雲雀さんバージョンが短かったので、ディーノさんのと一緒に。
二つとも日常編。
①ディーノの誕生日
沢田綱吉達に見送られ、ディーノと歩いてるとふと思った。
今日は沢田綱吉を助けるためだったが、ビアンキの怒りをかってしまった。しかし、考えればわかることだ。今日はバレンタインだからな。せっかく作ったクラッカーを食べてもらえないのは悲しいことである。ビアンキが怒るのも無理はない。自身が逃れるためにディーノを押し付けたが、ちゃんと謝った方がよかったかもしれない。
「どうかしたのか?」
「ん。ビアンキに悪いことをしたなと思って」
「……オレは殺されかけたんだが……」
ディーノの呟きは聞こえなかったことにする。困ったときは助けてくれるという約束だったからな。
「どこに行くんだ?」
家とは違う方向に歩けば、ディーノが気になったようだ。
「ラ・ナミモリーヌ」
「……まだ食うのかよ……。こういうのは言っちゃいけねーことだが、太るぜ?」
ボフッという音がした。私の右ストレートでは威力が少なすぎるようだ。コートに当たったような音しかしない。
これでは私の怒りはおさまらないので、近くにいる人に声をかける。
「……助けてください。この人、ストーカーです」
「オレが悪かった! だから許してくれ!!」
土下座しそうな勢いで謝ったので、許すことにした。私は心が広いのだ。ちなみに、私が声をかけた見知らぬ人にもディーノは謝罪していた。まぁ当然のことである。
「お疲れ」
戻ってきたディーノに声をかけてあげれば、なぜか脱力された。不思議である。
店に入れば、兄が居た。そして兄の隣を見て、何とも言えない気持ちになった。なぜケーキ屋に兄へのチョコ置き場があるのだ。ドン引きである。
「サクラ!!」
そんな私の気持ちを気付かない兄は嬉しそうに駆け寄ってくる。
「どうかしたのかい? おや、君は……地面好きの人だね!」
「だからオレはそんな趣味じゃねぇ!」
「僕はサクラの兄の桂だ。また僕の、僕の妹が世話になってるようだね! すまないね!」
ディーノの全力のツッコミはスルーされたようだ。不憫である。
「それより、サクラどうしたのかい?」
「ん。ケーキがほしくて」
「そうなのかい? ならば、僕が買って帰るよ」
「人に渡したいんだ。だからショートケーキを1つほしい」
「わかったよ。僕に任せたまえ! 彼には出来ないことだからね!」
兄は気合を入れて、厨房?に入っていったようだ。
「……お前の兄貴、オレに冷たくねーか?」
「兄が変なのはいつものこと。気にしたほうが疲れる」
「そういうもんなのか?」
「そういうものだ」
ディーノと話をしていると兄が戻ってきたようだ。手に箱があるので、恐らく私が頼んだものだろう。
「待たせたね! 先に言ってくれれば、もっといろいろ出来たのだが……」
「大丈夫。ありがとう、お兄ちゃん」
「っ! 羨ましいと思っても君には得れないものだよ! なぜなら、僕がサクラの兄だからだ!」
「そ、そうか……」
兄をディーノに押し付けてる間に会計をする。かまっていれば話が進まないからな。私が戻ってくる姿を見て、ディーノはほっとしたようだ。
「お待たせとお疲れ」
「……ああ。ん? 任せとけ。必要な時には声をかけてくれ」
ディーノに箱を渡せば、荷物持ちにしたと思ったようだ。失礼である。
「あげる」
「は?」
「そのケーキは君のだ」
私の行動にディーノは驚いてるようだ。本当に失礼である。
「ど、どうしてなんだい!」
しかし、もっと上がいたようだ。私が人にケーキをあげることがそんなに珍しいのか。そこのところじっくり教えてもらおうか。……面倒なのでしないが。
「誕生日を祝う時間がなかっただろ」
ディーノは自身の誕生日より治安を優先すると思うが、私のせいで原作より早く日本に着たかったはずだからな。まだロマーリオ達に祝ってもらってない気がしたのだ。
「……そうか。ありがとうな!」
ディーノに頭をガシガシと撫でられていると兄がネガティブホロウ状態になっていた。静かなので今のうちに帰ろう。ただ、このままでは仕事に影響がある気がしたので、ドアを閉める直前に兄に言う。
「チョコ……楽しみにしてもいい?」
「もちろんだとも!!」
……兄は単純だった。
家に送ってもらってる間、ディーノはご機嫌だった。鼻歌を歌いそうな勢いである。しかし、急に足を止めたので、ディーノを見れば真剣な表情だった。
「お前はオレの誕生日もわかるのか……」
「ん。気を悪くしたのなら謝る」
「ならねーよ。ただ、オレはマフィアのボスだからな。……オレのせいでお前に何かある可能性も否定できねぇと思ったんだ」
ディーノに言われ、やっと気付いた。今でこそ私は知識が少なすぎると思っているが、他の者からすれば私は知りすぎているのかもしれない。
「いいか? 少しでも違和感を覚えれば、必ず教えろよ」
私はディーノの目を見て頷いた。すると、また頭をガシガシ撫でられた。いつもより力が強い気がするのは気のせいだろうか。
「心配するな。必ずオレ達が守ってやるから」
オレ達の中には沢田綱吉やリボーンも入ってるのだろう。
「頼りにしている」
「ああ。任せろ」
また強く頭を撫でられたが、いやな気はしなかった。
②雲雀恭弥の誕生日
新聞紙で作った兜を兄がつけているのを見て、今日が子どもの日だと思い出す。ついでに雲雀恭弥の誕生日ということも思い出してしまった。
「私には関係ないか」
沢田綱吉とディーノには祝ったが、雲雀恭弥はしなくていいだろう。
ふと頭にポフっと何かが乗る
「これで、おそろいだよ!」
どうやら兄は私が呟いた言葉に反応して、私も兜がほしいと思ったようだ。残念ながら、全くこれには興味がない。しかし、せっかく兄が作ったのだと思い、今日1日は部屋に飾ることにした。
今日も家でダラダラと過ごしていると、お母さんに買い物を頼まれた。面倒だったが、残ったお金はお小遣いにしていいと言ったので、やる気が出た。どうやら私は単純のようだ。
結局、手元に300円残った。いったい何に使おうかと考えていると、こっちに向かって歩いてくる雲雀恭弥の姿が見えた。ジッと手元にある300円を見つめる。
「おばちゃん、100円のコロッケ1つ」
あげたてホヤホヤのコロッケを受け取り、キョロキョロと周りを見渡す。すぐに見つかった。
「雲雀恭弥!」
私が叫ぶと、おばちゃんやお客さんがギョっとした顔になる。私は気にせず、足を止めた雲雀恭弥に向かって歩き出す。
「……君が僕を呼んだの?」
「ん」
「なにこれ」
「100円のコロッケ」
答えるとバカを見るような目で見られた。失礼である。君が何かと聞いたんだろ。
「いらないなら、私が食べるだけ」
口をつけようとすれば、奪われた。全く素直じゃない男である。コロッケを渡せば用がないので、さっさと去ることにする。彼に関わると碌なことがないしな。
「いったい何のマネだい?」
歩き出すと声をかけらたので、足を止めて口を開く。
「誕生日だから」
「……そう」
お互いに用がなくなったので、私達の反対方向に歩き出したのだった。