未来編の2人。
時期はサクラがディーノさんに保護されてる時
七夕記念に書いたみたいです。
引きこもったサクラ
どうしてこうなった。
「ちゃんと歩くから」
「ダメだ」
相手に聞こえるように溜息を吐いたが、全く気にしないようで歩くスピードは変わらない。
まぁディーノの言い分もわかる気もする。滅多に部屋から出ようとしない私を何とかしたかったのだろう。ただ、夜にいきなりやってきて、「屋上に行こうぜ」と声をかけるのはやめてくれ。一応、私にも準備というものがある。
それに、この手はなんだ。
先程、離してくれと遠まわしに言ったが、聞き入れてもらえない。私がディーノの目を盗んで逃げれると思ってるのだろうか。どう考えても無理だぞ。
「着いたぜ」
声をかけられ、顔をあげる。ディーノが屋上への続くだろう扉を開けようとしているところだった。手を離せるチャンスかと思ったが、簡単に開けた。無念である。
ディーノに引っ張られるまま、外へ出た。が、特にコレといって何も無かった。
「日本じゃ今日は七夕って聞いたんだ」
私の疑問が顔に出ていたのか、ディーノは屋上に連れてきた理由を教えくれた。
「こっちじゃ見れねーけどよ。空は一緒に見れると思ったんだ」
返事はかえせなかった。私のワガママで彼らから離れたのだ。それについて返す資格がない。
「……綺麗だな」
だからこの景色の感想を言った。ディーノは何も言わず、私の隣にいてくれた。
しばらく星を見ていると、重要なことに気付いた。しかし隣を見て、口に出すのはやめた。気付かなかったフリをした方がいいと思ったのだ。
「……みんな、元気か?」
「ああ。元気だぜ」
「……私の家族も……?」
「大丈夫だ。桂もだ」
今になって思う。手紙を書くように説得してくれて、本当に良かった。後になって書こうと思っても、書けなかっただろう。月に一度の手紙がこれほど私を支えるとは思わなかった。
「……ありがとう」
私の言葉に反応したのか、少し強めに私の手を握った。そして、いつものように彼は「気にするな」と言った。
もう彼にどうやって借りを返せばいいのか、わからないな。何をしても足りなさ過ぎる。
特に私の保護をしてすぐは大変だっただろう。何せ、私は食欲がなくなったのだ。結局あの時は、ディーノが四苦八苦して作ったから食べた気がする。……そうだった。火傷だらけの手を見て食べないという選択は出来なかったのだ。
「……お人よし」
「ん?」
「君がお人よしって再認識しただけだ」
「そうでもねーよ」
いったいどの口が言うのか。顔に出てたのか、ディーノは空いている方の手で自身の頭をかきながら言った。
「オレだって、お前じゃなきゃここまで――……」
急に言葉が止まったので、ディーノの顔を覗く。すると、目を見開いていた。もしやアレに気付いたのだろうか。
「な、なんでもねーよ!」
自身の頭にあった手をもってきて、私の頭をガシガシと撫でた。恐らく誤魔化しているのだろう。彼は日本とイタリアには時差があると気づいてしまったのだ。彼らが空を見てるとは限らないので、先程の発言は残念すぎるからな。
「そろそろ戻るか!」
顔を真っ赤にして提案するディーノを見て、すぐさま頷いた。私だったら、早く1人になって悶えたいからな。だがまぁ、気持ちは嬉しかったので今度は私から声をかける。
「またここに来たい。君の時間がないなら、許可をくれるだけでいいから」
「っ、絶対一緒に行くから。なっ!」
私が滅多にどこかに行きたいと言わないためか、ディーノは必死だった。気持ちはわかるが、必死しすぎる。なぜなら――。
「……手、痛い」
「すっ、すまん!!」
今度は勢いよく手を離された。……ディーノにしては落ち着きが無さすぎる。流石にミスに気付いただけで、これほど動揺するとは思えない。まぁドジのディーノなら理解できるが。
「ディーノ、大丈夫か?」
「……ちょっと待ってくれ」
私に声をかけてすぐにディーノは深呼吸をし始めた。自身でも落ち着きがないと思ったのだろう。
「わりぃ。もう大丈夫だ」
「そう」
あまり無理するなと声をかけたかったが、無理をさせているのは主に私のせいだと思ったのでやめた。
「よし、帰るか!」
いつの間にかまた手を握られていた。歩きながら声をかける。
「帰る時に逃げるわけないだろ」
「……ダメだ」
ついに指を絡めてまで、しっかりと握られてしまった。いつの間にかディーノは過保護になっていたらしい。もっとも、今までの私の言動せいだろうが。しょうがないので、手は諦めることにした。
思ったより小話を書いていたことにビックリ。
見逃してない限り、今書いてるのはこれだけ。