クラスメイト K [本編&おまけ完結]   作:ちびっこ

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リクエスト作品。
「もしもサクラが獄寺君と付き合ったら?」
こんな感じかなーと書いた短編です。続きませんw

※IFルートです。
サクラの相手はディーノさん以外は認めない!という方は見ないでくださいね。


IFルート
獄寺隼人の場合


「んだと!? もう1度言ってみろ!!」

「だから、その君の行動がツナを困らせてる」

 

 教室の一角で言い争う声が響くが、誰も気に留めない。決して冷たいわけではない。

 

 これが日常なのだ。

 

「オレの行動のどこが10代目を困らせてるんだよ!?」

「常識で考えろ!」

 

 何度も言うが、これは日常である。

 

 しかしあまりに酷くなると、この学校の風紀を守っている雲雀恭弥がやってくる。すると、クラスメイトは原因であるツナに視線が注ぐ。なんとかしろ、と。

 

「2人とも、落ち着いて……」

 

 クラスメイトから視線を浴び、逃げることが出来ないツナは恐る恐る声をかける。

 

「10代目!」

「……悪い」

 

 獄寺はツナの登場に喜ぶ。サクラはツナに迷惑をかけてると気付き、気まずそうな顔をしている。

 

 2人の対称的な反応にツナは苦笑いするしかない。どちらもツナのために言い争ってるから尚更だ。

 

 ちなみにここまでが日常である。

 

 ここからは日によって変わる。どちらが正しいか獄寺がツナに詰め寄る時もあるし、話が流れたり、山本が笑い飛ばしたり様々だ。

 

 そして、今日は獄寺が苛立ち早退するパターンだった。

 

「すみません。10代目、オレ帰りますね。口うるせー奴がいますし」

 

 獄寺があえて聞こえるように言ったのはわざとだろう。ツナは隣から流れる空気が変わったことに、冷や汗をかきながら獄寺を見送った。

 

「……ツナ」

 

 ごくりと喉が鳴る。隣の人物はたとえ怒っていても、ツナに八つ当たりすることはない。ただ、ほんの少し物騒なことを口にするだけ。

 

「彼の恥ずかしい話を世間に暴露するか、雲雀恭弥に有益な情報を流すか、それとも兄を一日中張り付けるか。どれがいいと思う?」

 

 笑えない。彼女は実行できることしか言っていない。そして、その彼がツナでも問題ないであろうと予想できるのがもっとも笑い事に出来ない理由である。

 

「彼の場合、3つ目が1番嫌がらせになると思うんだが」

 

 オレの場合は……?と思わず口にしそうになった言葉をツナは飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 サボった獄寺は悪態をつきながら歩いていた。

 

「かわいくねー女」

 

 口を開けば、文句を言う。その割りに獄寺以外の人物には言わない。ますます苛立つ。

 

「おや? 獄寺君じゃないか」

「げっ」

 

 正面から歩いてくる桂が獄寺は苦手だった。年上は全員敵と思っている獄寺だが、桂には絡まないようにしている。桂は動きが無駄に大げさで(でも洗礼されている)、常に上から目線で、冗談か本気で言ってるのかわからない。相手にすればするほど獄寺は疲れ、桂は元気になるのだ。絡みたくないという考えに到るのは至極当然だった。

 

「ふむ。僕の推理が正しければ、君は学校をサボってるね!」

 

 昼間から制服を来て歩いていれば、誰でも思いつく。推理にもなっていない。

 

 なんとか獄寺はツッコミたい気持ちを我慢した。無視するのが1番簡単に逃れられると獄寺は知っている。

 

「原因はサクラと口論したからと見た」

「てめぇ、なんで知ってやがる!?」

 

 そう返事をして、獄寺はハッと自らの失態を悟る。案の定、桂は先程よりニコニコしていた。

 

「僕にわからないことなんてないのさ! サクラ限定だけどね!」

 

 ポーズまで決めて言った桂にイラっとしたが、獄寺は我慢し横を通り過ぎる。これ以上絡まれないためにも無視することに限るのだ。

 

「まぁ待ちたまえ。僕が耳寄りな情報を教えてあげよう」

 

 獄寺は足を止めた。桂の言葉が気になったからではない。横に通り過ぎたはずの桂が、瞬時に獄寺の前に現れたからである。

 

 ギリっと歯に力を込める。桂の動きは見えていたが、反応は出来なかった。

 

「……邪魔するなら、てめぇでも容赦しねぇ」

 

 苛立ちの限界を超えたのか、悔しさなのか、強がりなのか。とにかく獄寺は桂にケンカを売るぐらい腹を立てていた。

 

「ふむ。すまなかったね」

 

 獄寺の怒りを感じたのか、桂は一歩横に移動する。その余裕の態度にも苛立つが、これ以上絡みたくない獄寺は舌打ちをして歩き出す。

 

「その場の勢いで、サクラに口付けしてしまった君にはちょうどいい情報だと思ったんだけどね」

 

 足が動かなくなった。止めたのではない、動けなくなった。

 

 そして桂の言葉の意味を長い時間かけて理解し、徐々に顔に熱が集まりだす。

 

「……なっ、なっ、なっ」

 

 なんでてめぇが知っている。

 

 そう言いたかったが、上手く口は動かない。振り向くのが精一杯だ。だが、桂は察した。

 

「言っただろ? 僕にわからないことはないのさ。サクラの様子を見ればそれぐらいわかるよ」

 

 言葉が出なくなってる獄寺を無視し、桂は話を進める。

 

「サクラはね、頭ではいろいろ考えてるのに、口に出すのが苦手なんだ。能力を抜きにしてだよ。思ってることを言ってどこまで冗談と受け取ってもらえるか、わからないんだ。だから口に出さない。サクラは僕のノリに付き合うほど明るい性格なのにね。とても臆病な子だよ。……でも君になら言える。少し違ったね、君に関しては緩めることが出来るんだ。それでも肝心なことは言えないんだ、臆病だから」

 

 桂は獄寺に言葉の意味を理解してもらうためにゆっくりと話した。そのため、獄寺は反射的に何も言い返せなかった。

 

「それとサクラは嫌だと思えば、避けるよ。たとえ、その場の雰囲気に流されそうだとしてもね」

 

 用が済んだので、桂は動かない獄寺を放置し歩き出す。だが、途中で止まり思い出したように再び声をかける。

 

「僕の言葉を信じられないなら、試してみるがいい」

 

 今度こそ用がなくなったと桂は歩き出す。サクラが言い過ぎたと落ち込む日をこれ以上来ないことを願いながら……。

 

 

 

 

 

 放課後。

 

 家に帰ろうとしたサクラは、校門に立ってる獄寺を見て一瞬驚く。

 

「ツナなら、先に帰ったぞ。今日は家族でご馳走食べに行くから早く帰って来なさいって言われていたらしい」

 

 知ってることは教えたので、サクラは帰ろうとしたが、進行方向に手を出され立ち止まる。眉を寄せながら獄寺を見たが、顔は見えない。何かに警戒しているのだろうかとサクラは周りを見渡しても戦闘能力がないサクラにはわかるはずもない。そのため獄寺の様子を見て判断するしかしかなく、もう1度獄寺を見た。

 

「……帰るんだろうが」

 

 ボソッと呟いた獄寺の言葉にサクラは首をひねる。が、それは一瞬のことで2人は歩き出した。

 

『…………』

 

 2人は無言だった。しかし、この空気にいつまでもサクラが耐えることが出来ず、何とか言葉をひねり出し言った。

 

「……耳、赤いぞ」

 

 よりにもよって、サクラは獄寺の行動を理解出来たきっかけを口にしたのである。

 

『…………』

 

 再び沈黙が流れる。次に耐え切れなくなったのは獄寺だ。

 

「……っるせぇ! てめぇだって、赤いだろうが!」

 

 再度沈黙が流れたのは言うまでもないだろう。お互いの精神を削っただけなのだから。

 

 だが、2人は決して手を離さそうとしなかった。

 




この2人の場合は言い争いしながら付き合うタイプだと思いました。
そして告白とかはないです。

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