クラスメイト K [本編&おまけ完結]   作:ちびっこ

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溜息

 ディーノが沢田綱吉達と連絡し学校の保健室で合流することになった。怪我をしているディーノがしたのはどうかと自身でも思ったが、私のケイタイは落としてしまったのだ。恐らく2階から飛び降りた時だろう。壊れていた時はディーノに弁償してもらうことにする。今、勝手に決めた。

 

「神崎さん、血が……!?」

 

 私を見るなり沢田綱吉が真っ青な顔をしていた。腰に血がついてるせいだろう。ディーノの血と教えるとさらに驚いていた。

 

「しくじったのか」

「ああ。ミスっちまった」

「……私が欲張ったからだ」

 

 リボーンとディーノの会話を聞いて、つい口に出してしまった。フゥ太を助けるために叫んだのは私の独断だったのだ。それまでディーノは上手く六道骸に私の存在を意識させないように誘導していた。一体どれほど高度なことだったのだろう。これは恐らく私が想像しているより難しいことのはずだ。

 

「おめーの判断に任せるって言ってたんだ。これはただ要望に応えれなかったディーノのミスだぞ」

「そういうことだ」

 

 今は納得することにする。考えるのは後でもいい。今は状況を把握するのが先だろう。特にロープでグルグル巻きにされた柿本千種のことが気になるしな。

 

 

 

 

 

 話し合った結果、原作通り殴り込みをすることにしたらしい。当然だろうと思った。話を聞いた感じでは柿本千種のゾンビのような行動は憑依弾が原因としか考えれない。もう骸はボンゴレ10代目が沢田綱吉と気付いている。逃げれば被害が広がるのは明らかだ。そう考えると私達を逃がしたのはボンゴレ10代目の正体に気付いたのもあったかもしれない。

 

 ただ、原作と違ってビアンキは行かないようだ。獄寺隼人が怪我をしていないのでこの場にいないのが原因だろう。リボーンに聞けば、フゥ太と沢田奈々の護衛を頼んだらしい。笹川京子と三浦ハルの護衛は原作通りだったので問題ないだろう。問題があるとすれば――。

 

「心配すんな、ツナ。9代目の手紙にオレがフォローしてもいいって書いてるんだ」

 

 殴り混みについて沢田綱吉を説得しているディーノを見ると、溜息しか出てこないのは気のせいだろうか。それに原作より手紙が来るのが早い気がする。私とディーノが泊まりにきた時点で9代目に連絡し許可をもらう要請でもしていたのだろう。

 

「私は留守番の方が嬉しいのだが」

「ああ。お前はもう無理しなくていいぜ。Drシャマルと居る方が安全だしな」

 

 違う意味で危険だ。

 

「か、神崎さん……」

 

 すがるような目を向けられ、さらに溜息が出る。私の幸せはどこに行ってしまったんだろうか。ディーノに頼んだ時点で消えてしまったのかもしれない。

 

「頼みを聞いてくれるならいいけど」

「なになに!?」

 

 どれだけ必死なのだ。部下が居ないディーノのドジっぷりを見ているとわかる気もするが。

 

「縛ったままでいいから、彼を連れて行ってもいい?」

「え!? ……わ、わかった」

「ちょっと待て。それは危険だろ?」

 

 憑依弾のことを知っているディーノは反対するのも当然か。これはただの私の我侭なので諦めてもいいのだが――。

 

「ツナが許可したんだ。ディーノが反対しても意味ねーぞ」

「……わーったよ。オレが連れて行くでいいよな?」

 

 ディーノにしては珍しく強めの口調だった。私に確認はするが、縛っていても敵を沢田綱吉達が背負うことは反対なのだろう。元々、連れて行くことに反対なのもあるが。つまり、あれはどうしても譲れないという意味で強めに言ったのだろう。

 

「ん。頼む」

 

 私は初めからディーノに運んでもらうつもりだったので、反対はしなかった。

 

 

 

 

 

 獄寺隼人と山本武が前方を歩き、次にリボーンと沢田綱吉。その後ろで私がボーッと歩き、ディーノが1番最後を警戒しながら歩いていた。本来ならば乗り込んだディーノが先頭の方がいいと思うのだが、獄寺隼人が譲らなかったためこの配置になったらしい。

 

「理由を聞いてもいいか?」

 

 警戒しながらもディーノは質問してきたようだ。恐らく柿本千種を連れて行く理由を知りたいのだろう。

 

「……独りは寂しいだろ」

 

 前方に歩いている彼らを見ながら言った。彼らと出会って気付いた感情である。独りだけ離れた場所から復讐者に連れて行かれるのは寂しいと思ったのだ。私の言葉にディーノは「そうか」と小さな声で返事をしたのだった。

 

 それにしても、いろいろ思うところがあるな。復讐者は全て終わってから来るのだ。やはり手の内を見せたくない気持ちが強いのだろうか。それともボンゴレリング継承者の沢田綱吉に興味があるのか……。両方だろう。何もしらない復讐者からすれば、この戦いで沢田綱吉が死んでもいいのだ。

 

「そういえば、桂さんはどこに行ったのかな?」

「兄がどうかしたのか?」

 

 急に兄の名前が出たので驚く。兄は病院に居るはずだが。

 

「えっと、神崎さん達が乗り込んでる間に、桂さんがもう一人の黒曜生徒を――いっでぇーー!」

 

 どうやらリボーンに殴られたようだ。もちろん私の目では追えない速さである。

 

「おめーを迎えに来たんだ」

「……大丈夫だったのか?」

「ディーノと一緒に居ると知れば病院に戻って行ったぞ。了平からの連絡で捕まえていた黒曜生徒が逃げ出したと知ったのもあるだろう。あいつは了平と仲がいいからな。ちなみに見張ってた草壁哲矢はやられたらしいぞ。歯を抜く暇はねーみてーだったが」

 

 初耳である。彼らから城嶋犬も捕まえていたが、逃げられてしまったという話を聞いていたが、まさか笹川了平からの情報だったとは。

 

 恐らく城島犬を捕まえたのは雲雀恭弥である。彼の強さならば、黒曜に向かう前の短時間で倒せるし、草壁哲矢が見張っていたことも納得できる。ただ「極限、覚えとらん!」とよくいう笹川了平が詳しい情報を知っていたことに驚きなのだ。……彼は病院にいるのだ。原作では草壁哲矢が病院近くで襲われたことや、やられれば運ばれる場所が病院ということを考えれば、そこまで驚くことではないはずだ。恐らく病院ではその話で持ちきりなのだろう。

 

 しかし、草壁哲矢はやられたのか。せっかく助かりかけたのに、運の悪い男だ。

 

 歯が抜けてないだけましかと思いながら入り口を過ぎるとすぐに1人目の敵が現れた。原作と違いバーズのようだ。話を聞くのも気持ち悪いと思ったが、原作通り人質をとっていたので聞くことになった。そして、沢田綱吉を殴れというので遠慮なく殴ることにする。男なら我慢しろ。

 

「うわー!」

「神崎てめぇ!」

 

 獄寺隼人にきれられるが、この中で私が殴るのが1番痛くないと思ったのだ。そもそも、私の方が地味に痛い気がする。私の様子を見て文句を言わなくなったので良しとする。沢田綱吉は殴ったのが私だったので驚いてるようだ。

 

「……悪い」

「う、ううん!!」

 

 次はナイフで刺せというので、地面に落ちたナイフを私が受け取りに行く。ディーノとリボーンがジッと私を見ている気がするが、何も言わなかったので、私が何かするとわかっているのだろう。私が彼女達には護衛をつけていることを、2人が知っているのもあると思うが。

 

「聞き分けがいいですね」

 

 ニヤニヤと笑う変態に苛立ちを我慢しながらナイフを拾い、ボソッと呟く。

 

「もしかすると、私の手がすべってナイフを投げてしまい、興奮して鼻血を出してるオッサンに掠ってしまうかもしれない」

「――ひ、人質がいるのですよ!?」

「ん。偶然にもこのナイフに即死するほどの毒がぬりこまれていない限り、不利だな」

 

 バーズは自身が何を渡したのか、やっと気付いたようだ。

 

「君が指示を送るのと、これから投げるナイフ、どちらが早いだろうか?」

 

 原作で状況が不利と悟った瞬間に逃げたことを考えると、バーズは指示を出すとは思えないしな。

 

「は、話せばわかりますよ! だからそのナイフは――」

「そういえば、彼女達には護衛をつけていたんだ。交渉の余地もなかったな。……ずっと思ってたんだ。君――きもい。じゃ、後はよろしく」

「最後までしねーのかよ!?」

 

 そういいながら獄寺隼人は、バーズに大量のダイナマイトを投げたのだった。バーズが原作より死にかけてるのは気のせいだろう。パソコンで確認すれば、原作通り無事に護衛をし彼女達は大丈夫のようだ。

 

「……神崎さんは怒らせない方がいいかも」

「違うぜ、ツナ。あいつだけじゃねぇ、女性ってのは怒らせない方がいいんだ……」

「聞こえなかったフリをしてあげる」

 

 コソコソ話していたボスコンビにあえてはっきり言った。全く、失礼な話である。

 

「あ。M・M……」

「ん? どうかしたのか?」

「ビアンキが――」

 

 いないからどうしようかという言葉は最後まで続かなかった。犬が襲ってきたのだ。犬は犬でもえぐられた方のイヌである。原作通りなら、結局城島犬がやってくるのだが。

 

「固まるんだ!」

 

 バーズは捨て駒として考えられていたのかもしれない。バーズをやった後に、連携が崩れるタイミングを狙っていたのだ。原作より六道骸は本気かもしれない。恐らくディーノと私が1度乗りこんだせいだ。

 

 考えたい気持ちもあるが、足手まといの私は固まることに専念することにする。といっても、私はディーノと沢田綱吉の近くに居たので運が良かった。獄寺隼人と山本武との合流は難しそうだが。リボーンは山本武達の方に居るようだ。掟で手を出せないがアドバイスは出来る。そのためディーノとは別れた方がいいと思ったのだろう。

 

「オレから離れるなよ」

 

 ディーノは固まった私と沢田綱吉に声をかけ、ムチでえぐられたイヌを倒していく。ムチの攻撃範囲が広いおかげで近寄ることも出来ないようだ。向こうも倒しているが、血がべっとりかかってる。ディーノと一緒の方で良かった。

 

「す、すごい……」

 

 沢田綱吉が呟くのは無理もないだろう。ディーノは柿本千種を肩から担いだ状態でしているのだ。私とフゥ太の時と違って気を遣わなくていいとしても、片手でこれほどの動きが出来るとは――。

 

 しかし、相手もバカではないようだ。ディーノがカバーをしにくい場所と正面を同時に攻撃してきたらしい。沢田綱吉に任せたと言っているが、任された本人はかなり焦ってるぞ。不安である。

 

「10代目ー!」

 

 「なっ」と叫んだのは誰だっただろう。恐らく3人ともだろう。沢田綱吉のフォローしようとした獄寺隼人が、私達の周りにダイナマイトを投げてきたのだ。驚きしか出てこない。

 

 ドカンという音が聞こえ、意外と無事だったと安堵すれば、私と沢田綱吉はゴホゴホと咳き込んだ。煙が凄いのだ。元気過ぎるのも困ったものである。

 

「お前ら、伏せろ!!」

 

 咳き込んでいなかったディーノの焦る言葉に、私は反応できなかった。沢田綱吉も出来ているのかも怪しい気がする。煙で見えないので答えはわからないが。

 

 私が感じれたのは私の頭上近くで何かが当たった音と、衝撃、浮遊感だけだった。

 

「いっ!」

「うひょー!」

 

 痛くて声をあげたが、彼は私の言葉に耳を傾ける気はないようで走る。痛い、痛い、痛い。走るたびに葉っぱなどに当たってる気がする。しかし、血が出るほどでもないので、気絶はできないようだ。もういっそのこと気絶していたいのだが。

 

 彼に連れ去られながら考える。最初の衝撃は彼に捕まえられた時のものだろう。浮遊感は私が浮いたからだ。では、頭上近くで何かが当たった音は――謎である。ディーノの目を盗んで、私を捕まえることが出来るほどのことが起きたことしかわからない。……獄寺隼人が余計なことをしなければ問題なかったような気もするが。また溜息が出た。本当に私の幸せはどこに行ったのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 辺りを見回したが、雲雀恭弥は居ないようだ。憑依弾の効果が切れれば暴れるとわかってるため、原作通り閉じ込めたのだろう。そもそもこの場には六道骸と城島犬しかいないようだ。

 

「犬、僕は彼女と話があります。ボンゴレの相手を頼みますよ」

「わかったら。終わらせるびょん」

「ええ」

 

 なんということだ。パイナッポーと2人っきりになってしまった。それに城島犬の口ぶりからして、ここに誰も居ないのは沢田綱吉達に総攻撃を仕掛けに行ったからかもしれない。……ディーノはヘナチョコになったので、不安しか出てこないのは気のせいだろうか。いや、彼らの心配をしている場合ではない。私の方がピンチである。

 

「「…………」」

 

 対峙してるが会話はない。六道骸はイヤホンで沢田綱吉達の会話を聞くほどの余裕らしいが、私は下手に動けば殺されるのでジッとするしかない。

 

「ほぅ。掟で手を出せませんか。それも特殊弾は残り2発。頼りの男も彼女が居なければ力が出せない体質とは――」

 

 ぶつぶつ呟く六道骸はかなり怪しい。私に内容を聞かせてる意味もある気もするが。しかし、特殊弾が残り2発とは――原作より多いな。まぁ数が多いからといって安心できるかは別の話だが。

 

「――動じませんね。それほどボンゴレ10代目を信頼しているのか。ただのバカなのか」

 

 バカとは失礼である。私をバカというなら、彼をパイナップルバカと内心で呼ぶことにしよう

 

「本題に入りましょうか。あなたの行動に不可解なことが多数ありました。1つ目、雲雀恭弥に見下ろされた時の恐怖の違い。2つ目、匂いを調べればあなたは他の建物に目移りすることもなく真っ直ぐこの建物に向かっていた。倒れていた黒曜生徒を追ったわけでもないでしょう。彼はこの建物以外でも倒していましたから。もちろん雲雀恭弥に発信機がついていないことも確認済みです。3つ目、足手まといのあなたがなぜ一緒に来たのか。これは先程答えがわかりましたね。4つ目、なぜあなたは僕の名を知っているのでしょう。あなたと一緒にいた彼が教えたとは思ません。彼は裏の世界の人間です。裏の世界で僕は記録を残すようなヘマをしませんから」

 

 パイナップルバカはベラベラと語る。語られても私はまたミスったとしか思えないのだが。

 

「僕ぐらいになるとわかるのです。裏の世界の人間かどうか……。はじめはあなたは表の人間にしか見えませんでした。今となっては裏でも表でもない人間と認識しています。そろそろ、本題に入りましょう。あなたは何を知っているのですか?」

 

 バカの一つ覚えみたいにみんな私に何を知っているのか?と、聞く。……パイナップルバカだったな。

 

「たいした内容ではない」

「それを判断するのは僕ですよ」

 

 非常に困った。黙り込めば私から聞き出すためにパイナップルバカはマインドコントロールしそうだ。それなら自身から話した方がいいだろう。

 

「知ってるのは君の未来?」

「……ほぅ。予知能力を持っていましたか」

「予知ではない。わかる未来もあるだけ。これから君は寒くて真っ暗な場所に行くことになる。これはもう回避出来ない」

 

 城島犬と柿本千種を見捨てれば回避出来るかもしれないが、復讐者の能力を考えると多少の違いで捕まるだろう。そして、2人を見捨てれば六道骸はあの場所から出られる可能性が低くなる。

 

「助言するとすれば、選択を間違えるな。君が自身でも回避出来ないと判断した時、選択を間違えれば身動きが完全に出来なくなる」

「面白いことをいう人だ。僕に助言するとは……。しかし、あなたはボンゴレの味方です。僕が助言を鵜呑みするとお思いですか?」

「好きに判断すればいい。ただ、厄介なことに私の願いを叶えるには君の味方もしなくてはいけない時もあるのだ。……これはボンゴレたちには秘密にしてくれよ。ややこしくなるから」

 

 ポロッと本音をこぼせば、変な笑いをしていた。知っていたが、間近で聞くとドン引きである。

 

「私からはもう話さないぞ。下手に話せば、私だけじゃなく君にとっても不都合なことがおきる。マインドコントロールするかは君の好きにしろ」

「わかりました」

 

 わかってねぇだろ、と本気で思った。なぜ契約しようとしているのだ。

 

「この行為の意味も知っているのですね」

「……それは思考まではわからないのか?」

「ええ」

「私は弱いぞ」

「それでも利用価値は十分ありますからね」

 

 私は隠そうとせず、堂々と六道骸の前で大きな溜息をついたのだった。

 




遠慮なく殴った主人公はいろんな意味で大丈夫なのかと心配ですww

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