クラスメイト K [本編&おまけ完結]   作:ちびっこ

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気分が乗ったので投稿。
それにしても、ケイタイで打つのはしんどい。
超忙しいから余計にイライラしました。
パソコンが欲しい(切実


お節介

 どうして私には戦う力がないのだろう。せめて自分自身を守れることが出来れば、日本にいることも出来たはずだ。

 

 兄は苦しんでいないだろうか。責任を感じていないだろうか。未来の時のように1人で背負ってしまわないだろうか。知識よりツナ達が危険にあったとしても兄だけのせいではないのだ。確かに兄の能力を警戒され、中途半端な怪我で終わらない可能性が高くなった。だが、兄の能力は後手にまわることを考えると、警戒されているのは兄1人だけではなく、私達の能力となるはずだ。

 

 だから……1人で背負わないで。

 

 ポンポンとあやすように私の背中をディーノが叩く。……別に泣いてはないのだが。

 

「お前の言いたいことはわかったから。オレの話も聞いてくれ。なっ?」

「……決まったのか?」

「ったく」

 

 ガッと力強く肩に手を置かれ、顔を覗くようにディーノが屈んだ。

 

「決めれるわけねーじゃねぇか。お前の気持ちを聞いてねぇからな」

 

 よくわからなくて首をひねる。先ほど話したはずだ。

 

「あれは考えであって、お前の気持ちじゃねぇだろ? お前はどうしたいんだ?」

 

 言葉が詰まる。私の返事は決まっていると言っていい。なぜなら一番私が傷つかない道を選びたくなるからだ。それに私だって出来ることならツナ達とシモンファミリーが一緒に過ごす未来をみたい。私の脳裏に浮かぶのはツナと古里炎真が笑いあってる姿なのだから。

 

「…………」

 

 目を背けようとしたが、ディーノは許してはくれなかった。

 

「困難な道だとしても、お前とツナ達が一番幸せになる方を選ぶ。そう考えるのは桂だけじゃないんだ」

 

 大きい。ディーノが大きい。彼の器の大きさを初めて見に染みて気付いた。

 

「それにな、お前は大事なことを忘れてるぜ。お前を傷つけて得た平穏をあいつらが喜ぶわけがねぇだろ?」

「…………ツナには怒られたくないかも」

 

 ツナに怒られるとどれだけ自身がダメダメだったのかと落ち込んでしまいそうだしな。

 

 ほんの少しツナに対して失礼なことを考えているとガシガシと頭を撫でられた。

 

「もうオレの返事を聞かなくていいだろ?」

 

 コクリと頷くとディーノが笑った。……また見惚れたのは秘密である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 継承式まで後2日。

 

 ツナの部屋に一部不参加ではあるがボンゴレとシモンが集まっていた。リボーンが同盟ファミリーがやられたことを教えるために声をかけたからである。

 

「つ……つまり……正体不明の敵がオレ達を狙って、そこら辺をうろついてるってこと!?」

 

 同盟国のギーグファミリーがやられたことで、ツナが事実に気付き声をあげる。

 

 緊張が走っている中、ポンポンと机を叩いた男に視線が集まる。

 

「落ち着きたまえ」

『!?』

「えー!? 桂さんいつの間にー!?」

 

 ボンゴレとシモンが突如現れたことで殺気をむける中、ツナがツッコミする。びびってるわりにツナは1番余裕があるらしい。

 

「そんなに見つめられるとテレるじゃないか」

 

 ……訂正しよう。彼が1番余裕があるようだ。もっとも、ツナと比べること自体が間違っているかもしれないが。

 

「……紹介してもらっても?」

 

 ツナが男の名を叫んだことや、ボンゴレが警戒を解いたことでシモンも警戒を緩め、アーデルハイトが代表し説明を求める。

 

「ええっと……この人は……」

「僕の名は神崎桂。妹のサクラが好きで、大好きで、愛している、ただの一般人さ!」

 

 その時点で一般人ではない。当然、ボンゴレもシモンもドン引きである。

 

「……そ、そうだ! サクラは今どこに居るんですか? 急に休学しちゃうし……雲雀さんに聞いても正式な許可はとってるっていうだけだし……」

 

 意外そうにツナの顔を見る桂。何度も家に訪ねて来ていたのは知っていたが、桂は放置していた。まさか雲雀に話を聞きに行くほどサクラのことを心配しているとは思っていなかったのだ。ほんの少し桂の中でツナをサクラの婿候補ランキングの順位をあげておく。

 

「そうか! あいつの協力があれば……っつ!」

 

 殺気をあてられ、獄寺は身構える。ポタリと流れた獄寺の汗を見たところで、桂は表情を緩めツナを見た。

 

「サクラは安全なところにいるよ。狙われてるのは君達だけじゃない」

「そんなぁ!」

 

 桂の言葉にツナは勢いよく立ち上がる。完全に納得したわけじゃないが、ボンゴレ10代目候補である自身が狙われるのはまだいい。守護者である獄寺達が狙われるのもツナは申し訳なく思うのだ。多少の知識があるかもしれないが、一般人枠に入るサクラを狙うのは言語道断だった。

 

 そもそもツナはもうサクラや桂を巻き込みたくないと思っている。未来の桂が死んだ時のサクラの涙は今でもツナの中で来るものがあるのだ。

 

「落ち着きたまえ、沢田君」

「で、でも!」

「さっきも言ったが、サクラは安全なところにいるよ。そうでなければ、僕がボンゴレへ殴り込みに行っているさ」

 

 シーン……と静まり返る。笑えない。桂は本気だ。

 

 ツナが落ち着いて座ったのを見て、満足した桂は話を戻す。

 

「僕はね、君にケンカを売りに来たわけじゃないんだよ。ただ10代目を継ぐか継がないか……君の気持ちを聞きに来たんだ。君の年齢を考えると酷な事を言っているとわかっている。でも君の気持ちを知らなければ、こちらも動きようがないからね」

 

 ゴクリとツナの喉がなった。今までその場の雰囲気に流されていたのは、自身のことなのに真剣に考えていなかったからだ。目を見ればわかる。ツナ以外が答えても桂は納得しない。

 

「オレは……」

 

 ツナは周りに目をむける。そして、ギュッと目をつぶってから桂に向き合った。

 

「みんな、ごめん。オレはボンゴレ10代目にはならない」

「理由を聞いてもいいかい?」

「いろいろ理由はあるんだけど……やっぱり1番は、みんなを危険に巻き込みたくない」

 

 ツナを10代目にと押せ押せだった獄寺達も、ツナの気持ちを知って言葉がつまり何も言えなくなった。

 

 しかし、桂だけは違った。

 

「巻き込みたくなければ、権力を得るのが手っ取り早いじゃないか。例え今断ったとしても、君はボンゴレ10代目候補なのだから危険は常に付きまとう。君以外に候補は居ないのだろう?」

「そ、それは……」

 

 ツナの視線が下がったのをみて、桂は軽く溜息をつき口を開いた。

 

「勘違いしてないかい? 僕は継げと言いたいわけじゃない」

「えっ?」

「仕方ないね、教えてあげよう。沢田君、君は周りに恵まれていることを自覚してほしかったのだよ。君の気持ちを言葉にすれば、彼らはわかってくれる。悩んでいるならば、悩んでると言えばいい。候補である限り危険が伴うけれど継ぎたくないならば、そう言えばいい。危険だから、継がないからといって、君の友達は離れていかないよ」

「……桂さん」

 

 桂はツナに微笑んだ後、ゆっくりと周りを見渡した。

 

「少しは反省したかい?」

 

 うっと言葉に詰まった者が大半である。今回、桂はツナに怒っていたのではなく、勝手に暴走した周りに釘を刺しにきたのだ。

 

「以心伝心というのは難しいからね。君達も気をつけたまえ」

 

 桂がツナ達のためになぜここまでお節介をしたのか、やっと獄寺達は理解した。……同じ過ちを繰り返さないためだ。

 

 すぐさま獄寺、山本、了平はツナに頭を下げたのだった。

 

「ちょ、みんな頭をあげて! オレがはっきりと言わなかったのが悪かったんだし!」

「そうだとも」

 

 桂が偉そうに肯定したことで空気が緩む。もっとも獄寺はイラっとしたが。

 

「……そこまで気がまわるんなら、気付け、よッ!!」

 

 ドカッという音と共に桂が吹っ飛ばされる。ツナ達は突如現れた人物に驚いだだけでなく、桂を殴ったその行動に驚いた。

 

「デ、ディーノさん!? ええっ!! なんでーー!?」

 

 ツナが声をあげるのも無理もない。ディーノが いきなり殴ったのだ。部下がいなければドジではあるが、温厚な気質で頼れる人物という認識なのだ。不意打ちで話し合いもせず、真っ先に手を出すイメージはない。

 

「悪いな、ツナ。途中から話は聞いていた。今んのところは継ぐ気はないってことでいいんだな?」

「え? あ、はい」

「そうか、わかった。ちゃんと9代目に伝えろよ。9代目も話せばわかってくれるからなっ」

 

 桂に対して手荒な行動をしたが、ツナに対してはいつもと雰囲気が変わらないため、会話が成立した。しかしそれはツナ達にだけであって、桂に向き合えば真剣な顔に戻る。

 

「……ディーノさん、なんか今日変じゃないか?」

「ああ。かなりキレてんな」

「ディーノさんがぁ!?」

「よく見ろ、部下がいねぇじゃねぇか」

「ほ、ほんとだーー!?」

 

 ツナがこっそりとリボーンと話している間に、桂は何事もなかったように起き上がった。かなりの威力でディーノが殴ったが、もう治ったようだ。

 

「少し痛かったじゃないか」

「痛くしたんだ」

「……サクラは?」

「オレが信頼している人に預けた」

 

 今度は桂がディーノを殴った。この2人の空気にのまれて、リボーン以外は動けない。

 

「っつ」

「僕は君を信用してサクラを預けたんだ! 見損なったよ!」

「……オレはその人ならサクラを任せられると思って預けたんだ。それすら許容出来ないなら、はなっからお前が側にいてしっかりと守れ! 中途半端に手放すんじゃねぇ!」

 

 気付いたような反応をした桂を見て、ディーノは肩の力を抜いた。桂相手に何度も殴るのはディーノでも骨が折れるのだ。最初に殴れたのもこの場にディーノが現れるとは思っていなかったからだ。

 

「お前らは無意識に惹かれ合う。お前があいつを気にしている同じ分だけ、あいつもお前を気にしてるってことだ。……そしてお前と違って無自覚な分、あいつの方が脆い」

 

 桂が側にいるのは当たり前という考えがサクラには根付いてる。それを壊すには未来のサクラがやったように、もう会わないというレベルの覚悟がいる。魂から惹かれ合うのだから。

 

 しかし、未来の世界の経験から、サクラはもっと桂に歩み寄る道を選んだ。つまり悪く言うならば歩み寄った分だけ、サクラは桂に依存しているのだ。

 

「……彼らに説教する資格がなかったようだね」

「ったく、ほんとお前らはそっくりだぜ。家族のことになると視野が狭くなるところなんて特にな」

 

 はぁと軽く溜息を吐いた後、ディーノはツナへを見た。

 

「いろいろと悪かったな、ツナ」

「いえ!」

 

 ぶんぶんと手を振って大丈夫とツナは示す。いきなりのことで驚いたのは事実だが、桂とサクラに必要なことだったのだから……。

 

「ありがとなっ。じゃ、次はお前らに関わりのある話をすっか」

「え? なんですか?」

「ボンゴレに敵対している相手のことだ」

 

 あまりの迫力で動けなかっただけで、シモンファミリーにはそこまで関わりのない話だった。しかし、ディーノの言葉で真剣に耳を傾け始める。

 

「何か掴んだのか?」

 

 この場を代表として口を開いたのはリボーンだった。もちろん、マフィア方面からの情報、もしくはサクラの方から得たのかという2つの意味が含まれていた。

 

「ああ。お前ら、シモンファミリーがやったんだろ?」

「やっぱりそうなのか。サクラが姿を隠してまで回りくどいことをするなら、ツナが気に入った相手だからとしか説明出来ねぇからな」

「やっぱ、リボーンは気付いていたのか。そうなると、恭弥も気付いてそうだな……」

「サクラは詰めが甘いからな」

「そこがサクラの可愛いところじゃないか!」

 

 話が通じ合ってる大人組に、またシモンの動きを封じるように牽制した大人組に、ツナ達はついていけなかった。

 

「え、なんで……。炎真君、違うよね……?」

「……本当だよ」

 

 観念したというよりも、この状況でも諦めるつもりがないから答えたのだ。炎真が開き直ることで、争う覚悟をファミリーに示すために。

 

「そこで、お前らシモンファミリーに提案だ。お前らが欲しがってる『罪』を渡すから、場所を改めてツナ達と勝負しないか?」

「……こちらにとって都合のいい話を信じろと?」

「まっ、それだけ聞くとそうだよな。だけど、こっちにもメリットはあるんだ。それにシモンもボンゴレも過去を知った方がいいからな」

 

 ディーノの言葉にピクリと反応したのは桂だった。『罪』だけではなく、そこまでサクラが話したことに驚いたのだ。さらに復讐者に囚われたままになる危険性まで知った上で、提案したディーノにも。

 

「疑い続けてこのまま捕まるよりはいいだろ? こっちにはギーグファミリーを殺った証拠があるんだぜ?」

「そうなのか?」

「正確には殺ろうとした証拠だけどな。一流の術師に手伝ってもらって、ギーグファミリーは無事だ」

「……やっぱり彼女には消えてもらうべきだったね」

 

 ポツリと物騒な言葉を吐いたのは炎真だった。あまりにも信じられなくてツナは声をかける。

 

「サクラを狙ったのも、炎真君達なの……?」

「そうだよ」

「どうして!! サクラは関係ないじゃないか!」

「大いに関係するよ。僕達は君達よりも彼女の方が厄介だと考えていたよ。それだけ彼女の力は脅威だ」

 

 冷たい目で語る炎真にツナは何も言い返せなかった。桂がお節介をしたもう1つの理由に気付いたからだ。ツナの友達の中で、もっとも脅威がありながらも弱い人物はサクラだ。桂はツナにサクラも覚悟が出来ていると伝えたかった、と……。

 

「炎真つったか? それはウソだろ。ボンゴレに恨みがあっても、お前にはサクラを殺せねーからな」

「…………」

「あいつを狙ったのはお前の指示じゃねぇ。もしくはお前の指示でサクラではなく桂を狙えって言ったか、だな」

「サクラは可愛いからね。君には殺せないよ」

 

 サクラから話が聞いている桂もディーノと同じ考えなので肯定した。もっとも、ちょっと内容はズレていたが。

 

 サクラを殺すには厄介な存在として必ず兄の桂の名があがる。妹を殺された炎真にはこの兄妹の組み合わせはトラウマに入るのだ。冷徹になれるなら、雲雀と2人の時を狙うだろうし、他にもチャンスはあったはずだ。イタリアへと離れたサクラに一度も仕掛けようとしなかったのも可笑しな話だ。

 

「ツナ、お前が感じたものは間違ってないぜ。だからこそ、あいつらの気持ちを受け止めてやってほしいんだ」

 

 コクリと頷いたツナは冷たい目をした炎真と真正面から向き合った。

 

「オレさ、戦いとか嫌いだし怖いけど、炎真君達のことをもっと知るために必要なら戦うよ。だって、オレはもうとっくに炎真君が大切な友達だと思ってるから」

 

 ツナの覚悟を聞いたディーノは炎真に『罪』を投げ渡した。そして彼らが去っていくのを黙って見送ったのだった。


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