リクエスト作品。
作者はなぜか山本君のイメージが上手く掴めないので、モブ視点の一人称で書きました。誤魔化したともいう。
※IFルートです。
サクラの相手はディーノさん以外認めないという人は読まないでくださいね。
最近、オレのダチの山本が面白い。
ダチっつても、クラスメイトの域だ。話はするし、授業でペアを組めって言われも嫌とは思わない。でも放課後に遊ぶかって聞かれたら微妙なところ。遊ぶメンバーに居ても変とは思わないけど、わざわざオレが山本の名を出して誘うことはない。よくある、ふつーのダチだと思う。
で、オレの趣味は人間観察。知られるとヤな顔をされるから言わねーけど、これが結構面白いんだ。ぜってーオレと一緒で黙ってる奴がいると思う。まっそれはいいか。
クラスの奴らは最近の沢田の変わりように盛り上がっているが、人間観察が趣味のオレからすれば山本の方が面白いと思う。
最初に変だと思ったのは、山本の自殺騒ぎ。ジョークってなってるけど、オレの予想じゃアレはマジ。マジだから山本は沢田と一緒にいる機会が増えた。オレでさえ、沢田はふつーにすげーと思うんだ、山本はオレの何倍もすげーと思ってると思う。
まっここまでは察せれる流れ。山本を面白いって思わない。それだけならオレも沢田を観察してたと思う。山本はあれからツナ以外にも声をかける奴が増えたんだよな。……獄寺じゃねーからな。あれはツナを通じてだから別。
お? きたきた。噂をすれば。山本も懲りずに向かって行った。
「よっ、神崎」
「…………」
自殺騒ぎ後から始まった恒例の山本の朝の挨拶。今日も神崎はガン無視。最近じゃ視線さえ向けない。
しかしまぁ神崎の反応も悪いよな。山本本人と男はなんも思わねーけど、女は睨んでる睨んでる。山本は人気があるからしょーがねーけど。神崎以外、山本が女子に今までわざわざ挨拶しに行ったことはねーし。女はそういうの結構鋭いから嫉妬がやべぇ。オレは面白いからいいけど。
今までのオレの観察では、山本は天然だけど、気の無い奴にまで話しかけるほど空気を読めねー奴じゃないと思う。あの騒ぎの後からだから、神崎はツナと似たようなことをしたんだと思う。でもそれだと神崎は避ける必要はねーんだよな。
だから神崎を本気で観察してみた。まず暗い。姿勢が悪いとか本をずっと読んでるとか関係ない。纏ってる空気が暗いんだ。誰とも関わりたくないオーラが出ている。後、無表情だからすっげー怖い。でもブスじゃない。割と良い顔立ちはしている。顔がいいから、さらに無表情で怖いのかも。性格は朝の光景を見る限りじゃ微妙。暗いし。でも山本に沢田のようなとをしたんだろ? 悪い奴じゃねーんだろうな。声は小さい。音楽のテストで聞いたぐれーだけど。体型は普通。そこそこ胸もありそーだし、太ももも割といい感じにある。
……ん? 普通にアリだな。オレは遠慮するけど。暗過ぎて一緒にいるとぜってー疲れる。山本みたいな明るいタイプじゃねーときついだろ。
で、これから面白そうっていうタイミングで夏休み。残念。
夏休み中、山本とは一回遊んだ。10人ぐれーとだけど。でも折角の機会だ、周りが気付いてねー時に山本に探りを入れた。
「なぁ、夏休み何して過ごしてんだ? 野球してるのは知ってるからそれ以外で」
少しは絞らねーと、山本は野球の話ばっかりするからな。露骨に神崎の名は出さない。それはオレのポリシーに反する。
「んー、ツナと遊ぶことが多いぜ。獄寺も一緒な」
妥当な流れ。山本の性格なら獄寺とも上手くやるだろーし。夏休み明けはこの3人が揃ってるところをよく見ることになるんだろうな。
山本にオレはどうかと聞かれたが、仲のいい奴らと遊びに出かけてるっていう毎年恒例の面白味もねー夏休み。遊ぶのは面白いけど、刺激が欲しい。つーか、可愛い彼女が欲しい。イチャイチャしてぇ。まっ天然の山本に欲望をぶつけても仕方ねーから無難に答える。
「今日見てーにダチと遊んだり、宿題してる」
「オレも1つ終わらせたのな!」
1つだけかよとは言わない。山本の場合、この時期に1つ終わってるだけマシ。時間があれば野球ばっかするから、小学校から宿題忘れの常連だ。
「何終わらせたんだ?」
「本のやつ」
「お? 一番面倒そうなの終わらせてるじゃん」
これは本当に意外だった。教科書を読めば寝る山本が読書感想文を終わらせてるなんて、明日槍でも降ってくるんじゃねーか。
「ハハ。実はよ、神崎にみてもらったんだ」
噴きそうになった。そこで神崎の名が出てくるとは思わなかった。我慢したオレ、超エライ。
「神崎と遊んだのか?」
「遊びたかったんだけどよ、忙しいって断られたんだよなー」
「遊んでねーのに、どうやってみてもらったんだ?」
「神崎が図書委員で学校に来ている時に教えてもらったんだ」
山本って意外と積極的なのか。つーか、図書委員とか良く知ってたな。ふつー、ダチでも委員とか微妙だぞ。
「その時、神崎の兄貴と会ったけど、すっげー面白い人だったぜ」
「神崎って、兄が居たのか」
「ああ。神崎にさ、花束渡していたし、すっげー仲良いと思うのな」
……それは仲良いだけで済まされることなのか? ぜってぇシスコンだろ、その兄貴!
それにしてもそのシーンを見たかった。面白かっただろうなぁ。関わりたくはねーけど。
「まっ宿題見てもらえたんだから良かったな」
「んーでもよ、宿題よりももっと話したかったんだよな。2学期にはぜってぇ友達になるぜ」
……ただ単に話したかっただけなのか? 恋愛感情はゼロってことか? 山本の天然が行き過ぎただけってことか?
まじかよ、神崎は女だぜ。それも人付き合いが上手くないタイプ。山本がツナと同じ感覚で接すれば、ぜってぇ神崎が勘違いするって。それは面白いって思えないし、山本のことを嫌いになりそう。
……オレのキャラじゃねーのになぁ。でも山本を嫌いたくはないんだよ。
「なぁ、山本。……お前、神崎のこと好きなのか?」
「おう!」
うわー、いつもと同じノリで返された。予想通りだけど、そりゃないって。
「だったら、もっと考えて行動しろよ。お前がこのままいけば、神崎は泣くぞ」
「え……。なんでだ?」
友達になりたいっていうだけあって、泣かすのは嫌みてーだ。山本はいつもと違う真面目な雰囲気でオレをみていた。
「お前が男で、神崎が女だから。……オレも男と女の間に友情は存在すると思う派だ。けど、難易度は同性同士よりよっぽど高いと思っている。お前、仲良くなりたいって必死になってるだろ? お前が必死になればなるほど、神崎が勘違いする可能性もあるんだぜ?」
「……そっか。ちょっと考える」
そう言って無理に笑った山本をみて、悪い事をした気持ちになった。
……オレ、山本の誰とでも仲良くなる感じも好きだったんだな。
気まずい気持ちで学校にやってきた。今日から2学期が始まるけど、山本はどうするつもりなんだろうか。
神崎が登校してきたのが見えて、思わずオレは山本の姿を確認した。山本はそんなオレを安心させるかのように、ニッと笑ってから動き出した。
「よっ、神崎」
「…………」
1学期と全く同じ。宿題を見たと山本に聞いていたが、神崎は山本を見もしない。……もしかしてオレ、余計なことした? 仲良くなったと思ったのは勘違い?
「神崎。オレさ、夏休み中に考えたんだ」
オレの焦りを他所に山本は神崎に話しかけていた。この時点で1学期とは流れが違う。周りも驚いたのか、視線が集中した。
「オレ、神崎のこと好きみてぇなんだ。だからこれからも声かけるから、よろしくな」
山本の突然の告白にクラスがわいた。オレは山本と神崎から目を離せなかった。騒ぎながらもそれはオレだけじゃなかったようで、久しぶりに神崎が山本に視線を向けた途端、静かになった。
「断る」
まじかよ、即答で断った。しかし山本は嬉しそうに笑ったぜ。マゾっ気があるのかもしれないと一瞬思ったけど、1学期の時から考えるとオレが山本の立場なら笑う。
「……あれを恩に感じたなら関わらないでくれ」
「んーでもよ」
「私は友達が欲しいとは思わないんだ。君は今いる友達を大切にしろ」
神崎って実は周りを見ていたんだな。山本が友達になりたい気持ちだけで行動していたことをわかっていたみてーだ。山本の天然センサーは正常だったんだな……。
「ハハ、もちろんだぜ! 友達は大切なのな!」
「わかってるなら、無駄な行動はやめて、沢田綱吉達のところに行くべきだ」
1学期の山本なら納得はしねーけど、さっきから対応は間違ってねーからなぁ。周りもいつもの山本の天然が出たと思い始めてるし。
「ツナ達は大切にするぜ。友達だかんな。でもよ、神崎とは無駄な行動になるかはこれからじゃね?」
「だから私は友達はいらないって言ってるだろ」
でもなぁ、今の神崎の目の前にいる山本は1学期と違うんだよなぁ。……オレのせいで。
神崎には悪いけど、オレは山本が何を言うか楽しみで仕方ねーんだ。これだから人間観察はやめれない。
「ん? オレ、神崎とは友達じゃなくて恋人関係になりてぇんだけど」
「……は?」
さっきはクラスがわいたが、今度は静まった。
山本ってやっぱすげぇ。今まで無表情だった神崎に変化を起こした。拒絶していたオーラも緩んだ気がする。山本を見れず視線が泳いで真っ赤な顔をしている神崎は、ふつーに可愛い。何とかしていつものように振る舞おうとしている姿は見てて癒される。
神崎は疲れそうって言ったのは誰だよ!? ちくしょう、オレだよ!!
「やっぱ、神崎はこっちの方がいいのな! 兄貴と話してる時はこっちだったからまた見たかったんだ」
「う、うるさい! ちょっと黙ってろ!」
オレもまだまだだなぁ。普段見ていた姿は取り繕った姿だったのか。言葉づかいはわりーけど、それがまた可愛くみえるなー。真正面から見ている山本、まじ裏山。
「と、とにかく私は君のことを好きじゃないから。もう私と関わるな!」
「んー……ならよ、友達から始めようぜ」
流石山本だぜ。超ポジティブ! 心が強い!
「な、なんでそうなる!?」
「だって神崎はオレのこと良く知らねーだろ?」
「……君だって私のこと、知らないじゃないか!!」
「神崎!!」
バンっと手で机を叩き神崎は立ち上がり去っていった。山本が追いかけたからすぐそこで捕まえると思うけど、神崎の声はさっきみたいに恥ずかしがっているような感じじゃなく、悲痛な叫びだった。
……だよな。誰も動かない。オレも見に行けねーよ。
オレ達がみていた神崎が取り繕ったものだ。誰も今まで気付かないぐらい完璧だったんだ。余程の理由もなく、そんなことはしない。気付いてあげれなかったオレ達じゃ声のかけ方がわかんねぇんだ。
「山本が行ったんだ。大丈夫だよ」
暗くなった空気をかえる一言だった。
いったいどれぐらいの奴が沢田もすげーって気付いてるんだろうな。今、イジられてるし気付いてない奴の方が多そうだ。でもふつーあの空気じゃ言えねーって。大丈夫だと信じ切った目だったから、オレ達もそう思えたんだし。
その後、リボ山っていう教師がきて沢田と獄寺が呼び出された。何したんだか。
山本と神崎も帰ってこねーから気にはなるけど、そっちは大丈夫だとしか思えないんだよなー。
あー、オレも彼女欲しい。