クラスメイト K [本編&おまけ完結]   作:ちびっこ

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綺麗な花火

 なぜこんなことになってるのだろうか。もう原作に関わってもいいと思っているが、この原作には参加したくはなかった――。

 

「サクラ、何して遊ぼうか!」

「――私は爆弾を防げるぐらいの頑丈なカマクラがほしい」

「まかせたまえ! 僕が世界一頑丈なカマクラを作ってあげよう!」

「何いってやがる!! やるのは雪合戦に決まってるだろ!!」

 

 気のせいだろうか。獄寺隼人がいった『やるのは』が『殺るのは』という風に聞こえたのは。ディーノが慌てて2人の仲裁に入ってるにも関わらず、私はそんなことをのんきに考えていた。現実逃避ともいう。

 

 そもそも私がここに居るのは笹川了平が兄を誘ったせいである。兄が参加して原作がずれても気にはしなくなったが、最後の爆発は防がなければ兄が死ぬと思ったから来たのだ。その前にあの爆発で生きている沢田綱吉達がおかしすぎる。

 

 私が疑問に思ってる間に兄と笹川了平は猛スピードで雪を集めていた。獄寺隼人を見れば、ディーノと山本武に宥められていたみたいだ。

 

「極限!! カマクラを京子達に見せ、喜ばせる!!」

「ふむ! その粋だよ! 笹川君! やはり妹のために頑張るのは兄の役目なのだ!」

 

 ……2人の息があった理由がわかった気がした。

 

 

 

 

 カマクラが出来上がったころに沢田綱吉達が来た。カマクラは出来上がってしまったので原作通り雪合戦はするのだろう。私は女子なので見学にしてほしい。ルール説明を聞きたいと思ったが、子ども達の存在を忘れられてるようなので相手をすることにする。子ども達はカマクラに興味があったようなので、少し窮屈だが一緒に入りお菓子をあげた。

 

 しばらく彼らとお菓子を食べているとリボーンがやってきた。ルール説明をもう1度してくれるらしい。話を聞けば、原作と同じルールである。ただ、人数の関係で私も強制参加だった。私はディーノ達と一緒の西軍で、兄は沢田綱吉達と一緒の東軍だった。

 

「兄がよく許したな」

「了平がサクラを責任をもって守るといって友情を深め大丈夫だったぞ」

 

 その笹川了平は私が居たとしても攻撃は最大の防御!とかいいながら、原作通り突っ込んでいきそうな気がするのだが。とりあえず私は塹壕から顔を出さない方向で行こう。

 

 

 

 

 

 

 30分後にディーノが呼びに来たので諦めて外に出ることにする。ランボははしゃぎ疲れていたので抱きかかえて西軍の塹壕に向かった。

 

「……チッ、役にたたねー奴しかいねーじゃねーか。いや、10代目が勝つためにはその方が――」

 

 ブツブツ呟いてる獄寺隼人はかなり怪しかったのでスルーする。ディーノと笹川了平は私に雪玉を作るように頼んできたので、適当に作ることにする。途中で雪玉は関係がなくなるからな。

 

「あ。ちょっと待った」

「ん? どうかしたのか?」

 

 忘れてたと思いながら、塹壕の前に出てしゃがみこみ地面をペシペシと手で叩く。少し柔らかくおかしな地面があったので、そこを集中的にペシペシと叩く。ディーノは私の後ろで様子を見ていたが、気になったようで声をかけてきた。

 

「そこに何かあるのか?」

「多分、ここにロマーリオ達が潜ってるはず」

「っ!? ロマーリオ達が!?」

 

 ディーノの声に反応したようでロマーリオ達が勢いよく出てきた。そのせいで私に雪がかぶり冷たく、助けるんじゃなかったと本気で思った。しかし、いいことを思いつく。

 

「選手交代。ロマーリオよろしく」

「ダメだぞ。ディーノ、部下は帰らせろ。ルール違反だ」

 

 リボーンに言われ、帰っていくロマーリオ達を見て自身の身の危険を感じた。原作を壊しすぎて予測不可能になってしまった……。ディーノに礼を言われたが、テンションは最悪だった。

 

 

 

 みんなオラに元気をわけてくれーと思いながら玉を作っていると開始の笛の音が響いた。私は覚悟を決め、膠着状態の間に気絶する前に『さよなら』の言葉の後に誰の名前を言うべきか考えることにする。しかし『さん』付けで呼んでる人がいないことに気付きショックを受けた。

 

「心配するな。オレ達が守ってやるから」

「そうだ!! 極限にオレ達に任せろ!!」

 

 手を止めた私が不安に感じてると勘違いしたディーノと笹川了平が声をかけてくれたようだ。少し期待した途端に「うおーー!!」といいながら突っ込んでいく笹川了平を見て、何とも言えない気持ちになった。

 

 こっそり覗き観察すれば、山本武の雪玉を笹川了平は完璧に弾いていた。しかし、すぐに状況がかわった。「うおっ! 流石……オレの認めた男だ!」と笹川了平はいいながら、兄の雪玉を何発か当たっていた。兄は器用だな。

 

「あぶねーから、あんまり顔を出さねーほうがいいぜ。じゃ、オレも参戦するか!」

 

 私が覗くのをやめたのを確認してディーノが投げ始めた。どちらかというと私はディーノの攻撃の方がどこに行くか予想できないので怖いのだが。

 

「いい感じだったのに……やっぱりディーノさんは凄いよ! で、でもディーノさんは部下がいないとダメダメな体質だったんじゃないのーー!?」

 

 沢田綱吉の叫びを聞いて横目でディーノを見る。そして、初めて会った日以外は私の前で転ばないことを思い出す。

 

「やはりな。ディーノはサクラをファミリーの一員と同じように見てるみてーだな」

 

 リボーンの解説が聞こえたので「まじか……」と思わず呟いた。偶然じゃなかったのか……。原因は私が弱いからと思ったが、それならば沢田綱吉も同じようなものだろう。謎である。

 

「サクラのファミリーは僕だよ! 笹川了平、勝負はまた今度だ! 僕は彼を倒さなければならない! ディーノと言ったかい? 忘れては困る! 僕がサクラの兄なのだ!! たとえ出番がなくても僕はずっとスタンバってるんだよっ!?」

 

 雪玉を作りながら考えに没頭しようとしたが、兄の叫びを聞いてどうでもよくなった。

 

「なんでお前の兄貴は怒ってんだ……?」

「さぁ。舞台裏で体育座りでもしてたんじゃない?」

「――お前らの言ってることもよくわかんねーが、売られたケンカは買うぜ!」

 

 なぜか兄と同じ括りにされてしまった。私からすれば今のディーノと兄は同じぐらいのバカに見えるのだが。

 

 2人が必死に投げ合ってる間に笹川了平の活躍により押し始めたようだ。すると原作通りイーピンが餃子拳で攻撃し始めたようだ。私はディーノが使う雪玉をせっせと作ってるので見てはいないが、沢田綱吉の声で状況がなんとなくわかるのだ。

 

「まずい……このままでは10代目が――」

 

 私の隣でブツブツ呟いてる獄寺隼人が危険な気がする。頼むから私にはダイナマイト投げないでくれよ。私の念が通じたようで獄寺隼人は笹川了平にダイナマイトを投げて寝返った。

 

「やべぇ……いっきに状況がフリだぜ……」

「そういうのがありなのかい? ならば僕はサクラの味方になる!」

 

 ディーノの部下がいないので私も危険を感じていたのだが、あっさりと兄が寝返ってこっちに来た。寝返るのは別にいいが、抱きしめるのは勘弁してくれ。……く、苦しい。

 

 解放されたので兄を見る。見た感じ怪我はないようだ。恐らくディーノが手加減してくれたのだろう。しかし、ディーノの雪玉は私が作っていたのだ。兄はどうしていたのか気になり聞いてみた。

 

「僕がサクラの作った雪玉を壊すわけがないだろう? 大事に掴み、投げ返したのさ!」

「投げ返して潰せば、兄が壊したのと一緒」

 

 私の言葉に兄はネガティブホロウ状態になった。冷たいから止めておけ。

 

「お前らそんなことやってる場合じゃないぜ。ボンゴレ対オレ達になりそうだ」

「ふむ? ならば、ボンゴレ対サクラを守り隊だね!」

 

 兄が考えたチーム名に私とディーノの顔は引きつった。私達が却下しようと口を開け方時に第3勢力の毒牛中華飯が現れてしまい、チーム名の変更の機会を逃してしまう。

 

「んじゃ第2ラウンドスタート!」

 

 リボーンの声が響いたが、私達はすぐに動かない。原作と違い、急遽組んだチームなのだ。息が合う可能性は低い。

 

「まず、これを渡しておくぜ。ロマーリオ達が置いていってくれたんだ」

 

 そういってディーノは私と兄に実弾入り雪玉を渡した。……簡単に渡したことにドン引きしたが、毒入り雪玉が飛んできたので慌てて撃つことになる。しかし、私だけ撃っても落とすことが出来ない。1人で「むぅ」と唸り悔しい思いをする。狙撃の王への道のりは厳しそうだ。

 

「牽制で十分役にたってる。そのまま頼むぜ」

「ん。わかった」

「また僕のポジションが……!?」

 

 なぜか兄がショックを受けていた。といっても、毒入り雪玉を全て叩き落しているが。それにしても、これからどうするべきか悩む。そろそろ沢田綱吉の方に集中砲火するはずだ。思ってるそばから始まったようだ。

 

「サクラ、どうかしたのかい?」

 

 兄は手が止まった私が気になったようだ。

 

「そろそろ怖いな、と」

「大変だ! サクラに怖い思いをさせてしまったようだ! ディーノ、君にレオンを奪う美味しい役目を与えよう!」

「ああ。こっちはオレ1人で十分だ。任せろ!!」

 

 兄はそういうと私を横抱きにし、華麗にダイナマイトの攻撃を避けてカマクラの方向へ走り出した。ディーノには「階段に気をつけろよ」と声をかけておく。私の姿が見えなくなった時点で言っても意味がない気もするが。

 

 私達がカマクラにたどり着いた時に巨大エンツィオが現れ倒れる音が響いた。ディーノと山本武は雪玉になっていたので助言の意味はなかったようだ。

 

「ふむ。なかなかの大きさのスッポンだね! 美味しいのだろうか」

「食べる気なのかよ!?」

「当然だよ!」

 

 意外なところでエンツィオの危機だった。まさかここに来て「一狩り行こうぜ!」というノリを現実で見れるとは思わなかったな。

 

「一狩りはいいから、沢田綱吉の近くにいるイーピンを思いっきり空へ投げて。簡単に説明すると、もうすぐイーピンが自爆するはず」

「それはイーピンがさよなら……と呟く感じなのかい?」

「大丈夫。イーピンは無事」

「ふむ。ならば、僕が投げた後に『綺麗な花火だ!!』と言ったほうがいいのだろうか。イーピンは女性だしね。しかし語呂が……」

「確かに悩むところだけど、投げた後は伏せた方がいい。それと時間がもうない」

 

 私が的確なツッコミを入れると兄は慌てて走っていった。しばらくするとカマクラを揺らすほどのズゴオオオ!!という音が響いた。崩れるかと一瞬思ったが、問題なかったようだ。

 

 カマクラから出てみれば沢田綱吉はレオンを持ち、怪我をしていなさそうだった。私にしては頑張ったほうではないだろうか。自画自賛しよう。

 

「やはり僕がサクラの兄だ! ずっとスタンバってない君には負けないよ!」

 

 兄が雪玉になってるディーノに向かって元気そうに叫んでいたので、ハリセンで一発叩くことにする。先に助けてやれ。そして、一緒に雪玉になっていた山本武が「ハハッ! やっぱ神崎の兄貴はおもしれーのな!」といっていた。その状態で笑ってる余裕がなぜあるんだ。不思議である。

 

 すぐさま兄が復活し「これは部位破壊は出来るのだろうか……」と悩んいたが放置した。ツッコミをいれるのも面倒になってきたのだ。ディーノは慌てていたが。

 

 そして、合流した沢田綱吉と相談し、先にディーノと山本武を助けることにする。人数の関係でエンツィオに埋もれてるかもしれない人物は救出不可能と判断したのだ。

 

 無事に全員怪我もなく救出されたが、私だけ風邪を引いた。熱にうなされながら、やはり迂闊に原作に関わるのは危険だと思った。




最後までタイトルを「ずっとスタンバッてました」にしようか悩んだ

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