クラスメイト K [本編&おまけ完結]   作:ちびっこ

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雨模様

 また彼の周りが賑やかになったな。

 

「ツナ兄ーー!」

 

 頑張れという意味で沢田綱吉の肩に手を乗せる。手を置いたことで私に助けを求めるような目を向けられた。

 

「……好かれるのはいいことだ」

 

 慰めの声をかけておく。悪気があっての行動ではないとわかっているため、沢田綱吉は何ともいえない表情をしていた。

 

「あ! もしかしてサクラ姉!?」

 

 ……なぜ私と沢田綱吉の周りをグルグル嬉しそうに回るのだ。私は彼に好かれるようなことをした覚えはないのだが。そもそも自己紹介をした覚えもない。

 

「なぜ君は私のことを知ってるんだ?」

 

 私の質問にフゥ太が動きを止めて、ジッと見上げてきた。こういう視線は苦手なので逃げたくなる。

 

「ツナ兄の友達は把握済みさ! なーんてね、ランボに聞いたんだ」

 

 飴玉もらってきてという伝言つきだったらしい。しょうがないので飴を3人分渡す。当たり前のように、ポケットにランボ用の飴がなぜあるんだと自身にツッコミを入れたい。今度、1度だけでいいから『サクラちゃーん』と呼んでもらおう。それで何もかも許せる。

 

「ったく……ランボの奴……。神崎さん、本当にいつも助かるよ」

 

 沢田綱吉に気にするなと声をかける。それより本当に彼はいつでもどこでも現れるんだな。私達は別々に行動していたのだが、偶然同じタイミングで職員室に用事があったらしく出会い。帰りに先生に捕まり頼み事されて理科準備室に来ている。つまり、沢田綱吉がここに居るのは獄寺隼人も知らないことである。彼は沢田綱吉にストーカーと認識されても否定できない気がする。

 

「ほら、オレ達は準備があるから」

「はぁい……」

 

 しぶしぶ去っていく姿を見て沢田綱吉は罪悪感を覚えているようだ。家に帰れば普通に居るぞ。そういえば……今日は雨が降りランキングがでたらめになるんだったな。濡れる前に早く帰ることにしよう。

 

 

 

 

 

 

 無事に帰宅できた。お母さんに雨が降りそうと声をかければ慌てて取り込み始めた。兄は仕事が休みらしくお母さんを手伝ってるようだ。出来た息子である。残念な娘の私は着替えることにする。スカートは寒いのだ。

 

 着替え終わると同時に扉が開かれた。ギリギリセーフだったが、文句を言うことにする。

 

「ノック」

「着替えていたのだね! それはすまなかった!」

 

 謝ってるが全く反省している気配を見せないので溜息が出る。「幸せが逃げてしまうよ!」と心配されたのでイラっとした。

 

「……それで何」

「そうだった! 地面好きな彼がサクラを訪ねて来ているのだよ!」

 

 早くそれを言え。向かいながらいつ来たかと聞けば、ついさっきらしい。洗濯物を取り込みしているときに兄がディーノに気付いたので呼び鈴が鳴らなかったようだ。

 

「よっ! 元気にしてるか!」

「……バカだろ」

 

 玄関で能天気そうに待っていたディーノのを見て言い放つ。

 

「なんだよー。久しぶりに会ったんだぜ?」

 

 兄が覗いてるので下手なことを言えない。靴を履いて外に出ることしよう。「ん? どこか行くのか?」とディーノが言っているが無視をして歩き出す。予想通り、私の後にディーノがついてきたので、角を1つ曲がったところで向き直る。

 

「どうかしたのか?」

「お人よしの君のことだ。日本に来て顔を見ないという選択は出来なかったんだろう。私は元気だから、早くイタリアに戻れ。もしくはランキングフゥ太に会いに行け。私はゴズペラファミリーが活動し始めたことはわかるが、武器庫の規模はわからないんだ」

「――すまん」

 

 一体何について彼は謝ったのだろうか……。深く考えたくない、そう思った。

 

「時間がもったいない。これ以上被害を出すな。早く行け」

「本当にすまん!」

 

 走り去っていくディーノを見ながら思わず呟いた。

 

「謝るのは私のほうだろ……」

 

 ポツポツと雨が降ってきたが、私はその場から動けなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 どれだけ立ち尽くしていたんだろうかと、傘を目の前に差し出されて気付く。

 

「風邪引くぞ」

「……ん」

 

 今更な気もするが、持ってきてくれたので使うことにする。

 

「リボーン、その――」

 

 自分から声をかけたくせに言葉が詰まる。謝っても意味がない気がしたのだ。

 

「サクラ、ツナん家に泊まってけ。桂にはオレから連絡しておくぞ」

「――迷惑だろ」

 

 一体何が迷惑かははっきりと言えなかった。

 

「誰も文句いわねーぞ。ランボ、イーピン、フゥ太もサクラに懐いてるし、ママンも賑やかなほうが喜ぶぞ。ツナは……風呂にいれねーと、って感じでアタフタするぐれーだな」

「……その姿が想像できるのが不思議だ」

「ああ。じゃ、行くぞ」

 

 リボーンの後ろについて歩く。時々、私の足が止まるがリボーンは振り返らずに待ってくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「かっ神崎さん!? どうしたの!? ビショビショじゃないか! 風邪引いちゃうよ!! 母さん、風呂ーー!!! ちょっと待ってて、タオル持ってくるから!!」

「ほらな」

 

 リボーンの言葉に思わず笑った。慌ててタオルを持ってきてくれた沢田綱吉に「助かる」と礼を言う。そのままお風呂を借り、入ってる間に泊まる流れになっていた。服は兄が持ってきてくれたらしい。

 

 晩ご飯をご馳走になり沢田綱吉達とゲームしたりして過ごした。誰も何も聞かなかったのは正直ありがたかった。

 

 ただ、寝る直前に問題が起きた。

 

「……流石に悪い」

「サクラは雨に濡れて体力が落ちてんだ、ちゃんとしたベッドで寝た方がいいぞ。ツナもそういってんぞ」

「ちょっと待った!」

「なんだ、ツナ。サクラが風邪ひいてもいいのか?」

「よくないよ! 元々リボーンの言うとおりオレは床で寝るつもりだったよ! オレが言いたいのはそっちじゃなくて――オレと神埼さんが同じ部屋で寝るのが問題なんだよ!!」

 

 沢田綱吉の言葉に首をひねる。別に問題ないだろ。同じベッドで寝るわけじゃないし。

 

「なんで何とも思わないのー!?」

「リボーンも同じ部屋で寝るから一緒だろ。このハンモックはリボーンじゃないのか?」

「そうだけど……こいつは赤ん坊じゃん!」

 

 どうやら私がリボーンは赤ん坊じゃないことを知ってるせいで、話が噛み合わなかったらしい。私からすれば、たとえ沢田綱吉がリビングで寝るといっても、リボーンと同じ部屋ならそれについては何も解決しないのだが。

 

「うるせー。さっさと寝るぞ」

「いってーー!!」

 

 結局、リボーンが沢田綱吉に蹴りを入れて黙らせた。床に敷いた布団の上にちょうど転がすおまけつきで。……蹴られる前にベッドに入ろう。

 

 リボーンの指摘通り、私は疲れてるようですぐに眠れそうだった。

 

「私は気にしないから。……ベッド、ありがとう。おやすみ」

 

 2人の返事を聞いた後すぐに私の記憶はなくなった――。

 

 

 

―――――――――――

 

 

 サクラの寝息が聞こえてきたので、ツナは安堵のため息を吐く。そして、起こさないように注意しながらリボーンに声をかけた。

 

「リボーン、起きてる?」

「なんだ?」

「あのさ、神崎さんが話したくないことを無理に聞こうとは思わないけど、どうしたんだ? 普段のお前なら、母さんと一緒に寝るように言うだろ?」

 

 ツナは今回の件はリボーンらしくないと思ったのだった。いつも自身に強引なことをさせるが、リボーンは女子に甘いことにツナは気付いてる。だからツナはちび達の面倒を見るため一緒に寝るはめになると思っていた。しかし、実際のところは自身と同じ部屋に寝ることになり、一緒に寝たがったチビ達をサクラが気づいていない間にリボーンは追い払ったのだった。

 

「オレはツナと一緒の方がいいと思っただけだぞ」

「……わかった。お前がそう思ったならオレはここで寝るよ。オレは同じ部屋で寝ることに落ち着かないだけだし……」

「襲うなよ」

「襲わないよ!!!」

 

 大声でツッコミを入れてしまい慌ててサクラを見る。サクラは熟睡していたようで起きず、ツナはほっとしたのだった。

 

 しかし、あの大声で起きなかったのでツナはリボーンが言った通りサクラは雨に濡れて体力が落ちていると思い、風邪ひかなければいいけど……と心配しながら眠りに落ちたのだった。

 




……笑いがほしい!

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