クラスメイト K [本編&おまけ完結]   作:ちびっこ

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矛盾。予知

 ツナは浮かない顔でベッドに転がり、枕元に置いてるあるものを見つめた。彼自身もそれを何度見たかわからない。傍から見ればおかしいだろう。ただの『冷却ジェルシート』を使わず見つめているのだから……。

 

「今日も学校に来なかったな」

「……うん」

 

 普段の彼ならば、学校のことを知っているリボーンに対して疑問に思うのだが、素直にリボーンの言葉に返事をした。今の彼にとってはリボーンの行動は気にならないことだったのだ。

 

 サクラの衝撃的な発言からツナは、いつ獄寺が行動に起こすか気が気でないのだ。今はツナとリボーンの言葉で抑えているが、いつ暴走するかわからない。そもそも、ツナにはサクラがどうしてあんな言葉を言ったのかはわからない。ツナは棒倒しが終わってすぐサクラに会い「冗談だ」と言ってほしかった。しかし、サクラは早退し休み続けている。まるでサクラがツナの前に現れないようにしてウソではないと証明するように――。

 

「……どうして、オレにこれを渡したんだろ……」

 

 もしサクラが言った言葉が本当だとすれば、サクラからすればツナは疫病神、死神と言ってもいいだろう。お互いにいえることだが。

 

 ツナはサクラが助けてくれたり心配してくれたことを思い出す。たとえサクラのせいで死ぬかも知れないとわかっても、どうしてもツナはサクラを嫌うことは出来なかった。サクラがマフィア関係だとしても。だから会って話したいと何度も思ってるがサクラは学校に来ない。そして話したいと思ってるにも関わらず、自らサクラの家に会いに行く勇気がない自身に落ち込むのだった。

 

 そんなツナの様子を見てリボーンは悩んだ。いつもならばツナに発破をかけるのだが、今回ばかりはそう簡単には判断できなかったのだ。『呪われた赤ん坊』という言葉を知っているのは極一部の人間である。サクラがこの言葉を知っているだけで危険と判断できる。が、リボーンはサクラがあえてこの言葉を使ったと予想している。まるでサクラがリボーンに殺されることを望んでるかのように……。

 

 さらに、リボーンはサクラの言葉がウソではないと踏んでいた。ただマフィアに関わりたくないだけなら、先日のように言えばいいだけである。わざわざサクラが『呪われた赤ん坊』という言葉を使ってまで話すリスクが説明できない。

 

 説明できなくてもツナにとって危険な存在なのは変わらない。それにもかかわらず、リボーンはサクラに手を下していない。ここで間違ってはいけないのは、リボーンは手を下さないのではない。――手を下したくないのだ。

 

 リボーンがそう思ったきっかけは、サクラが望んでツナを殺したいと思っていないからだった。サクラがツナ達に話しかけられて嬉しかったと呟いた言葉が聞こえたのもあったが、1番の理由は肩に手を置かれて取り乱したサクラがツナを見て安心したからである。

 

 矛盾。

 

 ツナと関われば死ぬと知っているサクラがツナを見て安心した。だからこそリボーンは悩んでいるのだ。ディーノの調査を待たずにサクラを殺すのは簡単だ。しかしリボーンにはそれが出来なかった。もしディーノの調査でも何もわからなければ……1つの可能性が生まれるからだ。

 

 予知。

 

 それで全て説明できるとリボーンは思ったのだった。サクラがツナに対して恐怖を抱かないことも、予知の内容によればリボーンが最強の殺し屋、呪われた赤ん坊ということも知ることが出来る。そして自身と関わることで不幸な未来がみえてしまった場合……この前のサクラの行動は不思議ではない。もしサクラが予知をできるのなら……リボーンは手を下したくないのだ。リボーンは未来をみえることで運命に翻弄され苦しんでる人物をよく知っているからだ。

 

 もしサクラが予知できるのなら、どれほどの力があるのかも関係なくリボーンはこれ以上サクラに苦しんでほしくないと思っている。リボーンはヒバリに頼んで転校の許可をもらうことが1番いいと理解しているためツナに発破をかけることも出来ないのだ。もちろん、全てディーノの調査によるのだが。

 

 

 リボーンは安易にツナに声をかけれないため、会話はなく部屋の空気は良くなかった。そんな中、ドアが開かれる。

 

「ガハハハ!! ランボさん、いいものもらったもんね! ほしいと言っても絶対あげないもんね!」

 

 ランボが嬉しそうにやってきたのだった。部屋の空気をかえるためには良かったのだが、ランボは空気を読めていなかった。

 

 ランボはリボーンに何度もお菓子を見せびらかしたが反応がないため、手榴弾を投げた結果、返り討ちにあい泣き出したのだ。気分が落ち込んでるツナはリアクションもなく、学習能力のない奴……と少し呆れていた。

 

「ったく……」

 

 ツナは愚痴りながらもランボの面倒を見ようとベッドから起き上がる。そしてツナは返り討ちにあいながらも貰ったお菓子を放さないランボに少し感心したのだった。

 

「ほら、これ以上リボーンを怒らせれば大事なお菓子が食べれなくなるぞ。母さんに頼んでお茶を用意してもらって食べよう」

 

 ランボは泣きながらも頷いたため、ツナはランボと手をつなぎ1階に降りる。ツナは泣いているランボのために話題を振ろうと考える。

 

「そのお菓子はどうしたんだ?」

 

 いつものようなアメではなく、さらにツナも見たことがない袋だったのだ。

 

「あのねー、道を歩いていたらもらったー」

 

 ランボの言葉にツナは本気で呆れた。知らない人から貰ったお菓子をランボは食べようとしていたのだから……。

 

「知らない人から貰ったものを食べるなって言ってるだろ」

「知ってるもんねー。この前、ツナのチームをずっと応援してるのを見たもんね!」

「それって……知らないのとかわらな――」

 

 ツナはランボの言葉にある人物を思い出す。ランボから特徴を聞き出すのに苦労はしたが、間違いないと思った。お菓子を貰う時に妹の話ばかりしていて、元気がない妹のために作ったと言ったのだから……。ツナは急いでランボにどこに会ったかを聞き、母親にランボを預け出かけたのだった。

 

 

 

 

 

 ツナは桂と一緒に喫茶店でお茶を飲んでいた。ランボが言っていた場所の近くで桂はたくさんの人に囲まれていたため、見つけるのは簡単だったのだ。幸い桂はツナのことを覚えており、桂から声をかえてくれた。勢いで飛び出したもののなんて話しかければいいか悩んでいたツナは安堵したのだった。

 

「あの……神崎さんは……」

「……元気とは言えない。僕が作ったお菓子もあまり食べてくれなくてね。余ったものを配っていたのさ」

「……そうですか」

 

 ツナは一瞬だけだったが桂が疲れた顔をしたのを見て、当たり障りのない言葉しか言えなかった。そしてツナは桂の様子からしてツナとサクラのことは知らないと予想した。ツナの中で桂のイメージは妹のことしか考えていないと思ってしまうぐらいの変人だった。その桂がツナに問いただすこともなく、ツナの前でコーヒーを飲んでるのだから……。

 

「君がサクラの心配してくれて嬉しいよ」

「え……?」

「サクラは僕のせいで友達ができなくてね……。僕がかわっているせいでサクラ個人を見てくれる人が少ないんだ。サクラが君のような子と出会えて良かった……。ありがとう」

 

 ツナは桂に返事を返すことが出来なかった。自身のせいでサクラは元気がないと知っているのもあったが、そのことを桂に話す勇気もない自身にも情けなくなったのだ。そして、サクラがどれだけの勇気を振り絞ってツナに言ったのか、少し分かった気がした……。

 

「……すまないね。君に僕の願いを押し付けてしまった」

「いえ……」

「……君には話してもいいかもしれない。僕はサクラと海外に住もうか悩んでるんだ」

「え!?」

「僕は少し前までフランスに留学していてね。そこで居た先生がフランスで新しく店を開く計画をしていて誘われていたんだ。サクラと離れるのは心配で1度は断ったんだが、いつでも歓迎するって言ってくれてるんだ。……大丈夫だよ。もし行くことになっても両親は仕事の関係でしばらくこの街から離れられない。サクラと一緒に年に数回は帰ってくるつもりだよ」

 

 ツナは悩んだ。サクラの話が本当ならば、ツナとサクラの関係を考えると海外に行ったほうがいい。しかし、それは嫌だと思う気持ちもあるのだ。

 

「あ、あの!!」

「なんだい?」

「か、神崎さんと……話をさせてください!!」

 

 ツナはサクラが海外に行くにしても、このまま別れるのはどうしても嫌だったのだ。少しその場の勢いで言ったのもあり、ツナは自身の行動に混乱した。が、桂の顔を見て落ち着いた。そして、ツナは穏やかな笑顔の桂を見て恥ずかしくなったのだった。恥ずかしいと言っても普段のような恥ずかしさではなく、少し誇らしげな恥ずかしさだった。

 

「ちょうど無理矢理でもサクラを外に出そうと思っていたんだ。君もサクラの部屋の中で会うより外の方がいいだろ?」

「は、はい!!」

 

 ツナは桂の提案にすぐ乗った。ツナには女子の部屋へお邪魔するのはハードルが高いと思っていたので、桂の提案は有り難かったのだ。

 

 この後ツナは桂と連絡先を交換し、また明日と約束して別れたのだった。

 

 

 

 

 

 一方、その頃……。

 

「これからどうするんだ? ボス」

「ん? そうだな……。新しくできた弟分に会ってみたいが……先にリボーンと話したい。わざわざ日本に来た意味がねーからな」

 

 とある人物が1人の部下を連れて日本に着いたのだった。

 




次は主人公視点に戻ります

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