クラスメイト K [本編&おまけ完結]   作:ちびっこ

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いらない

 本を読んだ後、読書感想文の本を選び終われば今日の委員活動の終了時刻になった。あれから特に会話もなかったな。彼らがまじめに本を読むとは思わなかった。騒ぎ出せば、外に出すつもりだったのが。

 

 先生も一度様子を見にきたが、静かなのですぐ去っていった。少しは居ろよ。部活の担当もしてるらしいので、沢田綱吉達しかいない状況だったが、許してあげよう。私は心が広いのだ。

 

 彼らに今日は終わりと声をかければ、続きが気になり借りることにしたらしい。ただ、借り方がわからないので教えてあげた。獄寺隼人がわからないのは理解できるが、沢田綱吉は入学案内で聞いてるだろ。まぁこれも委員の仕事なので文句は言わないが。

 

 彼らはこの後に山本武と待ち合わせらしい。誘われたが当然断った。なぜ私が一緒に行かないといけないのだ。何度もいうが、あくまで私は委員の仕事だから親切だったんだぞ。全く、このネタを何度引っ張らす気だ。勘弁してくれ。私は君達と群れるつもりはない。ちなみに、気分で雲雀恭弥風に心の中で言っただけで深い意味はない。それに現実では獄寺隼人がいるので優しく言わないといけない。正直、面倒だ。

 

「……君たちが帰った後に戸締りがある。その後にカギを職員室にかえしにいくし、先生に報告しないといけないから」

「そっか……。オレ達と違って神崎さんは委員だったんだ……」

 

 ちょっと待て。いつから仲良く一緒に来たと錯覚していた?

 

 いろいろツッコミをしたいが、我慢して彼らを追い出すことを優先させよう。私の心の中を読んだのか、意外にも彼らは協力的ですぐ帰ろうとする。今度からも読んでくれ。――いや、やっぱりやめてくれ。私の残念すぎる思考がばれてしまう……。

 

「今日はありがとう。本当に助かったよ」

「気にしなくていい。委員の仕事だから」

 

 また同じセリフを言ったが、彼は本当の意味に気付かない。困ったものだ

 

「…………ょ」

 

 獄寺隼人が小さな声で何か言った気がするがスルーだな。彼なりに頑張ってお礼を言ったんのだろう。気付かないフリをするのも優しさだ。まぁ反応してこれ以上関わるのが嫌なのが本音だが。

 

 その後、彼らが図書室から外に出たのですぐに扉を閉めれば、なぜかまた扉が開いた。これ以上、関わりたくないのだが……。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!!」

「何」

「なにって……」

 

 沢田綱吉を見れば、戸惑ってるのがわかる。獄寺隼人は少し放心してそうだ。恐らく用があるのは沢田綱吉だけだろう。もう1度、彼を見れば様子が変だった。だが、この顔は知識の中でよく見る顔な気がした。

 

「……また明日! 絶対来るから!!」

「は?」

「神崎さん! また明日!」

「わ、わかった……」

 

 沢田綱吉が走り去っていった。放心してる獄寺隼人を残して――。置いていくな。しょうがないので声をかけよう。邪魔だ。

 

「追いかけないのか?」 

「……明日も用意しろ! 待ってくださーい! 10代目ーーー!!」

 

 追いかけながら言っていたが、ちょっと待て。私はUMAのことは詳しくないぞ。君がUMAが好きなのを知ってるだけだ。……うん、少しずれてる気がする。

 

 少し冷静になって気付いた。なんてことだ。なぜか明日も会うフラグが立ってる。それも勢いに押され、承諾の返事までしてしまった。

 

 ……休むか。

 

 ちょうどいい。戸締りした後に先生と会うので何とかしてもらおう。そうと決まれば善は急げ。早く戸締りしよう。

 

 

 

 

 先生は意外にも職員室に居た。部活を見ていないなら図書室の様子を見に来いよ。

 

「お? 神埼、戸締り終わったのか? 今から行こうと思ってたのにな……」

 

 ……本当か?さっきまでお茶を飲みながら他の先生と話しながら笑ってただろ。私の中で先生の好感度がドンドン下がってるぞ。まぁ見なかったフリをするけどな。

 

「先生、明日は用事があって来れません」

「わかった。明日はもう1人の委員が来れると思うし大丈夫だろう」

 

 ……もう1人の委員の存在を忘れてた。よく考えれば……そうだよな。1人で委員活動するわけがない。興味ないので相方がいることすら忘れていた。しかし、なぜ今日は来なかったのだ。気になったので先生に聞いてみる。

 

「あー、言わなかったか? 朝から電話がかかってきて、スーツを着た赤ん坊にボコボコにされたとか……。ウソかと思ったが、両親からも休ませてほしいと電話があってな。だから今日は休ませたが、後で様子を見に行こうと思ってる」

「先生、やっぱり明日頑張って来ます」

「ん? 大丈夫なのか?」

「はい。もし明日も来れなくなったら大変ですし、なんとかします」

「そうか。助かるよ。神崎、ありがとう」

 

 先生は私が心の中で滝のような涙を流してることに気付かなかったようだ。

 

 

 

 

 

 このヤロー!と思いながら、履き替える靴を床に叩きつけるのはしょうがない気がする。一体、リボーンは何を考えてるんだ。私は失敗して彼に目をつけられたのだろうか。しかし、それならば、リボーンが現れなかったのがおかしい。私の知識では彼は必ず目をつけたものには顔を出す。

 

 ……考えてもわからないな。わかるのは私は行かなければ危険ということだ。そして、行くだけで助かる可能性が高い。今日、彼は私の前に姿を現さなかった。つまり、今日のように本を読んでいれば大丈夫ということだ。まだ私には助かる道はある。……多分。

 

 いや、待てよ。1度、ボコボコにされた方がいいかもな。リボーンは女子には優しくする方だ。少し我慢すれば大丈夫な気がする。全治何ヶ月になるかはわからないが、殺されはしないだろう。ボコボコにされれば、彼らと関わりたくない正式な理由が出来る。よし、コレで行こう。痛いのは我慢しよう。

 

 少し上機嫌で靴を戻そうとして私は過ちに気付いた。同じようなことをしたモブキャラがいるじゃないか。私の情報収集によると、ハゲた彼は大人しく過ごしている。当然、彼は沢田綱吉達ともう関わってはいない。しかし、彼はボンゴレ狩りの対象になっていた。――ボコられた時点でアウトじゃないのか……?

 

 私はゾッとした。そして、モブキャラの大先輩に感謝した。彼がいなければ私は危うかった。今の私にはこれピッタリあうだろう……初心忘れるべからず。私は彼の犠牲のおかげでモブキャラ・クラスメイトKを目指すと決めたんだ。委員として手伝ってあげても、親しくするつもりはないと私は再確認した。

 

 つまり、休めない。溜息をつきながら靴を戻すのはしょうがないだろう……。

 

「よぉ! 神埼!」

 

 この声は……数週間前に何度も聞いた気がする。恐る恐る振り返れば、沢田綱吉達がいた。当然、先程の声の主の山本武も居る。3人は無事に合流して帰るところだったらしい。靴を叩きつけて直す時間がもったいなかった……。すぐ帰ればよかったと後悔した。

 

「ツナ達から聞いたぜ。オレの本も探すの手伝ってくれねーか?」

「……委員の活動時間なら」

「やりぃ!」

 

 喜んでるが、私が委員の活動中は部活だろう。本当に委員の活動中しか手伝う気はないぞ。

 

 とにかく私はこれ以上は話したくないので、教えずここから去るべきである。それに本気で急いで帰らないと兄がうるさくなる気がする。

 

 少し早歩きで歩いて行けば、彼らが後ろからついてくる。だが、彼らは私と違って急いでる感じではない。これは……彼らの足が長いせいである。なぜか舌打ちしたくなるが、そんな暇があれば早く歩こう。追いつかれた方が面倒だ。

 

 私は足早に歩いていたが、校門が見えた時点でもの凄い勢いでUターンした。彼らが驚いていたが、かまってる暇はない。今すぐ私はここから逃げ出したいのだ。しかし、遅かった。先回りされてもう目の前にいた。何度もいうが、足が長すぎる。決して私の足が短いわけではない。――と、思いたい。

 

 目の前の人物に追いつかれた時点で私は諦めて目をつぶった。しかし、何もない。衝撃も話しかけられることもなかった。一体何が?と、疑問に思いながら目を開けた。

 

「……バラ?」

 

 思わずつぶやいてしまった。私の視界いっぱいにバラの花があったのだ。何種類あるのかもわからない。つい、つぶやいてしまったのはしょうがないだろう

 

「再会を記念して。本当は桜を用意したかったのだが……。まぁこれは僕の気持ちだ。受け取ってくれたまえ」

 

 桜は無理だろ。時期が違うし木を渡すつもりだったのかよ。……ちょっと待て。ツッコミを間違った気がする。家族との再会に花をプレゼントする兄がどこにいる。……ここにいるな。しょうがないのでバラを受け取る。……後で部屋に飾るしかないな。バラを受け取ったことで気付いた。沢田綱吉達がドン引きしている。彼らの反応は正しいだろう。なぜなら私もドン引き中だ。

 

「会いたかった。サクラ……」

 

 無駄に色気を振りまくな。恐らく私の顔は引きつってるだろう。

 

「サクラも寂しかっただろう? さぁ! 僕の胸に飛び込んできたまえ!」

 

 両手を広げて待ってる兄を見て、私は後ずさる。1年前よりいろいろパワーアップしてるのは気のせいだろうか。

 

「神崎の知り合いか? おもしれー人だな!」

 

 ……面白いで全て済ませた山本武が凄すぎる。

 

「野球バカ! どこを見てそう思うんだよ!? 変な奴に絡まれてるだけだろうが。……チッ。めんどくせぇ……。おい! どっか行きやがれ!!」

 

 ……すまぬ。その変な奴は兄なのだ。まさか彼らに申し訳ない気持ちになるとは思わなかった……。それに獄寺隼人がわざわざ助けようとするとは思わなかったな。何か異変が起きてるかもしれないと思ったが、沢田綱吉は変わらない。頑張って獄寺隼人と一緒に来たが逃げ腰である。

 

「君達はサクラのなんだい?」

「ただのクラスメイト」

 

 誰かが何か言う前に私は急いで兄の問いに答えた。山本武が「そりゃないぜ」と言っているが無視だ。

 

「……ふむ。僕はサクラの兄の桂だ。いつもサクラが世話になってるみたいだね!」

「えーーー!! ウソーー!! この変な人は神崎さんのお兄さんーー!?」

「ハハッ! 神崎、おもしれぇ兄貴だな!」

「……まじかよ。変な奴すぎるだろ……」

「褒めてもらっても困るね!」

 

 誰も褒めてない。いや、山本武は褒めてるかもしれないが。――それにしても皮肉だな。……私は何を考えるんだ。早く帰るべきである。

 

「校内に入ると不法侵入になる」

「おっと、僕としたことが……このままだとサクラに迷惑をかけてしまう。今すぐ許可を貰いに行くよ!」

「出ればいいだろ!?」

「はは。わかってるさ。久しぶりにサクラのツッコミがほしくてね!」

 

 額を手で押さえるのはしょうがないと思う。1年ぶりの兄のテンションで頭が痛くなったのだ。

 

「サクラっ!? 熱でもあるのかい!? 今すぐ病院に行かなければ!! 大丈夫! 僕がついてる!」

「熱はない!!」

「熱がないだって!? それは大変だ!!」

「平熱だから!!」

 

 ツッコミが追いつかない。とにかく、横抱きしようとするな。

 

 本当に私が平熱とわかって兄は落ち着いたらしい。今のうちに兄のインパクトで放心してる彼らと離れよう。まぁなぜか1人だけ楽しそうに笑ってるけどな。……天然恐るべし。

 

 彼らと離れるには兄を動かすほうがいいだろう。これは使いたくなかったが、しょうがない。諦めよう。

 

「家に帰ろう。――お兄ちゃん」

「……! そうだね! 僕達の城に今すぐ帰ろう!」

 

 切り札を使った影響か、エスコートするために腰に手をまわされてしまった……。早く城に――家に着いてほしい……。切に願う。

 

 

 

 

 

「先程、サクラに『お兄ちゃん』と呼ばれ、幼いサクラが『お兄ちゃん、お兄ちゃん』と僕の後ろをついて歩く姿を思い出したよ。小さくて可愛かった……。もちろん、今のサクラも可愛いけどね!」

「……そう」

 

 頼むから静かにエスコートしてほしい。私はバラの花束を持って街中を歩くだけでも恥ずかしいのだ。沢田綱吉達とは無事に離れることが出来たが、私の心のライフはゼロになりそうだ。『お兄ちゃん』という切り札を使うんじゃなかった……。

 

「サクラ」

 

 急に兄の声が真剣になった気がする。慌てて兄を見れば、真面目な話らしい。まぁ街中でしてもいい内容みたいだが。

 

「何?」

「本当に彼らとは友達ではなのかい?」

「違う。さっきも言ったけど、ただのクラスメイト」

 

 彼らと友達とか勘弁してほしい。死亡フラグしか立たない。

 

「……彼らはいい子達と思うよ。僕と会っても彼らはサクラを軸としていた。彼らはサクラを『僕の妹』として見ていない」

「そうみたい」

「やはり、サクラも気付いていたんだね! 彼らとはいい友達になれるよ!」

「ならない。必要ないし」

「……サクラは友達を作る気はないのかい?」

「友達はいらない」

 

 私は兄の顔を見ていられず、バラの匂いをかぐフリをして下を向きながら歩いた。その後、家に着くまで兄は無言だった。静かにエスコートしてほしいと思っていたけど、この時はなぜか悲しくて話してほしいと思った……。

 

 

 

 

「どうだい! 僕のお土産は! これはサクラに似合うと思って買ってきたんだ! これもサクラにはぴったりだよ! これはサクラが好きそうな物だ! 他には――」

 

 ……うん。頼むから少し静かにしてくれ。

 




少しシリアスだったかも?
まぁ兄のせいで空気がすぐ壊れますけどねww

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