サクラが雲雀に最低の選択を要求してる一方で、ツナはリボーンに説明され必死に獄寺を探していた。もちろんサクラのことが心配だが、ディーノと一緒に居ることを考えれば安全なのだ。
リボーンの道案内でマンションの前につく。ツナは初めての獄寺の家だったが、眺めることもせず呼び鈴を何度も鳴らした。
「うっせー!? ……10代目!? すみません! すみません!!」
あまりのうるささに苛立ちながら出てきた獄寺はツナの姿を見た途端に謝りだす。ツナはそんな普段とかわりない獄寺を見て安堵したのだった。
「良かったー! 獄寺君! 無事だったんだね!」
「……無事とは?」
「この土日に並中生徒が襲われてる。おめーも狙われるんだぞ。もっとも1番の狙いはツナだけどな」
「本当ですか!? 今すぐオレがぶっ飛ばしてきます!」
獄寺が今にも街に出て行こうとするので慌ててツナは止める。ツナからすれば外に出るのは自殺行為しか見えないのだ。
「や、山本と合流しようよ! 山本も狙われてるみたいだけど……。えっと、順番?があって先に獄寺君から狙われるってリボーンがいうし……」
「野球バカの助けはいりません!! 全てオレに任せてください!!」
ツナは間違った。ランキングの順位を話さないほうがいいと判断したのは正しかったが、山本の助けを獄寺が必要とするわけがなかったのだ。ツナの静止を振り切り、獄寺は外に出たのだった。
「ま、待って! 獄寺君! 君は狙われてるんだ!」
「見つけた。並盛中学2-A出席番号8番……獄寺隼人」
リボーンは相手の力量を観察しながら、サクラの話とのズレについて考える。獄寺が襲われるのはもう少し後。しかし現に今、目の前に居る。リボーンはサクラが知っているより雲雀が敵の正体の情報を早く掴んだため、全ての行動が早くなったかもしれないと予測する。
「やべーな」
思わず呟く。全ての行動が早くなってるのならば、草壁哲矢が襲われる時間も早くなる。つまり、サクラ達がいる敵のアジトにもう1人の敵が戻って来る時間がサクラの予想より早くなることを意味する。
「獄寺、ここで倒しちまうぞ」
「もちろんッス」
「お前までーー!?」
文句をいうツナを引っ張りながらリボーンは特殊弾の数を確認する。ディーノとサクラが来た時点でレオンに作ってもらったが、3発しか用意できなかった。死ぬ気弾はレオンの体内に3日間埋め込めて変化し出来る。先程レオンの尻尾が切れてしまったので、これ以上は作れなくなったのだ。
「ご、獄寺君大丈夫かな……」
「獄寺がやられたら、おめーの番だぞ」
「えー!? ムリムリムリ!!」
「あいつはここで倒すべきだ。サクラ達の安全を確保してーならな」
「そうだった……。神崎さんとディーノさんは敵の本拠地に乗り込んでるんだった……」
「今、なんていったんだい?」
ふいに聞こえた声に驚き、ツナは後ろを振り返る。角の向こうの戦闘に意識していたせいで、後ろから近づく存在に気付かなかったのだ。声をかけた人物の気配がなかったのもあるが。
「サクラはどこにいるんだい?」
「オ、オレの家に……」
「沢田君。正直に話したほうが君のためだよ」
いつものように優しく話す桂だったが、目が笑っていなかった。この時、初めてツナは桂に恐怖を感じた。桂は何かがおかしいと――。
「心配すんな。サクラはディーノと一緒だ。ツナと居るよりはるかに安全だぞ」
「初めからそう言ってくれればよかったんだよ。彼の強さなら大丈夫だね」
「ああ」
ツナは安堵する。先程の桂はおかしいと思ったが、いつも通りに笑ってる姿を見て気のせいだったと思ったのだった。
「そういえば、君達に預けた方が良かったかい?」
「え? 一体何をですか?」
「笹川君を襲った黒曜生徒を気絶させたんだよ。僕は平和主義で生きてるのだが、サクラが外に出れなくなるのは困るからね。つい手を出してしまったよ。それで黒曜生徒は襲われそうだった風紀委員に預けたのだが、この状況を見ると君達の方がいいと思ったのだよ」
角の向こうで獄寺が黒曜生徒と戦ってることを知り、桂は失敗したと思ったのだった。一方、ツナは桂が倒してくれたことに感謝し、リボーンは表情には出さなかったが桂の状況判断の早さに驚いたのだった。
「気にしなくていいぞ。おめーのおかげで助かったぞ」
「本当にありがとうございます!!」
2人は桂に礼を言う。もう1人の敵を桂が倒したことによって、乗り込んでいるサクラとディーノの負担が減ったからだ。
礼を聞いた桂が「そうだろう! さぁ僕を敬いたまえ!」という残念な発言を発した直後、ダイナマイトの破裂音が今までより大きく聞こえてきたのだった。
その音を聞き、慌てて角からツナは顔を出す。ツナが見た光景は「10代目を狙ったんだ。容赦はしねー」と呟いた獄寺が追い討ちでダイナマイトを投げたところだった。獄寺はサクラが知ってる知識よりも油断をしていなかったため、念を押しダイナマイトをさらに投げたのだ。それを目撃したツナが獄寺はやっぱり怖いと思ってしまったが。
「獄寺、やるじゃねーか」
「リボーンさんにそういってもらえるなんて……光栄ッス!」
獄寺はリボーンに褒められツナの様子には気付かなかった時、足音が聞こえてきた。派手に戦ったせいで野次馬の可能性もあったが、敵の可能性もあるためツナと獄寺は警戒する。リボーンと桂は足音で誰が来るのかわかっていたので、警戒しなかったが。さらにリボーンはこの状況で手紙を読むほどの警戒のなさだった。
「わりぃ! 遅くなった! 大丈夫だったか?」
「山本!?」
「けっ。おめーの出番なんて必要ねーんだよ」
獄寺は倒れる黒曜生徒を指をさし、遅れてきた山本に10代目を守ったのは自分だと見せつけようとした。が、叶わなかった。なぜなら黒曜生徒が明らかにおかしな様子で起き上がったのだ。出血量と傷の具合から見て、起き上がったのが異常というのもあるが、傷を気にせず立ち上がったことに違和感がうまれたのだ。まるで、痛みを感じていないように――。
「な、なにか変だよ……」
「ああ。あの傷で立ち上がるなんてやべーぜ」
「そうじゃなくて……なにか変だよ!」
「どういうことスか!? 10代目!! ――あ!」
獄寺は失言に気付く。戦っているときに敵はファミリーの構成とボスの正体を聞き出そうとしたのだ。つまり、まだ10代目が誰かわからない状況だった。しかし、ついいつものようにツナを見て10代目といってしまった。
「…………」
黒曜生徒は無言でツナを見つめていた。そして、怪我を全く気にしていないように血を噴出しながらヨーヨーを振るったのだった。
「10代目!?」
叫びながら獄寺はツナを守るために盾になる。そして彼と同時に動いた人物が居た。その人物は山本武である。獄寺より前に出て山本バッドで無数の針を叩き斬ったのだ。
「ふぅ。あぶねーとこだったな!」
山本は軽い調子で言ったが、警戒は解いていない。が、「油断するな。野球バカ」と獄寺に怒られたのだった。ツナはこの状況でもいつもの2人に安堵しそうになったが、無数の針が襲ってきたため叶わなかった。
「その針に当たるんじゃねーぞ。恐らく毒針だ」
「「っ!?」」
リボーンの発言に焦りの声をあげた獄寺とツナ。そして、山本が斬っている間にダイナマイトを投げようとした獄寺の手が止まった。
「10代目、お逃げください!」
「こ、腰が抜けて……」
「なっ!?」
動けないツナを見て獄寺は悩む。ダイナマイトを投げれば、全て終わる可能性が高い。しかし、ツナがそばに居れば躊躇してしまうのだ。もし倒せなかった場合、自身の投げたダイナマイトの煙幕から毒針が飛び出てくれば、山本でも斬れる可能性が低い。まして相手は念には念をとして投げたダイナマイトをくらっても起き上がったのだ。リスクが高すぎる。
そんな中で獄寺は1人の男と目があう。
「ボケッとしてねーで10代目をこの場から遠ざけろ!? おめーになら出来るだろ!?」
「ん? そっちでいいのかい?」
「いいもなにもそれがいいに決まってるだろ!!」
桂はサクラの安全のため、またサクラの友達のために手を貸してもいいかなと考えていた。黒曜生徒を倒すという意味で。しかし、獄寺の口から出たのはツナを遠ざけてほしいという頼みだった。自身が倒せばすぐに終わると桂は思ったが、進んで手を出すのは好まなかったので、獄寺の頼みを聞くことにした。
「では、失礼するよ」
そういって、桂はツナを肩に担ぐ。獄寺の担ぎ方の批判には「お姫様抱っこはサクラだけだからね!」と言いかえし走り去ったのだ。当然、その後を黒曜生徒は追いかけようとするが2人に憚れる。
「お前の相手はオレ達な!」
「オレ1人で十分だ」
文句を言いながら、獄寺は敵を見る。重体と呼べる身体で動くことに少し恐怖を感じるのを打ち消して、大量のダイナマイトを投げたのだった。
反撃が来ると身構えていた2人だが、襲ってはこない。しかし、煙が晴れてくると立ち上がっている姿が見えたのだった。明らかに先ほどより怪我の量が増えている。つまり、獄寺の攻撃を当たっていたことを意味する。
「……これ以上はやべーんじゃねーのか?」
「警戒を解くんじゃねー!!」
獄寺は山本に文句を言いながら、尋常ではない敵の姿に嫌な汗が流れていることを自覚していた。汗を拭う間もなく、相手のヨーヨーを持つ手が動く。獄寺は動き回り避ければ、ツナを危険にさらすため、気にくわないが山本に任せることにした。そして、獄寺の行動を理解し山本が叩き斬る。が、相手が攻撃してくるたびに飛び散る尋常ではない血の量を見るたびに動きが鈍る。戦力では獄寺達の方が有利だが、精神面で圧倒的に不利になり獄寺達は普段通りの動きが出来ず、長引けば長引くほど獄寺達が危険な状況だった。そんな中、2人の精神を持ち直すほどの頼りのある声が響く。
「死ぬ気で2人を守る!!」
死ぬ気のツナである。彼は桂に運び込まれたが、自身のために残った2人を心配し、守らず逃げた自身に後悔したのだった。
黒曜生徒に真っ直ぐに突っ込むツナ。相手がヨーヨーを使うため、中・遠距離の攻撃手段がなければ懐に潜り込むのが最善策なのだ。
「10代目!?」
「ツナ!?」
2人は焦る。信頼はしているが、毒針を使う相手にツナが突っ込むのは反対なのだ。死ぬ気のツナは2人の様子に気もくれず、猛スピードを突っ込む。当然、敵の黒曜生徒は何もせず待ってるわけがなく、攻撃を仕掛けた。
「うおおおお!!」
ツナは叫びながら毒針を交わし始める。しかし、敵に懐に飛び込んでくると気付かれていれば、全て避けれるほど相手の強さは甘くない。
「10代目ーー!!」
「ツナー!!」
2人は叫んだ。獄寺達からみれば、ツナが避けると無理と判断し、自ら当たりに行ったようにしか見えなかったのだ。
「きかーん!!」
そんな2人を安心させるような声をあげながら、ツナは毒針を防いだのだった。片手にまな板を持ちながら……。
「役に立ったようだね!」
タイミングを計ったように桂が叫ぶ。実際、タイミングを計っていたのだが――。
まな板は桂がゴミ捨て場から拾い、死ぬ気になったツナに持たせたのだった。
滅多なことでは捨てないまな板が、偶然にもゴミ捨て場にあったのことに疑問を持つのが普通だが、あいにく死ぬ気とツナと世界が自分を中心にまわってると思ってる桂だったので、このことにツッコミされることはなかった。ちなみにこの謎は永久に解けない。
桂の叫びが響き終わった後、まな板という奇抜な武器を使いながら、ツナは黒曜生徒の懐に潜り込み、鳩尾に一発いれたのだった。
「……危なかったー」
いつものツナに戻り、自分がしたことに冷や汗をかく。
「10代目、危険です! 念のために離れてください!」
獄寺の注意が聞こえたが、ツナは警戒を解いたまま動こうとしなかった。ずっと感じていた嫌な感じが消えたからである。安心してしまい、再度腰が抜けたのもあったが。
「大丈夫だよ、獄寺君。みんな、怪我はなかった?」
いつものツナの様子にここに居るものは安堵したのだった――。
戦闘描写が難しすぎる……