クラスメイト K [本編&おまけ完結]   作:ちびっこ

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屈辱の選択

 状況を把握していない沢田綱吉以外の空気は重く、「ど、どうしたの……?」という彼の質問には誰も答えようとしなかった。そして、いち早く状況を受けとめたリボーンが、私に質問してきた。

 

「……サクラ。草壁哲矢、獄寺のことはわかるか?」

「草壁哲矢は詳しくわからないけど、並盛病院の近くだったはず。獄寺隼人は学校をサボり帰ってる時の商店街で起きた。でもわからない……」

「それだけでも十分だ」

「えっと……何の話してるの……?」

「ツナ、獄寺と連絡とれるか?」

「え? は、はい」

 

 沢田綱吉が獄寺隼人に電話してる姿を見ながら「充電がきれる」と、沢田綱吉に聞こえないようにボソっと呟く。2人が驚いたように私の顔を見た気がした。すぐさま、リボーンが私の肩に乗る。重いが、内緒話をするためとわかっていたので文句は言わなかった。

 

「獄寺隼人は遅刻してきたはず。まだ家に居る可能性もある」

「わかったぞ。サクラが今1番やべーのは誰と思うんだ」

 

 思わずリボーンを凝視する。私に判断しろというのか……。

 

「オレ達が何とかする。なっ?」

 

 ディーノの言葉とリボーンの信頼する視線に投げやりになって答える。

 

「1番危険なのは獄寺隼人と雲雀恭弥。沢田綱吉を守って獄寺隼人は毒を食らう。種類はわからないけど、解毒はDrシャマルが出来る。彼が倒れた時は山本武が来たことによって追い払うことが出来た。順位で担当者が別でもめたくない理由で。雲雀恭弥は私にもどうなってるか全くわからないからだ」

「担当者が別ってことは複数犯なのか?」

「今は3人。3.5人と言ってもいいが。これから増えるから人数は気にするだけ無駄。もう少しすれば周りの強化した方がいい」

「わかったぞ。フゥ太は大丈夫なのか?」

「……まだ安全なほうだ」

「そうか。後は病気にかかってねーヒバリだと問題ねーと思いたいが……」

 

 尻尾が切れたことを考えると危険なことは変わりないと気付いてるのだろう。

 

「今の雲雀恭弥では勝てないと思う。相性が最悪なんだ。主犯は術士」

「「術士……」」

 

 雲雀恭弥は強い。が、幻術の桜で動けなくなった原作のことを考えると、幻術を使われれば勝ち目がない。使うまでに雲雀恭弥が六道骸を倒せば問題ないのだが……。やはり尻尾を切れたことを考えると厳しい気がする。

 

「デ、ディーノさん。獄寺君に繋がらないんですけど……」

 

 気付いてないのか、かけたことによって充電が切れたのか……。理由はわからないが、状況はあまり良くないことだけはわかった。

 

「2手に分かれるしかねーな」

「ああ。ツナには荷が重い、オレが乗り込むぜ。最悪、ヒバリって奴を助けるだけになるかもしんねーが……」

 

 ディーノは守りながらでは、術士を倒せる可能性の低さに気付いてるのだろう。しかし、ディーノ1人では乗り込めない。部下をイタリアに置いて行ったのはまずかったな。……覚悟を決めるしかないのだろう。

 

「……ディーノ、私も行く」

「ちょっと待て!? お前は危ないだろ!」

「それしかねーのか……」

「おい!? リボーン!? なんで反対しねーんだ!?」

「サクラが居た方が確率がたけーからだ。それにサクラから言ったんだ。止めたって無駄だろ?」

 

 リボーンの言葉に頷く。

 

「えーっと、みんな何の話をしてるの……?」

「ツナ、獄寺を探すぞ。山本にも連絡しろ」

「え? お、おい! 急に引っ張るなよ!? 少しは説明しろよ!!」

 

 私は叫びながら連れ出される沢田綱吉には目をくれず、ディーノを見る。

 

「オレは反対だ」

「私が教えないと乗り込む場所もわからないだろ」

「……どうしても行くのか?」

「自分で蒔いた種だ」

「お前は何も悪くねーだろーが……」

 

 悔しそうに言ったディーノの姿を見て、少し気持ちが楽になった。

 

「あ。行く前に君に認識してほしいことがある」

「なんだ?」

 

 この後、私が言った言葉にディーノは怒ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 私が生き残るために言ったのだが、怒られるとは理不尽である。と、ブツブツ文句をいいながらディーノの後ろを歩く。情報を話し終わったが、未だに腹が立ってるのだ。

 

「もう敵陣なんだ。気を引き締めろ。頼む」

「……ん」

 

 状況が状況なので真剣になる。ディーノの歩いた道以外を踏めば、危ない可能性もあるのだ。ディーノは私と一緒で初めて歩く場所なのに、ガラスばりの動植物園の場所がわかってるかのように避ける。知識があっても詳しい場所がわからない私だけでは簡単に落ちていただろう。

 

 ディーノの後姿を見て――思う。本当に強かったんだな、と。

 

 私の知識ではあまりいいところがないので信頼しきれてなかったのかもしれない。だから私はディーノにあんなことを言ったのだろう。信頼し任せていいかもしれないと思った。

 

「……君が居なくても写真は入手できるのか?」

「大丈夫だ。オレが居なくても向こうにはオレの部下がいるんだ。すぐに送ってくる」

 

 写真は骸たちの写真のことだった。私が骸たちの名前や容姿を教えたのだが、写真を用意したほうがいいと判断したようだった。私に絵の才能があれば問題なかったのだが。

 

「にしても、お前を信用してねーわけじゃないが……お前が言った特徴って――」

「見ればわかる」

 

 パイナッポー頭と伝えれば誰でもわかると私には自信がある。この自信はなんだとツッコミを自身にしたいぐらいだ。

 

「ここか……」

 

 私が妙な自信をもってる間に黒曜ヘルシーランドの建物についたようだ。今まで襲撃がなかったのは雲雀恭弥が黒曜生徒を倒したことと、あの2人が恐らく4位と3位狩りに出かけているからだろう。そして、六道骸は……雲雀恭弥の相手をしてる可能性が高い。

 

「1つだけ壊されてない非常用梯子がある」

「退路を絶ってるのか……」

「逃げれそうか?」

「やるしかねーだろ」

 

 確かにと思い、頷く。退路を絶ってることは、最悪の場合、逃げようと考える私達にも厳しい条件なのだ。特に私が降りようとする間はディーノが1人で負担を背負うことになる。……最初から私は非戦闘員だったな。今更の話だ。

 

「任せろ」

 

 そういって、ディーノは歩き始めた。私が見えなくなった瞬間に転んだので、もの凄く不安になった――。

 

 

 

 

 

 非常階段がある部屋に入ると金属音が聞こえてきた。しかし、音の間隔が短くなってる気がする。ディーノを見ると頷いたので何か動きがあったということなのだろう。

 

「……行くぜ」

「ん」

 

 一瞬だが、ディーノは私を登らせるか迷ったようだった。止めなかったのはここで置いていく方が危ないと判断したからだろう。本当に、今更の話である。

 

 梯子を登ればすぐに3階に行く階段が見え、私達はすぐに3階に行くことをにした。フゥ太がもしかすると2階のどこかに居るかもしれないが、金属音が聞こえなくなった今は3階を優先するしかなかった。それに、原作では雲雀恭弥がやられてる時、フゥ太は六道骸の近くに居たはずだ。

 

 3階の映画館に足を踏み入れるとすぐに雲雀恭弥が倒れていたのが目に入った。見たところ怪我は少ない。それは私達に視線を向けた六道骸もだった。……面倒になり幻覚をつかったのかもしれない。それだけ雲雀恭弥は強かったのだろう。

 

「クフフフ。今日は訪問者が多い日ですね。待ち人ではなさそうですが……」

 

 本命は沢田綱吉のことだな。大人のディーノと腰の引けた女の私ではボンゴレ10代目とは思えなかったのだろう。

 

「お前がパイナッポー野郎か」

 

 ……ディーノ。確かに私はパイナッポー頭と言った。言ったが、ここでパイナッポー野郎と言う必要はないだろう。しかし、顔が引きつってる六道骸を見て、わざと怒らせてる可能性に気付いた。恐らく私を標的にしないためだ。

 

「こいつ、強かっただろ? ご自慢の格闘能力だけでは勝てねーみたいだしなっ!」

 

 再度挑発したと思えば、ディーノがムチを振るった。もうすぐ城嶋犬が帰ってくることも教えたので時間もないことを知ってるのもあるのだろう。

 

 ディーノと六道骸は激しい攻防を繰り広げているようだが、私は見ずに行動を起こすことにする。私が2人の戦いを見ようとしても見えるわけがないのだ。時間の無駄である。ディーノが上手く六道骸を誘導してるらしく、私は簡単に雲雀恭弥に近づくことができた。

 

 ジロジロとうつ伏せで倒れてる雲雀恭弥を見る。傷が――あった。雲雀恭弥は骸の武器――三叉槍に傷つけられていた。

 

「パターンBだ!」

 

 ディーノに叫ぶ。傷ついていない場合はAだった。これは本人の前で情報を知ってると悟らせないために決めた合言葉だった。つまり……ディーノが格闘能力と言ったのは私のためなのだろう。

 

「お前の相手はオレだ」

「ぐっ」

 

 骸が一瞬私に意識を向けたようだった。私はビビっていまい一瞬動きを止めてしまったが、深呼吸し雲雀恭弥を起こすことにする。骸に悟られれば終わりなのだ。

 

「いい加減に起きろ!」

「……何してるの?」

 

 目を覚めた雲雀恭弥に焦る。最初はユサユサ揺らしていたが、起きないことにイラッとし、ついにハリセンで叩いてしまったのだ。

 

「兄以外で叩いたのは君が第一号だ。おめでとう」

 

 睨まれた。起こしたのに理不尽である。

 

「幻覚で気絶したところを起こしたんだ。多めにみてほしい」

 

 一応、私の話を聞いてくれるようなので教えれば助かったようだ。しかし、機嫌が悪い。何も言ってこないのは「君の助けはいらなかった」とは言えないと気付いているのだろう。

 

「……あれらが君のいう僕の相手が出来る人物?」

 

 一体何のことかと首をひねる。察しない私をバカと思って溜息をつくな。

 

「今はあまり僕の相手が出来る人物が現れていない。そんな感じのことを言ったよね? そして今、君が現れた。――君は未来も見える」

 

 雲雀恭弥は六道骸とディーノを見渡してから言った。一体、私はどれほど彼に目をつけられていたのだろう。少し怖くなったが、状況を思い出し無理矢理にでも自身を落ち着かせようと考える。雲雀恭弥が今にでもディーノをぶっ飛ばして戦いに戻ろうとしているを見て、呆れて落ち着いたのは予想外だったが。

 

「そう判断したなら私の話に少しは耳を貸せ。……あの三叉槍で傷つけられたか?」

「それがなに?」

「三叉槍で傷つけられると契約したことになり、身体をのっとられる。それが向こうの切り札だ」

 

 私の声で動きが止まった。束縛を嫌う彼にとって身体をのっとられるのは屈辱しかないのだろう。

 

「彼には契約解除方法を伝えてる。が、下手に追い詰めると切り札を出される。そして、仲間がそろそろ戻ってくるし、もう1人強いのがここに居るはずだ。だから今、私達は1度ひきたいと考えている。向こうの気ままで幻覚をつかってないだけだしな。彼は君が起きてることに気づいてるのも忘れるな」

 

 起き上がってる雲雀恭弥に手を出さないのは気にするほどの相手ということだ。幻覚にかかる相手なのだ。そう思われてもしょうがないだろう。

 

「それとも私を咬み殺し聞きだすか? 借りのある私に――」

 

 私は雲雀恭弥にとって、どちらを選んでも屈辱しかない最低の選択を迫ったのだった。

 




……ディーノさんの活躍場面のはずなのに描写がないww

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