クラスメイト K [本編&おまけ完結]   作:ちびっこ

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時期はサクラが中3の夏休み。
作者がストレス発散に書いた話。
活動報告に載せた時よりも加筆しています。




 名を呼ばれ、反射的にベッドの横にある100tと書かれているビニールハンマーで殴る。

 

「無念……」

 

 大げさに倒れてる兄を見て、憂鬱になる。なぜ朝一からハイテンションにならなければならないのだ。そもそも鍵はどうした。とりあえず目をこすりながら、身体を起こす。

 

「サクラ! おはよう! 今日も可愛いよ!」

「……おはよ。朝から何?」

 

 夏休みなのだから、受験生といっても多少はゆっくり起きてもいいじゃないか。まだ6時だぞ。

 

「夏休みなのだよ! 海が僕達を呼んでいるよ!」

「幻聴だ」

 

 受験生に誘う内容ではない。ツッコミしたし、もう一度寝よう。寝転び布団をかぶり直す。が、兄があまりにも嘆くので仕方なく起き上がる。

 

「幻覚か……」

 

 さっきまで普通だったのにな……。

 

「サクラは幻覚にかからないよ!」

 

 幻覚にかかった方がましである。ゴーグルと浮き輪をつけて浮かれている兄を見てそう思った。

 

 

 

 兄と一緒に電車に揺られ、並盛海岸へとやってきた。正直憂鬱だ。息抜きのために誘っているんだろうが、疲れるだけである。次の日は筋肉痛だろうし。

 

「サクラ、行こう!」

 

 だがまぁ、ここまで来たら遊ぶしかないだろう。兄の腕に甘えるように掴まった。

 

 兄がピーチパラソルを用意している間に、私は着替える。着替えると言っても、服の下に着ているので脱ぐだけだが。

 

 一応ビキニである。ただしその上に上着も短パンも履いているので色気は皆無だ。兄が嘆くとわかりきっていたので、おだんごヘアに。ちょっと時間はかかったが、これで満足するだしいいだろう。

 

 兄がいる場所に目を向けると、2人の女性に囲まれていたのが見えた。逆ナンである。ケッと僻んでいれば、声をかけられた。

 

「1人?」

 

 数を撃てば当たるかもしれないが、よくやるなと思う。残念ながら私は当たらない方なので答えは一択だ。まぁ声をかけられたので、可愛いと思ってくれたのだろう。悪い気はしないので、兄が来る前に断ってあげよう。

 

「いや」

「オレのツレになんか用か?」

 

 私の言葉を遮るように第三者が現れる。斜め後ろに見上げれば、ディーノが居た。イケメンに睨まれれば、私のように僻んで去るしかないだう。軽い男に心の中で手を合わせた。

 

「……すまん、遅れた。怖くなかったか?」

「大丈夫」

 

 チラッと見るとディーノは水着姿だった。つまり兄の仕業である。私のために誘ってくれたようだ。

 

「毎回、兄の誘いに付き合わなくていいぞ」

「オレも楽しんでるからいいんだ」

 

 肩をすくめる。忙しいのに良くやるな。

 

「オレのことはいいから。今日は息抜きなんだろ?」

「まぁ」

「なら、遊ぼうぜ」

 

 ディーノが手を差し出したので掴む。ディーノはただのエスコートなのかもしれないが、少しの時間でも手を握りながら歩けたことで、密かにテンションがあがった。

 

 私が戻ってくるまでに、兄は断ることが出来たらしく1人だった。

 

「お団子頭のサクラも可愛いよ!」

「ん。ありがと」

 

 予想通り兄は満足したらしく、嬉しそうに写真を撮っていた。一方でなぜかディーノは落ち込んでいる。先に……とかブツブツ言って、しゃがみこんでいるからな。

 

「ディーノ?」

「いや、なんでもねーよ。桂の言う通り、可愛いぜ。……ウソじゃねぇって!」

 

 あからさまなお世辞に微妙な顔をしてしまったようだ。ディーノが慌てていた。私が反応に困っていると、兄がディーノの肩を叩いた。慰めているつもりなのかもしれないが、ドヤ顔である。ディーノが呆れて何も言えず、項垂れるのは仕方がないことだろう。

 

「お兄ちゃん、日焼け止め塗るよ」

 

 助け舟として話題をかえる。いくらハイスペックの兄でも届かない背中は綺麗に塗れないからな。

 

「助かるよ。サクラはいいのかい?」

「いい。脱ぐつもりないから、全部届いた」

「せっかくのイベントが!」

 

 兄は塗っている私の邪魔をしないように、首だけガクッと下に向けた。ちょうどいい、そこも塗るから動くなよ。まぁ兄はそこまで必死に日焼けを防ごうと考えてないだろう。ササっと塗って終わりだ。

 

「ディーノは? それ脱ぐのか?」

 

 兄と違ってディーノは上着をきていた。まぁ私みたいにファスナーを閉めていないが。

 

「……そうだな」

 

 チラッと私が持っている日焼け止めを見たので、貸して欲しいのだろう。兄に手渡す。

 

「塗ってあげて。私はストレッチをしているから」

「……うん、流石僕が育てたサクラだよ。フラグをへし折ったよ!」

「当然。私は2人とは身体のつくりが違うんだ。準備体操は必須だろ」

 

 私1人のために付き合わせるのも待たせるのも悪い。今の間にするのがベストなのだ。さらに何もしなければ、兄がラジオ体操するとか言い出すからな。そんなフラグは先にへし折るに限る。

 

 それにしても男同士だとただ日焼け止めを塗るだけなのに、賑やかになるのか。まぁ静かに念入りに塗っていたら、私はちょっと引く。……いや、ドン引きだな。

 

 さて、怪我防止のストレッチが終わったので海へ入るか。まぁその前に浮き輪に入るが。

 

「……泳げないのか?」

「いや、泳げるぞ」

「そうか」

「そうだよ! 後は息継ぎを覚えるだけさ!」

「それ、泳げねぇのと一緒だからな!?」

 

 ディーノのツッコミは無視である。さぁ海へと突撃だ!

 

「きゃー! 冷たいー!」

 

 慣れれば何も感じないのに、最初は叫んでしまうのが不思議だ。まだ慣れ終わっていない段階で、兄に浮き輪の紐を引っ張られ、ついキャッキャッとはしゃぐ。

 

 いつの間にかディーノが私の横まで泳いできて、ポツリと言った。

 

「お前がここまで声を出して笑ってるの、初めて見たぜ」

「……君も出せっ!」

 

 ディーノの顔面を狙い、思い切り海水をかける。予想外だったのか、ガッツリかかったので声を出して笑う。

 

「やったな……!」

 

 もうここからはただのやり合いだ。兄が私の味方についてくれるので、ディーノの被害は凄かった。まぁディーノも兄も笑っていたからいいのだろう。……もっとも私が一番笑っていたと思うけどな。

 

 私への被害は少なかったが、おだんごヘアは崩れてしまった。兄が直してくれるというので、一旦あがることに。ついでに水分補給をしよう。

 

 水分補給をし、髪の毛もばっちり決まったところで、ざわざわと人が集まってきているところがあるので、ちょっと覗いてみることに。

 

「ビーチバレー大会?」

 

 大会といっても、軽いお遊びみたいだな。飛び入り参加オッケーで商品は海の家で使える2000円分の割引券だし。

 

「興味あるのか?」

 

 じーっと参加資格を見ていると私がやりたいと思ったらしい。残念ながら違うぞ。

 

「兄とディーノで組めば、優勝するだろうなーと思って」

 

 私の言葉に2人が顔を見合わせた。

 

「待ってる間、応援してくれるのか?」

「そりゃまぁ」

 

 言い出しっぺは私だし。2人がやるなら流石に放置して遊ぶ気はないぞ。

 

「優勝すれば、カッコイイかい?」

「……まぁ、そうだな」

 

 兄の質問はズレているなと思いながらも答える。すると、2人はガッシリと手を組んだ。やる気になったようだ。

 

 イケメン2人が参加というだけで注目を集めるのに、その2人が強いのだ。時間の経過と共に観客の人数が増えていく。

 

 2人の連れということで、他の観客より2人の近い位置で観戦しているので、嫉妬の視線が凄いことになってきた。得点を決めるたびに2人とも私に笑顔を向けるのも原因な気もするが。

 

 逃げられないのもあり、なるようになれと開き直って応援した。

 

 小さな大会なので、簡単にあと一回勝てば優勝というところまできた。試合前に水分補給などをするために私のところにきたので、声をかけた。

 

「お兄ちゃん、ディーノ。2人とも頑張って」

「ついに僕の時代がきた!」

 

 声をかけただけなのに兄が変なテンションになったようで叫んでいた。ディーノは兄の言動に苦笑いしながらも、私の耳に顔を寄せた。

 

「ありがとな。優勝してくるぜ」

「……お、おう」

 

 狙ってやったのかと疑いたくなるレベルの行動である。キャーキャーうるさいからそうしただけだろうが。頬に熱が集まったのが恥ずかしい。……恥ずかしながらも脳内で何度も再生した私も大概だが。

 

 私の予想通り、決勝でもサクッと勝ちそうな2人である。点差は圧倒的だ。相手選手が気の毒だなと思ったら、ボールがこっちへと飛んできた。

 

「サクラ!?」

 

 ボールがドンドン近づいてくる視界の端で兄が慌てているのが見えた。

 

「やっ、お兄ちゃんっ!」

 

 いくら何でもできる兄でも、あの位置からでは間に合わないだろうなと頭の隅で思った。死ぬ気の炎を使えば大丈夫かもしれないが、この観客の中では使えないだろう。

 

 ちょっと痛いだろうなと覚悟していたが、なかなかその痛みがやって来ない。恐れ恐る顔をあげるとディーノが目の前にいた。兄よりディーノの方が近い位置に居たし、間に合ったのか。

 

「大丈夫か?」

「う、うん。大丈夫」

 

 なんとなく気まずい、兄の名を呼んだし。

 

 すぐに対戦相手がきて謝ってくれたので、ホッと息を吐いて謝罪を受け入れた。

 

 ちょっとしたハプニングはあったものの、点差がひっくりかえることもなく、そのまま兄達が勝った。

 

「サクラ、勝ったよ!」

 

 ヒョイっと慣れた手つきで兄が私を抱き上げた。そのままの状態で簡単な表彰式に出る羽目に。ちょっと恥ずかしかったが、テンションが高かったからか嫌がらなかった。しかし司会者に振られたことで、今更ながら失敗だったと気付いた。

 

「勝利の女神から一言!」

「うぇっ!? えーと、2人ともお疲れ様。おめでとう」

「もう一声!」

 

 もう一声ってなんだよ。周りも煽るなよ。兄からやめさせようか?という視線がきたが、首を振る。流石にこの空気を壊したくない。だからといって、何か浮かんだ訳でもないのだが。

 

 悩んでいると兄が私の手の甲にキスをした。盛り上がったので、これで良かったようだ。ホッと息を吐いていると、手を掴まれた。……ディーノもするのか。いやまぁこの流れでやらないというわけにはいかないのか。まぁ手の甲なら大丈夫か。

 ドキドキしながらも大人しくしていると、指先に柔らかな感触がした。

 

「へ……。ぅひゃぁ!」

 

 私の変な悲鳴は観客のヤジで消えた。恥ずかしくて兄に埋もれるように抱きつく。なんかエロかった……!

 

「ディーノ、やりすぎだよ……」

「仕方ねえだろ? お前と同じ場所にしたくなかったんだ」

 

 慰めるように兄がポンポンと背を叩いてくれた。非常に助かる。

 

 優勝賞品の割引券を受け取った私達は、その足で海の家に行くことに。私がまだ完全に立ち直ってないのもあるので、気分転換も兼ねてだと思う。

 

 兄に抱っこされたままなので、一緒に相談して決める。ディーノは知らない。

 

「オレが悪かったから、こっち向いてくれよな……」

 

 流石にそろそろ可哀想なので妥協案を出す。

 

「……後でかき氷」

「ああ! 任せろ!」

 

 許してあげたので、3人で改めて相談する。私がちょっとずつ食べたいというワガママを言ったので、全部で4品注文することに。3品をシェアでいいんじゃないか?と私は思ったが、2人はそれだと足らないらしい。動いたのもあると思うが、男女の差なのだろう。メイン以外にも注文していたようだし。

 

 先に好きなだけ取っていいと言われたので、遠慮なく自身の取り皿に入れる。メイン以外の唐揚げも一個パクった。どうやら注文したのはディーノのようで笑っていた。

 

「いただきます」

 

 もぐもぐと食べ始める。あまり期待してなかったが、そこそこ美味しい。環境がそう思わせているだけかもしれないが。

 

 私が普通に食べている中、なぜか2人は取り合いをし始めた。子どものようで、ちょっと笑える。まぁ2人が争っているスキに横から奪った私も子どもだろうが。

 

 綺麗に完食したので海に入ることに。ちなみにかき氷はおやつの時間におごってほしいとお願いした。

 

 もちろん入る前に日焼け止めを塗り直す。兄が背に塗って欲しそうだったので、ディーノに頼んだ。ショックを兄が受け、それを見てディーノも笑っているが無視だ。私は自身の身体を守るのに忙しいのだ。

 

 では、準備が終わったところで再び海へと出撃である。

 

 出撃と言っても私は浮き輪の上に乗っていた。2人で交代で引っ張ってくれるようだ。食後だから気をつかってくれたのだろう。引っ張らない方は私の浮き輪に捕まり、話し相手になってくれるみたいだ。

 

 先に兄が引っ張ってくれてるので、ディーノと2人っきりだ。さっき言えなかったことを口にする。

 

「ディーノ。その、ボール、ありがと」

「気にすんな。何もなくて良かったぜ」

 

 咄嗟に兄の名を呼んだが、気にしてないようでホッとする。

 

「……楽しいか?」

「ん! 受験生って忘れそうだっ」

 

 後で連れ出してくれた兄にちゃんとお礼を言わないと。

 

「ディーノは?」

「オレも楽しいぜ。知らなかったサクラの一面が見れたしな」

 

 こういう時に名で呼ぶのは卑怯だと思う。でもテンションが高いからか、いつもと違ってテレながらも素直に笑う。

 

「……っ」

「今度は……って、なにか言いかけた?」

「……なんでもねぇよ。今度は、なんだ?」

「いや、今度はみんなで来たいなって」

 

 今年は流石に無理だろうな。特にツナはギリギリだ。私もまた来る余裕はないだろう。一日中勉強しないのは怖い。それでもわからないところがあれば兄に聞けば納得するまで教えてくれる分、他の受験生より楽をしていると思うが。

 

「みんな、か……」

「もちろんディーノもだぞ」

「ああ。それはかまわねーが、オレは2人っきりでもいいんだぜ?」

 

 慌ててディーノを見る。どういうつもりで言ったのか、知りたかったのだ。ディーノはジッと真剣な目で見ていた。

 

 最初に思ったのは、雲雀恭弥に至近距離で見つめられた時と似ている。彼の言葉通り、数秒だけ本来の目の持ち主のように私を扱った。……あの時に、似ている。

 

 その次に浮かんだのは、怖いという感情だった。彼が真剣に言ったなら、ディーノのことが好きな私は喜ぶところのはすだ。だが、怖いと思った。

 

「……ごめん」

 

 ディーノの顔を見れない。もしかすれば冗談を本気にとったことに驚いてるかもしれないし、万が一本気なら傷ついているかもしれない。……でも多分何事もなかったように笑って声をかける。冗談か本気か私に悟らせないのだ。私が気にしないように。

 

 だから彼が何か言う前に慌てて口を開く。

 

「ち、違うんだ、ディーノ! 私は君と出かけるのも、手を繋ぐのも嫌いじゃないんだ!」

 

 ああ。なんで好きとは言えないのだ。伝えたいことは多いのに、上手く話せない。

 

「わかったから。落ち着けって。な?」

 

 ディーノの優しい声でやっと息を吐けた気がする。実際には何度も吐いていただろうが、よく覚えてない。

 

「……怖いと思ったんだ。でもよくわからなくて。君が優しいのは知ってるのに」

 

 それに私はディーノが好きなのに……。感情がぐちゃぐちゃで泣きそうになる。意地でも泣かないが。

 

「大丈夫だ。オレはわかったから。お前がわからなくても問題ねぇよ」

「……ほんとに?」

「ああ」

 

 良かったと息を吐く。ディーノがわかったなら問題ない。だからやっと私はディーノの顔を見ることが出来た。……うん、怖くない。

 

「すまん。怖いと思ったのはオレのせいなんだ。だからお前が気にする必要はないんだ」

「……私に気をつかってるなら怒るぞ」

「それはねーよ。今すぐ落ち込みたいぐらいなんだぜ? お前を怖がらせちゃ意味ねーのにな……」

 

 なんだが本当に落ち込んでいるように見える。だからなのか、スッと言葉が出た。

 

「来年、行く? 一緒に」

「無理しなくていいんだぜ」

「よくわからないけど、怖くなくなった。さっきも言ったけど、君と出かけるのは嫌いじゃないし」

「……そうか。なら、約束な!」

「ん」

 

 ちょっとドキドキだ。いつもと違ってデートっぽい約束だし。……しかし益々さっきは怖くなった理由がわからなくなったな。

 

「そろそろ交代だよ! ディーノ!」

「うわっ」

 

 ディーノと一緒に声をあげた。私だけなら良くあるが、ディーノも驚いたのは意外だ。

 

「脅かすなよ……」

「おや? 僕はいつでもスタンばってるのを忘れてないかい? 狙ってこのタイミングにしたのだよ。褒めて欲しいぐらいだよ!」

 

 兄の言葉にディーノは頬を引きつらせた。……気持ちはわかる。驚かされたのになぜ褒めなくちゃいけないんだ。

 

「さぁさぁ。サクラと僕のために身を粉にして引っ張りたまえ」

「お兄ちゃん!」

 

 普段は兄の偉そうな態度にはツッコミしないが、ちょっと今回は酷い。もう少し言い方があるだろう。

 

「オレは気にしてねーから、いいんだ。でもありがとな」

 

 ディーノがそう言うので渋々引き下がる。でも兄を睨むのはやめない。……と思ったが、すぐにやめた。兄が悶えだしたから。

 

「ちょっと頑張ってくるぜ。それで……いいんだろ?」

「そうだよ!」

 

 ディーノが泳ぎだした後、再び兄を睨む。ちょっとディーノへの扱いが雑すぎる。

 

「僕としては優しい方だと思ったのだけど、サクラがそう思うならやめるよ。ただ彼は気合が入ってるみたいだし、次に何して遊ぶか決めるまで頑張ってもらうのはどうだい?」

 

 確かに……と思う。兄が引っ張っている時よりもスピードがあるのだ。私のワガママでやめるのが一番な気がする。

 

「お兄ちゃん、案を出して」

「そうだねぇ。……僕としたことが忘れていたよ! 水鉄砲を持ってきていたのだよ!」

「……お兄ちゃん、隠しながら持ってこれる?」

 

 見なくてもわかる。今の私は口角があがっている。まぁどうせ私のコントロールではなかなか当たらないのだ。不意打ちで一発ぐらい狙ってもいいはずだ。

 

「お主も悪よのう」

「いえいえ、兄上様ほどでは」

 

 くだらない掛け合いをした後、兄はディーノに一言声をかけてから去っていった。

 

 ……早く戻って来ないだろうか、楽しみである。


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