クラスメイト K [本編&おまけ完結]   作:ちびっこ

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次回、揺れる体育祭

 現在、私は視聴覚室の隅の席で座っている。面倒だが、明日の体育祭の会議で1年から3年のA組は集まらないといけないのだ。ん?ドクロ病と雲雀恭弥のイベントはって?私が知るわけないだろう。何度も言うが原作には関わる気がない。

 

 ちなみにドクロ病というのは、死に至るまでに人に言えない秘密や恥が文字になって身体に浮かぶらしい。私はその知識を知った時に絶対嫌だと本気で思った。恐ろしくてその病に罹ったことを想像しただけで死にそうだ。そういえば、沢田綱吉の秘密の中に「サイヤ人といっていじめられる」と書かれていたが、ある意味正解な気がする。後1年もすれば彼も両手からいろいろ出すぞ。初めに言っていじめた奴は預言者だな。

 

「1のAの沢田ツナだ!!!」

 

 私がくだらないことを考えている間に原作が進んでいた。棒倒しの総大将に沢田綱吉が押し付けられているところらしい。「賛成の者は手をあげてくれ!」と笹川了平が叫んでるが、まだ私はあげない。あげるタイミングは獄寺隼人が脅した時だ。モブキャラ・クラスメイトKならばそのタイミングが正解だからな

 

 ついに獄寺隼人がクラスメイトを脅し始めたので私は手を上げた。後は勝手に原作が進むだろう。その間に私は自分の種目を再確認する。

 

 200メートル走と綱引き。

 

 正直、どちらも得意ではない。しかし、原作キャラをさけるため女子だけの競技を選んだ。さらにヒロインを避け、借り物競争などのフラグが立ちそうなものを除いた結果だ。得意ではないが、これは我慢するしかない。

 

「最後に伝えることがある!!!」

 

 また笹川了平が叫んでるな。最後に話すことなのだから重要なことだろう。原作にはなかったことなのでこれは真面目に聞こう。そういえば……リボーンのダミーがなかったような……。恐らく私が種目を確認してる間に終わったのだろう。

 

「我々A組を応援するために保護者の方々が応援団を組んでくれたのだ! 今日は代表者がきてくれている。今から紹介しよう」

 

 笹川了平が教室から出たので呼びに行ったのだろう。それにしても保護者の応援団があるとは知らなかった。これほど熱狂的に準備をしているのだから、保護者も協力的でも不思議ではないな。原作ではカットされたのだろう。

 

 バンッ!という大きな音が響きながら扉が開かれた。その後にゴンッという鈍い音が響いただろう。「だろう」と言ったのは私には判断できなかったらだ。なぜなら鈍い音を出したのは私なのだ。

 

「この方が先程話をした代表者の神埼桂さんだ! 明日はお世話になるのだから挨拶をするぞ!!」

『『『よろしくお願いします!!』』』

「諸君! 待たせたね! 僕が来たからには大船に乗ったつもりでいたまえ!」

 

 誰も待ってない。いや、原作キャラ以外は兄が来てヤル気が上がったのだから待っていたのかもしれない。しかし、兄は競技には出ないのだからそのノリはおかしいと思う。そもそも兄は就職活動中じゃなかったのか。それに私が必死に回避していた原作に簡単に関わるなよ!?

 

「サクラーー!」

 

 頼むからやめてくれ。私に向かって嬉しそうに手を振るな。私が振り返すまで続けようとするので、諦めて手を振り返した。視線を大量に感じるのは気のせいと思いたい。

 

「僕が必ずA組を優勝させる! そのためにはまず、保護者参加の二人三脚はサクラと僕が出なくてはならない!」

 

 絶対にそれは関係ない。しかし、兄が言ったのでなぜか納得して変更しようとする。沢田綱吉が「この人はただ……神崎さんと二人三脚したいだけじゃ……」と呟いてる声が聞こえた。やはり彼は『兄だから』ということで全て納得しない人物なのだろう。

 

 私は変更してる間に考える。兄をどうするべきか……。一度決めれば、簡単に譲らないのが兄だ。私が優勝に興味がないし、一緒に二人三脚をするからと言っても応援団をやめようとしないだろう。特に今回は代表者だ。上のものが簡単に降りるのは許されないと思っているはずだ。禁句を言って強制的に大人しくさせれば、ここにいる人達が兄を慰めようとする。それはそれで面倒なことになるな……。

 

「放課後にツナ達が棒倒しの練習をするぞ。サクラの兄も参加するぞ。サクラはどーすんだ?」

 

 いつの間にかリボーンが私の前に居て悪魔の囁きをした。兄が棒倒しの練習に参加する……。あの原作に関わる……。

 

 何度も言うが、私は死にたくはない。しかし……兄を見捨てることはできない……。

 

「……兄が行くならいく」

「そうか。場所は兄が知ってるぞ。またな」

 

 リボーンはまたと言って去って行ったが私はもう会う気がない。兄を説得させて行かないようにする。

 

 

 

 

 

 

 

 放課後、私は土堤にいた。兄を説得させることができなかったのだ……。

 

 私がお兄ちゃんと言って頼んでも、「僕に任せればいい! 必ず優勝させる!」と、勝手に勘違いしてさらに燃えた。禁句を言っても暴走した兄には聞こえないらしく、どこから用意したのかわからない風紀委員の使ってる学ランを着て応援の準備をし始めた。

 

 ちなみに、就職活動のことを聞けば私が財布を渡した日には決まっていたらしい。家に帰っても居なかったのは、応援団の打ち合わせだったようだ。何でも黒いスーツを着た赤ん坊に応援団の話を持ちかけられて、兄は喜んで承諾したらしい。つまりあれだ。もう兄は取り返しのないところまできているのだ。説得出来なかったのは私が諦めたというのもあった……。

 

 原作通り彼らは棒倒しの練習を始めようとして、兄は「フレーフレー」と叫んでいた。私はというと、少し離れた場所で体育座りをし現実逃避している。

 

 ボーっとしながら見ていると、獄寺隼人と笹川了平がケンカし始め、獄寺隼人がダイナマイトを使い始めた。原作にいない兄はどうしてるかと気になって見れば、なぜか必死に応援していた。棒倒しのルールを知らないだろ!?とツッコミしたくなった。沢田綱吉は棒の上で揺れのせいで慌てている。

 

『望んでもいないのに総大将になってしまった沢田綱吉。断りたいが、好きな子には嫌われたくないと棒倒しのように揺れ動く中、無常にも時間は過ぎてく――。果たしてツナは答えを見つけることができるのか。次回……揺れる体育祭』

 

 ……普通だな。心の揺れと棒倒しの揺れをかけてみたが、マフィアとも一緒にすればよかったかもしれない。いや、雲雀恭弥を忍び寄る影と表すのもありだったかもしれないな。……そもそも結果がわかってるのに次回予告を考えるなんてサービスしすぎだ。

 

 くだらないことを考えてる間に原作通り沢田綱吉が川に落ちた。兄のカバンにタオルを入れたので大丈夫だろう。熱は出ても出なくても笹川京子に応援されれば同じだしな。後は兄に任せて私はまた現実逃避しよう。ネタを考えるほど余裕ができるみたいだからな。しかし、私の思考を邪魔をしようと思ってるのか、また黒いスーツを着た男が現れた。何度も思うが神出鬼没だろ。

 

「サクラからみてツナ達はどうだ?」

「……興味ない」

「あいつらはサクラに何度もかまうだろ? どーして興味が出ねーんだ?」

 

 思わず私はその言葉に腹が立ち、リボーンに掴みかかった。

 

「――君の気分で私と兄を巻き込むなよ! 何がボンゴレ10代目だ――何が最強の殺し屋だ。何をしても許されると思ってるのかよっ!!!」

 

 言ってから気付く。言ってはいけないことを言ったことを――。私の予想では何度も彼らが私にかまってくるのはリボーンの差し金だったのだ。思わずさっきの言葉で腹が立ってしまった……。

 

 慌てて視線を動かせば、タオルで体を拭いていた沢田綱吉が唖然としていた。残り3人も状況についていけなく固まっていた。兄だけは動き、私に駆け寄ろうとしていた。

 

 もう私は兄を見ることしか出来なかった。リボーンには目をあわせるなんて出来ない。掴みかかってる手を離したいが、震えて上手く行かない。私は兄を見ることしか出来なかったのだ。

 

 私は1度も彼らから裏の世界の話を聞いてない。それなのに知っている私をリボーンが見逃すとは思えない……。それに私の身体がリボーンに対する恐怖を感じているのが、何よりも殺し屋のリボーンの強さを知ってるということになる……。いくらマンガで面白おかしく書いても――ここは現実。銃を持ってる相手に私は簡単に殺されると身体が反応してしまってるのだ。

 

「サクラ! サクラ!」

「……お兄ちゃんっ……」

 

 兄に揺さぶられて声が出せば涙が出た。いつの間にか私の手からリボーンは居なかった。私が気付かない間に上手く抜け出したらしい。『最強の殺し屋』という言葉が頭から離れない……。

 

「……何をしたんだい? サクラは怒ることはあるが、滅多に泣かない。いくら幼くてもこのままだと僕は君を許さない」

「お前……リボーンさんに向かって……!!」

「獄寺、やめろ。オレが悪かったんだ。……謝りてーが、今はやめといた方がいいみてーだな」

「……そうだね。サクラ、帰るよ」

 

 リボーンの声を聞くたびに肩がビクッと振るわせる私を見て、兄は私を横抱きにして連れて帰ろうとする。普段なら絶対断るが、歩ける自信がなかったので兄に甘えることにした。

 

「……お兄ちゃん……ごめん……」

「サクラは軽いから問題ないさ」

 

 私は謝ったのはそういう意味じゃない……。応援団をするだけではまだ大丈夫の可能性があったのに、私のせいで家族全員を危険にした。リボーンに目をつけられたのだから……。

 

「違う……ごめん……。私のせいで……」

「……僕は何があってもサクラの味方だ。謝らなくていい」

 

 私はもう言葉が出なくて兄にしがみついた……

 

 

 

 

――――――――――――――

 

 

 泣いていたサクラを桂が連れて帰った後、我に返ったツナは水に濡れた身体をきれいに拭かずリボーンに詰め寄った。少しずつではあるが、ツナはサクラとの壁がなくなってきたと思っていたのだ。まだ一緒に遊べる段階ではないが、それでも困ってるツナを見れば「あくまで委員会活動だから」と言いながらも助けてくれたのだから――。

 

 一方、リボーンはそんなツナに何も応えようとしない。いつもなら詰め寄ったツナに関節を決めたりするが、今回のリボーンは何もしようとしなかったのだ。

 

「お前、神崎さんに何したんだよ!?」

 

 そんなリボーンの態度に更に詰め寄るツナ。再度詰め寄られたことによって、リボーンは少し間をおいてから話し始めた。

 

「……今回はオレのミスだ。後でサクラには謝る。おめーらも、悪かったな」

 

 リボーンの口から出た言葉は謝罪だった。しかし、それ以上は何も話そうとしない。つまり詳しく話す気はないという意味も含む謝罪だった。ツナは何となくだが、その意味を勘付いて言葉が出なくなってしまった。

 

「小僧、神崎は謝れば許してくれるって」

 

 山本はただのケンカだと思い、リボーンに励ましの言葉をかけた。獄寺は山本の言葉を聞いて、「このバカと一緒というのは癪だが……」と、小声で前置きしてから「リボーンさんなら大丈夫スよ」と声をかけた。その後に「にしても……あいつの兄貴はリボーンさんに向かって暴言はきやがって……」と、ブツブツとつぶやいていたが。笹川は状況をよくわかっていなかったが、「極限気合で謝ればいいのだ!!」と叫んだ。

 

 リボーンは彼らにお礼の返事をし、用事があるからと言ってその場を離れようとしたが、足を止めて振り返った。振り返って見たのはツナだった。

 

「……ツナはサクラと仲良くなりてーんだよな?」

「えええ!?」

「なんだ? この前、オレに言ったことは冗談だったのか?」

「え? ――あ! 本気だから怒ってんだろ!!」

 

 急に問いかけられてツナは焦ったが、『サクラの壁をなくしたい』とリボーンに言ったことを思い出した。思い出した途端、リボーンがサクラを泣かせてツナ達の努力を無にしたことにムカついて怒鳴った。しかし、リボーンはツナの怒鳴り声を無視してニヤッとした顔で去っていったのだった。

 

 ツナはその笑い方を見て、リボーンがまた何かすると思い頭をかかえたのだった……。

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 ツナ達から離れたリボーンは悩んでいた。

 

 サクラの言動を考えれば、裏の世界を知っている。しかし、リボーンの調べではサクラはただの一般生徒だった。もう1度詳しく調査するのは当たり前だが、サクラの言葉が頭をよぎる。

 

『私と兄を巻き込むなよ!』

 

 この言葉をリボーンは裏の世界に巻き込むなという意味にとらえた。ボンゴレの力を使い表立って調べれば、ツナの願いは叶わなくなる可能性が高いと直感した。

 

 本来ならば、リボーンはツナの安全を最優先に考えなくてはならない。しかし、今回は踏ん切りのつかないツナのためにリボーンが行動したことで起きた問題だとリボーンは考えたのだった。

 

 

 

 事の発端は、リボーンがサクラをボクシングジムに誘うために声をかけたことから始まる。夏休みにサクラが図書室に居る日を教えたが、進展もなく帰ってきたツナのために一肌脱ごうとしたのだった。しかし、結果は失敗だった。用事があると断られたのだ。

 

 リボーンは誘いを断るためにサクラがウソをついたと思ったが、調べた結果、兄の桂の就職祝いを買いに行くという用事が本当にあったのだ。更に調べると桂はサクラを溺愛しており、サクラは疲れた顔をしているが桂とは距離を置こうとはしないことがわかった。

 

 そこでリボーンは攻め手を変えた。桂と仲良くなれば、サクラとの距離も縮まるのではないかと――。もちろん、リボーンは簡単にいくとは思っていない。しかし、仲良くなるきっかけを作らなければ、何も変わらないのもわかっていた。

 

 サクラを溺愛している桂を応援団に誘うのは簡単だった。そして桂はサクラに友達が出来ないことを気にしているため、ツナ達と仲良くなるきっかけがほしいと頼めば喜んで協力してくれた。それが今回の棒倒しの練習だった。

 

 

 

 

 リボーンは今回のことを考えた。桂の様子からして、桂は裏の世界のことは知らない。知っていれば、サクラを溺愛する桂が協力するとは思えなかったのだ。しかし、サクラは裏の世界を知っている。ツナがボンゴレ10代目候補ということも、リボーンが殺し屋ということも――。

 

 そして、サクラが知っているならば疑問が出来る。関わりたくないと思いながらもツナが困っていれば助けるのだ。もし、サクラが暗殺者だった場合は信頼を得るために助けるのは理解できる。しかしそれならば、ツナと仲がいい山本を避ける必要はない。周りから固めた方が効率がいいのは誰が考えてもわかるのだ。

 

 では、なぜツナを助けたのか? 答えは簡単かもしれないとリボーンは考えたのだった。サクラは裏の世界に関わりたくないが、ツナ達と触れて壁がなくなってきたからだと――。

 

 もしそうならば、今回の行動は自身のミスとリボーンは判断したのだった。ツナと違いリボーンは裏の世界でずっと生きていたのだ。自身が近づくだけでツナの願いが叶わない。

 

 これはただの憶測ということをリボーンはわかっていた。サクラが裏の世界の人間で全て知っている可能性の方が高いのだ。それでもリボーンは表立ってボンゴレの力を使い、サクラを調べる気にはならなかったのだ。

 

「あいつに頼むしかねーな」

 

 思わず独り言を呟いたリボーンは公衆電話の前にいた。この公衆電話は特殊な電話で盗聴の心配はなく、安心して電話をかけることが出来るのだ

 

 リボーンは受話器を取り電話をかけた。しばらく流れていた音楽が止まったので言葉を発する。

 

「ディーノ、頼みてーことがあるんだ。マフィアに気付かれないよう秘密裏にある人物を調べてほしい。ボンゴレにもだ――――」

 

 リボーンは面倒見が良く人柄も良い元生徒に頼ることにしたのだった。

 




また更新が遅くなりました
でも今回は6000文字を突破したので許してほしいww
半分にわけようか本気で悩みましたよw

話がちょっと動き出しました
そのためシリアスさんが登場しましたが、いつまで続くかな……w

カットした会話?
「……どうして学ラン?」
「何を言ってるんだい? 応援団と言えば学ランじゃないか!」
「そう……(遠い目)」
「わかってるよ。サクラ。僕と一緒に写真を撮りたいんだね! さぁ! 撮るがいい!」
「…………(さらに遠い目)」

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