クラスメイト K [本編&おまけ完結]   作:ちびっこ

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場所取り

 上機嫌で歩く容姿端麗の男が居た。彼の名は神崎桂。彼が上機嫌なのは愛して止まない妹と同じ名の花が咲いているからである。

 

「ふむ。このあたりにしようか」

 

 桂は妹のサクラと午後から花見をしようと約束しているため、彼は妹を喜ばすために内緒で場所取りにきていたのだ。早朝から来たのは桜並木の中で1番景色のいい場所をサクラに見せたかったから。そのため、ビニールシートを敷き、約束の時間まで過ごすことにした。

 

 

 

 桂が場所取りをしてから30分たったころ、1人の男が桂に話しかけた。

 

「やぁ、また会ったね」

「君は確か……雲雀君だね!」

「そうだよ」

 

 桂の前に現れたのは雲雀恭弥だった。雲雀は花見をするために来たのだが、先客がいることに気付いた。普段なら咬み殺し追い出すのだが、その相手が赤ん坊と同じぐらい興味を持ってる兄弟の片割れの桂だったため話しかけた。雲雀はたった1度攻撃を仕掛けただけで桂の強さに気付き興味をもったのだった。そして、雲雀から話しかけることは珍しいことを知らない桂は疑問も持たずに返事をし、会話が成立したのである。

 

「ねぇ、僕と勝負しない?」

「悪いが、それは遠慮させてもらうよ!」

「逃げるの?」

「違うよ! 僕は風紀を乱すようなことはしたくないのさ!」

 

 桂の言葉に雲雀は黙る。挑発したつもりが、自身が大事にしている風紀を持ち出されるとは思わなかったのだ。一方、桂からすれば雲雀が言い返せないのは予想通りだった。桂はサクラが話していたことを信用しただけである。

 

 妹バカの桂だが、頭はいい。雲雀の情報を知っているので簡単に対処できるのだ。もし前回みたいにトンファーで殴られても、桂は急所を避け手を出さなければいいと考えていた。桂は妹が絡まなければ、理由もなく手は出さない。なにより常識では考えれないが、自身が殴られることは切り札がある彼にとっては怒る理由にならないのだ。恐らくそれが桂と戦いたい雲雀にとって1番の難点であった。

 

 そして、雲雀は憶測の段階だが、咬み殺そうと攻撃をしかけても桂がやる気になる可能性の低さに気付いていた。なぜなら、以前に雲雀が攻撃し再度仕掛けようとした時も妹を守ること以外に手を出そうとしなかった。だからこそ雲雀は桂に話しかけたのだ。

 

 今の現状では圧倒的に雲雀は不利。しかし、運は雲雀に味方した。

 

「……じゃぁ、出てってくれる? 今日、ここは風紀委員が占領することになってる。僕は1人で桜を楽しみたいからね」

「1人で……?」

「うん。だから出て行って。もし君がここで花見をしたいなら僕と勝負しよう」

 

 雲雀は桂がここに居る理由はわかっていたため、それを利用としようと考えた。元々、占領するつもりだったのもあるが。そして、桂の驚いた反応を見て、彼と勝負が出来ると内心喜びながら桂に提案したのだった。

 

「……わかった。その勝負、受けることにするよ!」

 

 桂は少し悩み、了承した。

 

 これで雲雀の思惑通りになったのだが、彼は知らない。桜並木が占領されたとしても、移動すればいい。まだ早朝なのだ。と考える桂はこの場所にこだわってるわけではないことを。その桂が了承したのは雲雀の言った『(群れる人間を見ず)1人で(桜並木の)桜を楽しみたい』を『(誰も見えないようにして)1人で(神崎)サクラを楽しみたい』という意味にとらえたからだった――。

 

 

 

 

 

 ツナは獄寺・山本と共に花見の場所取りのために、桜並木にやってきた。そして、ツナは遠目に不良がいることを気付き引き返そうとしたが、その不良が唖然としている姿を見て疑問を浮かべる。

 

「どうかしましたか? 10代目」

「あの不良っぽい人……何に驚いてるのかなーって……」

 

 ツナの言葉によって獄寺と山本はあたりを見渡せば、山本が桂とトンファーを出してる雲雀が見えた。その様子を見て、ツナ達は慌てて駆け寄ったのだった。

 

 駆け寄り、ツナ達は先程会った不良と同じように唖然とした。何度も桂を狙ってるトンファーは空を切り、肩で息をする雲雀。トンファーをかわしている桂はケイタイで電話をするほどの余裕。そう、自身達をボコボコに咬み殺したことがある雲雀が、桂に遊ばれているのは誰の目でも明らかだったのだ。

 

「まさかここまでとはな」

 

 ふいに聞こえたリボーンの声でツナは意識が戻る。

 

「リボーン……ど、どういうこと……? 神崎さんのお兄さんってあんなに強かったの……?」

「ツナ、お前は桂の強さの一端を見たことあるだろ? まぁオレもあそこまで強いとは思ってなかったたが……」

 

 リボーンに言われ、ツナは思い出す。3階の不安定な足場しかない窓の外から、ビデオを回し続けていたことを。京子ちゃんのお兄さんと凄いスピードで競ってる姿を。桂がリボーンの投げたチョークを受け取ったことを。雪合戦の時にディーノと渡り合っていたこと、更に桂はディーノが投げた雪玉を壊さず受け取るほどの技量の持ち主だった。

 

 確かにリボーンの言ったとおり、ツナは桂の凄さを知っていた。しかし、ツナにとって桂は妹のサクラが大好きということを除けば、普通の人だったのだ。この光景を受け入れられるかとは別問題である。

 

 そんなツナの困惑を振り払うように桂が「ふむ。わかったよ!」と大きな声でいい、電話を終えた。

 

「助かったよ。いい暇つぶしになった」

「っ!」

 

 桂が雲雀に挑発したと思った瞬間、雲雀は今日1番の速度でトンファーを振り下ろした。が、空振る。振り終えた雲雀が気付いた時には全てが遅かった。桂は一瞬で雲雀の隙だらけの背後に移動していたのだ。ツナには雲雀のトンファーでさえ目で追えず、桂が瞬間移動をしたように雲雀の背後に移動したことしかわからなかった。

 

 ドサッという音が聞こえ、雲雀の両足が地面につく。ツナは一体何があったのかわからず、あまりの力の差に地面に足がついた雲雀を心配した。

 

「秘儀! ひざカックン!」

 

 妙な沈黙が流れた。

 

 ひざカックンとはただの相手のひざに衝撃を与えるだけであって、秘儀でもない。しかし、そのただのひざカックンを雲雀にし地面に足をつけたのだ。一体、これがどれぐらい難しいことか計り知れない。だが、真剣に考えたくないという心理が生まれたのだった。

 

「約束は地面に足がついたほうが負け! 僕の勝ちだよ!」

 

 桂はツナ達の心境を知らず、もしくはあえて知ってて宣言したのかはわからない。が、「……約束は約束だ。桜を楽しめばいい」と、普段は咬み殺すを楽しむこと以外の感情を表に出さない雲雀が、歯を食いしばりながら言い、疲れ果てたせいかフラフラとしながら去っていったのだった。

 

 その雲雀の姿を見てツナは声をかけようかと思ったが、リボーンに止められ諦めた。その後すぐに「君達も花見かい?」といつもと同じようにツナに話しかける桂を見て、安堵したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 私は今までこれほど必死に自転車を走らせたことがあったのだろうか。

 

「兄のバカ……」

 

 口に出しながら漕がなければやってられない。なぜ兄はあそこまでバカなのか。確かに私は兄と一緒に花見をしようと約束をした。だが、昼に行こうと約束したはずだ。なぜ先に場所取りに行ってるのだ。私の予定では雲雀恭弥に勝った沢田綱吉達に一緒にいいかと頼むつもりだったのだ。そもそも私が楽していい場所をゲットしようとしたのが悪かったのか――。

 

 ――いや、兄が悪い。

 

 そう思うことにした。お母さんから兄が花見の場所取りに言ってると聞いた私の心境を考えろ。急いで電話をすれば、他にも場所があるのに原作が起こる桜並木に居るといい、更に沢田綱吉達の姿を確認したというのだ。そして、兄に「雲雀君と花見をしたいかい?」と聞かれ焦った。私は何度も「一緒にしたいとは思わないが、雲雀恭弥には絶対手を出すな!!!」と念を押し電話を切り、慌てて着替え自転車を漕ぐ今に至るのだ。私のせいで兄が咬み殺されると思うと本当に最悪である。

 

 肩で息をしながら自転車から降りる。そして、きっちり自転車置き場に起き、鍵を閉める自身にドン引きした。どこまでも私は自身のことを優先するのだ……。

 

 少しテンションが下がったが、急がなければならないことを思い出す。慌てて走り出そうとした時に雲雀恭弥の後姿が見えた。

 

「……うまくいったのか」

 

 雲雀恭弥がフラフラしながら歩いてるので原作通り進んだことに安堵する。急ぐ必要もなくなり、歩いて兄の居るところに向かうことにした。

 

 

 

 しばらく適当に歩いていると、兄と沢田綱吉達がビニールシートの上で座ってるのが見えた。そして、道を引き返す。

 

「オレ達は赤い運命の糸で結ばれているんだ。かわいこちゃーん!!」

 

 このオッサンはいつか懲りることがあるのだろうか。そう頭の隅に思いながら、全身に鳥肌が立ちながら逃げた。

 

「サクラが嫌がってるじゃないか! 離れたまえ!!」

 

 珍しく兄が人を殴り驚いたが、キス魔を倒してくれたのだ。倒れてるキス魔を見て、私は感謝の気持ちしか出てこない。

 

「僕が居ながら、怖い思いをさせてすまなかった!!!!」

「わ、わかったから……く、苦しい……」

 

 私は珍しく声に出し、兄に抗議した。兄にしては力が強すぎだったのだ。兄は自身の力加減のミスにショックを受け、落ち込んでいたため許すことにする。私は心が広いのだ。

 

「気にしないから、花見しようよ」

「ああ……サクラはなんてやさしい子なんだ……」

 

 そういうのはいいからエスコートしろ。しかし、兄が動こうとしないので首をひねる。声をかけようとした瞬間、兄がひざをついた。

 

 ――桜クラ病

 

 Drシャマルは何を考えているんだ。トライデント・モスキートを使いすぎだろ!?そもそも、なぜ一般人の兄に使ったのだ。いろいろ問いただしたいが、気絶してるDrシャマルには聞けないので諦める。今は兄の容態の方が大事なのだ。

 

「お兄ちゃん……た、確か桜クラ病は桜の下に囲まれていると立っていられないだったような……。今すぐ帰れば……」

「……ふっ。 僕はいつでもサクラに酔ってるじゃないか! さぁ花見を楽しもう!!」

 

 そういっていつも通りに私をエスコートし始めた兄に驚き、されるがままになる。

 

「どうかしたのかい?」

 

 兄が桜クラ病にかかったと思ったのだ。元気そうな兄を見て、安堵の溜息が出る。Drシャマルを殴った後にひざをついたということだけで私は勘違いしたのだろう。

 

 心配事がなくなったので、私は沢田綱吉達と花見を満喫したのだった。

 




しゅ、主人公の存在感が……

ちなみに桂さんは手は出してないです。
膝をつかったのでw

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