クラスメイト K [本編&おまけ完結]   作:ちびっこ

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フラグ

 マンガを読み、マンガを読み、マンガを読みと有意義に過ごした夏休みがもう終わる。沢田綱吉に何度か遊びに行こうと誘われたが、断っただけの価値はあった気がする。まぁ沢田綱吉達を避けたいという意味ではないので、夏祭りの屋台などには兄と一緒に顔を出したが。

 

 今回、断ったのは夏休みが終われば何が起こるかわからないからだ。マンガを読んでおかないと後悔する気がしたのだ。もちろん私は死ぬつもりはない。だが、状況によってはマンガを読む時間がなくなる気がした。……そんな状況にするつもりはないが。そのために行動するのだ。

 

「おや? サクラ、本屋かマンガ喫茶に行くのかい?」

 

 行動するために外に出ようとすれば、声をかけられる。しかし、兄でさえ私が外に出る用事はマンガしかないと思っているようだ。失礼である。

 

「……知り合いに会いに行く。ファミレスで待ち合わせしてるんだ」

「ふむ。僕も途中まで一緒に行ってもいいかい? 少し外で歩きたい気分なのだよ」

 

 特に断る理由もなかったので、一緒に出かけた。

 

 

 

 いつも通り兄は私が退屈にしないように話しかけ、周りに気を配りながらエスコートする。こうして歩くと思う。本当に兄は外で歩きたい気分だったのかと。

 

「どうかしたのかい?」

「……本当に私のことが好きだな」

「もちろんだとも!」

 

 かなり恥ずかしい言葉を言ったかもしれないが、兄のはっきり言った返事の方が恥ずかしい。

 

「サクラに友達が出来れば、寂しくなると思っていたけど……あまり変わらなくて嬉しいしね」

 

 当たり前だろ。友達が出来たからといって兄と距離をとる必要がどこにある。確かに調子に乗るといろいろ面倒があるが、私は兄と一緒にいるのも好きなのだ。

 

「おごってくれるし」

 

 口から出たのはかわいくない言葉だと自身でも思ったが、兄は私の本当の気持ちに気付いてるようで、嬉しそうに笑っていた。

 

「……サクラ。夏休みは時間がある限り本を読んでいたようだけど、これから何かあるのかい?」

 

 兄の言葉に一瞬足が止まる。だが、すぐに何もなかったように「いつものことだろ」と言い返す。事実、私は時間があればマンガを読むのだ。

 

「気のせいならいいんだ。ただ、何かあるなら話してほしいと思ったんだ。僕はサクラのお兄ちゃんだからね」

 

 家族だから巻き込みたくないんだ。という言葉を辛うじて呑み込んだ。……私が沢田綱吉達と関わると決めた時点で巻き込んでるが。それでも、話す気はない。もう兄が手を出せる範囲は超えてしまった。これからのことは力がないと死んでしまう。

 

「……いつでも私の味方でいてくれればいい」

 

 下手に誤魔化すのをやめて、何かあると認めるが内容は話さない。という返事を選んだ。隠し事する私に兄はどういう態度をとるか気になり、目を向ける。

 

「何を当たり前のことをいってるんだい? 僕は世界中を敵にまわしてもサクラの味方だよ!!」

 

 どこかの主人公がいいそうなセリフをいう兄に笑い、ツッコミをいれる。

 

「死亡フラグが立ちそうだ」

「本当だね。でも僕がサクラを死なせるわけないよ!」

 

 ますます死亡フラグが立った気がする。私だけじゃなく兄もだが。

 

 ……ファミレスにつけば別行動になるのがやばい気がする。私は大丈夫だと思うが、兄が心配だ。パイナッポーに気をつけろとでも言ったほうがいいのか?しかし、パイナッポーは今日刑務所から脱獄するので大丈夫なはずだ。それに忠告したほうがますます死亡フラグが立ちそうである。ただ、立てすぎれば生存フラグになることもある。いろいろ話した場合、私の役目が終わるということで死亡フラグが立つので判断が難しい。いや、その前に私が死亡フラグとツッコミを入れたので大丈夫な気もする。

 

「死亡フラグは奥が深い」

「物語には重要だからね。しょうがないさ」

 

 兄と死亡フラグについて語り合っているとファミレスについたようだ。窓側の席にディーノが居るのが見える。

 

「送ってくれてありがとう」

 

 兄に礼をいい、ファミレスに入ろうとすれば腕を掴まれる。なんだと思い、兄を見ると眉間に皺をつくりディーノを見ていた。そういう顔をしてもカッコイイのが謎である。一瞬、くだらないことを考えたが兄の行動に呆れる。何度か、兄がディーノをライバル視していたのは気付いていた。恐らく兄という立場を取られるのが嫌だったのだろう。

 

「いくら私がディーノを兄のように慕っても、兄に敵うわけないだろ」

 

 何度も思うが兄は私の兄なのだ。比べることが出来るわけない。私の気持ちが通じたようで兄の手が緩んだ。しかし、離そうとはしない。思わず兄と掴まれてる手を交互に見る。

 

「……なんでもないさ!」

「何かあるだろ」

 

 ツッコミを入れたが、兄は私の腕を放し頭を撫で誤魔化した。もっと深く聞いた方がいい気がしたので、口を開こうとすれば兄はディーノを待たせてることを理由に帰ろうとする。

 

「……言いたくないならいい。でも忘れないで。私はいつでも兄の味方だ」

「それは…………心強いよ」

 

 私の言葉に兄は一瞬固まったが、嬉しそうに笑った。その姿を見て大丈夫と判断し、ディーノのところへ向かうことにする。

 

「じゃ、後で」

「お菓子を用意してるよ。だから気をつけて帰っておいで」

 

 私が小さくガッツポーズをすれば兄は苦笑いし、もう1度私の頭を撫でてから帰っていった。

 

 

 

 

 

 私が店に入るとディーノはすぐに手をあげた。入り口で兄と話していたことに気付いていたかもしれない。

 

「待たせた」

「問題ねぇって」

 

 ディーノは遅れたことにも怒りもせず、私を座らせメニューを見せる。私のことをよくわかってるじゃないか。と、思いながらプリンアラモードと紅茶を注文する。

 

「獄寺隼人に話は終わったのか?」

「ん? ああ。悩んでるみてーだったが、お前の様子を見ると大丈夫のようだな」

 

 少し悩んだが、頷く。教えてもディーノが彼の決断の邪魔をしに行くとは思えないからな。本題にすぐ入りたいのもあるが。

 

「それで、君はどうする? 電話で話したとおり、君の負担が多くなるかもしれない」

「もう返事はしただろ?」

 

 会えば変わるかもしれないと思って聞いたのだが、ディーノの答えは変わらないようだ。

 

「それでオレはどこにいればいい?」

 

 下手に動くのもまずいが、フォローできる場所にいないといけないとディーノも気付いてるのだろう。

 

「……7日と8日は沢田綱吉の家で過ごし泊まりたい」

「わかった。お前も泊まれるように話をもっていくぜ」

 

 泊まりたい。という言葉だけで、私も含まれることに気付くとは……。理由はわからないが、私と一緒にいればボス体質になることに幸運を感じる。簡単に話が進む。

 

「今回、どれぐらいやべーんだ?」

「レオンの尻尾が切れるぐらい」

 

 私の言葉にディーノは黙ったが、すぐに私の頭をガシガシと撫でる。店員がプリンアラモードを持ってきたから止めろ。私は食べたいのだ。念が通じたようでディーノはやめた。……やはり特質系に憧れる。

 

「私は下手に未来を変えようとするつもりはない。……荒れるから覚悟したほうがいいかもな」

「……わかった」

「あ。それと守ってくれよ。私が狙われる可能性もある」

「それを早く言えよ!?」

 

 私の言葉にディーノが立ちあがった。目立つから止めてくれ。プリンアラモードが食べにくい。

 

「最後の方では一般人の沢田綱吉の友達も狙われるんだ。ちゃんと一般人の方にはリボーンが対策を立てていた。が、私は特殊だろ? 私に人手を割き未来がずれるのが怖いから、君に頼んだのもある」

「わかった。ん? もしかしてお前が知ってる未来だとオレは役に立たなかったのか……」

「そうでもない」

 

 原作ではディーノはリボーンに頼まれて情報を集めた。情報がなければ彼らはもっと動きにくかっただろう。私が情報を教えることが出来るからディーノはこっちに来てもいいと判断したのだ。

 

「お前のおかげでもっと役に立てるんだ。ありがとな」

「……君が役に立つ時は非常事態なのだが」

「細かいことはいいんだよ」

 

 細かくないだろと思いながらディーノを見る。食べる手は止めないが。彼は私の頭をガシガシ撫でてきた。食べにくいから止めてくれ。……まぁ彼の言葉で悪い気がしないので何も言わなかったが。

 

「7日か~。それまで日本でゆっくりすっかなー」

「君はイタリアに戻ることになるぞ」

「ん? あいつは大丈夫なんだろ?」

「明日になればわかる。お土産よろしく」

 

 私の催促にディーノは「任せとけ!」と返事をし、思い出したように今回もお土産があると言う。今、渡そうとしないのは荷物になるからだろう。恐らく中身はチーズやハム、お菓子だな。楽しみである。

 

「お前の兄には相談しないのか?」

「危ないだろ。それに沢田綱吉の友達として狙うなら女子と思う」

「……趣味ってことか」

「ん。女子が好きとははっきり言ってはないが、無防備な人間の驚いた顔を見るのが好きらしい。兄はそれに当てはまる気がしない」

「……とにかく最低な奴なのはわかった」

 

 口いっぱいにクリームをつめながら首を縦に振る。ディーノは私の顔を見て気が抜けたようだ。失礼である。

 

「まっ心配するな。もしもの時はオレが何とかする。ツナ達だって守ってみせるぜ」

「……守るだけじゃダメな気もするけどな」

「ん?」

 

 ディーノに聞き返されたが、返事はしなかった。私の予想だが、骸を倒すだけではダメだ。少しだけでも救わないといけない。だから私はここまで面倒なことをしてるのだ。骸を倒せばいいだけならディーノに全て任せてる。

 

「難しい選択だ」

 

 思わず呟いてしまった。これからのことを考えるとフゥ太達を見捨てることになる。後悔しないためにマフィアランドまで行ったが、結局迷うし辛い。

 

「さっきも言ったが……ありがとな。お前のおかげでオレは役に立てる」

 

 ディーノの言葉はありがたかったので今度は否定せず、私は頷いたのだった。

 




日常編はこの話で終わりです

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