クラスメイト K [本編&おまけ完結]   作:ちびっこ

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ついにサクラの武器が登場


揺れる体育祭 1

 人間往生際が大切。

 

 私は今、この言葉を身に沁みていた。リボーンに目をつけられたからではない。もうそれは諦めたからな。私の力ではもうどうにもならない気がする。では、なぜかというと――中学1年生にもなって人前で泣いたという数時間前の黒歴史を思い出し、悶えたくなるからだ。

 

 いつ殺されてもおかしくないのに、私が平然と悶えれる?のは泣いたからである。泣いたことによって精神が安定したのだろう。しかし、悶える原因が泣いたことと思えば悶えたくなる。……うん。自分でもわけがわからない。とにかく私は人間往生際が大切という言葉を理解しようとベッドの上で悶えていた。

 

 そして、お腹が鳴ったので、いつまでも悶えていないで晩ご飯を食べに行こうと思った。今日はデザートにホットケーキもあるしな。なんとも現金な私である。

 

 言葉を理解したと思うことにしようと考えながら私はベッドから起き上がった。

 

 

 

 兄は私の姿を見て心配そうにしていたが、何も聞こうせず静かな晩ご飯だった。久しぶりに家族全員そろっているが、誰も何も聞こうとしない。そして、晩ご飯を食べ終わると私の予想通り食後のデザートがあった。

 

 ホットケーキ

 

 私が子どもの時に兄のせいで泣いた私のために、兄が必死に作ったことがある。それから私に何かあるたびに必ず兄が作るのだ。つまり兄がホットケーキを作った時点で私に何かあったと家族にバレバレなのだ。静かな晩ご飯でも誰も聞いてこないのは当たり前と言ってもいい。少し恥ずかしいが、兄が私のために作ったと思えば食べないという選択肢はなかった。決して甘いものを食べたいからではないぞ。……け、決して――。

 

「……おいしい」

 

 一口食べるだけで美味しいとわかった。留学して腕が上がった気がする。私は素人なので気のせいかも知れないが。

 

「サクラが留学を勧めてくれたおかげだよ」

 

 私はパティシエとしてフランス留学が出来るなのに行かないと言った兄がバカと思っただけだ。と、心の中で返事をする。何気なく話した兄に恥ずかしくなったのだ。ニコニコする兄の視線を感じ何か話題をかえようとホットケーキを食べながら模索する。

 

「……就職先は?」

「ラ・ナミモリーヌだよ。来月からだ」

 

 ラ・ナミモリーヌと言えば、ヒロイン達が好きなケーキ屋だ。なぜ兄は無意識に原作に絡むのだ。ふと今まで気にならなかったことが気になったので、ホットケーキを食べながら聞いてみた。

 

「どうしてパティシエになろうと思ったんだ?」

 

 兄の才能ならばどの分野でも一流になれる気がする。それにお父さんの仕事も継ぐこともできた。兄は将来パティシエになると聞いたときに、私は兄が決めたことなら反対はしないので興味はなかったが、原作を知っていたならば私は反対したと思う。まぁそれを言い出すなら並盛に引越しすることを反対したが。『たら』、『れば』の話をしても意味はないのはわかってる。だが、パティシェを選んだ理由をどうしても知りたくなったのだ。

 

「僕の作ったケーキをサクラが嬉しそうに食べたからだよ」

 

 私はもの凄くマヌケな顔をしているだろう。それほど衝撃だったのだ。辛うじて兄に「……バカだ」と返事をするのが精一杯だった。……本当のバカは私だ。

 

「僕はバカでいい。僕がバカなことをしてサクラが笑うのが僕の幸せだからね!」

 

 普段はわざとバカな行動ををしていたのかもしれない……。兄の頭がいいのは私が良く知っていたのになぜ気付かなかったのだ……。『死なせたくない』という気持ちが自然と出る。今の私に何が出来るだろうか――。

 

「……明日学校行くから」

「え?」

「二人三脚をしたくなった」

 

 この話は終わりという意味で立ち上がる。満足するぐらい食べたしな。片付けは兄がするだろう。今まで私にさせたことがないのだ。何でもケーキを食べる間だけ私はお客様らしく、洗い物なんてさせられないというのが兄の考えらしい。私にはよくわからないが。

 

「……ごちそうさま。おいしかった」

 

 兄に付き合い、お客様らしく最後に声をかけて部屋に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 早朝?から兄はうるさかった。

 

 二人三脚が楽しみなせいで、早起きしてしまったらしい。……夜中の3時だぞ。私を巻き込むな。起きていたから良かったものの……。

 

「カギを閉めてなかった……?」

 

 兄に向かって質問する。普段はしないが、寝る時に必ず閉めるのだ。理由はカギを閉めていれば眠っているということで、ノックをしない兄が入ってこないようにするためだ。ちなみに普段から閉めないのは、合い鍵はお父さんが持っているため引きこもっても意味がないからである

 

「僕達の間に壁なんてないのさ!」

 

 急いで横目でドアを確認する。……カギは壊されてはいないようだ。しかし、威張りながら話していた兄の手にはピッキングツールがあった。

 

「違法だ!」

 

 ピコッ!という少しマヌケな音と私の声が響いた。このハンマーには100tという文字が書かれている。ちなみに私が書いた。ちくわの鼻の彼が使っていた5tでも良かったが、変態に使うにはやはり100tの方があってる気がしたのだ。このハンマーは枕元に置いてある。

 

 ハンマーの説明はこれぐらいにして、この変態をどうにかしようと兄を見る。痛くはないはずだが、兄の頭にはバツマークの絆創膏?があり倒れている。あのバツマークは一体いつ、どこから出したのだろう。謎である。少し疑問に思いながら兄の後ろの首元の服をもち、ズルズル引きずりながら廊下に放り出した。兄を引きずれば重いはずなのに重くないのも謎だな。強いて言うならばノリが良すぎる。

 

 廊下に出た瞬間に兄が何もなかったように立ち上がった。重くはなかったが、自分で歩いて出て行けと思ってしまう。

 

「サクラ、僕を崇めるがいい! ピッキングツールと思っただろ? これは粘土で作ったのさ! 凄いだろ? ちなみにカギは最初から開いていたのだよ」

 

 威張ってる兄を無視して扉をしめてカギをかけた。これ以上、兄のボケには付き合ってられない。私はこれからのことを何とかしなくちゃいけないと思っていたが、バカバカしすぎて眠たくなり電気を消して寝た。

 

 

 

 

 

 次に私の耳に入ったのは兄の声ではなく目覚ましの音だった。もう少し寝たがったが着替えて起き上がり1階に降りた。

 

 そして、後悔した。なぜならフリフリのエプロンを着た兄を見てしまったからである。

 

「おはよう、サクラ」

「……おはよう」

 

 いつも通りに朝の挨拶する兄にどうすればいいのかわからない。私が殴り続けて本当に変態になってしまったのだろうか……。

 

「サクラなら見てわかると思うが今日のお弁当は僕の愛情たっぷりだ! 楽しみにしたまえ!」

 

 どうやら兄は体育祭の弁当を作っていたらしい。兄はお菓子だけでなく、料理も出来るからな。エプロンをつけている理由がわかった。しかしその柄はない。お母さんのエプロンでもここまでフリフリしているのは見たことはないぞ。そもそも兄の体格にあうサイズがあることがすごい。私がジロジロとエプロンを見ていたことに気付いたらしい。

 

「男はロマンを求める生き物さ……」

 

 男のロマンを何だと思ってる。男ではないがなぜか腹が立った私は懐に常備してあるハリセンを構え言った。

 

「了解した、穏やかに苦痛を与える」

 

 スパーンという音が響いた。

 




体育祭といいながら、まだ朝ww
原作でも棒倒し(前編)の最後は朝の風景だし…と、いいわけしてみる
ただ眠くてこれ以上書けなかっただけですがw

主人公の武器(笑)
ピコピコハンマー(枕元)、ハリセン(持ち歩き用)
殺傷力はなし。兄以外に使われたことはない。
兄の度が過ぎたときに使う。兄の立ち直りは早く面倒なことにはならない

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