クラスメイト K [本編&おまけ完結]   作:ちびっこ

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足手まとい

 雲雀恭弥が出直すと選択したので行動することにする。しかし、あまりにも悔しい思いをしながら言ったので、つい「今度、ムチを使ってる方とはいっぱい戦えることになる。パイナッポーは時期が来ればありえるかも」と教えてしまった。頼むから嬉しそうに私を見ないでくれ。咬み殺される恐怖しか感じない。

 

「できれば、先に行ってほしい。ムチの方は体質のせいで、私が居ないと弱くなるんだ」

 

 真面目に言ったのに、バカを見るような目をしないでほしい。しかし、雲雀恭弥は反対意見を言ってこなかったので、何か思うことがあり素直に帰ることにしたようだった。普段もこれぐらい大人しければいいのだが。そう思いながら私は息を吸い込む。雲雀恭弥の逃げる時間を稼ぐのもあるが、私達が来た時に隠れた彼を救いたいのだ。……沢田綱吉、力を貸してくれよ。と、思いながら叫ぶ。

 

「フゥ太! お前は何も悪くないんだ!! だから、帰って来い!!」

「…………サクラ姉ーーー!!」

 

 ちょっと待て。それは予想外だ。私に向かって嬉しそうに走ってくるな。逃げたくなる。もちろん空気を読んで逃げないが、子どもといっても彼の全力突進をくらって私は無事なのだろうか……。と、思いながら抱きとめる。勢いを殺せず尻餅をついたのは……しょうがない。

 

「大丈夫!? サクラ姉!?」

「だ、大丈夫だ……」

 

 心に傷を負っている彼に心配されるのは何とも情けない。しかし、良しと思う。マインドコントロール中ではない時に、望む言葉を言ったおかげで彼は気絶しなかったらしい。私がおんぶを出来るか怪しかったのでラッキーである。

 

「なるほど。ただの時間稼ぎだったわけですか。ならば話がはやい」

 

 声だけは意識をしていたためすぐに反応できた。危険と判断し、フゥ太を突き飛ばす。痛いかもしれないが我慢してほしい。私にしては上手くいったのは、2度目だからだろう。地面が割れる。恐らく骸が好きな火柱が現れるだろう。

 

「っ!?」

「骸から目を離すな!!」

 

 ディーノが六道骸から目を離したので火柱に当たりながら慌てて叫ぶ。

 

「ほぅ」

「だ、大丈夫なのか……?」

「幻術について語った奴を知ってるんだ」

 

 変態にしか思えなかったグロ・キシニアのことである。脳にありもしないことを思い込ませでっちあげる技と知り、私は可能性を考えた。骸が出す幻術の好みを知ってるのは有利ではないか、と。もちろんそれだけではない。こういうのは惑わされない妄想力が大事なのだ。ある意味、妄想力勝負なのだろう。私は常にマンガで妄想をしているのだ。引きこもりの妄想力をなめてもらっては困る。威張れる内容ではないが。

 

 正直、うまくいったのはディーノが骸の集中力の邪魔をしてるのとリングの力がないのもあるだろう。……予想ではディーノの力が大きい。目を離せば死ぬ可能性も高い気がした。

 

「先にそれを言っておけよ……」

 

 言わなかったのは防げるとは思わなかったのが大きい。それを知らないディーノは私に文句をいいながら、骸と向き合っていた。弱い私達が狙われたのもあったせいか、怒ってそうだ。そして、私はまた突進される。……お尻に青あざがついたらどうするんだ。

 

「とても興味深いですね。――もう終わりにしましょう」

 

 ディーノを牽制しながら、六道骸は呟いた。幻術と思い身構えたが、骸は学習したらしい。フゥ太を抱きとめることが出来ないぐらい私が弱いということを。

 

「サ、サクラ姉……」

「……フゥ太。走れるか?」

 

 頷いた姿を見て覚悟を決める。蛇、恐らく毒蛇に囲まれながらフゥ太に作戦を伝える。私がディーノの方に逃げるからフゥ太は出口まで一直線に走れ、と。反対だったのか、服を握りしめてきたので笑って「大丈夫」と伝える。この作戦の方が生き残る可能性が高いのだ。私が逃げればディーノがやられ、私とフゥ太が逃げれる可能性は低すぎる。私がディーノの方にたどり着ければディーノは私を背負いながらでも逃げようとするはず。さらに私は女子なのでDrシャマルに治してもらえる。つまり、私は逃げないほうが生き残る可能性が高いのだ。そうでなければ、こんな作戦を立てない。私は死にたくないのだ。

 

「本当に幻術に強いらしい。彼女はあの毒蛇は本物だと気付いてるようですね」

「なっ!?」

 

 君の行動を知ってるだけで私は幻術には強くないぞ。そう思いながらジリジリと迫ってくる蛇に焦る。嫌な汗が流れていることを感じるていると、六道骸に背中を見せスキを作ってでもディーノがこっちに向かってきた。嬉しいが、君がやられれば私は死ぬんだぞ、と思った瞬間、毒蛇が飛んでいく。

 

「…………」

 

 無言で睨まれながら思う。なぜ君がここに居るのだ。フゥ太を突き飛ばした時には居なかったので、先に帰ったと思っていたのだが……。

 

 まさか――と思った。幻覚の防ぎ方を教えなかったことに彼は怒ってるかもしれない。幻覚さえ防げれば彼は切り札を出す前に倒せると思っているのだろう。確かにそうかもしれないが、原作でリングを使って幻覚を防いでいたことを考えると、恐らく雲雀恭弥にはこの防ぎ方は出来ない。そして何より、これは防いでるだけで見破ってはいない。骸は幻覚で隠す使い方はせず、派手な技を使うのを好むからこの方法は有効なのだ。雲雀恭弥に教えれるレベルではない。つまりそのことをグロ・キシニアは悟らせないようにして、クローム髑髏を追いつめた。恐ろしい男である。

 

 説明すれば納得すると思うが、面倒と思った。もちろんトンファーを使って全てぶっ飛ばしてくれたおかげで助かったことは否定しない。が、出来れば君は私に近づいてほしくないのでさっさと帰ってほしかった。なぜなら、雲雀恭弥がのっとられ一撃でも当たれば、私は死んでしまう自信があるのだ。ディーノが近くにいて彼の相手を出来るならいいが、この微妙に離れた状況では危ないだろ。私はディーノの弱点だとちゃんと認識してるのだ。……認識して――。

 

 思考が止まりそうになった時に銃声が響いた。

 

 雲雀恭弥に見下ろされ、私は恐怖で動くことが出来なくなった。が、頭は冷静でフル回転していた。

 

 憑依弾をこのタイミングで使ったのはラッキーと安易に考えそうになったが、まだ隠し持ってる可能性も高い。ファミリーを潰してることと沢田綱吉の身体をのっとる予定だったことを考えると、復讐者に没収されるまで大量に持ってることが予想できる。しかし、チャンスなのは変わりない。触媒として使ってる槍は倒れてる六道骸の近くにあるのだ。問題は私が彼の攻撃を耐えれるかだな。

 

 ――無理だ。死ぬ。死にたくない。――死にたくない。

 

 ふと腰に力を感じる。フゥ太が私の服を握りしめてるようだ。元々、密着していたため私の震えに気付いてしまったのだろう。

 

 一瞬でいい、一瞬さえあれば――ディーノが触媒の槍を壊せる。

 

 そう思っていたとしても、私の身体は正直で声も出せなかった。が、無事だった。

 

 風を感じただけで痛みはこないのだ。私の目では何が起きたのかはわからない。わかるのは、ディーノが雲雀恭弥の片腕をロープで縛り、恐らく振り下ろそうとした雲雀恭弥のもう片方のトンファーを素手で掴んでいたことだけだった。

 

 ……助かった。が、安心したのは束の間だった。ディーノは素手でトンファーを掴んでいる。嵐戦の時に雲雀恭弥はトンファーから棘らしきものを出していたのだ。

 

「手を離――」

 

 最後までは言えなかった。もう手から血がポタポタと落ちていたのだ。しかし、ディーノは手を離そうとせず、言った。

 

「お前には恨みはねーが、手荒なことをするぜ」

 

 次に気づいた時には雲雀恭弥はぶっ飛ばされていた。正確には放り投げられたのほうが正しいかもしれない。そのため気絶はしていないようで、雲雀恭弥はもう一度私達に襲いかかろうとしていた。

 

「すまん」

 

 ディーノが呟いたと思うと私は浮遊感を味わい、腹に圧迫感を感じる。ディーノが肩に私を背負ったようだ。荷物担ぎには文句はいわない。もう片方の手でフゥ太をもってるし、私の担いでる方の手からは血が出てるのだ。特にその手を使って私の腰にまわして支えてるので、腰から冷たさを感じるのもあった。

 

 槍をどうにかすればいいのではないかと思ったが、ランチアの姿が見えてしまった。ディーノは彼の気配に気付いていたのだろう。

 

「走るぜ」

 

 そう声をかけてディーノは走り出す。私に気をつかってるようであまり腹に肩が食い込むことはない。しかし、雲雀恭弥達との距離が縮まってるので、2人を抱えて逃げるのは無理がある。何とか2階にまで降りたが、非常階段で降りるのはきつい。

 

「私を降ろせ!」

「黙ってろ! 舌を噛む!」

「なら、私達に気を遣うな! 多少の揺れなら我慢できる!」

「僕も大丈夫だよ!」

「――しっかり捕まってろよ!」

 

 ちょっと待て。それはないだろ。確かに少しは我慢するといったが、2階の窓から飛び降りるな。

 

「~~~~!!」

 

 無事に着地したようだが、私は声にもならない叫びを出してしまった。ちなみにフゥ太は思いっきり叫んでいた。

 

「すまん」

 

 もう1度謝ってディーノは走り出す。荷物担ぎのため後方を見ていると、雲雀恭弥達は窓から見ているだけで降りてこない。深追いは禁物と思ったのか、追いかける必要はないと判断したのか……。後者の方が強い気がした。私は雲雀恭弥と話していたのだ。また来る可能性が高い。

 

 

 

 

 

 

 完全に追ってこないと判断したのか、ディーノは私達を降ろし自身の服をちぎって止血し始めた。

 

「僕のせいで……」

「これぐらいすぐ治る」

 

 そういってディーノは怪我をしていない手でフゥ太の頭を撫でていた。

 

「お前が悪いわけじゃねーから謝らなくていいんだぜ。だから気にすんな。なっ?」

 

 この言葉はフゥ太の後ろに居る私にも言ってる気がした――。

 




脱出成功?

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