クラスメイト K [本編&おまけ完結]   作:ちびっこ

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前の話のリクエストの続き。
中途半端?ですが、これで終わりです。

……という予定だったんですが、リクエストがあったので最後まで行きます。


ディーノのシマ

 私は叫びたい気持ちでいっぱいだった。ディーノに人前で横抱きで運ばれるなんて想定外過ぎる。薄っすら残ってる記憶では車をつかっていたので、時間は短かったと思いたい。それでも今回はいつもと違って、ツナ達だけの前ではない。いったい、どれぐらいの数の生徒に見られたのだろうか。放課後だったが、クラブがある生徒は残っている時間だ。恥ずかしくて、もう戻りたくない。

 

「それで何があったんだ?」

「……ん? ああ。命を狙われるだけ」

 

 ディーノの問いに、軽く答える。もう私は精神的に瀕死だからな。

 

「継承式が関係しているのか?」

 

 聞こえてきた言葉に反応して、ディーノの顔を見てしまった。観念したように口を開く。

 

「関係しているといえば、関係している。直接関係してるわけではない」

 

 根本はボンゴレ初代の時の話なのだ。XANXUSの時と一緒で実行しなくても回避できることではない。それより私は気になったことがある。なぜディーノが継承式のことを知っているのだろうか。まだ学校では集団転校生の話を聞いていない。本来ならこの時点でディーノは知らないはずだ。

 

 少し考え、口にする。遠まわしになるかもしれないが、これも関わってる気がしたのだ。

 

「どうして日本にきたんだ?」

「……9代目がお前のことを知ったからだ」

 

 一瞬迷ってからディーノは言葉にした。私は天を仰いだ。9代目のことがすっかり抜けていた。

 

「9代目はツナにボンゴレを継いでもらいたいと考えた。だが、お前が心配だった。決めたことでお前が苦しめるんじゃないかってな。だから9代目から話を聞いたオレが日本に向かったんだ」

「……そうか。ありがとう、ディーノ。もちろん9代目も」

 

 昔みたいに甘いと突っぱねることはやめた。その甘い考えで私は助かっているのだ。だから素直に感謝する。

 

 すると、撫でるように頬に手を添えられた。少しくすぐったくて、笑ってしまう。

 

「ごほっ、ごほっ」

「ロマーリオ、大丈夫か?」

 

 ロマーリオの咳に反応し、ディーノの手が離れてしまった。少し残念である。と、思っていたら頭を撫でられた。どうやらロマーリオの心配をしながらも私のことを気にかけてくれてるようだ。

 

 

 

 イタリアまでの時間は長いので、暇つぶしにキョロキョロと見渡す。プライベートジェットなんて乗れる機会は一生に一度あれば凄い。堪能しようと思う。……ベッドまであるぞ。

 

 ディーノは話しやすいので、マフィアのボスと忘れてしまいそうだが、こういうのを見ると雲の上の人だと再認識してしまう。だから素直に楽しめなくなる。まぁ狙われていることを考えると、プライベートジェットで良かったのだが。パイロットもファミリーの一員らしいしな。

 

「はぁ」

「どうした?」

 

 感嘆と落ち込みが合わさった溜息にディーノが反応してしまったようだ。

 

「ディーノは凄いな。……いや、よく頑張ったんだな」

 

 父親の死を乗り越え、財政を立ちなおす。これはディーノが努力したからだ。それにディーノの性格ならば、このような飛行機は興味がないだろう。彼ならそのお金をシマの人達のために使いたい。だが、財政を立ち直らせた証明や他のマフィアに侮れないようにするために必要なことだ。結果的にシマの人達に守ることに繋がるのだから。

 

 私がそんなことを言うとは思わなかったのか、ディーノは驚いていた。つい悪戯心がでて、普段私にするような感じでディーノの頭を撫でた。

 

「っ寝る」

 

 ……くそ、失敗した。ちょっとした悪戯心だったのに、ディーノがあんな風に笑うなんて思わなかった。赤くなった顔を見られないように、慌てて私はベッドに潜り込んだのだった。

 

 

 

 

 

 無事にイタリアについたので、すぐにディーノの家というより屋敷にお邪魔すると私は思っていた。だが、私は手ぶらである。生活グッズはディーノ達でも揃えられるだろうが、服とかは厳しい。プライベートジェットでイタリアについた私達より先回りするのは不可能だと判断し、今の間に買い物をすることになったのだ。

 

 案内された店で即決していく。というより、店の人が勝手に選んでくれる。

 

 住民を大事にしているディーノは、街中を歩くと話しかけられるのだ。そして私の服を探していると知ると、後は早かった。あれよとあれよと決まっていく。

 

 まだディーノは住民と話しているので、私は手持ち無沙汰になる。会話に混ざろうにもイタリア語なので、何を言ってるかわからないしな。

 

 ふとアイスを売ってる店が目に入った。もの凄く興味がある。ロマーリオに視線を送ると頷いたので行ってもいいようだ。

 

 忙しそうなディーノは放置し、ロマーリオと一緒に店を覗く。アイスじゃなくてジェラートのようだ。以前に兄から聞いた話によれば、ジェラートはソフトクリームとアイスクリームの間の柔らかさらしい。

 

 ロマーリオに頼めば1つぐらい奢ってくれるだろうと考え、真剣に悩み始める。すると、肩を叩かれ振り向くとアイスが目の前にあった。

 

 首をひねってると突き出されたので、つい受け取ってしまう。アイスを渡した人物を見ると、ちょっと太ってる元気の良さそうなオバさんだった。話しかけられてるが何を言ってるのかわからない。ロマーリオに助けを求める。

 

「食べてくれってさ。彼女のおごりだそうだ」

「いいのか?」

「ああ。食べてほしいって言ってる」

 

 ロマーリオが大丈夫というなら問題ないだろう。日本語でだが、彼女にお礼を言ってからお言葉に甘えていただくことにした。普通に食べやすくて美味しい。思ったより日本と味は変わらない。私の舌では違いがわからないだけかもしれないが。

 

 うまうまと食べていると、ディーノが慌ててやってきた。

 

「彼女が奢ってくれた」

 

 私に奢ってくれたのはディーノと一緒に居たからだろうと思って、真っ先に伝える。ディーノは返事をすると彼女に向き合った。礼をするのだろうと思い、頭を下げるタイミングを見計る。

 

 が、様子がおかしい。

 

 ディーノが怒られてるように見える。言葉がわからないのだが、そんな雰囲気がビシビシと感じる。チラチラと私に視線が向けるので、首をひねるしかない。仕舞いには、ディーノの背中をバシっと叩いていた。

 

「……大丈夫か?」

 

 叩かれた拍子に隣にきたので声をかける。彼女の剣幕が凄くて心配だったが会話に入れない。ロマーリオに視線を送っても首を横に振ったので、私にはどうすることも出来なかったのだ。もっとも、ジェラートは食べていたが。

 

「……ああ」

 

 少し疲れたような返事がかえってきた。マフィアのボスは大変らしい。

 

 ディーノ達の話は終わったので、もう1度彼女に頭を下げてから私は歩き出す。今日ぐらいしかゆっくり歩けないので、出来るだけ見てまわりたいのだ。

 

「ん?」

 

 そっとジェラートを持っていない手を握られたのでディーノを見る。兄と違って緊張するので止めてほしいのだが。

 

「食べながらだと危ないだろ? それにオレがこうしていれば、誰も手を出さねぇからな」

「なるほど、スリ対策か」

 

 納得して頷く。日本と違い、海外ではスリや置き引きなどがあるからな。

 

「……まぁ、そんなところだ」

「だが、盗まれるようなものは持ってないぞ?」

「念のためだ」

 

 相変わらずの過保護である。まぁ日本と違い知り合いに見られることはない。緊張はするが、決して嫌ではないので、ディーノに流されることにした。

 

 ディーノが軽く振り返り手を振ったので、私も振り返ってもう1度軽く頭を下げる。すると、彼女はなにやら満足そうに頷いていた。

 

「世話好きでいい人だ」

 

 ディーノと一緒に居たというだけで見知らぬ私に奢ってくれたのだ。それは間違いない。さすがディーノのシマの住人である。私が思わず呟いた言葉に、ディーノは深く頷いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 大きい。そして多い。

 

 それがディーノの家についた時の感想だった。

 

 大きいはディーノの家の大きさだ。知識では山本武が驚いてたぐらいしか情報がなかったため、想像以上の大きさで驚いたのだ。

 

 そして、多いはファミリーの人数である。黒のスーツを着た大人が並んでるので、なかなかの迫力である。

 

「……お前ら」

 

 ガクッと疲れたような反応するディーノに首をひねる。もしかするとこの人数はディーノも想定外だったのかもしれない。

 

 ディーノがイタリア語で何か言ってるようだが、彼らはニヤニヤしてるので聞き流しているようだ。言葉がわからない私にも察することが出来るほどなので、ディーノの顔がひきつるのも当然だと思った。

 

 少し空気を変えるためにディーノの服を引っ張る。ここに居る人たちに私は世話になるのだ。日本語でしか話せないが、挨拶する機会ぐらい作ってほしい。

 

「ん? どうした?」

 

 ……近い。それにいつもより、ディーノの感情が顔に出ている。とても嬉しそうだ。やはり家は気が休まるのだろう。

 

「紹介して」

「ああ。おまえら、知ってると思うがこいつはサクラだ。サクラがいる間は日本語で会話しろよ」

「世話になります」

 

 頭を下げたのはいいが、顔をあげれば視線が突き刺さる。明らかに人数が並盛中学の在校生とより多い。思わずディーノの後ろに隠れてしまう。

 

 すると、囃し立てる声や、口笛の音がする。といっても、イタリア語なので雰囲気で囃し立てると予想しただけだが。

 

「おめーら……」

 

 ついにディーノの我慢の限界がきたらしい。それを肌で感じた彼らはサッと逃げていった。動きがはやい。さすがマフィア。

 

「……部屋に案内するぜ」

 

 誰もいなくなったので部下がするようなことをディーノがする嵌めになったようだ。ドンマイである。

 




~ボツネタ 1~

 隣のディーノの部屋をノックする。

「どうした? まっ、とにかく入れ」

 許可を貰ったので遠慮なく入る。そして、ソファーに枕を置いて寝転び、バスタオルを広げる身体にかける。

「おやすみ」
「……ちょっと待て!」

 チッと舌打ちをする。呆気にとられたままで良かったのに。

「寝れないのか?」
「……まぁそんなところだ」

 歯切れの悪い返事をするしかなかった。今回は悪夢で寝れないわけじゃない。

「ホームシックか……」

 はっきり言うな、恥ずかしい。

「……しょうがないだろ。長期間家族と離れるなんて滅多にないし、未来ではそんなことを考える心の余裕はなかった」
「まぁそうだよな……。でもダメだ。寝るならベッドにしろ。オレがこっちで寝るから」
「身体のサイズを考えるとこっちが正しい」
「ダメだ」

 これには困った。ワガママを言ってるのは私だ。しかしディーノは譲らないだろう。だが、ディーノをソファーで眠らせるのは罪悪感がある。

「一緒のベッドに寝るしかないのか」
「どうしてそうなる!?」

 なかなかのツッコミのキレである。

「問題なのは私も理解しているが、2人の妥協点はこれしかない。幸いにもベッドは大きい」

 ダブルベッドよりも大きいのだ。端と端で眠れば、問題ない。それに未来では同じ部屋で寝ていたのだ。今更の話でもある。

「ダメだ」

 頑固である。諦めるしかないようだ。

「邪魔をした」
「……すまん」
「いや、今回は私が無理をいった。ディーノは悪くない」
「……そうか」
「ん。おやすみ」
「ああ、おやすみ。……ちょっと待て」
「なんだ?」
「部屋に戻るんだろうな」
「いや、ロマーリオのところへ行く」
「ダメに決まってるだろ!?」

 なぜだ。ロマーリオならば、私の提案を呑んでくれるはずだ。安心できるし、親子に近い年齢なので私に手を出そうとは思わないだろうしな。

 そもそも子どもの私に手を出そうと思う方がおかしい。

「……わかった。お前の案を呑むから」

 渋々、本当に渋々という感じで私を受け入れた。そんなに嫌だったのかと思うとちょっとショックだ。

 それでも寂しいので遠慮なくベッドで寝転ぶのだが。

「ゆっくり眠れよ」
「ん、ディーノは寝ないのか?」
「ああ、まだすることがあるんだ。少し明るいがそこは我慢してくれ」

 机の上にある電気だけなので、問題ない。それにどちらかというと安心する。

「大丈夫」
「おやすみ」

 軽く頭を撫でられ、私は心が温まり眠ることが出来た。



 翌朝、目が覚めるとディーノは仕事をしていた。

「……眠らなかったのか?」
「ちょっと終わらなくてな」

 ウソだ。ディーノは私がベッドをつかってるから眠らなかったのだ。

「……ごめん」
「サクラは悪くねーよ。……どっちかというと、オレの中の問題だ」

 よくわからなくて首をひねっていると、頭を撫でられた。また誤魔化された気がした。



~ボツネタ 2~

 朝食を食べようと食堂に向かおうと部屋を出れば、ディーノの部屋の前で誰かいた。

「おはようございます。サクラさん」
「おはよう」

 なぜかディーノの部下は私に敬語で話す。そして私も敬語をつかおうとすれば、ダメだと言う。よくわからない。

「そうだ。サクラさん、頼み事をしてもいいでしょうか?」

 世話になってるのは私の方なので、内容を聞くことにした。

 話を聞くと、彼はディーノを起こしにきたらしい。だが、ディーノは寝起きが悪くていつも困ってるらしい。そこで私が声をかければ、いつも違うので目が覚めるかもしれないと彼は言う。別段難しいことではなかったので了承した。

「ディーノ、ディーノ」

 声をかけながら肩を揺らす。それにしてもディーノの寝起きが悪いとは知らなかった。未来ではそんな素振りを見せなかったのは、ツナ達が居たからだろう。

「サクラ……?」

 寝起きが悪いのがウソのように、苦労することもなく彼は起きた。

「ん。おはよう、ディーノ」
「ああ、おはよう」

 そういって、彼は私の頬にキスをした。

「え」
「え?」
「…………」
「…………」
「…………」
「……すまん、寝ぼけていたみたいだ」
「いや、ここは海外だ。私は気にしない」
「…………」
「じゃ」
「お、おう」

 私は食堂に向かうのをやめて、ベッドで悶えた。



~ボツネタ理由~

2つともボツネタです。
よく考えるとディーノさん、このタイミングではまだ無自覚でした。

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