クラスメイト K [本編&おまけ完結]   作:ちびっこ

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少女の頼み

 ジッと紙を見つめる。

 

「また一緒のクラスだね! 今年度もよろしくね!」

「……ん」

 

 なぜ当たり前のように私の隣に笹川京子が居るのだ。少し驚きながら返事をし、私はA組ということを知る。何とも微妙な感じだ。沢田綱吉達と一緒で少し嬉しい気持ちもあるが、思いっきり巻き込まれそうな気がする。なぜなら、彼らと同じクラスになったのはリボーンの差し金としか思えないのだ。

 

 複雑な気持ちで教室に向かってると胴上げをしてるバカが見える。当然、私はスルーした。

 

 

 

 

 原作通り沢田綱吉が笹川京子と話しているなと思いながら、席に座りボーッとしていると内藤ロンシャンと目が合った気がした。

 

「はいはーい。オレ、内藤ロンシャン。トマゾファミリーの8代目でーす」

 

 ウザイのでカバンから本を取り出し読み始める。まぁウザイのは嫌だが、私のことを忘れてると知れたのはいいことだった。

 

「え? 何? ツンデレ?」

 

 今の行動のどこにデレがあったのだ。もちろんツッコミはしない。が、少し面倒になったのでケイタイを取り出す。

 

「ん? 交換? でもオレさ~、彼女いるんだよねー」

「雲雀恭弥に電話するだけだ」

 

 私の言葉に内藤ロンシャンは動きを止め、もの凄い勢いで離れていった。原作と違い、私の行動で雲雀恭弥のことを知り恐れているのだろう。問題があるとすれば、私の声が聞こえた人が「やっぱり、あの噂は本当だったんだ……」といい、内藤ロンシャン以外にも離れたことである。と言っても、静かになったので私は喜んでいるのが。ちなみに黒川花が言っていた噂を有効活用し、雲雀恭弥の名前を出しただけである。実際には電話番号なんて知るわけがない。

 

 そういえば、雲雀恭弥の咬み殺し度があがっていると耳にした。恐らく桜クラ病のせいだろう。サクラという名前の私は近づくだけ危険なので、会わないように努力しよう。……いつもと一緒だな。

 

 しばらくすると原作通りにリボ山が来た。興味はないが、本を読んでいると絡まれると思ったので片付けて、ボーッとすることにする。

 

 

 

 

 

 私がボーッとしてる間に、沢田綱吉と内藤ロンシャンの自慢大会という名の嗜虐大会が始まっていた。知らない間に推薦などが終わっているな。不思議である。……念のために口元を確かめよう。

 

 私が口元を確認しているとテルミが去っていった。一言、斬新だった。

 

「ツナには彼女はいねーが、仲のいい女子はいるだろ? ツナのいいところ言ってもらえばいいじゃねーか」

 

 リボーンの言葉に嫌な予感がする。今の言葉は原作になかった。動揺している沢田綱吉を見て、笹川京子にいいところを言ってもらえる場合と言ってくれない場合の想像をしているのだろう。しかし、お互いに非常に残念なことになる気がする。

 

「確かに相手が女子の意見を入れたんだ。10代目もそのほうが……。妙なセンコーだが、わかってるじゃねーか」

「まぁな」

 

 なぜ獄寺隼人はリボーンと気付かないのだ。そして、本気で慌ててる沢田綱吉をみて不憫だなと思った。

 

「おい! てめぇに重要な役を任せるのは癪だが――神埼! 10代目のいいところを話せ!」

 

 あからさまに驚いた顔をして、ほっとしたような、少しもったいないようなという表情をする沢田綱吉。そして、私はもの凄く面倒という表情をしているだろう。獄寺隼人に睨まれているので渋々答えるが。

 

「……彼は勉強が出来ないし、根性もあまりないのですぐに逃げようとする。周りからすればダメダメ」

 

 沢田綱吉がわかりやすいぐらいに落ち込んでいるし、獄寺隼人が今にもダイナマイトが投げそうだ。

 

「だけど、本当に誰かが困ってる時は逃げずに立ち向かう強い優しさはもってる。……もういいだろ」

 

 寝る。今すぐ寝よう。机の上で寝る体勢をつくったが、すぐに眠れるわけでもなく、内藤ロンシャンの嘆きまで聞いてしまった。

 

 

 

 揺さぶられて顔をあげる。見上げれば沢田綱吉達だった。本当に私は眠ってしまったようだ。寝ぼけながら彼らを見つめる。山本武に帰ろうと誘われ、獄寺隼人はさっさと起きろといい、沢田綱吉は私が疲れているかもと心配していた。

 

 ふと気付けば涙が出ていた。そして、涙を流す私に彼らは驚き慌てる姿を見て、笑ってしまった。

 

「か、神崎さん……?」

「ん。こういうのも悪くないと思っただけだ」

 

 よくわかってない彼らを放置し、私は袖口で涙をゴシゴシと拭う。そして、拭いながら説明する気はないと誰かに誓う。目が覚めて彼らを見て友達と思ったなんて、恥ずかしくて絶対言えないのだ。

 

 

 

 

 

 帰り道、彼らは私の様子を見ていたが問題ないと判断したらしく普通に話題を出し始めた。

 

「力が及ばず……学級委員長の座をトマゾファミリーなんかに……申し訳ありません!」

「ご、獄寺君、顔を上げて!! オレは気にしてないってば!!」

「でも、おしかったよなー」

 

 どっちが選ばれても一緒だ。2人とも学校を休みだすからな。

 

「神崎さん、ありがとう」

 

 急に名前を呼ばれたと思ったら、沢田綱吉にお礼を言われた。よくわからなかったので首をひねる。

 

「あの時、お世辞でも嬉しかったよ」

「……私はウソをついた覚えない」

「えっと、つまり……それって……」

 

 沢田綱吉は3人が肯定の顔をしていたので、戸惑っていた。だが、少し頬が赤くなっていたので悪い気はしていなさそうだ。

 

 

 

 

 

 

 そのままの流れで沢田綱吉の家に行くことになった。謎である。謎と思いながらもちょうど用事があり断る必要もないのでお邪魔すると、玄関でランボに飴を催促された。いつものようにポケットから取り出し渡す。イーピンとフゥ太は見当たらないので、このまま会わなければ沢田綱吉に預けておこう。

 

「神崎って面倒見いいのな!」

「それはない」

 

 私の場合は被害が広がらないまでに対処し、対処できなくなった場合は放置する。本当に面倒見がいいというのはどの状況でも放置はしない。

 

「オレも山本と一緒で神崎さんは面倒見がいいと思うよ」 

「……見ればわかる」

 

 彼らは私の指を追って、私達が話してる間に獄寺隼人はランボをボコボコにしようとしてることに気付く。そして予想通り慌てて止めるのは沢田綱吉と山本武であって、私は見ているだけである。

 

「自身が出来ることで面倒が回避出来るならするが、無理と判断したら何もしない。だから違う」

「なんで冷静に話してんのー!?」

 

 泣き叫んでるランボを抱きながら沢田綱吉にツッコミされる。……ボケたつもりはないのが。少し納得できないと思いながら家にあがった。

 

 沢田綱吉の部屋に入るとリボーンが居た。起きた時に見当たらなかったので、私の予想通り帰っていたようだ。

 

「ちゃおッス」

「ん。リボーン、頼みがある」

 

 挨拶もそこそこに用件をすますことにする。偶然にも沢田綱吉が飲み物などを取りに行き、獄寺隼人と山本武が温度差の激しい言い合いをし、誰も私達に注目していないのだ。

 

「なんだ?」

「仲介人兼護衛を頼みたい」

「……やべーことなのか?」

 

 リボーンの雰囲気と声のトーンが変わった。私がリボーンに頼むのだ。危険なことだと思っているのだろう。しかし、本当に危険なことを頼むなら私は彼らの前で話さないぞ。それにリボーンに頼もうと思ったのは、ディーノよりリボーンの方が適任と考えたからである。

 

 更にいうと原作通りに進むなら無理して頼む必要もないのだ。念のためレベルである。だからリボーンに頼みをきいてもらえないなら会わない。1人で彼に会いに行くのは、ネギタイを巻くぐらい嫌だ。……そもそも治療を頼みたいわけではないのだが。少し思考がずれたと思いながらリボーンに返事をする。

 

「ある意味。Drシャマルと真面目に話したいんだ」

「わかったぞ」

 

 リボーンはいつもの雰囲気に戻ったと同時に沢田綱吉が帰ってきたので話を打ち切る。リボーンから日時の連絡がくるだろう。私はそれを待つだけである。

 

 用件が済み、気が楽になったので遠慮せずお昼をご馳走になった。その後、沢田綱吉達とテレビゲームした。

 

「か、神崎さんってゲーム得意なんだね……」

 

 引きこもりをなめるなよ。と、威張ったりせず「そこそこ」と答える。それにプレイ時間は私の方が長いのに兄の方が上手いのだ。理不尽である。

 

 時々、負けたりしながら私は彼らと楽しんだ。

 

 

 

 

 

―――――――――――

 

 

 リボーンとDrシャマルは保健室で、先程会った1人の少女のことを考えていた。

 

「――オレはどうしたほうがいいんだ? オレの意見としちゃ、かわいい子ちゃんの願いは聞いてやりてーが、医師の立場からすれば簡単に頷くことが出来ねぇ」

「じゃ、あいつの条件で用意することは出来るんだな」

 

 簡単に頷くことが出来ないということは、用意は出来るということ。リボーンはそのことにすぐ気付き、Drシャマルに確認した。

 

「おいおい……おめぇさん本気かよ……。あの条件も怪しすぎるだろ……」

 

 Drシャマルの言うとおり、少女の条件は怪しすぎた。マフィアに勘ぐられてはいけない、もちろんボンゴレも。更にDrシャマルは普段と変わらないように行動すること。つまり保険医の仕事もしなければならないのだ。

 

「そもそもそんな状況にさせなければいいじゃねーか。おめぇさんが居れば何とかなるだろ。あの子も無理ならいいと言っているんだ」

「……あいつには不思議な力がある」

「不思議な力だと?」

「あいつは未来が見えている。予知じゃねーぞ、別の力だ。ディーノが聞いた話によると、あいつはあいつがいねぇ未来が見えているんだ。オレの予想だが、無理にならいいというのはあいつがいない未来では問題ねーんだ。だからこそ、用意できるならしたいんだろう。だが、おめぇに頼むことで未来がずれる可能性もある。それを恐れてあんな回りくどい条件を言ったんだ」

「……つらすぎる力だな」

 

 雨の中、動けないでいた少女をこの目で見た。近づきすぎても傷つけてしまうと判断し、少女を好いているチビ達を追っ払い、ツナの優しさに触れさせることしか出来なかった。その時のことを思い出しながらリボーンは小さな声で「ああ」と返事をした。

 

「かわいい子ちゃんのために頑張っちゃおうかな~」

 

 少し重くなった空気をかえるため、ヘラヘラと宣言するDrシャマル。リボーンはその意図に気付きニヤリと笑って「頼んだぞ」と声をかけたのだった――。




頼みの内容は簡単なのでわかると思います。

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