クラスメイト K [本編&おまけ完結]   作:ちびっこ

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夏の過ごし方

 私は自身を褒めてやりたい。夏休みは地獄だったのだ。意外にも沢田綱吉達のせいではない。彼らは5日連続で図書室に来ていたが特に会話はなかった。委員が座る席の前に「私語厳禁」と勝手にポスターを貼ったのが効果があったのかもしれない。私の字は綺麗だからな。先生が書いたようにしか見えなかったのだろう。まぁ山本武も来た日は面倒だったが。練習がない日があったらしい。面倒と言っても、沢田綱吉と同じ事をして放置したけどな。

 

 山本武が選んでいる間に沢田綱吉は読書感想文を書こうとしていた。なぜか彼は私に質問しようとしてたが、獄寺隼人に教えられていた。教えていた声が少し大きかったが、ファインプレーだったので注意するのはやめた。そして、日をまたいたが彼は読書感想文を無事に仕上げたらしく喜んでいた。これで彼らが学校に来る用事がなくなったので私も嬉しかった。ただ、もう少し早く仕上げてくれとも思う。後少しで私の委員活動も終わるのだ。つまり、明日から来なくていい。タイミングが悪すぎる。非常に残念だった。

 

 彼が借りていた本を返す時になぜかお礼を言われたが、私は何もしていない。だから、お礼をするために誘われたが、当然断った。適当に断ると当然のように獄寺隼人が怒るので「用事がある。それに私は委員活動の1つ。だからお礼は活動でもないのに手伝った彼にするべき。彼と出かければ?」と言えば、「右腕として当然のことです!」と沢田綱吉に向かって言っていた。その後、沢田綱吉がコントのように叫びながらツッコミをしたので、外に追い出されていた。最後の最後に追い出されるとはオチも完璧だな。と、変なところで感心したのはヒミツだ。

 

 ちなみに追い出したのは先生である。様子を見にいこうと思っていたらしく、廊下にまでツッコミが聞こえたらしい。利用者は彼ら達だけじゃなかったので、追い出されるのは当然のことだった。終了時刻間近だったのもあると思うが。 

 

 このように夏休みは彼らとは特に何もなかった。問題は兄である。

 

 初めに違和感を覚えたのは兄が帰ってきた次の日だった。私は委員の仕事のため起きるのが早かった。しかし、私が起きた時間にはもう兄がいなかったのだ。正直、前日のお土産攻撃を経験した私は拍子抜けだった。兄は朝からうるさく、学校についていくとか言いそうで警戒していたのだ。

 

 そのためお母さんに尋ねたところ、兄は就職活動の準備のために学校へ行ったらしい。この時の私は少しだけ違和感を覚えたが、帰ってきて次の日に行くとは偉いなと感心した。

 

 次に違和感を覚えたのは初めに違和感を覚えた日の昼。沢田綱吉達から無事に逃げ、家に帰ってる途中だ。歩いてるだけで周りから視線を感じたのだ。しかし、私はそれを昨日のバラ事件が原因と1人で納得したのだった。今なら分かる、それは間違いだったと断言できる。

 

 本格的に気付いたのは次の日の朝だった。ちなみに、今日も兄が朝から学校に出かけてるとお母さんから聞いたときは気付かなかった。昨日、兄が遅くに帰ってきたのも知っていたにも関わらず……。

 

 私が学校に行くために外へ出た時にやっと気付いたのである。何があったかというと、外に出た瞬間に「桂さんの妹」と見知らぬ人達が私を見ながらコソコソ話していたのだ。

 

 私は嫌な予感がしてすぐさま家に戻り、兄のケイタイに電話をかけた。

 

『やあやあ、待たせたね。どうかしたのかい?』

「今、何してる?」

『おや? サクラからとは思わなかった!』

「今、何してる?」

『ふむ? 今は並盛駅にいるが急用かい?』

 

 この時点でおかしいことに気付くだろう。私が起きた時には兄はもう出かけていた。それなのにまだ並盛駅にいるのは変なのだ。

 

「今、何してる?」

 

 バカも一つ覚えみたいに同じ言葉ばかり繰り返す。それだけ早く私の質問の正確な回答がほしいのだ。

 

『この街に引っ越してまだ半年もたってないだろう? 挨拶回りさ! 心配しなくていい。サクラのこともしっかりお願いしたからね! もちろん抜かりはないさ。サクラの写真を見せてるからね!』

「…………」

『おや? どうかしたのかい? 感動して言葉も出ないんだね! 気にしなくていい。兄として当然のことをしたまでだからね!』

 

 呆気に取られて言葉が出ないだけである。

 

『もしかして、怒っているのかい? すまない。以前、僕のせいでいろいろあったからね……。早めに対処したほうがいいと思ったのだよ……』

 

 兄の言うとおり、昔にいろいろあった。兄と比べられるだけならまだいい。兄の妹と知れば手のひらを返したような態度や暴言があった。騒動がおきてもすぐに納まったが、あまり良い気分ではなかった。兄が妹を大事にしているという情報を掴み静かになっただけなのだ。当然、腫れ物のように扱われ、私は友と呼べる人は1人も出来なかった。まぁ納まるだけいい方なのだろう。世の中には苦労してる人は大勢いる。それに作ろうとする努力を私は自ら放棄したのもあるしな。

 

 ずっと兄はそのことを気にしている。そして、兄は私に甘すぎた。兄は私が努力しないことに怒りもせず、守るように行動するようになった。昨日のバラも兄が私を守るために周りを牽制するための行動だったのだろう。少し方向がずれてるのが残念だが。もっとも、兄の気持ちを知っているのに何もしない私が言えることではない。

 

『それにサクラは最近外に出たくないと母上から聞いて……。勝手に行動して、すまなかった。サクラ』

 

 それで写真を持って、学校に行く前と帰りに行動していたのか。道理で兄が帰ってきたのに会わなかったはずだ。全て私のために行動したとしれば、怒る気にならない……。しかし、これだけは言う。

 

「……バカだ。寝る間も削ってすることじゃない」

『サクラを守るのは兄の役目だからね! それに元々は僕の責任だ』

 

 もう呆れて溜息しか出ない。兄はバカだ。どうして私にそこまで優しくするのかがわからない。聞いてもサクラの兄だからとしか答えないだろう。

 

「もうすぐ委員の仕事が終わって用事がないんだ。そっちが都合のいい日に出かけよう。だから……挨拶回りはもういいよ」

 

 わざわざ1人で苦労することはないのだ。私と一緒に出かけれ牽制できるのだから……。もう原作キャラとかどうでもいい。このバカな兄と出かけよう。

 

『本当かい? 楽しみにしたまえ。必ずいい思い出にすると約束しよう!』

「ん」

 

 兄と約束して電話を切れば、お母さんが気にしていた。友達がいない私が電話をしていたのもあったのだろう。

 

「お兄ちゃんに用事があっただけだから」

「そう。わかったわ。でも、早く行かないと遅刻するわよ?」

 

 「わかった」と返事をしたが、お母さんはどこまで知っているのだろう。ふと疑問に思う。全て知っていて山本武と会って喜んだのかもしれない。少し能天気すぎる喜び方だったが。そう考えれば、滅多に怒らないお父さんが怒ったのは当然だった気がする。私にいろいろ意識させたくなかったのだろう……。

 

 この家族を死なせたくない。改めて思った。

 

 

 

 ただ、委員会活動が終わった次の日から、兄と毎日出かけるようになったのは予想外だった。運よく原作キャラとは1度も会わなかったのは良かったが……。しかし、ハイテンションの兄に毎日連れまわされるのは地獄なのだ。都合のいい日と言ったのは失敗だったと後悔した……。

 




悩みましたが、今回はネタを出しませんでした。
再確認の話だったので。

ズルズル書こうかと悩みましたが、次の話から二学期です

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