クラスメイト K [本編&おまけ完結]   作:ちびっこ

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説明

 私が落ち着いたのを見て、ディーノは口を開いた。

 

「どこから話すっかなぁ。……そうだな、ずっとオレ達はチェッカーフェイスと戦うと思っていたんだ」

 

 それはそうだろう。私は復讐者が乱入するなんて言わなかったし。

 

「最初に違和感を覚えたのは桂がお前の側から離れたことだな」

「なんで?」

「桂が理由もなくお前の側を離れるかよ。まっそれだけじゃ全くわからなかったぜ? 次に変だと思ったのは代理戦初日のお前の行動だな」

 

 また私なのか。だが、私はただ雲雀恭弥の行動を見ていただけだぞ。

 

「スクアーロとの会話で、ヴァリアーは炎真を襲うって宣言したようなもんだっただろ?」

 

 確かに私もそう思ったな。

 

「それがどうしたんだ? 特に変なところはないぞ」

「それは桂を炎真につけていたからだ。じゃなきゃ、お前は炎真に手を出さないように動いていたと思うぜ。交渉が出来なくて、骸の時は落ち込んでいたって聞いていたしな。まっ一応オレ達もコロネロとバジルをつけることにしたが、お前はそれを知らなかっただろ?」

 

 頷く。彼らが動くと思ってなかった。

 

「お前が炎真の心配をせず、恭弥達の戦いを見ていたから、炎真には桂がついていると予想出来たんだ」

 

 しかしそれはその時だけの可能性もある。知識と違うという理由で兄をつけていただけかもしれないじゃないか。私の反論を予想していたのか、ディーノはまた口を開いた。

 

「余程の理由じゃなきゃ、桂は狙われているお前から離れないぜ?」

 

 その余程の理由が私の心を守るため、か。

 

「そもそも炎真を守るだけなら、あいつが姿を消してオレ達から隠れる必要はないんだ。だから炎真達は囮の役割があると考えた。お前も必要なのは大空の7属性ってはっきり言ったしな」

 

 ……復讐者を誘導していたことにも気付いていたのか。

 

「そこで乱入者の可能性に気付いた。チェッカーフェイスが炎真を襲う理由が浮かばなかったんだ。ツナがアルコバレーノになるっていうお前の言葉から、この代理戦争は次代のアルコバレーノを探すためのものってわかっていたからなぁ。探しているのに、邪魔するかもしれないお前ならまだしも、炎真達を襲う理由がわからねぇ。ツナ達だけを怒らせるっていうなら、まだわかるけどな」

 

 ボロを出すとかいうレベルじゃなかった。ボロボロである。

 

「でもな、乱入者がシモンを狙う理由もわからなかったんだ。代理戦争を無茶苦茶にするっていうだけなら、シモンからじゃなくてもいいだろ? オレ達の知らないアルコバレーノが参戦しようとしていることも考えたが、お前が勝ち残っても呪いが解けないって言ったからなぁ」

 

 私の言動で乱入者の可能性を示していたが、同時に乱入する意味がないと証明していたのか。

 

「そこで、だ。チェッカーフェイスに会うためって考えついたんだ。リボーン達が探しても見つからなかった奴だぜ? ルール説明にも尾道って奴しか顔を出さなかったからな。まっそれしか浮かばなかったんだ」

 

 最後の方でディーノは笑って誤魔化していたが、正解を引き当てているのが恐ろしい。

 

「チェッカーフェイスに会うためなら、乱入せず代理人になると交渉すればいいだけだろ? リボーン達は警戒して断ったかもしれねーが、スカルは頼む相手を探していたんだからな。桂がついていた時点でわかっていたけどよ、力づくで奪うつもりってとこがやっぱり引っかかったんだ」

 

 いったいどれぐらい私と兄の行動に気を配っていたんだろうか。

 

「で、オレ達の記憶の中で1人引っかかる奴がいた。ツナ達が過去の記憶で見た、復讐者と一緒に居た白いおしゃぶりの赤ん坊だ」

 

 自然と肯定するように目を閉じだ。

 

「……アルコバレーノウオッチが必要なら、スカルに頼んでも断られると決まっている。お前の言葉から呪いを解くには大空の7属性の炎が必要だとわかるからな。これで狙うならシモン一択の説明がついた。チェッカーフェイスに会いたい理由はリボーン達が探した理由と一緒だ。いや、それより過激だった。お前の案が失敗した時のために、第8の炎について知られたくはなかった。そして話そうとすれば手段を選ぶつもりはなかった。それがわかっていたからお前は何も話せなかった、だろ?」

 

 ここまで行けば、私でも素直に褒めるしかない。

 

「大正解、凄い」

「……そうでもねーよ」

 

 これを凄いと言わなければ、いったい何が凄いと言えるのだ。

 

「オレ達は今日復讐者が来ると思ってなかったんだ」

「でも君は時計を用意してただろ?」

「ないと判断したのは今日の放課後だったからなぁ」

 

 いったいどこで判断したのだろうか。

 

「昨日は放課後に手伝ってほしいって言えば、少しならって言ったろ? ってことは、放課後までは大丈夫と思ってたんだ」

 

 なんという私の残念感。あっさりと誘導尋問に引っかかっていた。しかしこれでは放課後以降は怪しいと思うはずだ。今日はないと判断するものはない。

 

「で、放課後になったらお前はツナ達が帰るまで動こうとしねーし。まっそれはすぐクローム髑髏の件があったからとわかったけどな」

「……君は職員室に向かったよな?」

「ああ。だからリボーンがついてた」

 

 穴がないなと遠い目をしたくなる。

 

「その後に連絡があったんだ。ユニが今日ツナ達と話をしたいって」

「……それは仕方がない」

 

 これはバカな私でもわかったので、思わず慰めの言葉をかけた。彼らはユニの言葉で今日はないと判断したのだから。

 

「お前が方向からシモンの家に向かってると気付いて、ユニがツナ達の足止めが目的だったとわかった時は、正直かなり焦ったぜ……」

「ドンマイ」

 

 私の軽い慰めにディーノは項垂れだ。しかし他にかける言葉はない。ユニが意味もなくツナ達を足止めしないだろうし。

 

「でも、変だぞ。君はユニの言葉があったから、ここに来れたんだろ? 電話か?」

 

 ギリギリにユニが教えて、リボーンから電話があったのだろうか。騙された後に言われれば、私ならキレそうだ。

 

「いや、なかったぜ。あっちはそれどころじゃなかったと思うぜ。ツナ達は何も知らなかったからなぁ」

 

 確かに。事情を知っていた者は足止めされたと思うぐらいだが、何も知らなかった者からすれば、衝撃は凄まじかっただろう。……そりゃツナが必死に来るか。間違いなく私の本心から出た言葉だったが、後を頼んだと聞いたツナはどんな気持ちだったのだろうか。割と本気でごめん。

 

「でもな、ユニはツナ達は足止めしたが、お前を1人で行かせるつもりはなかったんだ。だから会話の中に隠した。お前も聞いているぜ?」

「は? いつ?」

 

 ありがとう、という言葉は違う。他に変なところはあっただろうか。

 

「最後だ、最後」

「最後って最後か?」

 

 思い出そうとしたが、私の中で最後は白蘭に向けての言葉しか印象に残ってない。

 

「見送りの時にユニが言ったろ? 『サクラさん、ディーノさん、お気をつけて』ってな」

「……あれは帰りの運転のことだろ」

「最初はオレもそう思っていた。でもずっとオレはユニが1人でお前を行かせようとしたことが変だと思ってたんだ。だからあの時に本当の意味に気付いたんだ」

 

 あの土壇場で気付いたのか!? ……本当にディーノの頭はどうなっているんだ。

 

「……いや、もしかするとオレのためか?」

「ん?」

「ユニの行動が変と思うよりも先に、オレがどうしても1人で行かせたくなかったと思ったからなー。だから手を出した。ユニはそれがわかっていたから、あの言葉を使ったのかもな」

 

 ディーノはそれで納得したらしく、笑っていた。……こっちは笑えないから。

 

「ん? 顏、赤くねーか? おい、大丈夫か!?」

「大丈夫。体調は問題なし」

「そうは言っても、無茶した後だぜ!?」

 

 ディーノが焦っているのを見て落ち着いてきた。1人で舞い上がった私がバカだったのだ。

 

「熱が出ても、兄のおかげで大丈夫」

「肩代わりか……」

「ん」

 

 私の喉が瞬時に戻ったのも、兄とエリザベスのおかげである。

 

「……それってお前の意思で外せるのか?」

「ん。流石にこの件が片付くまではつけてほしいって言われているけど」

「なら、あいつもわかってるみてーだな」

 

 ジッと睨め付ければ、ディーノは苦笑いしながらも口を開いた。

 

「エリザベスはユニのために改造されたからな。ちょっとお前には合ってないんだ」

「そうなのか?」

 

 フミ子の形態変化と違って使いやすいと思っていたんだが。

 

「肩代わりして桂が全部治しちまうだろ? そうするとお前の抵抗力が落ちて行きそうだかんなー。最後は外せなくなっちまう」

 

 怪我というよりも病気の方が問題なのか。効果を考えれば、兄の能力のおかげでデメリットはかなり少ないが、やはり甘い話はないってことか。

 

「不安にならなくてもあいつのことだ、落ち着いたらエリザベスの改造を始めるぜ。アジトもあるしな」

「いや、あそこは使えないから」

 

 9代目との約束があるからな。それにどうしようもなくなったら、一生外さなかったらいいだけだ。……その時は兄に何かあればすぐ死ぬかもしれないが、それでもいいし。

 

「はぁ。少しは自分がしたことに気付けって。今回の件でまた9代目が感謝してるんだぜ?」

「なんで9代目?」

「リボーンを救ったなら、感謝するに決まってるじゃねーか」

 

 そういうものなのか?と思ったが、リボーンを兄に置き換えればなんとなくわかった。素直じゃない私でも感謝するだろう。だが……。

 

「お前の知識とやらを信じるのはお前が言うからだ。ったく、今回もそこを忘れていただろ」

 

 ……何も言ってないぞ。

 

「オレも感謝してるんだぜ。……リボーンの呪いは解けてほしかったからな。もちろん他のアルコバレーノもそう思っているぜ? けど、やっぱリボーンはオレの中で特別だからな……」

「だ、大丈夫だ! リボーン達の呪いは絶対に解けるから!」

 

 自身が想像していたよりも大きな声になってしまい、頬に熱が集まるのがわかった。

 

「ぷっ。お前、可愛すぎ」

「笑うなっ!」

 

 ツッコミながらも手を出す。が、ディーノに簡単に掴まれそのまま引き寄せられた。そして、そのまま抱きしめられたのでガチガチに固まるしかなかった。……急にどうした、ディーノ!?

 

「……ありがとな、サクラ」

 

 ディーノの声で肩の力を抜き、身体を預けた。普段の私なら絶対に終わってから言えとツッコミしただろう。でも出来なかった。

 

 ……知識と違って復讐者の服や包帯が脱げていないけど、ディーノはここにあった骨を見ているし、多分呪いが解けなかった場合はどうなるか薄々勘付いていたのだろう。

 

「ディーノ、眠い」

「……寝てもいいぜ。まだもうちょっとかかると思うしな」

「ん」

 

 視界の端で今まで一度も懐かなかったヒバードが、ディーノの頭に乗ったのが見えた。変なところまで雲雀恭弥と似ていると思いながらも目を閉じる。

 

 ……寝たふりのつもりが、いつの間にか本当に眠ってしまった。


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