あなたが手を引いてくれるなら。   作:コンブ伯爵

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翔「今回はまた路線が変わったからサブタイトル予想が外れたな。」

電「書き溜めなしだから、仕方ないのです。」

翔「話の方は電と駆逐艦が食堂に、私が会議に出かけたという感じか。」

電「久しぶりのお留守番なのです...寂しくなんてないのです。」

翔「まあまあ、後で甘やかしてやるから...というわけで!」

翔・電『────本編へ、どうぞ!』




46話 静かな決断

「あら電ちゃんと...あなたも来たのね♪

 いらっしゃい、なにかあったの?」

 

 二人を優しく出迎えたのは、ピンクのシャツの上から白い割烹着、ふわふわした髪を赤いリボンで一つ結びにしたみんなのおかあ...給糧艦、間宮さんだった。

 

「まみや...さん...!」

 

「よしよし、もう自由に出歩いていいのね?」

 

「はい、翔さんから許可がおりたのです。」

 

 ぴょこぴょこ跳ねて長い白髪を翻し、ぎゅむーと抱きつく駆逐艦。

 彼女は確か、朝・昼ご飯の時に少しでも艦娘たちに慣れるため、交代で一緒に食べていたとは知っていたが...毎晩の夜ご飯だけは間宮さんが作って直接持って行っているとついこの前知ったのだ。

 

「とりあえず、りんごジュースをふたつ頂きたいのです。」

 

「はーい♪」

 

 

 

 ∽

 

 

 

 駆逐艦を連れてカウンター席に着き、グラスに注がれたりんごジュースを受け取ってほっと一息。

 

「...っ?!」

 

「あっ」

 

 座ろうとするが、びくっと距離を取る駆逐艦。隣に来たときに刀を見られてしまったようだ。

 

「大丈夫よ、電ちゃんは人よりちょっとか弱いから、艤装を出さないといけないの。」

 

 間宮さんがフォローを入れてくれると、駆逐艦は何かを思い出したように眉を上げ、

 

「...電は、刀持ってないと...目が、見えない...の...?」

 

「はい...生まれ(?)つきなのです。」

 

 やはり大体の見当はつけられていたらしい。艤装展開状態なら力を出せるということは覚えていたらしく、電としては理解が早くて助かった、といったところか。

 

「一応杖で歩けるけど、見かけたら気をつけてあげてね♪」

 

「...わかった。」

 

 返事をしてストローに口をつけ...ぱあっと目を輝かせると、大きく水位が下がった。お気に召したらしい。

 

 

「────それで、翔ちゃんのことが苦手な理由はわからないのかしら?」

 

「私自身、わからない...あの人が悪い人じゃないって、理解してる...」

 

「それなら────」

 

「────でも...何故か身が竦んでしまう。」

 

「うーん...」

 

「じゃあ...この人はどうかしら?」

 

 と言って間宮さんが入り口に振り向くと、

 

 

 

「────だぁからちょっとだって、な?」

 

「────お昼からお酒なんて不摂生ですよ〜?」

 

「────大人なのにだらしないわよ!ぷんすかっ」

 

 

 

 ちょうど龍田さんと暁お姉ちゃん、憲兵さんが入ってきたが、なにやら少しばかり揉めている。

 

 

「なあ暁ちゃんよ、お酒ってのは燃えやすいって知ってるか?」

 

「アルコール度数がとっても高ければ、でしょ?

 当たり前じゃない。レディは常識くらい備えてるわ。」

 

 ふふんと胸を張るお姉ちゃん、

 

「じゃあみんなが積んでる燃料も...燃えやすいってのはわかってるよな?」

 

「当然よ!」

 

 自信満々に答えるお姉ちゃん。

 

「なら...わかるだろ?

 俺たち人間はお酒を燃料にして生きてんだ。」

 

 すっ、と真剣な顔になる憲兵さん。

 

「じゃあどうして龍田さんや榛名さんはお酒飲むのよっ。一人前の私も飲んでいいじゃない!」

 

「あー、そりゃあダメなんだ。」

 

 反論するお姉ちゃんに、憲兵さんは少し屈んで目線を合わせて話す。

 

「お酒ってのは、戦艦の榛名ちゃんや空母の加賀さんみたいな、燃料だけじゃ足りない娘とか、龍田みたいに燃費が良いけど立派な...立派な身体の娘が飲むもんなんだ。

 暁ちゃんや村雨ちゃんみたいにお姉ちゃんでも、燃費が良いしちっちゃ...スレンダーな娘が飲んじゃったら、色々危ないんだ。

 補給の時、燃料を余計に積んだら故障とか事故とか起こるだろ?」

 

 長い言葉を目を丸くしてふむふむと聞き...

 

「な、なるほど...そういうことなら、仕方ないわねっ」

 

 まあなんとも見事なまでに言いくるめられていた。

 

「今日は翔さんが居ないから、憲兵さんにはしっかりしてもらいたいのです...」

 

 やれやれと電が首を振ると、三人も気づいてこちらにやってくる。

 

「電とお客さんじゃない!ごきげんよう。」

 

「あら、出歩いても大丈夫なのね〜」

 

「おっ、電ちゃんと例の駆逐艦か...ちょいと隣いいかな?」

 

「ん......」

 

 どっこいしょ、と腰掛ける憲兵さんに続いて、龍田さんと暁お姉ちゃんは後ろのテーブルから椅子を持ってくる。

 

「...って憲兵さんは平気なのです?!」

 

 あまりにも自然な着席に、電はつい流しそうになってしまった。

 

「この人は...なんか、わからないけど、安心する...」

 

 そう言って、ほんのり顔を赤らめてりんごジュースをちびちび吸う駆逐艦。

 やはり何らかの理由で『翔』に苦手意識を持っていると考えられる。

 

「おっ嬉しいね〜...間宮さん、いつもの頼むよ。」

 

「もう温めてあるわよ♪」

 

 保温庫から出したほかほかの徳利を濡れタオルで持ち、憲兵さんにお猪口を渡す間宮さん。

 

「こ、こんな時間から熱燗は────」

 

 ダメなのですと言いかけたが、よく見ると白くてドロドロした熱そうな液体を注いでいる...

 

「────って甘酒なのです?!」

 

「やっぱこれだよなぁ...!」

 

 甘酒とは主に米や米麹を原料に作られ、米麹に含まれる酵素で米のデンプンを糖化して得た、深い甘みが特徴の飲み物だ。

 アルコール分はほとんど入っていないので、市販でもほとんとが“清涼飲料水”として売られている...つまり憲兵さんは飲酒していないということになるのだ。

 

「...お、駆逐ちゃんもどうだ?体にいいぞぉ」

 

 冗談半分か、お猪口を駆逐艦に向ける憲兵さん。流石に(見た目だけで判断すると)同性同年代な電のパンは食べていたが、憲兵さんはぶっちゃけ...かなりガタイの良いおっさんである。流石の駆逐艦も────

 

「...あちあちっ」

 

「......」

 

 ちなみにだが、甘酒にはビタミンBやアミノ酸、大量のブドウ糖が含まれている。憲兵さんの言う通り体にやさしく、“飲む点滴”とも呼ばれていたりする。

 

 

 

 

 

 ∽

 

 

 

 

 

「────加賀、大丈夫か?」

 

「────どうにも慣れませんね...」

 

 長い車旅に酔ったのか、少しふらつく加賀に手を貸しながらのど飴を渡す。

 

 私と加賀は提督会議...夏の大規模作戦の報告会に来ていたのだ。

 しかし大本営までかなり掛かるとはいえ、余裕を持って出たので、昼から始まるのに一時間以上早く着いたのだ。

 しばらく外の空気を吸っていれば加賀も落ち着くはずだ。

 

「...提督、もうしばらくここで待っていて頂けませんか?」

 

「ん、分かった。そこの停留所でいいだろう。」

 

 ちょうどいい感じに屋根とベンチが備え付けられたそこは、元々人を乗せて決められたルートを走る、『バス』という大型車のための停留所らしい。

 一日に何十本も走っていたらしいが、現代では自動車は貴重なガソリンを使うため────

 

「────あれは...?」

 

 噂をすればなんとやら、馬車がやってきた。

 そう、バスの停留所は馬車の停留所に再利用されているのだ。

 

 と思ったら、見覚えのある顔が長い髪を風になびかせながら、ぶんぶんと手を振っている。

 

「加賀さああああああん!!」

 

 その声を聞いて手を振り返す加賀。

 翔たちの目の前まで来て止まり、第八鎮守府秘書艦・赤城と提督の和泉秀吉が降りてくる。

 

「...久しぶりだなァ、翔。」

 

「秀吉...夏は世話になった。」

 

 一航戦の二人が抱き合っている隣で、どちらともなく握手を交わす。相変わらず見た目も話し方もかなり厳ついが、根は優しいことを翔は知っている。

 

「...ここで立ち話も暑いし、喫煙所で話すか?」

 

 翔たちの第七鎮守府はだんだんと寒くなってきたのだが、この地域はまだ残暑が厳しいというのと、秀吉の胸ポケットに入っていた箱を見て判断したのだ。

 

「...あぁ、そうか。こいつァ空き箱だ。入れてた方が、俺の見た目だとしっくりくるだろうが...」

 

 ニヤリと悪戯っぽく笑い、カラカラとラムネシガレットの箱を見せてくる。

 

「...まぁ、俺も吸おうとは思ったが...女や子どもが居るのに、出来るわけねぇだろ。

 あと...時間空いてんなら、ちと今のうちに土産選ぶの、手伝ってくれや...アイツら意外とうるせぇんだ。」

 

「...わかった。」

 

 やはり秀吉だな、と改めて思う翔であった。

 

 

 

 

 

 

 陽から逃れるように加賀と赤城を連れて購買所へ行き、翔は近場の休憩所でカップコーヒーをすすっていた。

 秀吉は店内で1080円ほどの箱菓子とにらみ合い、一航戦の二人はキャラメルを手に何か語り合っている。どうやらこの購買所の人気商品らしい。

 

 いつも座る時は膝に電を乗せているのだが、今日は鎮守府で留守番を頼んでいる。

 まだ半日と経っていないのに、こんなにも物寂しくなるのか、と翔は自身の電に対する依存を自覚する。

 

 ...もし、この戦争が終わったら、私はどうなるのだろうか。

 電も武装解体されて、普通の女の子としてどこか知らない地で暮らすのだろうか。それとも“艦船の魂”に戻って海の底へ帰るのだろうか。

 もしやすると“艦船の魂”だけ消えて、艦船としての記憶を失った状態で普通の女の子として生きていくのかもしれない。

 

 もしそうだとしても、翔は電と離れるのはもちろん嫌である。しかし電はまだ見た目は中学生...小学生と言っても疑えない。戦争の運命から解放されて普通の女の子になれたのなら、自由に生き、自由に暮らすべきだと思っている。

 養子として新しい両親と暮らし、学校で学び、普通の女の子として生きていくのが、電にとっての最善なのだ。

 

 電にとっての、最善なのだ────

 

「────だから行くのは早すぎるっつったじゃねえか!」

 

「────遅刻せーへんようにはよ行け言うただけや!

 そもそもうちが起こさんかったら今頃グースカピーで大遅刻やで!」

 

 聞き覚えのある男の声と、キレのある関西弁の...女の子?の声が聞こえてきた。

 翔は反射的にトイレに隠れ、様子を伺う。

 

「ふっざけるな俺は一度も遅刻なんてしたことねえんだよこのまな板駆逐!!」

 

「カッチーーーン!

 なんやてこの七光り無能司令官!

 そんなんやから夜遅ぅまで出撃編成に悩むんや!!」

 

 自分で“カッチーン”って言う人間、居るんだな...

 

「うるせぇなあお前みたいな新しい面子が入ってくるしこっちだって苦労してんだよ!!

 出ていった“アイツ”の代わりに来たのがまさか駆逐艦(・・・)とは思わなかったぜ」

 

「だぁれが駆逐艦や!うちだってそれなりに有名な司令官のいる鎮守府に配属されるか思うたらこんな出来損ないの若造とは思わんかったわ!

 家計簿なんて持ってオカンか!!」

 

「じゃあ明日からおやつは全部パンの耳...」

 

「あーっそれは勘弁や、ごめんってぇ...」

 

 .........

 

 ...

 

 行ってしまったようだ。

 と、入れ替わるように加賀と赤城が買い物を終えて出てきた。

 

「提督、先程まで誰か────」

 

「────気の所為だ。」

 

 

 

 

 ∽

 

 

 

 

 十人で囲んでも余りある巨大な円卓にはホチキスで留められた資料、壁には日章旗と海図。

 会議室の椅子に全員が着く。左隣には秀吉と赤城、右隣にはかつて演習で手合わせをした浦部と、赤...というより紅色だろうか、水干のようなものを着たツインテールの駆逐艦が控えている。

 見渡せば足を組んでいたり寝ている奴もいれば、律儀に背筋を正して座っている者もいる。

 

「...時間だな。

 それでは、今回の議題である、大規模作戦の戦果を発表しなさい。」

 

 元帥の言葉でいきなり始まる会議。始まりの挨拶やら回りくどいのは嫌いらしい。

 

 しかしこういう戦果報告は大体元帥をはじめに、第二、第三と続いていくのだが...

 

「────待ってください、元帥殿。」

 

 第二鎮守府の提督...大嶋が立ち上がった。

 

「今回の大規模作戦に参加していない鎮守府の提督が、二名ほど見受けられるのですが。彼らは────」

 

 私と...秀吉だろうか。

 そもそも今回の作戦の尻拭いをさせられたのは...

 

 立ち上がらんと腰を上げようとした時、隣の秀吉が口を開く。

 

「......赤城。」

 

「はい。」

 

 呼ばれた赤城がテーブルの上にバッグを置く。

 秀吉がそれを開くと...

 

 

 ────ジャラジャラ、ゴン。

 

 

「......うちの鎮守府ぁ...広い海域を相手取る分、予想できない深海棲艦が、現れる...戦果がわからねぇから、殺した奴の身体の一部を、剥いで来させてんだ。」

 

 装甲の欠片や、何かの部品...さらには髪の毛の束がこぼれ落ちるのに、全員が戦慄する。

 

「......大規模作戦だかぁ知らねぇが、そっちでドンパチやれんのも...南から深海棲艦共が、来ねえからだろ...?

 元帥さんよぉ...ちったぁ給料、上乗せしてもらってもいいんだぜ?」

 

「...考えておこう。」

 

 髭を触りながらむむぅと唸る元帥。“戦果”に驚いているのだろうか。

 

「じゃあそこの若造はなんだ、さっさと失せんか。今は大事な会議を...」

 

 大嶋の言葉をたしなめようと、元帥が立ち上がろうとしたその時。

 

 

 ────バサッ

 

 

 翔は円卓に資料を投げ置いて、語る。

 

「私たち第七鎮守府は今作戦終了後、制圧目標地点のさらに深部...マーシャル諸島沖に出撃しました。

 そこで新種の深海棲艦...“深海異形姫”と戦闘、撃破。海域を制圧し、戦艦『長門』と邂逅しました。」

 

「馬鹿な、我々が戦艦レ級を討ち取ったはずだ!

 それに元帥殿直々に海域制圧成功の報と撤退命令が出たのだぞ!」

 

 自分の戦果をひっくり返すような翔の言葉に、大嶋は机を殴りつけ、立ち上がり声を荒らげるが...翔はあくまで冷静に振る舞う。

 

「私も、直々に“深海異形姫”討伐の命を受けたのですが?」

 

 加賀から受け取った作戦指令書を見せる。そこには確かに、元帥の印が捺されていた。

 

「元帥殿、どういうことなのですか...ッ!」

 

 手を震わせながら怒りと困惑を滲ませた眼を向ける大嶋に、元帥は大きくため息をつき、ゆっくりと話し始める。

 

「...儂は、大嶋...お前に戦艦レ級を始めとした、雑魚の処理を任せたんじゃ...

 そしてその奥地にて確認された、新種の深海棲艦を、儂が手を着けようと考えたが...主力艦隊も資材も既に消耗して────」

 

「────何故!」

 

「ぬ...」

 

「何故私に報せて頂けなかったのですかッ!!

 元帥殿は他鎮守府への支給などがあって出撃なさらなかったのでしょう?!

 私に一報頂ければどんな時でも高速修復材を使ってでも出撃させていたのに何故この若造に────」

 

 

「────黙れィ!!」

 

 

『『『────っ!!』』』

 

 会議室をびりりと揺らすような轟音が、元帥から放たれた。

 

「下の者を見下し、部下(艦娘)を自分の出世のための道具のように扱う、その欲望に塗れたその眼を...儂は信じるに値しないと判断したんじゃ...

 他の者共も第四、七、八鎮守府のような働く者に任せて適当な指揮を執りおって...心を入れ替えたのか伸びつつある鎮守府もあるが、貴様らに国を守るという自覚は無いのか?!」

 

 大嶋をはじめとするほぼ全員が俯いたり、目を逸らしたりする。

 

「...ならば...第四鎮守府に任せず、何故第七鎮守府に...」

 

「まだ言うか大嶋よ...鞍馬君とは指揮力が天と地の差。第四鎮守府提督...赤間くん、君は真面目な人間だが、あまりにも正直すぎるんじゃ。

 艦娘たちは試合ではなく、戦争に出ておる。武士道なぞに囚われているようではあの怪物は落とせんわ。」

 

「肝に銘じておきます...」

 

 赤間と呼ばれた男が頭を下げる。

 なるほど、シワひとつない軍服を綺麗に着こなし、ずっと背筋を伸ばして座っていたこの人だったか。...見るからにド真面目な人である。

 

 伸びつつある鎮守府、というのが少し引っかかったが、気にせず翔は続ける。

 

「...よろしいでしょうか。

 作戦終了後の話ですが、我々は樺太に向けて進撃、奥地にてロシア艦隊の助力も得て敵連合艦隊を撃破...駆逐艦と邂逅しましたが...」

 

 駆逐艦のことを報告するべきだろうか...いやしかし、名前のわからない艦娘である。報告して大本営に行かせれば、姉妹艦などが見つかるかもしれないが...名前が無い故に、どんなことをされてもおかしくない。それも、いまだに謎が多すぎる“艦娘”なのだ。

 道徳や人道から外れたことをされるのかもしれない。

 

「......!」

 

 ちらと、加賀を横目で見ると、じっと翔を見つめていた。

 その瞳は力強く、真っ直ぐとした光を湛えている、『信頼』の二文字以外を感じさせないものだった。 

 

「...ロシアに引き渡しました(・・・・・・・・・・・)。」

 

 続いてロシアとの貿易船の航路についてですが────」

 

 

 

 

 ∽

 

 

 

 

「────提督、よろしいのですか?」

 

 帰りの車の中。後部座席から相変わらず抑揚のない声で聞いてくる。

 

「うむ、見つかれば反逆罪だな。」

 

「あなたという人は...」

 

 全くもう、と言わんばかりに大きくため息をつく加賀。

 事実、報告せずに艦娘を管理するのは禁じられているのだ。

 

「...でも、この結果を望んでただろ?」

 

「反省どころか共感を求めるんですか。提督としてあるまじき姿ですね。」

 

 言われて、ドキッとする。

 いつもは翔の思い通りに動いてくれる電(翔も電の思い通りに動く)が一緒だが、今日は非常に正義感の強い加賀が秘書艦なのだ。

 先の発言は迂闊だったか────

 

 

「────全く、あなたという人は...」

 

 

「ん?」

 

「上司の無茶に付き合わされるのは、前の鎮守府で慣れていますから。」

 

 車のルームミラーには、優しい微笑みが映っていた。

 

 

 

 

 




後書き・摩耶
「うーん...こっちもなかなかかわい...
 ...ぇ、もう始まってるだと?!!

 ────ごほん。

 こっ、ここまで読んでくれてありがとな!アタシだ、摩耶様だ!
 今回は提督のヤツが色々踏み出したり、憲兵と駆逐艦の相性が良いとか、そんなところか?
 ...にしてもアイツを見てると、何故か龍田を思い出すんだよな。
 ま、知らないことを切り詰めてもしゃーねーよな!

 次回、サブタイトル予想『静かな侵食』。

 絶対読んでくれよな!」







翔「...ん?こんな所に雑誌が────」

『みんな気にする“今風”ファッション特集!オンナは部屋着で差をつけろ♡』

「うっわめちゃくちゃ折り込み入れられてるじゃないか...
 そういえば今回の後書きは...
 ────いや、まさか...な?」

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