クラスメイト K [本編&おまけ完結]   作:ちびっこ

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予定と用事

 雲雀恭弥と遭遇してから私は家から出なくなった。もちろん学校には通ったぞ。家族に心配かけてしまうからな。ただ、学校にはギリギリに登校し、休憩時間はトイレに行き、放課後になればすぐ帰った。何度か放課後に山本武が呼び止めていたが全て無視した。そして、明日からは学校がないので彼とはしばらく会わない。そう、今日は終業式。明日から夏休みに入るのだ。……あまり喜べないけどな。

 

 原作を知る前に立てた夏休みの予定では、マンガを読み、マンガを読み、マンガを読み……という充実した毎日を送る予定だった。しかし、沢田綱吉達のせいで叶わない。

 

 一見、マンガを読むだけだろと思うだろ。それは違う。(家で)マンガを読み、(本屋で)マンガを読み、(古本屋で)マンガを読み……という言葉が隠されているのだ!

 

 このままだと新しいマンガを買いにいけない。掘り出し物を探すことも出来ない……。だが、外に出れば死亡フラグが立つと思えば家にいるしかない……。

 

 あの時にもっとマンガを買うべきだったな。雲雀恭弥に遭遇するとは思わなかったし、元々とある本を買いに行くために本屋に行ったため、その本を買わないという選択は出来なかったのだ。しかし、今となってはあの計画を実行できるとは思えない……。

 

 私の夏休みが終わったな……。家にあるマンガを全部読み直すしかない。新しいマンガはお母さんに頼んで買ってきてもらおう。買い物に着いていかない分、風呂掃除などを毎日すれば許してくれるだろう。……お菓子が買えないな。全てあの男のせいである。

 

 まだ可能性があったのだ。沢田綱吉と山本武は補習があるからな。獄寺隼人は私に興味がなく出会っても大丈夫だった。だが、あの男が並盛を徘徊するのが問題だった。徘徊と言ったが、本人からすれば見回りなのだろう。私からすればただの迷惑な奴だけどな。だから会いたくなか――これ以上は止めておくべきだな。この前みたいに拒否をし、フラグが立つのは勘弁である。

 

 フラグを立たないようにしてる間に先生の話が終わった。真面目に聞かなかったが問題ない。プリントと同じことしか言ってないからな。最後の挨拶が終わったので急いで帰ろう。

 

「神崎!」

 

 当然無視だ。山本武も気付けよ。周りがもう止めとけってオーラを出してるぞ。

 

「え!? もう帰ろうとしてるのーー!? 神崎さん、ちょっと待ってよ!」

 

 これも当然無視。……沢田綱吉が無視された場合は笑うのか。まぁ以前と違ってバカにした笑いじゃないけどな。リボーン効果である。それにしても沢田綱吉は悪い奴じゃないのに、なんで笑いものにされてるんだ?謎だな。まぁ解く気はない。今度こそは本当だぞ。と、思いながら廊下に出た。

 

「ぐぇ!?」

 

 出たはずの教室に引き戻された。変な声が出たのは私の意志じゃない行動が起きたからだ。ちなみに私は何が起きてるか詳しくわかっていない。わかってるのは……死にそうだ。い、息が出来ない!!

 

「10代目が話しかけてるのにてめぇ……いい度胸だな……ああ!?」

「ご、獄寺君、オレのことはいいから離してあげて!! お願いだから!!」

「10代目がおっしゃるなら……逃げるんじゃねーぞ!」

「ゴホゴホゴホッ!!」

 

 ……こいつ……殺す気か!?後ろから首元のところのシャツを掴むなよ!私の感謝を返せ!

 死にそうだったところから逆ギレしたことで、少し冷静になったらしい。これは沢田綱吉を無視したことに腹を立てた獄寺隼人が行動したのだろう。

 

 最近、沢田綱吉が絡んでこなかったから油断した……。

 

「……なに?」

 

 もちろんこれは沢田綱吉に向かって話してる。山本武は無視しても女子に手を上げることはないし、獄寺隼人は何も思わないからだ。

 

「あのさ、神崎さんは夏休み予定あるのかな……?」

「ある」

 

 ウソはついていないぞ。私にはひきこもってマンガを読むという大事な予定があるのだ。

 

「そ、そう……。ない日はオレ達と一緒に遊ばない?」

「……君は補習じゃなかった?」

「そうだけど……ずっとじゃないし……」

 

 補習が終われば終わりじゃないんだぞ。勉強しろよ。いろいろ言いたいが、これ以上言えば獄寺隼人がまたキレる。……とにかくこの状況を何とかするべきだな。

 

「予定があるから帰りながらでもいいか?」

「う、うん!」

 

 嬉しそうに返事をして荷物を取りに行ったな。山本武は予定があるからいつも急いで帰ってたんだな!と、言いながら取りに行った。ポジティブすぎるだろ……。私はドン引きした。今のうちに逃げたいが獄寺隼人が近くにいるため諦めた。これ以上、痛いのは勘弁だからな。しかし、彼は取りに行かないのか?

 

「……なんだよ」

「カバンは?」

「ねぇよ」

 

 彼は学校に何しに来てるんだ……?少し怪訝な目で見てしまった。

 

「……今日は終業式だろーが」

「関係ないだろ!?」

 

 ……やるな。私をツッコミにまわすとは……沢田綱吉の気持ちが理解できた。彼は常識がどこか抜けてるためツッコミをするしかないのだ。問題はツッコミをすれば命がけになることだろう。すぐダイナマイトを出そうとするからな。ギリギリさっきのはまだ大丈夫だったらしい。バカだろと言わなくて正解だった。

 

「ん? お前らって仲が良かったんだな!」

「ああ!? ふざけんじゃねぇ! 野球バカ!! 誰がこんな奴と……」

 

 同感だ。ただ思ってても口に出さないほうがいいぞ。君の大声のせいで、沢田綱吉が慌てて来るはめになってるからな。私は彼が慌ててくれた方が助かるが。

 

「獄寺君、山本、どうかしたの?」

 

 慌てながら来た彼が何かあったのか2人に聞いてるが、君は聞かないでくれ。山本武は天然だからと流せるが、君が本気で仲がいいと勘違いすれば面倒なことになる。

 

「先に帰っていい?」

「ご、ごめん! 神崎さんは用事があったんだ……」

 

 用事はないぞ。マンガを読む予定はあるけどな。沢田綱吉は用事と予定では意味が違うことを知ったほうがいいだろうな。彼は人がいいからすぐ騙されることになる。もちろん教えてあげるつもりはない。これから私が騙せなくなるからな。

 

 

 

 

 彼らと一緒に靴箱に向かってると気付いた。……逆ハーレムだな。見えないが、恐らくハーレムの中に死神もいるだろう。どうせ死神がいるなら代行にしてくれ。レアな気がする。隊長格もレアだが、モブにわざわざ登場しないだろう。うん、この法則だと代行も来るわけがないな。名前も出てこない平隊員、私を護ってくれ。死神に頼むのはおかしい気がするが切に願う。

 

「どこまで話したかな……。あ! 予定がない日はオレ達と遊ぼうよ!」

 

 私を誘わなくても彼らが遊んでくれるだろ。なぜ私を誘うんだ。思わず眉間にシワがよってしまう。

 

「おい! せっかく10代目が誘ってくれてるんだ! 返事しろ!」

「まーまー、落ち着けって。神埼は夏休み忙しいみてーだし、無理に誘うのは良くないぜ!」

 

 ビックリだ。山本武が空気を読んだぞ!?

 

「んー忙しいんだよな……。気分転換にみんなと遊べばぜってぇ楽しいぜ!」

 

 山本武は山本武だった。うんざりするのも慣れるもんだな。これ以上は慣れたくはないので私の切り札を出すか。ちょうど靴箱についたしな。

 

「持つのが重いと思うぐらいの宿題があるからな……。君達もそう思わない?」

 

 私の言葉に獄寺隼人はスルーした。当然だろう。彼はカバンを持ってないからな。そもそもするのかもわからない。山本武は少し嫌そうな顔をした。勉強のことは考えたくないのだろう。そして、私が1番気になる彼の反応は――。

 

「……あ! 机の中に置いてきちゃった……」

 

 知っていてもバカだろと言いたくなる。なぜ夏休みの宿題を忘れるのだ。

 

「取りに行ったほうがいい。私は予定があるから付き合えないけど彼らは付き合ってくれる」

「え!? ちょ、ちょっと待って!!」

 

 慌てて私を引きとめようとするので、もう1つ爆弾を放り込む。

 

「このまま帰ると家庭教師ごっこの好きな子どもが怒るかも。遊びと言っても、私は子どもに怒られるのは嫌。君はいいかもしれないが――」

 

 ここまで言えば、彼は忘れた時の未来が想像ついたらしい。顔が真っ青になったからな。

 

「ご、ごめん! ありがとう!」

 

 お礼をいいながら彼は走り去った。恐らく教室に行ったのだろう。その後を2人が必死に追いかけて行った。

 

「さようなら」

「ああ! 神崎 またな!」

 

 山本武と獄寺隼人は私がつぶやいた小さな声に気付いたらしい。獄寺隼人は何も言わなかったが、こっちを向いたからな。しかし、勘違いしては困る。私が死神に向かって言ったのだ。君達じゃない。まぁ私の思惑通り、無事に彼らから離れることが出来たからいいとしよう。思惑と言ってもたいしたことじゃないが。

 

 この後、沢田綱吉は学校に宿題を忘れてリボーンにボコられるというイベントがあった。私はそれを利用して逃げることを考えたのだ。だから私は話をさえぎっても、教室から離れた靴箱で宿題の話題を出す気だった。彼は何が何でも取りに戻ることが予想できたからな。偶然にも話の流れが上手く進んだのだ。ラッキーである。

 

 自分自身が助かるために、沢田綱吉がボコられることを回避してしまったが、マンガにも乗ってないプチ事件だ。問題ないだろう。むしろ感謝してほしいぐらいだと思いながら帰った。

 

 

 

 

 

 無事に部屋にたどり着き私はつぶやいた。

 

「……初めて知識が役に立ったな」

 

 つまり、今までは――。自分の頭の悪さでショックを受ける前に、私はマンガを読み始めた。




次とその次は、三人称。

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