉が気になった。

 

「……兄には兄の歩く道があるんだ。私に合わせる必要はない」

 

 私に合わせてしまうと兄も危険な道へ進むことになる。もう私のせいで危険な道に入ってるかもしれないが、危険度が違いすぎるからな。

 

「僕は好きでサクラに合わせているんだ。だから――僕を巻き込んでいいのだよ」

「――ちょっと待て。私が何か仕出かすような言い方をするな」

「サクラは僕の妹なのだよ? ありえないとは言い切れないさ」

 

 納得したくはないが、言い返せない。不思議である。

 

「だから安心して僕を巻き込むがいい」

 

 巻き込むつもりは一切ないが、なぜか兄の言葉に私は頷いてしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 早く学校に来たつもりが思ったより遅かったらしい。獄寺隼人がDrシャマルに修行を断られるところに遭遇してしまった。

 

「可愛い子ちゃーん」

 

 変態が駆け寄って来るのでハリセンをかまえる。が、いつの間にか頬にキスされていた。思いっきりハリセンで叩くことができたが、気は晴れない。とりあえず、キスされたところを袖で拭き、獄寺隼人の服にすりつける。

 

「なにすんだ!?」

「君の師なんだろ? あきらめろ」

 

 師がろくでもなく、弟子が後始末することはよくあることだ。これは受け入れるしかないことなのだ。

 

「オレはこいつの師匠じゃねーよ」

 

 起き上がったDrシャマルが言った。私に向かってなのか、獄寺隼人になのかはわからないが。しかし、獄寺隼人は自身に向かってと思ったようで「くそっ」と言いながら、去って行った。

 

「可愛い子ちゃんがこのタイミングで来たってことは……あれが必要なことになるのか……」

 

 Drシャマルは察したらしい。そして私は彼の反応を見て、準備ができてることがわかった。

 

「ん。取りにきたが、君が渡した方が不自然じゃないか……。それに安全そうだ」

「わかった。必要な時に声をかけてくれ」

「……1つだけもらってもいいか?」

「もちろんだ」

 

 1つもらったので、教室に戻ることにする。そろそろチャイムがなりそうだしな。歩き出したが、思ったことがあったので足を止める。

 

「最後まで責任を持てとは言わないが、教えたのは君だろ。それに彼はもう子どもじゃないんだ。言葉で理解できると思うけど?」

「……可愛い子ちゃんの頼みなら断れねーな」

 

 頭をかきながら、Drシャマルは獄寺隼人が歩いていった方向へ行った。また原作を壊してしまったが、いいだろう。怪我がなく気付ける方がいいからな。

 

 

 

 

 

 

 授業をうけながら考える。休憩時間にディーノのところに行きたいが、話せるだろうか。まぁディーノのことだ。私が咬み殺される前に助けてくれるだろう。

 

 ガラっと扉が開く音がした。誰か遅刻でもしていたのだろうと思ったが、周りの様子がおかしいので顔を上げる。……なぜここにいるのだ、雲雀恭弥。

 

「神崎サクラ、いる?」

 

 クラス全員の視線を感じるが、私はその視線よりも雲雀恭弥が私の名前を呼んだことの方に意識が向く。――録音したかった。

 

「着いてきなよ」

 

 目が合ったと思えば、ご指名されてしまった。しかし、私は彼に名指しで呼び出される理由に心当たりがない。それに原作では彼はディーノを咬み殺したがっていたはずだ。ここまで考えて、やっと私は答えがわかった。

 

「……彼と一緒に居たメガネをかけた髭のおじさんでも体質は改善される」

「ふぅん。ならいい」

 

 大当たりのようだ。私は1度彼に「ムチの方は体質のせいで、私が居ないと弱くなるんだ」と言ったことがあった。そのせいで彼は私がいないとディーノと楽しめないと思ったのだろう。……危ないところだったな。もう少しで何日も彼らに拘束されるところだった。

 

「あ。でも後で顔を出すぞ。彼に用事があるんだ」

「…………」

 

 何も言い返さずに雲雀恭弥は去っていった。少しの時間ならば、いいようだ。ラッキーである。ただ、この視線を何とかしてから去っていってほしいものだ。

 

「ゴホン!」

 

 わざと大きく咳払いをすれば、授業が再開した。そのおかげで大量の視線からは解放されたが、溜息が出るほど疲れてしまった。やはり雲雀恭弥と関わると碌なことがない。

 

 

 

 

 昼休みに屋上に行けば、2人は戦っていた。恐らくずっと戦っていたのだろう。私にはバカにしか見えない。

 

「悪い、恭弥」

 

 ディーノは私がいることに気付いたようで雲雀恭弥に謝りこっちに来た。雲雀恭弥は溜息を吐いているが、怒ってはないようだ。しかし、あまりに時間をとるのは危険と判断したので、さっさと用件を済ませることにする。

 

「ロマーリオに聞いた。門外顧問を会うのは君と一緒の方がいいと」

「……そうか。急いだほうがいいのか?」

「君の都合がつくのが、もう今日の放課後ぐらいしかない」

「まだ時間はあるはずじゃ……」

「確かにある。が、明日から君は寝る間を惜しんで、彼とずっと相手にすることになるからな」

「まじかよ……」

 

 ドンマイである。恐らく彼の相手がこれほど大変だと思わなかったのだろう。

 

「……無理ならいいが、こいつを攻略するヒントをくれねぇか?」

「無理だ。私ですら知識をフルに使って、なんとか咬み殺されずにすんでるのだ。それに君は強いから私より標的になる確率が高いしな」

「悪かったな」

 

 ディーノが私の頭をガシガシと撫でながら謝ってきた。知識が役に立たなかったことを私が気にしてると思ったのだろう。

 

「でも、未来では君は立派な彼の師匠だったぞ。まぁ雲雀恭弥は師などいらないといい、君を咬み殺そうとしていたが」

 

 私の言葉を聞いて、頭を撫でている手を止めディーノは嬉しそうに笑った。『師などいらない』ということは、師として認めているとも言えるからな。そういえば、ディーノは不安になりながらも彼の家庭教師をしていたな。自信が出たのだろう。

 

「頑張れ」

 

 放課後にまた顔を出せばいいと判断し、私は教室に戻ることにした。

 

 

 

 

 

 

 放課後、何とか雲雀恭弥から逃れたディーノと合流し、沢田綱吉の家に向かった。チャイムを鳴らせば、出迎えてくれたのはイーピンだった。何を言ってるかわからないが、飴を渡し家にあげてもらう。沢田奈々は沢田家光に用事があることに少し疑問に思ったようだが、快く迎えてもらえた。

 

「まだ帰ってきてねーみたいだな」

「ん。修行の様子を見に行ってるはず。確か、君達のところにも来たはずだ」

「そうなのか?」

 

 ディーノの言葉に頷く。しかし、ドジ状態じゃないディーノが気付かないとなると、門外顧問はかなり強いようだ。

 

 しばらくの間、ランボ達と遊んでいると帰ってきたようだ。なぜなら、玄関の方がドタバタとうるさくなったのだ。

 

「なに!? ツナの彼女が挨拶しにきている!?」

 

 大きな声が聞こえてきた。それも最大級の勘違いである。扉が開かれると、キリッというような表情をした門外顧問がいた。恐らく、カッコイイ父親というイメージで顔を出したのだろう。残念ながら、先程の大声は聞こえているぞ。

 

「彼女じゃない。それに私は門外顧問に用があって来た」

 

 私の言葉を聞いて、ランボ達を追い出し扉を閉めた。ディーノがいることに気付いたのもあるだろう。

 

「……どういうことだ?」

「オレとリボーンの判断で黙っていたんだ。こいつは――」

「歪な存在」

「――オレ達はそう思ったことは1度もねぇ!」

 

 的確に説明したつもりが、ディーノを怒らせたようだ。

 

「詳しく話してくれ」

 

 下手に話せば更に怒らせる気がしたので、ディーノに全て任せることにした。べ、別に面倒だったわけではないぞ。

 

 

 

 

「――事情はわかった。このことは秘密にしておくよ。それで、オレへの用はなんだ? 危険だと思いながらも君がオレに会いに来たんだ。何か重要なことがあるんだろ?」

「まず18日の夜にはヴァリアーが日本に来るぞ」

 

 私の言葉に2人が驚いた。予想よりずっと早かったのだろう。

 

「夕方まで彼らは修行したほうがいいからな。君にランボのことを頼みたいんだ。もちろん、君がまだ手が出せないのはわかっている。だが、居場所がわかっていれば彼らが動きやすくなる」

「そういうことなら、もちろん協力するよ」

「正直、頼む必要はないことかもしれない。でも、イーピンがランボを守るため怪我をするんだ。軽い怪我だとしても、幼い子なんだ。どうしてもこれは黙ってることが出来なかった」

 

 ディーノが私の頭をガシガシと撫でた。いつもより少し力が強い。身体が揺れるから止めてくれ。

 

「……君にヒントだ。私は幼い相手以外のことは黙ってるということだ」

「わかったよ。ありがとう」

 

 門外顧問に礼を言われ、少し驚く。

 

「オレへのヒントという言葉で、かなり絞れるよ」

 

 もう気付いたようだ。私からすれば、会ったことがない9代目より沢田綱吉の方が重要だからな。わざとこの言葉を選んだのだ。

 

「後、君達に1つ質問だ。――私はXANXUSとの接触は避けたほうがいいのか?」

 

 もちろん私は接触したくはない。死にたくないからな。だが、2人の反応を見て危険度を知りたかったのだ。

 

 ――2人は真剣な表情で頷いたのだった。

 




……雲雀さんの出番を増やしたいw

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