クラスメイト K [本編&おまけ完結]   作:ちびっこ

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短いけど、キリがいいので。


待機

 まだなのか、ディーノ。

 

 現在、私はディーノの帰りを心待ちしている。正直なところ、今までで1番で待ちわびてる。

 

「遠慮しなくていいんだよ。サクラちゃん」

 

 コクリと頷き、ケーキに手を伸ばす。しかし残念なことに味がわからない。恐らくこのケーキは高い。なんてもったいないことをしているのだろうか。思っていてもわからないものはわからない。

 

 早く帰ってこい、ディーノ。

 

「大丈夫じゃよ」

 

 私がツナ達の心配をしていると思って声をかけてくれたのだろう。だが、残念。相手は私である。自身のことでいっぱいいっぱいでツナ達のことは二の次なのだ。

 

 しかし否定するのも無視するのもまずいので、ニコリと微笑んでおく。

 

 私が愛想笑いするなんて珍しいと思っているだろ。仕方ないじゃないか、私の目の前に座っているのは9代目なんだぞ!

 

 ちなみに誰に向かって言ってるのか、ツッコミしてはいけない。久しぶりにボッチレベルが戻るほど混乱中なのだ。

 

 くそっ、なんでこうなったんだ。ディーノに根負けしたのが悪いのか。本当になんで私はディーノを好きになってしまったのだ。惚れた方が負けという言葉をずっと証明する羽目になりそうだ。

 

 しかしだからといって、なぜ9代目に私を預けたのだ。確かに彼のツテの中で、今最も警備体制が整ってるだろう。私を預けるにはちょうど良く、さらに私を傷つける心配をしてなくていい人物だろう。特に隣の部屋と比べるとそう思う。

 

 隣の部屋にはスクアーロとマーモンが居るからな!

 

 ちなみにツテのないマーモンが居るのは、同盟であるギーグファミリーを助けるためである。物凄くお金がかかってそうだが、これはボンゴレ持ちな気がする。今は別料金かもしれないが。

 

 それにしても未来に来た時も思ったが、ディーノは実行力がありすぎる。自身が持ってるツテを最大限に活用して、手助けしようとする。おかげで私の胃がストレスでおかしくなりそうだ。

 

 軽く整理すればわかると思う。まず兄の匣兵器であるエリザベスの形態変化のリングをつけ。ディーノの匣兵器であるフミ子の形態変化のリングもつけ。目の前に9代目。部屋の中には9代目の守護者。隣の部屋にはスクアーロとマーモン。

 

 ……どんな対応だよ!?

 

 脳内でおかしなテンションになるのは当然だと思う。そして、ツナ達のことが二の次になるのは仕方がないと思う。私は悪くない。ディーノが悪い。

 

 ちなみに知らない人達ばかりに囲まれることになるので、私のためにディーノはロマーリオを置いていった。ロマーリオには悪いが、正直微妙である。ロマーリオの立場では9代目と会話は出来ないからな。それでも居ないよりも居る方が嬉しかったのだ。私がディーノの体質をすっかり忘れ、その提案に飛びつくほどに……。

 

 まぁフミ子のリングが反応していないので大丈夫だろう。……多分。

 

 ちょっと待て。ディーノが帰ってくるのが遅いのは部下がいないからなのか?

 

 なんてことだ。数時間前の自身に説教したくなった。

 

 脳内でいろいろ考えていると9代目がジッと私を見ていた。表には出してなかったはずだ。現に9代目は怪しい目を向けずに、ニコニコと微笑んでいるからな。しかしなぜ嬉しそうな顔をしているのだ。……気になる。

 

「……何か?」

 

 うん、もうちょっと言葉を選べ。すぐさま自身にツッコミを入れるほど、これは酷い。思わず助けを求めるかのようにロマーリオを見る。私の気持ちを通訳してくれ。

 

「よいよい、わしはおじいちゃんと思って接してもらえれば嬉しいからのぅ」

 

 それは無理だろと心の中でツッコミする。

 

「本当に気にする必要はないんじゃよ。未来の記憶はわしにも届いておる。わしはディーノが赤ん坊のころから知っておるからのぉ。ディーノもわしをおじいちゃんのように慕っておる。だからサクラちゃんも気にする必要がないんじゃ」

「ぶはっ」

 

 私の後ろにいたロマーリオがふいた。急にどうした。

 

「あんなに小さかったディーノに、こんな可愛い彼女が出来るとは感慨深いのぉ」

 

 噎せた。ロマーリオは笑いを堪えながらも背中をさすってくれた。私の身体のフォローをするなら、大ダメージを受けた私の心をフォローしてくれ。

 

「……ごほっ。その、なんだ。未来のディーノはあれだが、今の私とディーノはそんな関係じゃない」

 

 すぐベッドを用意してくれ。悶えたい。

 

「なんと、そうじゃったか。老ぼれの早とちりじゃったか。すまんのぉ」

 

 体温がやばい。顔が熱すぎる。本当に未来の記憶どうなってる。そんな情報は流れなくていいだろ!

 

 ……前言撤回する。ディーノ、しばらく帰ってくるな。

 

 この空気に耐えれなく、自然と視線が下がる。これでも先程まで心の隅では、私の話を信じて9代目は大事な『罪』を渡す決断をして良かったのだろうかとか、心配していたんだぞ。もうどうでも良くなったが!

 

 しかしその情報も流れたなら、ディーノはよく無事だったな。彼が狙われてもおかしくはなかった。優先順位が『罪』とボンゴレだったからだろう。ギリギリなところを私達は渡っていたようだ。

 

 他のことを考えて羞恥に耐えていると周りの空気が変わる。まさかシモンファミリーが来たのか? もしもの時の対策として、知識とは違うホテルに私達は居るのだがバレてしまったのか。

 

「ウチのボスです」

 

 いつの間にか電話していたロマーリオが答えたことにより、空気が緩む。だが、私は微妙な気持ちになった。帰ってくるなと思ったタイミングでくるな。

 

 バンッと勢いよく扉が開く。ディーノらしくない開き方だな。

 

「僕はきたっ!」

「……お兄ちゃん!」

 

 兄の姿が見えた途端、先程の羞恥などは明後日の方向へと飛んで行った。兄が両腕を広げて私を待っているので、そこに飛び込む。私にしては珍しい行動なのだが、兄は戸惑いもせず膝に手を入れて私を抱き上げた。

 

「お兄ちゃん、怪我ない?」

「もちろんだとも」

 

 兄の顔を見てから大丈夫と判断し、首に抱き着く。本当に無事で良かった。未来の時のように無理をしていないかずっと心配だったのだ。この反動は仕方ないと思う。

 

「……すまないね、サクラ」

「どうしたの? お兄ちゃん」

「こんなにも甘えるサクラを見れば、どれだけ心配かけたかわかるからね」

「気にしなくていいよ」

 

 兄が無事ならそれでいいのだ。9代目や9代目の守護者、兄と一緒にきたディーノに温かい目で見られているが、そんなことどうでもいいぐらい私は兄が無事で嬉しいのだ。……ちょっと待て。なぜそこにいる沢田綱吉。

 

 兄とディーノに隠れて気付かなかっただけで、ツナとリボーンも居たらしい。リボーンは別にいい。だが、同級生のツナにこの状態を見られたと思うと恥ずかしい!

 

 兄をポンポンと叩けば、私の意図を察した兄はすぐにおろしてくれた。そして、私は何事もなかったようにツナに向き合った。

 

「……君たちも元気そうだな」

「う、うん」

「それで誤魔化せるほど、ツナの頭は悪くねぇぞ」

 

 相変わらずリボーンはズバッという男である。

 

「うぅ、今のは見なかったことにしてくれ」

「サクラがそういうなら……」

 

 ツナはそういってくれたものの、やはり恥ずかしくてどこかに隠れたくなる。流石にこのタイミングで兄の後ろはない。そうなると普段ならばディーノの後ろに隠れると即決するが、9代目達の目があるのでできない。

 

 動けなくなっていると、ディーノがポンポンと私の頭を撫でてから、ツナの視線を遮るような位置に立った。すると、ロマーリオと9代目の守護者の1人が我慢出来ずに噴き出し、他のメンバーは優しい目でこっちを見ていた。いたたまれない!

 

「ん?」

 

 視線に気付いたのか、ディーノは不思議そうに周りをみていた。お願いだから気付かないでくれ。

 

「どうやら、君が随分サクラを可愛がってるという目で見ているようだね」

「まっ、可愛い妹分だしな」

 

 ディーノが私を子ども扱いしていることは、わかっていたことではないか。ただ、心の中で落ち込むのは許してほしい。

 

「サクラの兄は僕だよ! 君にそのポジションを譲る気は一生ないからね!!」

「わかった、わかった」

「わかってないよ。僕はプンスカだよ!」

「わーってるって」

 

 急に対抗しだした兄をディーノが軽く流していた。兄の扱いに慣れてきたな。もう任せよう。物凄く騒がしくなっているが、9代目は微笑んでいるのでいいだろう。

 

「カオス」

「だな」

 

 とりあえずこの状況を一言で表せば、リボーンが同意した。

 

 達観し始めた私達と違って、ツナは「これからのこと話し合うんじゃなかったのー!?」と叫んでいた。ドンマイである。




シリアスは続かない!!w


作者の疑問。
ボンゴレのためというのが前提にあるけど、どんな気持ちでスクアーロは依頼を受けたんだろ…。

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