クラスメイト K [本編&おまけ完結]   作:ちびっこ

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リクエスト作品。
義兄妹設定で幼少期頃の桂さんの心情です。
作者があまり近親相愛が得意じゃないので本編のままだとこのルートは考えもつかないのですが、リクエストが義兄妹設定だったので簡単に書けましたw

注意事項としては……
IFルートなのでサクラの相手はディーノさん!と思っている方は読まないように、といういつもの。
近親相愛が絶対にダメな人は読まないでね。義兄妹が大丈夫な人はいけるはず。…多分。
次は義兄妹設定に伴い、他の設定もチラチラ本編とは違うこと。
また過去が違うので性格もかわっています。お前は誰だ!と思うかもしれません。
最後に無駄に長い。一万字超えたw
では、読む方はこれを頭にいれて読んでくださいね。


神崎桂の場合(設定変更あり)

 僕は変だ。

 

 周りがやっと話し始めたころに、僕は大人が何を話しているか理解していた。一度実践すれば、体格などの物理的に不可能なこと以外は全部出来た。

 

 一番変なのは僕の手に炎が灯ること。親に見せれば、気味が悪いような顔をされて殴られた。怒られたのはこれを見せたからだと理解した頃には手が止まって、僕を見て怯えていた。この意味を理解するのには少し時間がかかった。

 

 次の日から親は帰ってこなくなった。そのことには特に何も思わなかった。ただご飯を食べないと、と思っただけだった。

 

 冷蔵庫をあけて、見よう見まねで包丁を動かす。思ったより重くて手を切ったけど、すぐに治った。周りを思い浮かべて、親の怯えた目の理由がわかった。僕は変な子どもだったようだ。

 

 ご飯を食べれば当然食材はなくなる。考えて少しずつ食べたけど、やっぱりなくなった。買おうにもお金もなかった。だからスーパーでパンを毎日盗んだ。その生活に慣れた頃には電気とガスが止まった。理由はわからない。水道は大丈夫だったのは良かった。

 

 ある日、いつものようにスーパーでパンを盗んで外に出ると腕を掴まれた。誤魔化せない状況だった。

 

 どこか違う部屋に連れられ、座って待つように言われた。警察の人が来るみたい。逃げちゃおうかなと思ったけど、僕を捕まえた人もいるからやめた。だからその間、僕を捕まえた人をみる。普通の大人にしか見えない。でも普通の大人なら今まで誤魔化せたのに。

 

「おじさんの名前は?」

「ん? おじさんの名前は神崎紅葉だよ。君の名も教えてくれる?」

「…………」

「そうか」

 

 おじさんに頭を撫でられた。教えなかったのに、悪いことをしたのに、変なの。

 

「おじさんは僕を殴らないの?」

 

 僕が疑問を口にすれば、驚いたような顔をした。これを聞くのは変なことらしい。周りと一緒にするのは難しいなと思っていると、抱っこされた。

 

「おじさん、急にどうしたの? 僕と一緒でおじさんも変なの?」

「……おじさんも君も変じゃないよ。普通だよ」

 

 おじさんは僕と違って、変な人じゃないらしい。仲間じゃなかった。でもおじさんはちょっと変だと思う。

 

 警察の人が2人来て、僕は女の人と話して、おじさんは男の人と話をするみたい。おじさんが違う部屋で話をしたいって言った。僕が変だとわかったからかも。ポンポンと優しく背中を叩いてくれるけど、気味悪くないのかな。

 

「すぐ戻って来るよ」

「ウソはいいよ」

 

 おじさんもみんなと一緒だったんだ。僕と目を合わせてくれるから、やっぱりちょっと変だけど。

 

「本当だよ」

「同じこと言って、パパもママも帰ってこなかったよ?」

 

 今度はぎゅっとされた。おじさん、やっぱり変。

 

「……おじさんもここでお話するよ。ウソつきと思われるのは嫌だからね」

 

 言葉通り、おじさんはどこにも行かなかった。抱っこしたまま、警察の人に僕を捕まえた時のことを話をしていた。おじさんは僕が1人で歩いてるから気になってずっと見ていたんだって。気づかなかったなぁ。

 

 その後、僕もいろいろ警察の人に聞かれた。僕が黙ってるとおじさんに名前で呼びたいって言われたから今度は教えた。家にも行きたいって言われたからそれも教えた。変なおじさんならいいかなって思ったんだ。

 

「桂、今日はおじさんの家にお泊まりしよう。お泊まりはわかる?」

「わかる。でも僕、変だよ。いいの?」

「大丈夫だよ。持って行きたい物をとっておいで。おじさんは桂から見えるところに絶対いるから」

「わかった」

 

 おじさんに警察の人が声をかけたから聞きながら準備しようとしたのに、おじさんは何も話さなかった。変なのと思っておじさんを見れば「子どもの桂は知らなくていい話だからね」と僕に言って、紙に何かを書いていた。僕が聞こうとしていたことに気付いていたみたい。おじさんは僕を捕まえたし、鋭いのかも。

 

「声が聞こえないとウソつきと思われるかもしれないね。桂、今日は何を食べたい?」

「お腹に入れば何でもいいよ」

「じゃいっぱい食べて一緒にお風呂入って寝ようか」

「え? 僕と?」

「桂以外に誰がいるの?」

 

やっぱりおじさんは変だ。

 

「……ああ、でも3人で寝ることになるかな」

「3人?」

「おじさんには可愛い奥さんがいるんだ。おじさんの奥さんは小さい子どもが好きでね、桂がいけば大喜びするから覚悟しといた方がいいよ」

「……僕がお邪魔するとおじさんの奥さんが嫌がるよ。やっぱり行かない」

 

 ちょっと興味があったのに、おじさん以外にも人が居たんだ。

 

「おじさんが選んだ人だよ。嫌がるわけがないよ。桂は会ったことがない人もウソつきと決めるの?」

「でも僕は変だよ」

「うーん、そうだねぇ。もし少しでも桂が嫌だと感じたら、おじさんと一緒にここに泊まろう」

「ここ、電気がつかないから夜寒いよ? 僕は小さいから毛布に包まればあったかいけど、おじさんは寒いと思う」

「おじさんはまだ20代だから大丈夫だよ。それに寒ければ桂を抱きしめればいいからね」

「僕が寒い」

 

 おじさんは笑った。笑った理由はよくわからないけど、今日の夜は楽しみだった。

 

 僕の準備が終わるとおじさんはまた僕を抱っこして、家へと向かった。警察の人はおじさんの家には来ないみたい。おじさんが家に入ると、パタパタ音がして女の人がやってきた。

 

「お父さん、この子は誰?」

「おじさん、話してなかったの?」

「うん」

 

 おじさん、やっぱりちょっと変。

 

「この子は桂、これから一緒に住むから」

 

 そんな説明じゃ、僕の家に戻ることになると思う。変な僕でもわかる。

 

「お父さんだけ、ずるいわ!」

「はいはい」

 

 よくわからないまま、僕はおじさんの奥さんに抱っこされた。そして僕をぎゅっとして、ぐるぐる回り出した。僕は大丈夫だったけど、おじさんの奥さんは気持ち悪くなったみたい。おじさんがまた僕を抱っこしながら背を撫でていた。

 

「おじさんはウソつきじゃなかっただろ?」

 

 ウソつきじゃないけど、おじさんの奥さんを見ているとなんか頷きたくなかった。変なの。

 

 ここが僕の新しい家になって、おじさんが僕のお父さんでおじさんの奥さんが僕のお母さんになったのは僕が4歳になる頃だった。

 

 

 

 それから僕が小学校に入学する年にお母さんが子どもを産んだ。この時、僕はとうとうこの日がやってきたと思った。お父さんとお母さんにはお世話になったから、恩を返すためにも出て行くべきだと思ったんだ。僕はやっぱり変だし。

 

 お母さんの妊娠中はお父さんに頼まれたのもあるけど、お母さんはちょっと変だから、スキップとか平気でするんだ。怖くて目が離せなかった。

 

 でも無事に産まれたからもう大丈夫。

 

 2人のおかげで僕は普通の過ごし方を覚えたから、今度はうまく行くと思う。サクラっていう子のためにも僕はいない方がいいんだ。

 

「桂、サクラを見ててくれないか? お父さん達は少しお医者さんと話をしてくるから」

「え、でも……」

「お腹はいっぱいだし、おしめはさっきかえたよ。それにお父さんと一緒に練習したから桂なら大丈夫だよ」

「お願いね、桂」

 

 お父さんとお母さんの頼みだから、サクラを見ることにした。出て行くのはこの後でも出来るし。

 

「お父さんとお母さんはいい人だから、サクラは幸せになれるんだろうね」

 

 僕が呟いているとサクラは急に泣き出したから慌てて駆け寄る。

 

 お父さんと一緒に赤ちゃんの人形を抱く練習をしたけど、サクラを抱くのは怖かった。人形と違って、柔らかくて僕が力をいれると壊しそうだし。

 

「サクラ、泣き止んで。泣いているとお父さんとお母さんが悲しむよ」

 

 上手くいかない。ほとんどの子達はこれで泣き止んだのに。

 

「痛いの痛いのとんでいけー」

 

 これもダメみたいだ。子ども騙しの呪文なのに、サクラには効かない。

 

 このままだとお父さんとお母さんが本当に悲しむ。僕が抱いても大丈夫か調べるために、ちょっと指で触ってみる。ふにゃふにゃして、やっぱり怖い。

 

 ……あれ? 泣き止んだ。

 

 僕は拍子抜けして、指を引っ込めた。すると、またサクラが泣き出した。だからまた指でサクラを触る。……泣き止んだ。

 

「サクラは僕が触ってないと泣くのかな?」

 

 ふにゃっとサクラは笑った。僕の言葉がわかっているのかも。

 

「でも僕はもうすぐ居なくなるよ」

 

 サクラはさっきと比べ物にならないぐらい大泣きし始めた。お腹はいっぱいってお父さんが言っていたし、おしめかも。でもオムツを見ても、サインは出てない。それ以外だと……眠たいのかも。

 

「サクラ、おやすみ」

 

 声をかけてもサクラは寝ようとしない。泣いてばっかりだ。やっぱりお父さんとお母さんが言ってた通り、赤ちゃんは抱っこして寝かさないといけないんだ。

 

 僕が壊してしまう気がして怖かった。でもこのままだとサクラは泣き止まないし眠れない。僕は悩んで、結局抱き上げた。

 

 僕が抱いたらサクラはキャッキャとはしゃぎだした。寝なくていいの?

 

「……僕もお父さんとお母さんにぎゅっとしてもらった時は嬉しかったなぁ」

 

 僕が好きって言ったら幼稚園で笑われたから普通になるためにやめたけど、本当はもっとしてほしかった。……サクラならぎゅっとしても変じゃないよね?

 

「サクラが嫌がるまではいいのかな」

 

 サクラはどんな反応するかなと思ったら、瞼が落ちていた。いつの間に寝たんだろ?

 

 眠ったからベッドに戻そうとすると、また泣き出したから慌てて抱っこする。……赤ちゃんは難しい。

 

 今度こそ寝たかなって思った時にお父さんとお母さんが帰ってきた。

 

「……ああ、眠ったんだね。桂、抱く時怖くなかった?」

「うん。怖かった。僕が壊しちゃいそうで今も怖い」

「それは違うよ。桂は今、サクラを守っているんだよ」

「守る?」

「そう。桂がもし今、手を離しちゃうとサクラは何もできず落ちちゃうのはわかるよね?」

 

 お父さんの言葉に頷く。サクラはふにゃふにゃだもん。僕が手を離したら大変なことになる。

 

「怖いのは桂がサクラの命を握っているからだよ」

「……お父さん、かわって」

「桂が疲れたならかわるよ。でも今はまだ大丈夫だよね?」

「僕じゃダメだよ。だって僕は変だもん」

「たとえ変でも桂は今、サクラを守れているじゃないか。ダメなことではないよ」

「変な僕でも守れるかな……」

「お父さんとお母さんは桂なら守れると思って、任せて離れたんだよ」

 

 お父さんに頭を撫でられてるとポタポタ目から何かが出てきた。変な僕でも涙が出るみたい。お母さんが優しく拭いてくれるからもっと出てきて、2人を困らせてると思ったけど、お父さんもお母さんも笑顔だったから泣いてもいいってわかったんだ。

 

 

 

 

 

「んちょ、んちょ」

「サクラ、危ないよ」

 

 サクラは少し大きくなって最近歩けるようになった。目を離すとすぐにどこか行こうとするから、お父さんとお母さんはハラハラしている。僕も危なっかしくて声はかけるけど、2人ほどじゃないと思う。

 

「でも僕がこのぐらいの時は、危ないことはしなかったのになぁ」

 

 歩きたくても、バランスが取れなかったからね。まずは安全なところで練習して、転ばないと確信してから動きまわったよ。

 

「まったく、僕がいなくちゃサクラは泣くのに」

「にいちゃ?」

「ううん、なんでもないよ」

「あい!」

 

 サクラに教えても理解しないみたいだし。返事だけは元気いっぱいで可愛いけどね。

 

「あ」

 

 手を挙げて返事をしたのが悪かったみたいで、サクラは転んでしまった。やれやれとため息を吐いてから、サクラに駆け寄る。

 

「サクラ、大丈夫?」

「あのね、にいちゃ、ココ、と、ココ、痛いの」

「はいはい、わかったからジッとしてて」

 

 お父さんとお母さんが近くにいないか確認して、手に炎を灯す。もうこの時点でサクラは痛がってないけど、治さないとスネちゃうんだ。

 

 サクラが僕の炎を知っているのは、少し前にサクラが転んで怪我をしたのがきっかけ。よくわかんないけど僕は炎を浴びせなきゃって思ったんたんだ。後のことなんてその時は考えてなかった。サクラが喜んで治ったのはいいけど、あれからずっとこの調子。

 

「治ったよ」

「にいちゃ、すごーい!」

 

 僕の炎を見て、そんなことを言うのはサクラぐらいだよ。でもいつかは怯えちゃうんだろうね。

 

「お父さんとお母さんにはナイショだよ」

「ナイチョ!」

「ナイショね。話しちゃうともうやらないからね」

「ナイチョ、ナイチョ、ナイチョー♪」

 

 ……でもまだ大丈夫だと思う。怪我をすると思い出すけど、それまでは思い出さないし。それにしても変な歌。そもそも歌なのかな?

 

 僕はこの時、忘れていたんだ。サクラを初めて抱いた時、お父さんに命の重さを教えてもらったのに。

 

 本当に突然のことだった。僕とサクラが歩いていると車が突っ込んできたんだ。

 

 覚えてないからほとんど無意識に行動したんだと思う。目を開けたら手を繋いで歩いていたはずのサクラを抱きしめていたから。

 

 それでもサクラは僕と違って、怪我をしていた。折れてるみたい。もちろん僕はすぐに治した。頭も打ってれば怖いから、ちゃんと頭にも炎をあてたんだ。

 

「サクラ、治したからもう大丈夫だよ」

 

 声をかけたけど、サクラから返事はなかった。気を失ってるみたい。僕でもビックリしたからサクラはもっとビックリしたと思うし、しょうがないよね。

 

 2人とも怪我はないから大丈夫って僕は答えたけど、念のため病院に行くことになったんだ。僕の言った通り、調べても怪我はどこにもないってお医者さんも言ったから、まだサクラは目を覚ましてないけど、お父さんもお母さんも少しはホッとしたみたい。

 

「サクラ、早く起きないかな」

 

 サクラが起きたら僕が治してあげたんだって教えよう。またサクラはキラキラした目で僕を見るんだろうね。……でもいくら待っても、その日は起きなかったんだ。

 

 次の日にまた病院にきたけど、サクラは眠ったままだった。だからお父さんとお母さんが離れたスキに僕はもう一度手に炎を灯して、今度は全身に浴びせた。早く起きないかな……。

 

 3日目になると僕はお父さんとお母さんに言われても、サクラから離れなかった。夜もお父さんとお母さんは交代でサクラを見てるんだから、僕が見ててもいいじゃないか!って怒れば、許してもらえた。

 

「サクラ。僕だよ、桂だよ。早く一緒に遊ぼうよ」

 

 何日たったか、覚えてない。とにかく声をかけ続けた。サクラが喜んだこととか、なんでもいいから目を覚ますきっかけになりそうなことを言ったんだ。

 

 ……このままサクラが目を覚まさなかったらどうしよう。サクラしかいないのに。僕の変なところを見ても凄いって言ったのはサクラだけなんだよ。サクラが目を覚ましてくれないと、僕は……。

 

「……ぃ、ちゃ」

 

 聞こえた声に顔をあげる。

 

「サクラ!」

 

 僕の声に反応して、ヘラっとサクラは笑った。慌てて僕はナースコールを押して、お父さんとお母さんを呼びに行った。

 

 

 

 僕はそれからサクラを大事に、大事に育てた。でも失敗もいっぱいした。

 

 例えばもう怪我をさせないようにと思って、僕がずっと抱っこしていればサクラは腕の中で暴れた。だから歩き方を一から教えた。すると、サクラは考えているのか、もっと転びそうになってもっと目が離せなくなった。でもそろそろ僕の炎に疑問をもつころだと思うから今のままはダメだと思うんだ。結局、危なくなる前に僕が助ければ良いって気づいたんだ。サクラをいつでも助けれるように僕は身体を鍛えた。鍛えた結果、いろんなところから声をかけられたけど、僕の身体はサクラを守るためにあるから全部断った。

 

 他にもサクラは可愛いから、スキのないように育てようとした。僕が出来ることを全部教えていれば、サクラが僕を避け始めるし、理由を聞けばわんわん泣かれた。「お兄ちゃんみたいに出来ないんだもん……」と。これには僕は反省するしかなかった。僕が変だというのを忘れていたんだから。でもサクラは凄いと思う。変じゃないのに努力だけで箸の持ち方と字だけは僕とそっくりになったんだから。もう十分頑張ったのだから、僕はいっぱい甘やかした。でもやり過ぎはダメだったようで今度は「お兄ちゃんより下手だけど、出来るもん」と言って怒られた。お父さんの注意を聞いていれば良かったと本気で後悔した。

 

 後は、小学校の時もそうだったけど、中学になるともっと僕はモテるようになった。でも僕にはサクラがいるから断った。ちゃんと説明して断ったのに、サクラに危害を加えようとする人まで現れた。僕が間一髪のところで守ったけど、サクラは人が怖くなったみたいで、僕達以外の前では話さなくなった。僕は出来るだけ側に居るようにした。サクラは僕にベッタリになった。凄く可愛い。問題は僕が人の心をよくわかっていないからサクラに被害がいったこと。だから、どうやって断ればいいかなどのアドバイスを女性の母に頼んだ。アイドルのようにすればいいのよ!という案を実行してみれば、キラキラした目で僕を見るけど、近寄っては来なくなった。でも父に今度からは2人では決めないようにと念をおされた。ダメだったみたい。僕は母の案は完璧だと思ったけど、父の言葉は守らないとね。

 

 いろいろ失敗はあったけど、順調だったと思うんだ。サクラが小学校の高学年に入るまでは……。

 

「お兄ちゃん」

 

 今日もサクラは僕に抱きついて来た。甘えん坊のサクラも可愛い。ただ最近膨らんできたサクラの胸が当たると、ドキドキする。

 

 僕は男だし普通の反応だと思う。サクラはお父さんとお母さんの子どもだけど、僕の妹とは思ったことはないから。血は繋がってないしね。だからこれは変じゃない。それにサクラは可愛いからね!

 

 でもサクラは僕のことを兄として見ている。

 

 今まで何度か僕はサクラのお兄ちゃんじゃないよって教えたけど、サクラはその度に「お兄ちゃんは私のお兄ちゃんだもん。私のこと嫌いになったんだ」と言って泣く。だから僕はもう言わないことにしている。サクラを泣かせたくない。

 

 だけど、サクラが成長して行くにつれ僕は怖くて仕方がない。

 

「……サクラ、好きな人は出来てないよね?」

「毎日聞いてもかわらないってば。お兄ちゃんよりカッコイイ男の子いないもん」

「なら、僕と結婚しようよ」

「だから兄妹じゃ結婚出来ないんだって」

 

 サクラはクスクスと笑って否定するけど、僕達は結婚出来るんだよ? 泣いちゃうから言わないけど。

 

「もし私に好きな人が出来たら、お兄ちゃんはヤキモチ妬きそうだね」

 

 ヤキモチだけで済むとは思えない。僕が何も言えなくて黙っているとサクラはまた笑って言った。

 

「私の結婚式とか泣きそう」

「……泣かないよ。でもちょっと待った!って感じでサクラを奪いに行くけどね」

「まさかのそっち?」

「当然だよ。奪われてくれるかい?」

「やだ」

 

 ……誰かに奪われるぐらいなら、いっそのこと。

 

 強く、強く抱きしめる。僕の腕の中にサクラがいる。このまま目を閉ざせば、サクラはどこにも行けない。永遠に僕のものになる。

 

「にい、ちゃ、くるしっ」

 

 サクラの苦しそうな声で正気に戻る。僕は何をしようとしていた……?

 

「びっくりしたー。どうしたの?」

「サクラ、すまない」

 

 サクラから離れないと。僕はサクラを傷つける。忘れていたつもりはなかったけど、僕は変だった。

 

「お兄ちゃん?」

 

 サクラの疑問の声を無視して、僕はサクラを引き剝がし部屋にこもった。

 

 

 

 ドアの向こうから聞こえ続けていた声が止んで、ホッとしたのは一瞬で、すぐに寂しくなった。自分から離れたのに。

 

「桂、お父さんだ」

 

 父の声に立ち上がる。あの時に僕を捕まえた父なら、僕を止めてくれる気がする。そう思った僕は父を部屋に入れた。

 

 部屋に入れたものの、何から話せばいいのかわからず僕はベッドに腰をかけることしか出来なかった。だからなのか、父は僕の机にあるサクラの写真を見ながら口を開いた。

 

「サクラは桂に嫌われたと思い始めているよ」

 

 立ち上がりそうになった足を、僕は両手で押さえ込んだ。

 

「桂はそれでいいのかな。後悔しない?」

 

 父は僕に発破をかけている。やっぱり鋭い父は僕の気持ちに気付いていた。

 

「……いつから? どこで?」

「桂はサクラに『桂だよ』と言って、一度も『お兄ちゃん』とは教えようとしたことがなかったからね」

 

 最初からだ。僕でさえ気付いていなかった、無意識だった行動の時から……。

 

「……サクラはお父さんの子なんだよ! 大切じゃなかったの!?」

「サクラはお父さんの娘だ。もちろん大切だと思っているよ」

「だったら、どうして僕を止めなかったんだ! 大切ならどうして!」

 

 八つ当たりの自覚はある。でもサクラを守ろうとしなかったのが許せなかった。お父さんなら僕を止めれたのに!

 

「サクラと同じぐらい、お父さんの息子である桂のことも大切だからだ」

 

 父の言葉に怒りを通り越したのか、萎んだのか、よくわからないけど僕は力が抜けた。

 

「……父上は」

「桂とお父さんしか居ないんだ。取り繕う必要はない、甘えなさい」

 

 そこで興奮した時、昔の呼び名を口にしていたことに気付いた。

 

「お父さんは悩まなかったの?」

「大切にしている息子の恋を邪魔したいとは思わないよ。兄妹でも桂とサクラは血が繋がっていないんだから」

 

 血が繋がっていれば、邪魔をしていたってことだ。僕なら自覚する前に手を打つ。父もきっとそうだ。

 

「悩みはしなかったけど、桂なしでは生きられないようにサクラを育てようとした時は困ったかな。こればかりはサクラのために少し阻止したよ。……ああ、これはまだ自覚がなかったんだね」

 

 僕の表情を読み取ったようで、父は笑っていた。僕は心当たりがありすぎて恥ずかしくなった。サクラに怒られて反省したつもりだったけど、あれも父の誘導だったんだ。だって僕はあれから父の言葉を素直に聞くようになった。気付いてなかったよ……。

 

「お父さんはね、止める必要がないものは止めなかったよ。けど、止める必要があるなら全力で阻止する。そこにお父さんの気持ちは考慮しない」

 

 背筋がのびた。父が甘いだけの人間じゃないことは知っている。でもウソはつかない。僕のために始めたことを今でも守り続けている。

 

「お父さんは桂の恋を止める必要はないと判断した。この意味、桂ならわかるね?」

 

 僕は父の目を見ながら頷いた。サクラは僕が何をしようとしたかわかってないけど、父は気付いている。気付いてるからこそ、言ったんだ。正直、僕はまだ自分を信用出来ないけど、父は僕が暴走しても止まると思っているなら少し心が軽くなった。

 

「でもお父さんから真実をサクラに話すつもりはない。これもわかるね?」

 

 頷く。父から教えれば、サクラは信じると思う。そして今まで行動からサクラは僕の気持ちにも気付く。僕からすれば、凄く魅力的な方法。だけど、その方法はサクラの逃げ道を塞ぐ。目の前にいる父がそんな愚かなことをするはずがない。しっかりと母にも口止めをしている。

 

「ここまではお父さんの気持ちや考え。大切な息子が後悔しそうだったから、少し発破をかけたけど、これからはどうするかは桂が決めることだよ」

 

 僕だけを肩入れ出来ない父の譲歩だ。教える必要はなかったのだから。

 

「……諦められないよ。でも少し、サクラと距離を取りたい」

 

 まだ怖い。サクラを傷つけそうで。

 

「リスクがあるのはわかっているね?」

 

 わかっている。距離を取れば、サクラが他の男に取られる可能性が増すことも。

 

「わかってるならいいよ。具体的にどうしたいのかな」

「一人暮らししようかな」

 

 父の返事がなかったので、視線を向ける。今更父が反対するとは思わないけど……。

 

「……ああ、悪いね。断ろうと思った依頼を受けてもいいかなと思い始めてね。ここから交通の便が悪くて、受けるなら引っ越ししないと厳しかったんだ。桂にこの家の管理を頼めるならアリだなって。もちろん桂さえ良ければだけどね」

「どこ?」

「並盛。桂の足ならここから30分ってとこかな」

 

 ……やっぱり父は鋭い。僕が普通の枠から出ないように力をセーブして過ごしていたことにも気付いていた。それに僕が見立てた時間と一緒だ。

 

「いいの?」

 

 僕からすれば都合のいい展開。一人暮らしを始めるよりはサクラを説得しやすくなる。僕は簡単に様子を見に行けるけど、サクラから僕に会いにいくのは厳しい距離だ。でもこれは僕に肩入れしすぎになるんじゃないのかな。

 

「これはお父さんの都合だからね」

 

 理由がわからず、父の顏をジッと見つめる。目は合わなかったけど、僕の視線に気付いていたのか、父は少し笑ってから口を開いた。

 

「信用はしているけど、心配していないという訳じゃないんだよ。……知らない土地に桂1人を行かせたくないというお父さんのワガママ。親バカと笑ってくれていいよ」

 

 父の言葉通り、僕は笑った。……泣きそうになったのを誤魔化すために。

 

 

 

「お兄ちゃん、本当に行かないの……?」

「ここからの方が大学が近いからね」

 

 引っ越し当日でも駄々をこねるようにサクラは僕に抱きつき、なかなか離れなかった。……そう育てたのは僕だけど、凄く嬉しかった。

 

「サクラが会いたいと言えばすぐに駆けつけるよ。約束する」

「ほんと……?」

 

 サクラのひたいにキスをする。今の僕達の関係ならギリギリ許される範囲のスキンシップ。サクラは目を丸くしたけど、嫌がらなかった。

 

「もちろんだとも。僕はサクラを愛しているからね!」

 

 サクラは嬉しそうに笑った。本当の意味には気付いていないけど、僕の心は満たされる。

 

 

 その後、サクラの顏を見に行った時に、サクラの隣にいた男に殺気をあててしまい、彼と一緒にいたらしい赤ん坊に拳銃を向けられるのはまた別の話。




設定変更の内容。
実はサクラの知識はなし。その分、父と桂の繋がりが強くなっています。真実の目、サクラと桂の繋がりはそのまま(桂さんの感情の芽生えは父とサクラの二段階設定)。予知は桂さんと離れたことで不安定になり開花。性格は人見知りの甘えん坊(常におまけ後のサクラみたいな感じ)。オープンの桂さん大好きっ子。言葉遣いもそこまで悪くない。
桂さんの性格はどちらかというと父似に変更。憧れからそうなりました。
母はもちろんですが、父も性格はそのまま。桂さんが影響されているだけで、実は父は変わらずなのです。本編でも桂さんは父の言葉は聞いていますし、基本子ども主体なのも一緒。ただ、このIFでは出会いが出会いなので、桂さんにかなり気を配っています。

で、もしこのまま原作を進めるなら、桂さんがサクラを巻き込んでしまうことに苦悩する感じ。リボーンは桂さんに興味を持ってしまったのでサクラを巻き込みますからね。サクラは京子ちゃん達のような立ち位置になるかな?でも予知が出来始めるので、黒曜編ぐらいからややこしい立ち位置に。
桂さんから少しずつ距離をとられたサクラは、桂さんと歳が近いディーノさんに相談します。桂さんがそれを目撃。ドロドロー?
白蘭さんの口からサクラは血の繋がらない兄妹と知ってしまうような流れで書くかなー?
未来編でユニの代わりに桂さんが肩代わりするのは一緒。なので、ラストを結界に弾かれるギリギリのところで、結界を挟みながらのキスシーンを目指して書く感じ?
この時の桂さんが10年後か過去から来た桂さんなのかは謎ww作者も知らないw

ここまでイメージしましたが、書く気はないので安心してくださいw書く気があったら流れは書きませんw
このIFルートの最後の数行のために考えたので、せっかくだからーと思って書いただけです。
では、長々と失礼しました。

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