クラスメイト K [本編&おまけ完結]   作:ちびっこ

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時期はサクラが中3。
2016年のディーノさん誕生日記念に書いたっぽい。



2月4日

「たのもー!」

 

 今日も笹川了平の声で起こされた。彼の声が私の目覚まし時計になりつつあるぞ。軽く心の中でツッコミしてから、起き上がる。ケイタイを見ると2月4日と表示されている。

 

「……無事に届いているといいな」

 

 そう、2月4日はディーノの誕生日である。プレゼントを今日届くように送ったのだが、大丈夫だろうか。兄に頼んで送ってもらったので、こっちのミスはない。輸送の間に何もないことを祈るしかない。手渡し出来ればその心配はないのだが。残念ながらディーノはイタリアに住んでいる。中学生の私にはイタリアまで行く旅費はない。そもそも、学校がある。それに今年は受験だしな。たとえディーノが日本にいるとしても休むつもりはない。

 

 ちなみに雲雀恭弥は卒業したのかもう通ってはいない。ただ、たまに学校にやってきているという目撃情報はある。徐々に未来編のような風紀財団を立ち上げる準備をしてそうな気がする。人生は人それぞれだが、君の将来はそれでいいのか。思わず聞きたくなる。咬み殺されたくないので聞かないが。

 

 ……人のことをとやかく言ってる場合じゃないか。さっさと準備して学校へ行こう。受験まであと数日なのだ。

 

 

 

 

 

 学校が終わったので、今日もツナと一緒に帰る。ちなみに2人なのは、獄寺隼人はサボりで山本武は後輩に引きとめられたからだ。

 

「日に日に顔色が悪くなってるな」

「ははは……」

 

 もう、かわいた笑いしか出ないらしい。高校に受からなければ、ボンゴレのボスになるという道しかないとリボーンに脅迫されているらしく、ツナは必死にリボーンのスパルタについて行ってるからな。

 

「ツナも運動部に入っていれば良かったな」

 

 ツナも、と言ったのは山本武は部活のおかげでツナより苦労しないからだ。おそらく最低限の点数さえ取れば、普通に受かる。兄から聞いた話では、受験なので同じ成績近くの者ばかり集まることになる。当然テストで同じ点数のものも複数いる。そこで内申点が影響してくるのだ。もちろんどの先生は受かって欲しいと思っているので、悪いことはかかない。なので、部活歴や出席率などはっきりと目に見えるもので評価されて受かって行くらしい。そうなると、マフィア関連で休むことが多く、部活で成績を残してないツナはかなり不利なのだ。ちなみに、獄寺隼人はツナと同じ高校ということで、偏差値をかなり落としているので出席率が低くても全く問題ない。

 

「や。オレ、運動はダメダメだから……」

「今のツナなら死ぬ気にならなくても、いいところまで行くと思うぞ」

「そ、そうかなぁ」

 

 本当のことなので、私はツナの照れに引きずられることはなかった。実際、原作開始前と比べて筋肉などがかなりついている。死ぬ気であれだけ動いているのだから、通常時の反射神経もあがっているだろう。

 

「私も部活すれば良かったな」

 

 帰宅部と記入しても意味はないからな。

 

「サクラはいつも通り出来れば問題ないんでしょ?」

「……フラグをたてるなよ」

「……ごめん」

 

 そういうフラグはやめてくれ。これでも中2の春には考えられないぐらい偏差値が高い学校を狙っているのだから。

 

 思わず睨んでしまったが、ツナが謝ったので良しとする。私は心が広いのだ。

 

「ツナ達とはあと少しか……」

「……うん、そうだね」

 

 出会った頃はこんな寂しくなるとは思わなかったな。それに進路が違うという理由でツナ達と離れるようになるとは……。

 

「まぁ高校でも部活するつもりはないから、日曜日とか君の家に行くぞ」

「うん、いつでもきていいから!」

 

 さっき部活すれば良かったと言ったばかりだと? ……ただ内申点の問題だけで、本気でやりたいわけではない。私はワガママなのだ。

 

「じゃ、私はこっちだから」

「また明日」

「ん。あまり無理するなよ」

「ありがとう」

 

 ツナと別れて数分後、家についた。

 

「ただいま」

「おかえりなさい」

 

 お母さんが出てきたので、兄はいないようだ。今日は仕事だったか。

 

「着替えてくる」

 

 声をかけて二階へとあがる。やはりこの時期にスカートは寒い。男子が羨ましい。制服の改善を要求する。誰に言えばいいんだろうか。雲雀恭弥になるのか?

 

 雲雀恭弥という理不尽な存在に内心でブツブツ文句を言いながら部屋の扉を開ける。

 

「……は?」

 

 とりあえず、一度閉める。私の部屋で合ってるな。私がもう一度ドアノブをひねる前に、勝手に開いた。

 

「サクラ、おかえり! 僕としたことが、サクラの帰りに気付かなかったよ!!」

 

 無駄にオーバーリアクションで気付かなかったことに嘆く兄が居る。それはまぁいい。いつものことだ。

 

「邪魔してるぜ」

「……なんで私の部屋にいるんだ」

「わりぃ。部屋はまずいだろと断ったんだが、驚いた顔が見たくないかと言われてよ。つい入っちまったんだ」

「心配しなくても、僕が見張っていたよ!」

「その心配はしていない」

 

 すぐさまツッコミをいれ、慌てて部屋を見渡す。見られて恥ずかしいものは出しっ放しにしていないだろうか。

 

「大丈夫さ。僕に抜かりはない」

 

 つい先ほど、私が帰ってきたことに気付かなかったと言っただろ。いや、兄のスペックなら気付いていたが、ディーノがいるから行けなかったのだろう。それなら私の部屋に案内するなといいたい。

 

「僕の部屋で良かったのかい?」

 

 それは却下だ。確か、兄の部屋は私の写真でいっぱいだった。用がなければ、私も入りたくはない。

 

「せっかく日本に来たところ悪いが、私は受験で忙しい」

 

 非常に、非常に残念だが、ディーノと一緒に過ごすことは出来ない。来週だったら良かったのに……!

 

「わかってる。これでも一時期先生だったんだぜ?」

 

 ……私に会いにきたわけではないのか。ちくしょう。

 

「そうか。じゃ、勉強の邪魔だから出てってくれ」

「まぁ待て。実は時間があってよ、しばらく日本に滞在する予定だ」

 

 くそっ。なんでこのタイミングなんだ。

 

「最後まで聞けって」

 

 渋々、最後まで話を聞くことにする。私に対する扱いが雲雀恭弥と似ているのは気のせいだと思いたい。

 

「受験の日まで勉強みれるぜ」

「……勉強、一緒に?」

「そうだ」

 

 にやけた顔を見られたくなくて、下をむく。すると、何を思ったのかディーノが駆け寄ってきた。

 

「迷惑だったか?」

「別に迷惑ではないぞ。どちらかというと助かるな」

 

 また失敗した。可愛くなくてもいいが、もうちょっと素直に言えないのか! そしてなぜ微妙に偉そうなのだ! ……おい、兄よ。録画はやめろ。

 

「そうか。それは良かった」

 

 そう言ってディーノが笑ったので、再び下を向くハメになった。

 

「サクラの許可が出たことだし、僕は部屋を片付けてくるよ」

「桂、本当にいいのか?」

「問題ないよ。君が寝る場所ぐらいすぐに用意できるさ」

 

 兄が出て行くのを見ながら思う。兄の部屋は私と違っていつでも綺麗なので、私の写真を片付けるのだろう。おそらく不自然ではない量にするはずだ。そうでなければ、私が怒る。

 

 ……ちょっと待て。

 

「私の家に泊まるのか?」

「嫌だったか?」

「別に嫌ではない。ただディーノが私の家で泊まるのかと思っただけ」

 

 兄よ、休憩時間のたびにくだらないメールを送ってくるなら、そういう大事なことを報告しろ!

 

「ちょっと私も見てくる」

 

 洗面所とか大丈夫だろうか。ディーノに見られて変に思われそうなものがないか確認しなければならない。

 

「ちょっと待てって」

 

 パシッと手を掴まれたので、足を止めて振り返る。

 

「オレをこの部屋で1人にする気か?」

「さっきも言ったけど、そういう心配はしていない」

「……ったく」

 

 呆れたように息を吐いたと思ったら、引き寄せられた。……抱きしめられてないか?

 

「ディ、ディーノ!?」

「男には注意しろってことだ」

 

 私の焦った声を聞いたからか、ディーノは注意するとあっさりと離した。ちょっとだけ残念である。

 

「……だからそういう顔をするなよ……」

 

 力が抜けたようにディーノがしゃがみこんだ。そういう顔ってどういう顔だ。多少体温があがったが、口元とかは緩んでなかった。兄ぐらいしか気付かない変化しか私はしていないぞ。

 

「……サクラ、オレはまだ聞いてない」

「何がだ?」

 

 しゃがみこんだまま顔をあげたので、つい視線をそらしながら返事をした。破壊力がありすぎる。

 

「今日が何の日か、忘れちまったのか?」

 

 忘れるわけがないだろ。心の中だけは反応がはやい。相変わらず口はすぐに動かない。それでもディーノは急かすことなく待っていた。

 

「……た、誕生日。おめでとう」

「ああ」

 

 おい。催促したくせにあまり喜んでないのは気のせいか!?

 

「仕方ねぇだろ。数ヶ月つっても、差は広がるんだ」

「何の差だ?」

「歳はとりたくねぇって、ことだ」

 

 私は早く大きくなりたいが、ディーノのような大人になると違うのかもしれないな。納得したように頷いていると、あることを思い出した。

 

「……プレゼント」

「そういうのは気にするな」

「違う。ディーノの家に送ったんだ!」

 

 ショックだ。せっかく用意したのに、まさかすれ違うとは……!

 

「帰った時の楽しみってことだな」

 

 ディーノの言葉に私の機嫌が良くなり、口を開く。

 

「あ、あんまり期待するなよ。たいしたものじゃないし……」

 

 途中から自身で言った内容にヘコんできた。ディーノに送られるだろうプレゼントは高価なものばかりだろう。それに対して私はただのハンカチだ。そもそもディーノのハンカチをお守りとし勝手にパクったので、新しいのをかえしたに過ぎない。本当はもう少しいい物を買いたかったが、ディーノが普段から使えるのはブランド物でなければ浮いてしまう。私の手持ちだとハンカチしか買えなかったのだ。

 

「……ごめん」

「サクラ……?」

「いつも貰ってばっかりで。何も返せない」

 

 ディーノが優しく私の頭を撫でた。普段は嬉しいが、子どもあつかいなので泣きそうになる。そういえば、ディーノは何か知らないが差が広がることを嘆いていたな。私は差が縮まらないことに嘆きたい。

 

「予言だ。オレはサクラからいっぱい貰うぜ?」

「……下手なウソだな」

「ウソじゃねーって、予言だからな」

 

 まったく、コントロールは未だに微妙だが予知夢が出来る私に向かって予言するとは。

 

「仕方ない。私ぐらいはディーノの予言を信じてあげよう」

 

 ニッと笑っていえば、ディーノも笑っていた。

 

「サクラは可愛いいな」

「おい、今のは単純という意味で言っただろ。ニュアンスでわかったぞ」

「まっ、どっちでもいいじゃねぇか」

「よくない」

 

 兄が部屋から私が準備していたディーノのプレゼントを持ってくるまで、くだらない言い合いが続いたのだった。

 


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