ぷるぷるっなのです!
かたかた...なのです!!」
翔「何やってるんだ電...
...いや本当になにやってんだ電?!!
ともかく、この話から本章が動いてくるな。」
電「場合によっては、六章は長くなるかもしれないし短くなるかもしれないのです。」
翔「ま、この物語は書き貯め無しだからコンブのみぞ知る...ってことか。というわけで────」
翔・電「「────本編へ、どうぞ!」」
電「...翔さんもですが、読者の皆様のことも...
だーいすき♡なのです!」
「艦隊が帰投したわ...はい、報告書。」
「ありがとう暁。すまんが加賀と山城には少しだけ入渠を待ってもらってくれ。」
日が傾きはじめたお昼過ぎ。
書類を受け取り、頭を撫でて労ってやる。やはり頭の位置や形といい、暁が一番撫でやすい。もう少しさらさらの黒髪を堪能したかったが、あまり長すぎるのも良くない。
「おかえり電。入渠にはそんなに時間が掛からないと思うから、治ったら後で手伝ってくれると嬉しい。」
「あっ、はいなのです。」
電がどこか何かを感じさせる目線を向けていた気がしたが、翔は気にしないことにした。
∽∽
────海域深部にて敵連合艦隊と交戦、これを露艦隊の支援を受けて撃破。以降敵艦の気配消失、先の敵連合艦隊を中枢艦隊と判断。海域の制圧を表明する。
ざっと報告書に目を通したあと、翔は医務室に向かった。深海棲艦に似ていると聞いていたが、例の艦がどのような者かと気になっていたのだ。
「雷、遠征から帰ったばかりなのに看病助かるぞ。龍田、おかえり。
...入渠はどうしたんだ?」
「えーとぉ...この子が気になって、ね〜。山城さんに入渠は譲ったわ。」
第七鎮守府の入渠施設は四基使えるため、基本駆逐艦や軽巡洋艦のような時間の掛からない艦娘を優先し、戦艦や空母といった時間の掛かる艦娘に少し待ってもらうという入渠順にしていたのだが、龍田はなぜか山城に譲ったらしい。
とはいえ龍田自身も小破で、本人が大丈夫と言ってるなら大丈夫なのだろう。
「まだ目を覚ましてないけど...気を失ってるって言うより、眠ってると思うわ。ちょっと揺すってみる?」
「雷ちゃんそれは流石にダメよぉ」
...改めて横たわる白い艦を見てみる。
駆逐艦ほどの小柄な体格で、墨のように暗いジャンパースカートから覗く肌は血の気が感じられない白色、髪も白髪だが...光を当てると薄桃色に反射する春雨とは違ってどこか冷たさを感じる雰囲気だ。少し布団を捲ると腰まで下ろして────
「あっ、そういえば翔さ────」
────下ろしていた。全体的に電たちよりも華奢な身体つきで、つい手が出そうになるほどすべすべな脇腹には薄らと肋骨が浮いていて、天界に鎮座する神聖な竪琴を彷彿とさせる。是非とも撫でて音色を聞いてみたいものだ。そしてこれまた肉の無いなだらかな胸には白を彩るかのように桜の蕾がふたつ、これからの成長を暗示するかのようにぷくりと先をふくらませ、今か今かと春を待っていた。しかしその細い腕と白魚のような指は肌の色と相まって、昔見たことのある
「────あらあら?」
「────かっ、翔さんのえっち!!」
「ごふっ!!」
刀を出して視覚を得ている電のパンチが、翔の鳩尾を的確にとらえた。
艤装展開状態の艦娘の膂力で生身の人間が殴られれば、それこそ艦種によっては血風となって弾け飛ぶ威力だが...流石は電。めちゃくちゃに手加減してくれたのか、プロボクサーの右ストレート程度の威力で済ませてくれた。
「ごめんなさいねぇ、武装を解くために装備を全部外してたのを言い忘れてたわ〜。」
「はわわ...びっくりしちゃったのです...」
「ぐっ...が.....り、理不尽じゃあないか...?」
うふふと微笑む龍田と慌てる電に、布団を捲って殴られるまで0.2秒...多少自分のことを棚に上げて抗議する翔。
「でも、寝ている女の子の布団を捲るのも男の人としてどうかと思いますけどぉ?」
「艦娘の健康状態を診るのは提督としての役目だ。」
「ふぅ〜ん...」
疑いの目は向けてくるが、一旦引く龍田。
「.....ん...ァ...」
「「「!!」」」
先ほどのいざこざか布団を捲られて冷たい空気にさらされたからかわからないが、眠っていた駆逐艦が身をよじる。
「んぅ.....?!」
うっすらと目を開き、三人を見た瞬間ベットから跳ね起きて右手を翔に向ける...が、
「.....!!」
自分が全裸ということに気付き、さっきまで被っていた毛布で身体を隠して部屋の隅に縮こまる。
「...私は席を外そう。」
あとは頼む、と言い残して医務室から出る翔。
提督である翔が退室するのは一見どうかと思うかもしれないが...雷や鈴谷のように友好的な艦娘もいれば、山城や摩耶のように(初対面では)敵対的な艦娘もいる。
その個性を
(────とは言えど、一番に“砲”を向けられた私が残るのは...流石にまずいよな。)
∽
「そ、その...とりあえず、落ちつくのです。」
「そうね〜、お布団に戻ってお話しましょ?」
輪っかを浮かべたお姉さんと栗色の髪の少女がもじもじしながら気遣ってくれるが、今の私はそれどころではない。
「......!、...」
頭に浮かぶ問いをぶちまけたかったが、身体に気だるさが残っているのと...こんな所で話をするのは少し恥ずかしかった。
「......」
そっとベッドに横たわり、布団を被る。
「...貴方たちは、誰?」
真っ先に浮かんだ疑問を出す。
ここはどこか...と聞きたいが、この目の前の人たちの家かそんな場所だろう。
「...第六駆逐隊四番艦、電なのです。」
「私は軽巡洋艦の龍田。あなたはここから北の方で見つかったから、ここに連れてきて保護したのよ〜。」
────艦娘。
艦船の魂が肉体を得た姿であり、自分も恐らく艦娘である...というのは本能が識っている。
目の前の二人は艦娘であり、“北の方”からここ...恐らく鎮守府に連れてきたのだろう。
「私からも、質問なのです。」
「.....」
答えてもらったからには、こちらも答えるのが道理だ。電...という艦娘に向き直る。
「────あなたは、何者なのです?」
────わたし?
電の言葉が、私を切り裂いた。
いや、私はわたしなのか?
あたいかもしれないし、僕かもしれない。
その前に、自分はこんな話し方なのか?
こんなに白い肌なのですか?
ほんとうに艦娘で合ってんのか?
「...大丈夫、なのです?」
「────わから...ない...」
ぺたぺたと自分の顔に触れる。
自分は“在る”のに、識別できない。
「困ったわねぇ...まだ起きたばっかりで思い出せないのかもしれないわね〜。」
「私たちは一旦部屋を出るのです。もう少し寝て、冷静になってからお話しましょう...?」
「わ、私は────」
「...手先が震えているのです。」
「────!」
止めようと思っても、その震えはだんだん大きくなって...名のない今の自分の存在のように、揺れて、霞んで...
気がつくと、両頬が濡れていた。
ふんわりといい香りのする自分の服が枕元に置かれていた。
二人の艦娘...電と龍田はすでに居なかった。
∽
「...よくわからない人、だったのです。」
湯船に浸かりながらつぶやく電。
艦娘は基本、自分の名前や過去...他の艦娘も知っているはずなのだが、あの駆逐艦は電たちを前にしても全く知っている素振りを見せなかったのだ。
「もう少し私たちに慣れてから、話した方がいいかもしれないわね。」
修復中の山城の言う通り、電自身あの問いかけは少し切り込みすぎたと反省していた。
「でも...問題はそこじゃなくて...私たちの誰もがわからない、というのが不思議でならないわ。」
山城と同じように、修復に時間の掛かる加賀も横から話に入る。
しかし加賀の言う通り、“昔”の記憶を持ち他の艦娘を知っているみんなですら、あの駆逐艦に見覚えがなかったのだ。
「考えられるとしたら...私たちの誰もが会ったことの無い子なのか、ロシアで造られた艦...?
もしそうならあの時引き渡せば良かったのに...」
不幸だわ、とは口にしない山城。もしロシア艦だとしても、新たな仲間として受け入れればいい話である。
「私たちが会ったことのない艦娘さん...だとしたら、その可能性はかなり低いのです。
ロシア艦だとしても...そうだったら、よほど日本に縁のある艦娘さんか、あの時にロシア艦隊の人たちが連れ帰っていたと思うのです。」
第七鎮守府には幅広い世代の艦娘がいるのに加えて、海外艦とは思えないくらいには日本語を使いこなしていた。どちらも可能性としてはかなり低い。
「...龍田さん、先ほどから思いつめた表情ですが...
何か心当たりでもあるとか?」
「えっ、あ、いや〜...間宮さんのご飯が楽しみだな〜って...」
山城の言葉にうふふ、と貼り付けたような笑みを返す龍田。
「今日はお鍋と聞きました。」
「一六〇〇...入渠も間に合いそうですね。」
「修復も終わりましたし、そろそろ翔さんを手伝ってくるのです。」
三者三様に話を流す艦娘たち。
しかしその心中は同じことを考えていた。
「「「(
後書き・山城
「ここまで読んでいただきありがとうございます。...一応姉さま探しを諦めていない妹の方、山城です。
お話の方は駆逐艦が目覚めたようね。基本艦娘は大本営に連れて行って、軍学校に連れていかないといけないんだけど...提督はどうするのかしらね。
次回・サブタイトル予想『存在意義』。
私にとって姉さまは...ねえさまは...
────あぁっ姉さまぁ!!!!」