クラスメイト K [本編&おまけ完結]   作:ちびっこ

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それぞれの思い 3

 寝ぼけながら起き上がると、兄が私の名前を呼んでいた。なぜ兄が黒曜に?と疑問に思ったが、見渡せば病院のようだったので納得する。私が生きているということは大丈夫だったのだろう。沢田綱吉が成長したのかはわからないが。兄に聞いてもわかるわけがないので今は保留にする。

 

 とりあえず、私はもう1度寝転び「ハッ!」という感じで起きてみた。

 

「……サクラ。僕でもこの状況でそれはしないよ……」

「ごめん、お兄ちゃん」

 

 ちょっとやってみたかっただけなので素直に謝る。

 

「今日、何日?」

「10日だよ」

 

 時計の針は12時を指していて明るい。つまり私はほぼ1日眠っていたようだ。兄が心配するのも頷ける。

 

「サクラが目を覚ましたと伝えてくるよ」

「ん、ありがと」

 

 兄が両親に連絡しにいったが、どう説明するべきか悩む。

 

「大丈夫か?」

 

 いつの間にかリボーンが目の前にいた。口裏を合わせるために来てくれたのだろう。流石である。「問題ない」と返事をし、話を進める。急がないと兄が帰ってきてしまうのだ。

 

「サクラはツナ達が襲われたのを見て、気を失ったことになってるぞ」

 

 身体を動かしても違和感がないので、怪我はないのだろう。そのため、気を失ったという誤魔化し方になったようだ。

 

「助かる。……彼らは?」

「山本と獄寺は気を失っただけだからな。もう元気だぞ。ディーノは手の怪我だけだ。雲雀は怪我をしてねーから、そのまま行っちまった。ただ、ツナがな……」

 

 リボーンが暗い表情をしたので身構える。が、リボーンは冗談が好きだったことを思い出す。

 

「筋肉痛で動けないのか?」

「もうわかっちまったのか」

「もっと沢田綱吉が深刻な状態であれば、リボーンだけで来ないだろ」

 

 必ずお人よしのディーノも来る。妙な確信を持ってしまった。

 

「骸達は連れて行かれたのか?」

「……ああ」

 

 原作通りに進まなかったが、結末は同じになったようだ。後は六道骸の判断に任せよう。助言はしたしな。

 

 しかし、私ものっとられたはずなのに怪我がないとは……。念には念をということでディーノに教えて正解だったな。自画自賛したいぐらいだ。そう思うとやはりディーノに怒られたのは理不尽である。後で何か強請ろう。

 

「全く覚えてねーのか?」

 

 のっとられた時のことを言ってるのだろう。さっぱりなので頷く。少し間をあけて「そうか」とリボーンは返事をした。その間が気になったが、考えるのはやめた。私の口から変な笑い声が出た話など聞きたくはないのだ。

 

「リボーン、特殊弾は小言弾だったか?」

「ああ」

 

 沢田綱吉が筋肉痛ということだったので大丈夫だと思っていたが、つい聞いてしまった。とりあえず、終わりよければ全てよしと思うことにしよう。

 

 自身でよくやったと自画自賛しているとノックの音が響いた。ノックがしたということは兄ではないようだ。「問題ない」と返事する。

 

「神崎、大丈夫か?」

「……よぉ」

 

 山本武と獄寺隼人だった。若干、獄寺隼人が気まずそうに見える。もしかするとあの時にダイナマイトを投げたことを気にしているのかもしれない。

 

「大丈夫。後、気にするな」

「べ、別に気になんてして!! ……悪かった――」

 

 かなり小さな声だったが、聞こえた。

 

「負けたことがあるというのがいつか大きな財産になる」

「あれは負けたとかじゃねー!!」

 

 少し違ったか。私は調子が悪いらしい。病み上がりのせいだろう。γと戦った時にもう1度言おう。それにしても、獄寺隼人のツッコミレベルがあがった気がする。少し右腕に近づいたな。

 

「ハハッ。お前ら仲いいのな!」

「野球バカもかよ……」

 

 もう獄寺隼人は疲れていた。まだまだ右腕の道のりは厳しいようだ。まだまだだね。

 

「おや? 何やら楽しそうだね」

「バカが増えやがった……。ここにはバカしかいねーのかよ」

 

 獄寺隼人ちょっと待て。私を兄と同類にするな。

 

「サクラ、一体なにを話してたんだい? 僕も混ぜてくれ」

「彼のツッコミレベルをあげようとしたけど、もう疲れたらしい」

 

 私が説明すると獄寺隼人が暴れようとしていた。山本武、そのまま頑張って抑えてくれ。

 

「なるほど、状況はわかった。ならば、僕からも獄寺君に一言を言おうではないか。――まだまだだね!」

 

 獄寺隼人が完全にキレたようだが、私はそれどころではない。兄と同レベルというショックで寝込みたい。……もう寝てしまおうか。

 

「おめーら、サクラの見舞いに来たのか、邪魔しに来たのかどっちなんだ?」

 

 流石、リボーンである。たった一言で彼らを黙らせ反省させた。そう考えると、兄はたった一言で賑やかにさせたので凄いのだろう。主に残念な方向で。

 

「わりぃ、神崎」

「君が謝る必要はないと思う」

 

 巻き込まれた山本武に謝られたので、そう返せば兄と獄寺隼人が持ち直した。君達はもう少し反省しろ。しかし、相手をするのも面倒になってきたので、寝ることにする。

 

「また寝る。後で彼のところに見舞いに行く」

「わかったぞ」

 

 気を遣ってくれたようで、兄以外は出て行ったようだ。肝心な人物が動こうとしないので溜息が出る。

 

「お兄ちゃん」

「なんだい?」

「家に帰って寝なさい」

 

 子どもにいうように言い聞かせれば、兄は渋々頷いた。

 

「心配かけてごめん。ずっと、そばについてくれてありがとう」

 

 布団に潜りながら帰ろうとする兄に言った。兄が息を呑むような音が聞こえたので、さらに恥ずかしくなる。さっさと帰ってくれ。

 

「――サクラが気にする必要はないのだよ」

 

 兄の優しい声を聞きながら、再び私は眠りに落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次に目が覚めるとディーノが居た。私が目を覚ました時に会えなかったため、起きるのを待っていたのだろう。彼も獄寺隼人と同じでいろいろ責任を感じている気がするからな。

 

「眠ってる姿を見るとは変態だな」

「変態じゃねぇ――こともないのか……。すまん」

 

 冗談をいい、空気をかえようとしたのだが失敗したようだ。彼の中で子どもといっても異性の眠ってる姿を見るのはダメだったらしい。

 

「私が知ってる未来より、怪我が少ない。君は多くなってしまったが」

「オレのことはいいんだ。お前を守る約束を果たせなかった……。すまん!」

 

 謝られると困ったものである。私は怪我がなく、骸と話せる機会が得れたので気にはしていないのだが。

 

 少し悩み、口を開く。

 

「ケーキ食べ放題」

「は?」

「ホテルのケーキ食べ放題で手をうってもいい」

「……なんだよ、それは……」

「交渉」

「――もっといいもんおごってやる」

 

 ディーノの言葉にガッツポーズする。原作に出てきた高級ホテルでケーキを作ってもらおう。ただし、テイクアウトだな。あの場所で食べれば、私は緊張して味がわからなくなる自信がある。

 

「あ。そうだった」

 

 浮かれて忘れていたことを思い出す。ディーノが「なんだ?」と聞いてきたので、少し考え言い放つ。

 

「今回はうまくいっただけかもしれないし、次は君達に言われても話さないぞ」

「……それはオレが――」

「君のせいじゃない。それにもう手遅れなんだ」

 

 ディーノが今からイタリアに戻ってからでは遅い。沢田家光に連絡をとれば防げる可能性もあるかもしれないが、その場しのぎなだけで必ずどこかでXANXUSは暴れる。もう実子じゃないことを知ってるからな。私の言葉だけでずっと独立部隊のヴァリアーを抑えることが出来るとも思えない。それならば、原作通りに進ませて助言をしたほうがいい。

 

「お前は……大丈夫なのかよ……」

「次は私に被害が来る可能性が低い」

 

 リング争奪戦で決着がつかなければ、沢田綱吉の周りの人物を殺すことは出来ないはずだ。下手に手を出すとXANXUSを失脚させるいいネタになるからな。

 

「そういうことじゃねぇ。お前の心が心配なんだ……」

 

 少し話がかみ合ってなかったようだ。

 

「また私は選択するからな。罪悪感はある。次は――君に恨まれるかもな」

 

 確か、9代目とディーノは仲が良かったはずだ。助言はするつもりだが、今回のように私の知らない間にズレが起き、取り返しのつかないことになるかもしれない。

 

「何度いえばいいんだ。オレは――誰もお前を責めたりはしねーから安心しろ」

「もし獄寺隼人に知られれば責められる自信はあるぞ」

「……その時はオレとリボーンが守る」

 

 ディーノも獄寺隼人の認識は私と同じだったらしい。慌てて返事する姿に笑えば、ディーノがガシガシと私の頭を撫でてくる。心配ばっかりかけてる気がするので、文句は言わなかった。

 

「困ったときはまた頼んでいいか?」

「――もちろんだ」

 

 ディーノが私の目をみて返事をしたので、安心した。今回のことで責任を感じられる方が私は疲れるのだ。

 

「桂とは会ったのか?」

「少しだけど。何かあったのか?」

「……いつも通りだったか?」

「私にはいつも通りに見えたけど、眠ってなさそうな気がしたから寝ろと言った」

「そうか……」

 

 返事をしたと思えば、また私の頭をガシガシと撫でてきた。ディーノは兄がずっと眠ってなかったことを知っていたのだろう。つまりこれは褒められているようだ。

 

「ディーノ」

「なんだ?」

「難しいかもしれないけど、もうお兄ちゃんには心配かけたくない」

「それは――」

「もちろん両親にもかけたくはない。だから、もっと君に迷惑をかけることになるかもしれない」

「――迷惑だなんて思ってねーよ。オレがしたいんだ。だから困った時は頼ってくれよ?」

「ん。わかった」

 

 次はもっとうまく動かないといけない。彼とは接触しとくべきなのか……。考えに没頭しそうになった時、また頭をガシガシと撫でられる。今度はなんだと思い、ディーノを見る。

 

「今は休め。なっ?」

 

 兄にしたことをディーノにされてしまった。兄弟そろってバカなようだ。

 

「……おやすみ」

「ああ。おやすみ」

 

 ディーノが部屋から出て行ったので、私は眠ることにした。

 




次の話は三人称と一人称が混ざります。

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