クラスメイト K [本編&おまけ完結]   作:ちびっこ

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前の話の裏側です。
当然こちらもサクラが中2。


クリスマス(裏)

 クリスマス当日。桂の元に一本の電話が入った。

 

 未来の記憶を得てサクラの能力を知った桂は、自身の持つ力を最大限に発揮することに決めた。自身の容姿を利用することも厭わなかった。その結果、空港関係者から『ディーノという男が日本に来る』という情報を得たのだ。

 

 桂はしばし考える。

 

 今日は一日中サクラと過ごすつもりだったが、サクラのために我慢すると決めた。が、果たしてサクラは桂が言って素直に出かけるだろうか。

 

 傍から見れば、互いに好意を示しているのはバレバレなのだが、下手に周りが動いてこじれてしまっては元も子もない。それにサクラはまだ子どもだ。そのため慎重にならざるを得ない。桂はサクラの幸せを願っているのだから。

 

 考えた結果、桂は父親を頼ることにした。話を聞いた父親は渋い顔をしながら了承した。桂が認めた男なら心配はないとわかっているのだが、父親の立場からすればまだ早いという気持ちが強い。それでも了承したのはサクラの幸せと桂の気持ちを汲んだからだ。

 

「……桂、サクラは大丈夫なんだね?」

 

 念のために確認するのは親心である。

 

「大丈夫だよ、父上。彼は軽い男ではないよ」

 

 自信満々に言い切った桂に、父親は安堵したのだった。

 

 桂があれほど自信満々だったのは、ディーノの立場を考えたからだ。桂はサクラバカなので、全ての男はサクラの可愛さで暴走すると思っている。だがディーノはマフィアのボスなので迂闊な行動が出来ない。そのため、大丈夫と確信しているだけである。

 

 桂が1番厄介だと思っているのはディーノの部下である。特にロマーリオの存在だ。最初の頃はロマーリオがサクラのことを好いているからと勘違いしていた桂だったが、未来の記憶を得た今ではサクラの監視だったと理解している。なので、桂がロマーリオを警戒しいてるのは別の理由だ。

 

 ディーノがボスという立場を考えると、後継者の問題がある。そしてサクラは悪くない条件の人物だった。

 

 キャバッローネはボンゴレ同盟のトップ3に入る。それも先代が傾けた財政をディーノの力で立て直して、だ。ボンゴレの同盟国はディーノに注目を集めている。つまりディーノの結婚はマフィアの勢力図に影響を与えてしまうのだ。

 

 下手に力のある同盟国と繋がりを強くすると、ボンゴレ内部でも危機を覚える人物もいるだろう。いくら忠誠を誓っていても、必ずそう考えてしまう人物も出てきてしまう。地位の低い同盟国を選べば、勢力図がかわってしまう。だからといって、一般人というわけにもいかない。

 

 その点、サクラは密かにボンゴレの保護下にいる人物で、ボンゴレ10代目と親しい間柄だ。ディーノの相手と考えると年齢の差があるかもしれないが、ディーノより下なことを考えると悪くはない。子どもを産める年齢は長い方がいいからだ。

 

 もっとも、ロマーリオはディーノがサクラのことを好いているとわかっていなければ、サクラは候補に入ることはなかっただろうが。

 

 しかし逆を言えば、ディーノがサクラを好いてる限り、ロマーリオは何か手を打ってくる。

 

 現に、自身の気持ちにも気付いてなさそうなディーノがクリスマスに日本に来たのは誘導されたからだろう。サクラの気持ちが離れていかないようにしているはずだ。

 

 サクラが喜ぶとわかっているので送り出すが、サクラの逃げ場は常に確保しておくべきだと桂は考えている。まだ中学生のサクラは目の前の恋愛に一杯で大人の事情など気付かない。……ディーノも気付いてるか怪しいが。

 

「僕もデートの邪魔をしたいわけじゃないんだけど……」

 

 ディーノに気付かれないように尾行をするのは骨を折りそうだ、と桂は溜息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

「やぁ、どうしたんだね?」

「よっ。ん? あいつ……サクラはいないのか?」

「サクラなら出かけているよ」

 

 桂の発言に驚いてるディーノは、空港から尾行していたことに気付いていないようだ。実は空港から真っ直ぐ家に向かってることに気付いた桂は、慌てて窓から家に戻り出迎えていたのである。

 

「サクラのことだから、どこかで時間を潰してるだろうね。ご馳走の準備があるから僕は忙しくて、寂しい思いをさせてないか心配だよ」

 

 しれっとウソをつく桂。ご馳走の仕込みはサクラが起きる前に終わらせている。

 

「1人なのか!?」

「もしかすると沢田君のところに居るかもしれないよ」

 

 サクラの性格を考えば、居ない可能性の方が高いが桂はあえて言わなかった。

 

「そうか。じゃツナん家に行ってくるぜ。またな」

 

 桂は見送りながら、サクラにしか見えていないことになぜ気付かないのかと内心首を傾げてしまった。桂とも会うのは久しぶりなのだが、ディーノはサクラのことしか聞かなかったのである。

 

 

 気を取り直し、桂は再びディーノの尾行を開始する。行き先がツナの家とわかっていたため、追いつくのは簡単だった。

 

 そして、ツナの家にいないと知れば、駆け出したディーノの後を追う。ケイタイの存在を忘れるほどのディーノの慌てっぷりを見て、少し罪悪感が募った。

 

 公園でサクラを発見したディーノはホッっと息を吐き、疲れたように隣に座る。そして声をかけようとして止まった。

 

 サクラがディーノから隠れるように、はむっと肉まんをくわえる姿に庇護欲がかきたてられたようだ。

 

「そうだろう。サクラは可愛いだろう」

 

 屋根の上で呟く桂はかなりの怪しさだったが、誰にも気付かれなかったので問題は起きなかった。

 

 

 

 

 

 桂はずっと様子を見ていたが、ディーノはサクラのペースにあわせているようだ。ディーノが自身の気持ちに気付いていないだけかもしれないが。

 

 サクラは幸せいっぱいのようで、本人は隠しているつもりかもしれないが、桂の目からみれば尻尾を振りまくっている状況だ。

 

「それで、君は僕に何の用だい?」

 

 視線はサクラから離さず、桂は口を開いた。相手も気付かれるとわかっていたのか、驚いた気配はない。

 

「お前と似たようなものだ。ボスが暴走しないように、な」

 

 ロマーリオは一服して、黙っている桂に再び声をかける。

 

「オレ達は無理強いする気はない。何だったら、あの子にそれとなく伝えるぜ」

「……ふぅ。僕の考えすぎだったようだね」

「それぐらいがちょうどいい。オレ達が特殊なだけだ」

「それもそうだね。サクラが狙われる可能性もあるからね」

 

 今の2人を見て、面白くないと思う人物は必ずいる。警戒しすぎなぐらいがベストである。

 

「ボスがもう少し自覚してくれれば楽なんだが……」

 

 手を繋ぎ歩き出した2人を見てロマーリオが思わず呟く。幸せになってほしいという思いが強ければ強いほど、下手に口に出せないのである。

 

「彼の鈍感さには困ったものだね」

「ちがいねぇ」

 

 苦笑いしながら桂とロマーリオは動き出したのだった。


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