クラスメイト K [本編&おまけ完結]   作:ちびっこ

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証明

「うわぁ」

「よっ、と。大丈夫だ」

 

 落ちる感覚に情けない声をあげたのが恥ずかしい。だが、もう少しディーノにしがみついてもいいだろう。……まだ立てそうにないのだ。

 

「……目、つぶってろ」

「ん」

 

 ディーノがそう言ってくれるなら素直に目を閉じる。出来れば私もガイコツは見たくないのだ。多分ツナ達が飛ばされた場所だろうし。

 

「ひゃ!」

 

 時計の音に驚き、さらにディーノにしがみつく。あまりにもビビり過ぎなので、ディーノが優しく背を叩いてくれた。

 

「サクラ、ここに心当たりわかるか?」

 

 ディーノが質問してくれて助かった。何も考えてないより、はるかに楽だ。……いや、そう思って声をかけてくれたのか。

 

「ええっと、多分アルコバレーノの歴史がわかるところ」

「歴史?」

「ん。壁画があって、運命の日が描かれているはず。運命の日っていうのは呪われた日のこと」

「御名答。……少し違うかな。君の知識は僕が思った以上のものかもしれないね」

 

 第三者の登場にディーノが警戒したのは私でも感じることが出来た。

 

 目を閉じながらも光を感じるので、声をかける。

 

「ディーノ、近くに台があると思う。そこに時計を置いて」

「ああ」

 

 私を抱っこしたままだとアタッシュケースはすぐに置けても、ディーノ自身がつけている時計が外しにくそうだった。

 

「……セクハラの一歩手前だったな」

「そっ、そんなつもりはなかったんだ! ……すまん」

 

 謝ったので許してあげよう。実際、かなり怪しかったがセーフだったし。そもそも腰が抜けた私が悪い。

 

「次は彼らがいるところへ行って。ここじゃ多分まだ話せないと思う」

「……こっちさ」

 

 ディーノが慎重に歩き出した。多分もう立てるので声をかけたが、このままの方が都合がいいと言われた。私だけ移動させられることを警戒しているようだ。

 

「もう目を開けてもいいぜ」

 

 言われた通り勢いよく目を開ければ、眩しくて再び閉じるはめになった。勢いよく開けた自身の行動に、落ち着かなさすぎだろと溜息が出た。ディーノが励ますように背を叩くので気を取り直し、バミューダと復讐者の1人と向き合う。

 

「ここなら問題ないよ。洗いざらい、吐いてもらうよ」

「……念のためにいうけど、君達は元に戻れない」

「それは僕ら目的ではないから問題ないさ」

 

 そうだとしても伝えないといけない内容だと思ったのだ。だからバミューダの言葉に溜飲が下がる。……伝えたのは自己満足だったのかもしれないな。

 

「チェッカーフェイスを倒すのはほぼ不可能だ。けど! ……けど、アルコバレーノは君達が管理出来る」

 

 ピクリとディーノが反応したのがわかった。ディーノにリボーン達はちゃんと解放されることを教えたくて、再び口を開く。

 

「火種に大量の炎が必要だが、おしゃぶりがなくても……人柱がいなくても、第8の炎だけで維持が出来るようになるんだ。チェッカーフェイスから7³の管理を奪えれば、君達の復讐が達成すると言えるんじゃないのか?」

 

 沈黙が流れる中、私はバミューダから視線をそらさなかった。

 

「……確かに復讐は達成するね。ただ、君の言葉を信用出来るかは別さ」

「私の命だけじゃ軽いか……」

 

 しかし、他にないのだ。もちろん払う気はないが、勝手に賭けれるものではないからな。

 

「そこにオレの命も上乗せするのを忘れんじゃねーよ」

「君達の命なんてすぐ奪えるのを忘れていないかい?」

 

 ディーノの言葉にツッコミする間も無く、殺気に押し黙ることになる。ただの脅しと思いたかったが、彼らは本気だ。……ディーノじゃ、勝てない。

 

「サクラ、オレを信じろ」

 

 ディーノの言葉に俯いた顔をあげる。そしてバカだなと笑った。

 

「お前が笑ったなら、少しは勝機が見えたな」

「……戦法も何もないぞ。ただの力技」

 

 確認するように視線を向けられたが、これしかないと肩をすくめる。ディーノは何か言いたそうだったが、飲み込んだ。

 

「相談はお終いかい? イェーガー君、頼んだよ」

「ああ」

「お前は危ねーから離れてろ」

 

 もちろん私にではなく、ヒバードに伝えた言葉だった。私と離れるわけにはいかない。つまり強者相手に、ディーノは片手で私を抱き上げている状態なのだ。勝つ確率はほぼゼロである。それでも、足手まといでも、出来ることはある。

 

「後ろ!」

 

 どこにムチを振ったのかは素人の私の目ではわからない。でも、ディーノが攻撃を仕掛けるタイミングはなんとなくわかった。それさえわかれば、イェーガーがディーノの後ろに移動するタイミングもわかる。

 

「パフォ!」

 

 私の言葉に反応したかのようにフミ子がディーノの背を守るように引っ付いた。

 

「ぐっ」

 

 しかしイェーガーは手だけで移動することも出来る。ディーノがどこか負傷したのだろう。それでも私は口を動かす。

 

「彼らを接触させ」

 

 口の中が血まみれになったが、飲み込んだ。一瞬の痛みは気合いで我慢した。ちょっと我慢すれば、兄のおかげで治るのだ。

 

「っ、るな!!」

 

 私の言葉はディーノに届いたようで、2人が近づかない。よく見えないが牽制しているのだろう。

 

「全身の移動は多分もう無理。一部なら出来るかもしれないから、身体の中に移動するかも」

「問題ねーよ、フミ子がっ、治す」

 

 力技と言っていたから、フミ子はディーノの背中にへばりついて守ったのか。いつでも回復出来るように。まぁ私とも離れる気はなかったのもあると思う。ディーノが私も危険な目にあう方法と察して最初に確認していたし。

 

「お前っ、は大丈夫か?」

「うがいしたい」

 

 私の言葉にディーノは笑った。正直、話す余裕はないはずだ。私と話している間も、ディーノは攻撃を防いでいる。でも多分話さないと眠ってしまうのだ。フミ子の炎を浴びて治っているから。

 

 大きく息を吐く。ディーノが命をかけて頑張ったおかげで、私の仮説は証明されたはずだ。

 

「……茶番はもういいだろ! 私達の覚悟は伝わったはずだ!」

「茶番? なんのことだ」

「っ!!!」

 

 ……悪い、ディーノ。もうちょっと頑張ってくれ。

 

「もう証明出来ただろ!」

 

 私への攻撃は一度だけ。兄のリングが発動しなくてもフミ子がいれば、すぐに治るレベルだった。足手まといの私を先に攻撃しなかったのも変だ。兄のリングを発動したのを確認したなら、私の腕や手などを切り落とさなかったのもおかしい。バミューダが自身が動けば、こっちの勝ち目はゼロだし。

 

 ……多分、私の言葉の信憑性を確かめるために仕掛けた。

 

 私は知識から復讐者が乱入することを知っていた。そして復讐者が乱入した状態で、ツナの案に乗ったことに違和感があったのだろう。だから彼らはツナ達に負けた可能性に至ったはずだ。

 

 言葉ではなく、その可能性を証明してみろということだったのだ。

 

「君達に殺す気がなかったのは間違いない! だって、私は今日死ぬ夢を見なかった!!!」

 

 コントロール出来ないから、未来で何度も死ぬ夢を見たのだ。一度も見なかった時点で、私が……私達がここで死ぬ可能性はゼロだ。

 

 ピタリと攻撃が止む。ディーノへ視線を向ければ、大丈夫だというように笑った。……かなり無理させてしまったな。

 

「……君達は最後まで居てもらうよ」

 

 イェーガーの肩に乗って、バミューダ達は去っていった。監視はしているだろうが、その時まで手を出さないということだと思う。

 

 ホッと息を吐いたところで、ガクッと視線がさがる。気付けば、私はディーノの膝の上に座っていた。……血で服が湿っている。

 

「わ、悪い。すぐに降りる!」

「もう治ってるから座ってろ。離れる方が危険だ」

 

 視界が歪みそうになるのを必死に押し込める。少しでも潤んだ目をすれば、その分彼が無理して私を励ます。

 

「サクラ、サクラ」

 

 私を落ち着かせるかのように、頭に乗った。ヒバードも無事で良かった。

 

「フミ子、ありがとう」

「……パフォ」

 

 ちょっと恥ずかしそうに返事をして、フミ子はリングに戻った。炎の使いすぎか、好きな時に出れるように残しておこうと判断したのかはわからないが、戻る前に礼を言えて良かった。フミ子が居なければ、ディーノは死んでいたかもしれないのだから。

 

 チラッとディーノに視線を向ける。私がお礼を言っても、素直に受け取れない気がする。フミ子のおかげで無事なだけで、内容は酷いと思っているだろうし。

 

 だからと言って沈黙は嫌なので、思ったことを口にした。

 

「……君も私も血生臭いだろうな」

 

 ディーノ程ではないが、私も喉が潰されたので服に血がついているだろうし。帰った時のことは考えたくもない。

 

「だろうな。鼻が機能してねぇ」

「私も」

 

 なぜか私もディーノも肩を震わせて笑い合う。多分変なテンションになっているのだろう。

 

「ボロボロだな」

「ああ、ボロボロだ」

 

 それでも今笑えているのはディーノが居るからだろうな。私1人で証明していたなら、例え成功してても笑えなかった。今なら多分受け取ってもらえると思って口を開いた。

 

「ディーノが来てくれて、良かった。ありがとう」

「……そうか。それなら頑張った甲斐があったな」

 

 ちょっと頑張りすぎだと思うが、そうしなければ私が困っただろう。素直にディーノに感謝した。

 

「オレに言ったらなら、ユニにも言うんだぜ? ユニの言葉がなければここに来れなかったからなぁ」

「そういえば、いつ聞いたんだ? ……そうか。あの時の電話か」

 

 昨日の夜、私の家に送った後に電話したのを見たことを思い出し、納得する。ついでに注意もしよう。

 

「車の中で電話していれば寒くないのに……と思ったぞ」

「まっ、もういいか」

「ん?」

「あの時の電話の相手はリボーンだ。ユニチームと同盟を組んだ時点で人数は揃ってるからな。お前が白蘭に継続を頼んで、さらに話せないって言ったろ? 何かまだ隠しているって話していたんだ」

 

 思わず、笑みが引きつった。のんきに手を振った私がバカみたいじゃないか。

 

「車の中じゃなかったのは、何かあった時、わからないだろ? 護衛の意味がねぇ」

「は? 護衛?」

 

 寝耳に水である。

 

「やっぱ全然気付いてなかったのか。ちなみに恭弥が怒ったのはそれが理由だぜ」

 

 開いた口が塞がらなかった。そしてもしやと思い、視線だけ上へと向ける。

 

「後で恭弥にも礼を言うんだぜ。あいつ、オレ達を手伝う気はねぇって言いながらも、校内の風紀の強化つって、見回りの回数を増やしていたからな。リボーンの話じゃ、オレが担任になったのも恭弥が根回ししたからみてーだし。それにここじゃ意味ねーようだが、こいつには発信機がついているぜ」

 

 そんなバカなとヒバードの姿を思い出す。確かに何もなかったはずだ。

 

「まっ、最初は恭弥も手がかりぐらいの軽い気持ちだったんだが、途中からはちゃんとついていたぜ。ジャンニーニが頑張ったみたいだ。脅されたジャンニーニは大変だったみてぇだけどな」

 

 頭の近くに手をあげ、乗り移ったのを確認して手を下げる。探していれば、ディーノが指をさした。……足の付け根のところなんて見るかよ!?

 

「初日だけじゃなくなったのはそういう理由だったんだな……」

 

 リボーンが忠告するわけだ。気付かないならまだしも、気付いているなら礼ぐらい言えと、私でも説教したくなるレベルだ。

 

「時計の件もあるし、ちゃんと伝える。でもよく説得出来たな」

「あいつもそれだけ気にしてたってことだ」

 

 そうだろうなと素直に思う自身と、キャラが違うとツッコミしたくなる自身がいる。……雲雀恭弥を変えたのは彼女の影響だろうな。だが、彼女にもう会えないことを考えると、良い変化と言っていいのか微妙なところだ。

 

「……話を戻すが、ディーノが帰ったのは?」

「あの日はラル・ミルチがきたからだぜ。他にもコロネロやリボーンも交代でみていたぜ」

「もしかしてディーノが教師になった理由は?」

「お前の護衛だな」

 

 穴があったら入りたい。ディーノの手助けをしに行ったのではなく、護衛されに自ら通っていたのか。……ディーノを教師にする計画を立てたのはリボーンだったな。私の気持ちがバレていたよな……。

 

「ちょっと待て。護衛をつけるなら言ってくれれば、協力したぞ」

 

 私だってそこまてバカではない。ちゃんと説明されれば嫌がらないし協力したぞ。私が無自覚だったのだ、かなり護衛し難かったはずだ。

 

「自覚させれば、ボロを出す可能性が低くなるからなぁ」

「……付き合いの長い君が、日中の担当になったのか」

 

 くそっ、浮かれすぎていた。こんな簡単なことに気付かないなんて! そして、本当にボロを出したことが恥ずかしい!

 

「そ、それなら時計は!? なんで復讐者が時計を狙ってるとわかったんだ! いや、その前に復讐者が参戦するってどうやって気付いた!?」

 

 落ちてくように背を叩かれた。興奮しすぎてヒバードも頭に戻ってしまったしな。……落ち着いてられるか!

 

「話すから落ち着けって! 血を流した後なんだ……」

 

 心配そうなディーノの声を聞いて、深呼吸することした。が、血がどこかに引っかかっていたようでむせた。……怪我の量は明らかに少ないはずなのに、なぜ私の方がへばってるのだ。いろいろ思うところはあるが、精神的にも疲れていたので何もいう気にはなれなかった。




本編にのらない裏話。
雲雀さんはリボーンチームのバトラーウオッチをつけています。ディーノさんが放課後に2人の接触をさけたのはそれが理由。
もちろん雲雀さんはツナ君達と別行動しています。そもそも、ツナ君達は雲雀さんが同チームになったことも知らされていませんw
雲雀さんはヒバードの位置を見て、仕方なく向かっていたところでヴァリアーと接触していました。
ヴァリアーはちゃんとシモンは囮と同盟を組んでいたディーノさんから聞かされていました。ただ今日ではないと判断されたので、気付かれないために今日も決行。
情報交換することもなく、なぜかそのままバトルに発展。フォンが呆れながらも見守っていましたw

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