クラスメイト K [本編&おまけ完結]   作:ちびっこ

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私は悪くない

 夏休みが終わり、学校が始まった。私は一学期と同じくギリギリに登校し、授業が終われば急いで帰っている。理由はもう説明しなくてもいいだろう。兄が帰ってきて一学期と同じパターンは無理かと思ったが、兄は私の夏休みが終わると同時に就職活動をし始めたため忙しく家にいる時間が短くなった。つまり、家はもっとも安全な場所なのだ。それに兄に買ってもらったマンガがあるので私は引きこもるのを楽しみにしている。急いで帰るのは当然だった。

 

 家に引きこもっていたい私だが、外に出なければと思う日もある。もちろん学校以外の用事でだ。私は原作キャラに会いたくないため、彼らが放課後に用事がある日に実行すると決めていた。まぁ並盛を徘徊してる人物がいるので絶対に安全とは言えないが。

 

 他に不安があるとすれば、原作がずれた場合である。しかし、その不安は当日に解消された。私は登校中に猛スピードでパンツ一丁の男に抜かれたのだ。私の動体視力では人物を判別することは出来なかったが、パンツ一丁と一緒にいた人物は男子制服を着ていた。

 

 授業中に沢田綱吉を見れば、笹川京子をチラチラ見ながらずっと頭を抱え込んでる。授業を聞けよ。と思ったが、これは笹川了平にボクシングを誘われる原作で間違いないだろうと確信した。

 

 それにしても沢田綱吉はボクシングの何が不満なんだ。いじめられっ子がボクシングに出会って変わることもあるんだぞ。君は努力が足りないんだ。あれだけ戦えると考えれば才能があるのだろう。君は恵まれているが、成功した者は皆すべからく努力しておる。それほど努力というのは大事だと私も思う。……うん、いい言葉だ。

 

 心の中で沢田綱吉に説教しているが、人のことは言えない。私も努力しよう。山本武達に見学へ行こうと誘われないように授業が終われば急いで帰ろうと、心に決めたのだった。

 

 

 

 今思えばあれがフラグだったのだろう。無事に山本武からは逃げれたが、黒いスーツを着た男に捕まってしまった。迂闊だったな、と後悔した。

 

「ちゃおッス。今からツナがボクシング師匠とガチンコ勝負するぞ」

「用事がある」

 

 リボーンは怖いが、はっきりと断った。今回は夏休みに彼らと図書室で過ごす時とは違う。原作には絶対関わる気はない。それに用事があるのは本当だ。

 

「すげー勝負になるかもしんねーぞ」

「興味ない」

 

 これも本心である。結果がわかってるのに興味が出るわけがない。 

 

「剣道部主将との勝負みてーに、ダメツナが勝つかもしれねぇぞ。本当に興味がねーのか?」

「ない。用事がある」

 

 何度同じ事を言わせるつもりなんだ。少し腹が立ってきた。

 

「……覚えたほうがいい。女性が嫌がることをすれば紳士にはなれないぞ」

 

 少し危険なことを言ったと思ったが、紳士という言葉に弱いのか、あっさり謝り去っていった。紳士様様である。これからも使うことにしよう。相手の弱みにつけこむが、私は悪くない。関わってくる相手が悪いのだ。

 

 

 

 

 

 それから私は無事に家についた後、私服に着替えて出かけた。

 

 急にある男が飛び出してくる可能性もあるので、辺りを見回しながら歩いた。少し不審者かもしれないと思っている間に目的地の店に着いたようだ。ここで安心するとフラグが立つので、緊張しながら店に入ることにする。

 

 店に入っても店員は近づいてこない。いい店だ。私は話しかけられるのは苦手なのだ。1人では問題ないみたいなので、これからお世話になるとしよう。と、思いながら店内を見回した。

 

 狙っていた財布があったので安堵した。後はレジに行き店員にラッピングを頼むだけだな。

 

「ふむ? 男物だね。サクラにしては珍しい。誰かにプレゼントかい?」

 

 私の隣から聞きなれた声がした。それに勝手に私の肩に手をまわすのはバカしかいない。……商品があって安堵したのが失敗だったのか!?その前に……。

 

「どこからやってきた!?」

「サクラ、何を当たり前のことを聞いてるのだい? 店のドアからに決まってるだろう」

 

 正確な答えだ。正確な答えだが、なぜか腹が立つ!!

 

「……しゅ、就職活動は?」

 

 言葉が詰まったのはイライラを抑えてるからである。決して緊張や動揺とかではない。

 

「もちろん行ってきたよ。帰りに店の窓からサクラが見えたので来たまでさ! それより一緒に僕と出かけた時に買えば良かったのに、一緒にこの店も来ただろう?」

「……外で待ってて」

「深くは詮索はしないが、これでいいのかい? もちろんサクラが選んだんだ。いいものだよ。僕も買おうか悩んだくらいだからね! やめた理由はまだ使えるので買わなかっただけだから安心していい。しかし、少し値段が高すぎないか? サクラのお小遣いでは大変だろう。僕も少し出してあげよう!!」

「――さっさと……出て行け!!! ヅラぁ!!」

 

 私が禁句を言ったので、兄はトボトボと歩きながら店の外へ出て行った。兄はなぜか私にヅラと呼ばれると落ち込んで静かになる。静かになるが普段から私が使わない理由は面倒だからだ。

 

 今でもこの世の終わりのように哀愁を漂わせて外で待っているだけで、兄を慰めようと人が寄ってきてる。これは一時的なものではない。私は許すまでこれがずっと続くのだ。最終的に面倒という言葉も出なくなる。

 

 哀愁漂う兄が気なってる店員さんにお金を払いラッピングをしてもらう。待ってる間に外を見るとラッピングしないほうが良かった気がした。「今回は一体何人集まるんだ……」と、思わずつぶやきながら雲雀恭弥が通らないことを願った。

 

 商品を受け取った後、私は急いで外に出て兄の下に向かった。

 

「……まだだけど……就職祝い」

 

 ボソッと言いながら兄に先程受け取った商品を渡す。そして、身の危険を感じて家まで走った。

 

 走りながら私はいろいろ後悔した。人前で渡すんじゃなかった。兄のことだ、必ず自慢する。走って帰ってるが、家に帰れば必ず兄に会う。そもそも就職が決まってないのに渡すのは最悪だ。兄のことだからすぐ決まると思うが、それでも決まってから渡したかった。何のために一年間も地道にお金をためたんだ。夏休みに一緒に出かけた時に兄が興味を持った物を観察していたのに、値段を見ていたことに気付かなかったのは失敗した。兄のプレゼントなのに金を出すと言われ、つい禁句を言ったのも失敗した。本当に今回のプレゼントは失敗ばかりだ。まぁ兄のことだから喜ぶのは決まってるのだが……。それに逃げたのは兄が喜ぶからという理由だ。

 

 混乱しているのは後悔なのか、これからの兄の態度の不安なのか、よくわからず走っていると、後ろから手を引かれてバランスを崩した。しかし、支えられたので怪我はしなかった。振り返ると私の予想通りで嬉しそうな顔をした兄だった。

 

「……サクラ、ありがとう。一生大事にするよ」

「一生は重い」

 

 思わずツッコミを入れた私は悪くない。

 




断りましたが、ついに原作に誘われた主人公!
……兄のせいで忘れられた気がしたので書きましたww

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