クラスメイト K [本編&おまけ完結]   作:ちびっこ

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交換

 廊下を歩いてるだけだが、妙に落ち着かない。私は急に立ち止まり振り返ってみると慌てて隠れる兄が居た。……あれで見つからないと思ってるのか。後でビデオは没収だな。

 

 しかし、兄のバカの行動はいつものことである。私が落ち着かない原因ではない。やはり自身の手元にある物が原因なのだろう。……慣れないことをするものじゃないな。帰るか。

 

「ちゃおッス、サクラ」

 

 なぜここに居る。いや、沢田綱吉が入院している病院なのだ。廊下に居るのは不思議ではない。だが、なぜこのタイミングで出てくるのだ。

 

「ツナの見舞いか?」

 

 曖昧に頷く。見舞いでもあるし、違うといえば違う。そもそもリボーンはなぜ私が沢田綱吉がここに居ると知ってることを聞いてこないんだ。私は昨日の原作には不参加だったんだぞ。

 

「サクラの本当の目的はツナの誕生日祝いか?」

 

 わかってるくせに聞くなよ、という意味で睨む。リボーンは私の睨みを気にせず、「こっちだぞ」といいながら歩き出した。どうやら案内してくれるらしい。場所は受付で聞いているが、甘えることにする。そして、このまま無言で歩くのも変だと思い、話しかける。

 

「……君の分は用意していないから」

「問題ねーぞ。オレは昨日祝ってもらったしな」

 

 あれは祝いというのだろうか。リボーンのただの暇つぶしな気がする。ちなみに私も山本武に誘われた。その日は兄と一緒にケイタイを買いに行く約束をしてるといい断ったが。

 

「……今思った。そもそも君は祝ってもらう歳じゃないだろ」

 

 口元がわずかに上がったリボーンを見て、あれはただの暇つぶしだったと確信する。強制参加じゃなくて良かった……。

 

「ツナはここに居るぞ」

 

 この病室か……と、目線を部屋に向けている間にリボーンは居なくなっていた。

 

「1人で行けってことか……」

 

 軽く深呼吸をし扉をコンコンと叩いた。しかし、返事はない。どこかに出かけてるのかと、一瞬思ったが彼は筋などを痛めてるはずなので、極力出かけようとは思わないはずだ。もしかすると聞こえなかったのかもしれない。今度は強めに叩く。が、返事はない

 

 どうするべきか……と、ドアの前で顎に手をおき悩んでいたが、兄の「ガンバレ! サクラ!」という声がうるさかったので入ることにする。もちろん入った後、扉は閉めた。

 

 兄からの視線に解放されて沢田綱吉のことを思い出す。

 

「…………」

 

 眠っていた。道理でリアクションがないわけだ。彼の周りを見渡すと少し散らかっていた。私の知識であった病室でするささやかな誕生会はもう終わったようだ。恐らく彼は疲れて眠ってしまったのだろう。

 

「…………どうすればいいんだ」

 

 起こさないように小さな声で呟く。彼に渡そうと思っていたが、眠っているのは想定外だ。知ってるなら先に教えろよ、リボーン。

 

 しばらくボーッと突っ立っていたが、枕元に置いて帰ることにする。恐らく彼はやっと眠れるようになったのだろう。体中が痛くて昨日は寝れなかったと思うしな。そう考えると、彼はしばらく起きることはないだろう。私は彼が不憫すぎて起こす気にもならないしな。

 

「誕生日おめでとう」

 

 そう小さな声で言って枕元にプレゼントを置いた。

 

 帰ろうとドアに手をかけた時、沢田綱吉が居る方から大きな音が聞こえた。見えてはいなかったが、彼が悲惨な目にあったと想像できるのが不思議だ。リボーンに起こされたのだろう。

 

「いってぇーー!!」

 

 起きてしまったので挨拶をしようと、振り返ったが沢田綱吉以外いない。

 

「…………」

「…………」

 

 しばらく沈黙が流れた。そして気付く、今のは私ではないぞという意味で必死に首を横に振る。

 

「だ、大丈夫だよ! 今のは神崎さんじゃないってわかってるよ」

 

 その後に小さな声で「どうせリボーン仕業だと思うし……」と呟いたのは聞かなかったことにする。私が原因の可能性が高いからな……。責任から逃れたいのだ。

 

「どうしたの?」

「……誕生日」

「え?」

 

 察しろと指で彼の枕元に置いたプレゼントを指す。「もしかして……オレの……」といいながら袋を開けてる姿を見て帰りたくなる。……視線を窓に移そう。

 

「……………何してるんだ」

 

 自分でも驚くぐらい低い声が出た。私の声を聞いて沢田綱吉が謝っていたので「そっちじゃない」と教える。君は何も問題ない。問題があるのはこっちだ。

 

「えーーー!? この人何してるのー!?」

 

 どうやら私の視線を追って沢田綱吉も気付いたらしい。

 

「僕のことは気にしなくていい! そのまま続けたまえ!」

 

 無理だろ。窓の淵に手をかけながらビデオをまわす兄に私達はドン引き中なのだ。そもそもここは3階だぞ。ミノムシの変装して兄の隣でぶら下がってるリボーンも止めろよ。……リボーンが面白そうなことは止めないか……。思わず溜息が出そうになるが呑み込み、沢田綱吉に頭を下げる。

 

「……バカな兄で悪い」

「き、気にしなくていいよ! 最近、こういうの慣れてるし!」

 

 変なところで沢田綱吉と親近感を覚えてしまった。向こうもそう思ってるのだろう。同士だ……と、目が物語っていた。

 

「……それ持ってる?」

 

 もう彼らは放置するのが一番だろうと思い、沢田綱吉に話を振れば開けかかっていた袋に視線を戻していた。

 

「……これ、最近出たゲームだ!! 持ってないよ! でもいいの……?」

 

 少し値段がするので気を遣ったのだろう。しょうがないので「半分兄が出してくれた」と、ウソをつく。半分本当だしな。それに少し高くなったのは沢田綱吉が喜ぶものが私には分からず、知識にあったゲームを選ぶしかなかったからである。

 

「神崎さん、ありがとう! お兄さんも!!」

 

 下手なことを言うなよという意味で兄を睨めば「……サクラの思いが詰まってるのだ。大事にしたまえ!」と、もの凄い迫力で言った。ビデオをまわしていなければ、少しは格好が付くのだが……。

 

 プレゼントを渡す用が終わったので手持ち無沙汰になる。リボーンと違い、すぐに彼と話す話題が出てこないのだ。これは気まずい空気が流れる前に帰ったほうがいいのだろう。

 

「眠ってるところ悪かった。また学校で」

「え!? もう!?」

 

 去ろうとした足が止まった。振り向き彼を見る。

 

「ご、ごめん!! 用事があるんだよね……」

 

 用事はない。……予定もない。帰ったらマンガは読みたいと思っているが。

 

「……借りる」

「う、うん! 使って!!」

 

 少し悩んでベッドの横にある椅子を借りて残ることにしたのだが、話題が出てこない。……沢田綱吉も出てこないのだろう。視線を何度も感じ苦笑いしてしまった。

 

「え? え? え?」

 

 私が笑ったので自身に何かあると思ったのか、キョロキョロと確認していた。「何もないよ」と言えば安心したようだ。

 

 ふと、ポケットの重さに気付く。この話題を出したいと少し思った。

 

「……昨日、ケイタイ買ったんだ」

「そうなの!? じゃぁ交換しようよ!!」

 

 その言葉に頷いたが、操作方法がまだよくわからないことを思い出す。ケイタイと沢田綱吉を交互に見て、任せようと決断し「まだよくわからない」といい預けた。彼は戸惑いながら「赤外線でいいよ!」と言っていたが、私が首をひねった姿を見て諦めたようだ。

 

「神崎さんって機械苦手なんだね」

 

 そこまで苦手じゃない。が、2つのケイタイを操作しながら質問する君よりは出来ないと思う。なので「ケイタイは初めてだから特に」と答える。

 

「買い換えたんじゃなくて、今まで1度も持ってなかったんだ」

「ん」

「そうなんだ。今時珍しいよね」

 

 それもそうだろう。中学で持っていないのはクラスに1人ぐらいだからな。つまり、その1人が私である。お金があまりないシモンファミリーさえ持ってるしな。

 

 少し思考が脱線してしまった。彼の言葉に返事しよう。

 

「必要性を……感じなかったから……」

「そ、そうなんだ……」

 

 気をつかわれた。やはりこのセリフを言えば、現実の場合も相手は答えにくくなるのか。1つ勉強になった。

 

「留学中、気軽に連絡がとれず僕は寂しかった!!」

 

 沢田綱吉にスルーしろと念じれば通じたらしい。何も言わずガーンという顔だけしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 途中からリボーンも会話に加わり、面会時間いっぱいまで病室に居た。最後まで兄はスルーしたが。

 

 帰りは行きと違い、荷物は減り軽くなったがアドレス帳は増えた。そして、落ち着かない気分も今は悪くない感じだ。

 




この話を書いたイメージ
W主演・・神崎サクラ、沢田綱吉
特別出演・・リボーン
エキストラ(音)・・神崎桂

……友情出演でもないww
でもインパクトはリボーンより強い。おかしいww

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