クラスメイト K [本編&おまけ完結]   作:ちびっこ

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日常編
先行き不安


 緊急事態が発生した。

 

 緊急事態のことを話す前に、まず私のことを知ってもらおう。

 

 名前は神崎サクラ。どこにでもいる普通の中学生だった。少し自分の思考が残念だが、誰かに迷惑をかけるようなものではない。お父さんの仕事の都合で並盛に引越しをして友達がいないぐらい。入学式から2ヵ月たったが誰もいないのは変なのかもしれないが、それは私が作らなかっただけである。1人の方が好きだから。そういう生徒はクラスに1人ぐらいはいるので、やはり私は普通の中学生だった。

 

 ……そう。「中学生だった」である。過去形だ。

 

 発端は休憩時間に廊下で沢田綱吉とぶつかったことである。沢田綱吉は走っていたみたいで、私は尻餅をついてしまった。彼は慌てて謝りながら私を立たせてくれたのだが、それが問題だった……。

 

 彼の手を触れた瞬間に『家庭教師ヒットマンREBORN!』の原作の内容が私の頭に流れ込んできたのだ。私はしばらく動けなくなった。当たり前だろう。42巻分の話や原作キャラの個人情報が一度に頭に流れ込んで、乗り物酔いのような感覚に襲われたのだ。よくその場で倒れなかったと自画自賛している。倒れれば恐らく沢田綱吉が私を心配して保健室に運んだと予想できるからだ。そして授業が始まるチャイムが鳴ったので、教室に戻るという理由で沢田綱吉から無事に離れることができた。

 

 ここで疑問に持つものもいるだろう。『家庭教師ヒットマンREBORN!』の世界と知ったのに沢田綱吉と関わらなかったことに……。しかし、よく考えればわかるはずだ。原作を全て知った私は未来に起こることを知っている……。つまり『ボンゴレ狩り』が起きるということを……

 

 そう、私は死にたくはないのだ。

 

 もちろん白蘭が倒されアルコバレーノのおかげで生き返ることは知っている。だから大丈夫という能天気な頭を私は持っていない。私だって知らない未来がある、原作が終わった後の未来も私は生きるのだから。つまり、白蘭と同じような考えを持つものが現れた時はどうすればいいのだ?原作が終わった後では生き返ることは無理だろう。関わっただけで死ぬと分かっていれば、私は関わる気にはなれない。鍛えればいい?500m先から狙撃されて逃げれる自信があれば私だってするさ。私は生まれながらの殺し屋ではないのだ。

 

 少し熱くなって語ってしまったが、私は原作キャラとは関わる気はないのはわかってもらっただろう。だから私からすれば授業のチャイムで彼と離れれたのは幸先がいいのだ。

 

 ちなみに、誰に向かって語っているのだというツッコミはしてはいけない。話す相手もいないので、脳内で自身に語って状況を整理しているのだ。誰にも迷惑はかけないので私は重宝している。

 

 話を戻そう。

 

 原作キャラと関わらないためには転校するのが1番いい。しかし、最初に言ったが私は並盛に引っ越してきたばかりなのだ。ここでお父さんとお母さんに転校したいと話せば……学校で何かあったと心配するだろう。何かあったから転校したいのは間違ってはないが……。余計な心配をかけたくない。それに正直に話せば、病院に通わすべきか悩むだろう。のほほんとしてる両親と言っても、私が「この世界はマンガの世界なんだ!」と言えば、マンガの読みすぎて頭がおかしくなったと思うだろう。そうなると私の大好きなマンガを買ってもらえなくなる……。それは避けたい。兄みたいな性格だと心配されなかったと思うと今までが悔やまれる。もし兄が「僕は勇者なんだ! 世界を救うために旅に出る!!」と言っても私の家族は絶対心配しないで見送ると胸を張って言える。それぐらい兄は変わってるのだ。兄の性格を羨ましいと思ったのは初めてかもしれない……。

 

 意外なところで兄を羨ましく思ったが、再び話を戻すことにする。正直にマンガの世界と話すのはタブーだ。話せても兄ぐらいだろう。話せばややこしくなるのは間違いないので話さないが。話を作り両親を説得して転校する案もある。しかし……この学校から簡単に転校出来るのだろうか……?転校するには『雲雀恭弥』の許可がいるだろう……。

 

 もし、作った話で転校したのがばれれば、彼の怒りに触れるのではないのか……?それだけは避けたい。その前に彼とは関わるのは危険だ。他の誰よりも私は危険だろう。理由は「サクラ」。彼の逆鱗に触れるもの。そして私の名前。名前がばれるだけで私は危険にさらされる。『ボンゴレ狩り』の前に彼に狩られてしまう。たとえ、転校することができたとしても、私は実家(並盛)から通うことになるはずだ。彼がもし転校書類を見て名前を覚えていれば……。これからの人生は三浦ハル風に言うと「デンジャラスです!!」……こうして、転校案は却下になった。

 

 転校案がなくなると、関わらないように努力すればいい。だからミスディレクションを勉強しようかと思ったが、リボーンに目をつけられ幻の守護者になる未来を想像してしまった。つまり関わらないと意地を張りすぎてしまい、目をつけられれば本末転倒になる。私はただのモブキャラを目指すと決心した。

 

 これで私のことがわかってもらえたはずだ。

 

 そして、よくここまで考えたと思っただろう。情報が一度に流れ込んだせいで顔色が悪かったので、先生が心配して体育の授業を見学にしてくれたのだ。その間に必死に考えたのである。

 

 

 そんな私に緊急事態が発生したのだ。

 

 今日の日付は6月18日。原作が始まった日だ。体育の授業が終わったのに沢田綱吉が教室にいるのだ……。原作通りなら掃除を押し付けられたがサボり、家に帰るとリボーンと出会う。大体はこれで合っているはずだ。それに落ち込んでいるところから笹川京子が持田剣介が付き合っているのを勘違いしたのだろう。しかし、先生に掃除が終わったと報告している姿を見ると疑問が出てくる……。彼はなぜサボらなかったのかと……。しかし、私の疑問はすぐに解消された。それは……

 

「あの……大丈夫……? オレとぶつかったせいで体調悪くなって体育を休んだって聞いたけど……」

 

 モブキャラを目指す私にとってこれは先行き不安だ……。




今までと作風がかなり違うと思います

流石に最初から笑いの方向にはもっていけなかったww
少しずつ増えていく予定

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