扉にかけられたベルがカランコロンと鳴る。
「うーっす戻ったぞー」
「あ、お疲れ様です<リーダー>」
パタパタと音がして奥から中性的な少年がひょっこり顔を出す。
「おう<ゆうすけ>。もう学校終わってたのか」
「はい、今はテスト期間なので。捕まりました?」
「あぁ。<ひかり>」
「はい」
後ろから網を持ってきた<ひかり>が前に出て<ゆうすけ>に受け渡す。
「わぁっ、綺麗な毛並みですね。あれ?でも怪我してる」
「多分どっかで怪我したんだろ。治してやってくれ」
「依頼主さんには?」
「治してから連絡する」
「はーい」
<ゆうすけ>は黒猫を抱き直すと、「怖くないよー」と声をかけながら奥へと戻っていった。
「んじゃ、各自自由行動して良し。シャワー先に使っていいぞ」
「ラッキー♪あたし先につかおーっと」
「あぁずるい!拙者も早く浴びたいでござる!」
「じゃあジャンケンだ!<いのり>は?」
「私は結構です」
「ジャーンケンポンッ!あーいこでしょっ!」と2人の声を置き去りに俺も奥の部屋へ。
「<リーダー>はこれからどうするんですの?」
「<ゆうすけ>の治癒が済むのが大体30分だからな、それまでは寝とくわ」
「では私もご一緒して」
「暑ぐるしいから却下」
奥の部屋、仕事部屋兼客室を通りさらに奥の部屋、休憩室兼控え室に辿り着きソファーへダイブ。そして隣のテーブルに手を伸ばしアイマスクをゲット。装着。
「じゃあ終わった頃に起こしてくれ」
そう言って早速眠る体勢へ。
「分かりました。ごゆっくりお休みくださいませ」
<いのり>は<いのり>で対面のソファーに座り分厚い本、聖書を取り出して読み始めた。
***
「...よし!」
仕事部屋と休憩室とは別の部屋、通称動物部屋で<ゆうすけ>は様々な動物のワッペンがつけられたエプロンを身につけ部屋の中央の台の前に立つ。
台の上には先程確保されてきた黒猫が時折シャーッと鳴きながらこちらを睨んでいた。
部屋には他にも洗面台、ケージ等がありさながら動物病院のような装いだ。
「さー傷を見せて、大丈夫だよー」
<ゆうすけ>が網の結び目を解きにかかると、先程まで威嚇していた猫がピタリと鳴き止み大人しくなる。まさに借りてきた猫のようだ。
「いいこいいこー」
左手で猫を撫でながら傷の位置を確かめる。右前脚に裂傷。
「良かった、このぐらいならかなり楽だね」
そう言うと空いた右手で猫の右前脚にそっと触れた。
するとじわじわとだが傷口の血が止まり、傷口は塞がり、ゆっくりと時間をかけ、やがて傷は跡形もなく姿を消した。
「ふぅ...」
<ゆうすけ>は額や顎を伝う汗を拭い、壁にかけてある時計に目をやる。
治癒を始めてジャスト30分経過していた。
「もっと早く済めばいいのにね」
黒猫の毛並みを撫でながらぽつりと呟いた。