2014年4月1日に書きました。
鏡の前で悩む。今日はどれを着た方がいいのだろうか。
「僕はこれをオススメするよ!」
兄の言葉に頷く。確かに、遠出をする予定なのでスカートより、ショートパンツの方がいいだろう。後はまだ寒いのでこれにタイツでも履けばいいか。
服が決まったのはいいことだ。しかし、なぜ兄がここにいるのだ。私は自室で悩んでいたはずだが。
「サクラが僕を呼んでる気がしてね!」
顔のいい兄がウインクしながら話せば、世間一般的にはカッコイイのだろう。身内の私からすればただのドン引きである。とりあえず、ハリセンで一発殴り命令する。
「着替えるから出て行け」
酷く落ち込みながらノロノロ歩く兄に、服を選んでくれたお礼を伝えれば、スキップしながら去っていった。実にわかりやすい。
着替えて一周まわってみる。変なところはないだろうか。心配だ。しかし、兄が選んだのだ。センスという意味では大丈夫だろう。
出かける前にもう1度鏡を見る。
「ふむ。世界一可愛いよ!」
私の背後に立つな。鏡にはいる。私は髪の毛がハネてないのか確認したいのだ。気が散るだろ。
「サクラちゃん、この帽子はどう~?」
兄に文句を言おうとすれば、お母さんもやってきた。洗面所が狭くなる。
「ほら、やっぱりこっちの方がいいわよ~」
「流石、母上だね!」
勝手に頭に帽子を載せられ、苛立つ。せっかくセットしたのだぞ。それに帽子はいやだ。
「子どもっぽいから、いらない」
「まぁ!」
抗議すれば、なぜかお母さんのテンションがあがった。謎である。帽子を外そうとすれば、兄に腕を掴まれる。なんだと思って顔を見上げると、真剣な顔をしていた。
「子どもっぽくてもいいじゃないか。サクラは子供なんだから、甘えるつもりで行ってきなさい。お兄ちゃん命令だよ!!」
「だけど……」
「無理に背伸びする必要はないのだよ。僕が認めた相手だ。サクラのことをちゃんとわかってるよ」
「……ん」
それもそうだなと納得する。今まで私はいろいろ見られているのだ。今更である。ありのままの私で行こう。
「気をつけるのだよ!」
「楽しんでいってらっしゃいね~」
「帰りは送ってもらいなさい」
だからといって、家族総出で見送るのは勘弁してほしい。私はそこまで子どもではない。
待ち合わせ場所へ向かっていると、無意識に足早になる。少し深呼吸し落ち着くことにした。この前、逃げないと言われたしな。
しかし、すぐに足早に戻る。これはうまくコントロールできないようだ。
また予定より早く待ち合わせ場所に着いた。キョロキョロと見渡したが、相手はまだのようだ。今までいくら私が早く来ても、彼は先に来ていた。ケイタイの存在を思い出し、慌ててみる。しかし、何も連絡はない。
……私が早く着すぎただけだろう。それだけだ。下を向いてしまうのは、ヒマなだけである。
トントンと肩をたたかれ、声もかけられた。そして、安心した。私の好きな彼の声である。
「遅い」
そう呟きながら、振り向けば……。
「ふ、振り向けば誰だったの……?」
「気になるから早く言ってくれ」
君達は子どもか。静かに人の話を聞くことは出来ないのか。困ったボスコンビである。
「……振り向けば、目が覚めた」
「えー!? ここまで話して顔を見てないのー!?」
「まじかよ……」
目が覚めたとは言ったが、顔を見てないとは言ってないぞ。そのことを教えれば、せかされた。
「だ、誰なの!?」
「ここまで焦らすってことはオレ達が知ってる奴なんだろ?」
「……ん。振り返れば、雲雀恭弥だった」
一瞬だけ、沈黙が流れた。
「……それは、下手なホラーより怖いぜ」
「ヒバリさんが相手とか……ないよ! 絶対ないよ!」
2人ともなかなか失礼である。私が帰るというまで、2人は雲雀恭弥に彼女が出来れば、地球がひっくり返るとなどと盛り上がっていた。
「え? もう!?」
「さっき来たばっかりだぜ?」
私は話をしに来ただけなのだ。用事が終われば帰る。
「君達の反応、面白かったし。それにさっきの反応を雲雀恭弥に教えれば、面白いかなと」
「「……え」」
声をそろえて固まった。ボスコンビは本当に仲がいいな。
「冗談だ。今日はエイプリールフールだぞ」
2人は安心して、私を見送った。いい暇つぶしになったな。
サクラが帰った後、ツナはあることに気付く。
「あの、ディーノさん」
「どうかしたのか?」
「今、気付いたんですけど……どこから冗談だったと思います……?」
「……わからん」
答えはサクラしか知らない。