あなたが手を引いてくれるなら。   作:コンブ伯爵

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前書き

電「1週間更新安定化してきているのです...」

翔「夏休み直前で必死に夏課題をこなしていて忙しいそうだ。許してやれ。」

電「夏課題は夏休みにやるものなのです!」

翔「いや、去年の夏休み終わりの2日前、最終日に連続徹夜して始業式中にぶっ倒れたらしい。」

電「計画的にこなせば...いや、コンブさんの辞書に計画的なんて言葉は無かったのです」ハァ...

翔「まあ、少しは学習して夏休み前に終わらせようとしているから良いんじゃないか?」

電「翔さんがいいって言うなら、大丈夫なのです。
 ...それにしても翔さん、今回は妙にコンブさんに対して優しいのです。」

翔「...な、何のことだ?」

電(まさか翔さんも最終日に────)

翔「さてさてかなり長くなってしまったな。それでは、本編へどうぞ。」

電「(逃げやがったのです...)」ボソッ




5話 夜の闇に紛れて

 何なんだあの男は。

 突然入ってきたと思えば一瞬で場の空気を覆し、有利な環境にしてから一方的にまくし立て、謎の液体を置いていった。

 

 確かに効果はあったものの、入渠しなければ消えない傷もある。

 

 そして、入渠しても消えない“傷”もあるのだ。

 

 ...私は、変化を恐れていた。

 

 何もされない、人間の介入もなく、ただ置物のようにそこにいるだけ。

 

 そうしておけば幸も不幸もなにも起こらない、決して危害を加えられることも無い平和な世界の出来上がりだ。

 

 今のところあの男に罪は無いかもしれないが────

 

 今のとこあの男に悪いことは無いかもしれないけど────

 

 

 

 駆逐艦のあの子たちを『不幸』にしないために────

 

 あの子たちのお姉さんとして────

 

 

 

 

 ────『わたし』が、やらなければ。

 

 〇二〇〇、二つの影が動く。

 

 

 

 

 

 

 

「グーーーーー、すぴーーーーー。」

 

「...龍田さん、あなたもですね?」

 

「うふふ~、仕方が無いでしょう?」

 

 男は硬い床に申し訳程度の枕か、木材の上に頭を乗せ、上着を掛け布団代わりにして寝ていた。

 

「グーーーーー、すぴーーーーー。」

 

「...早いとこ、終わらせましょう。」

 

「そうね~」

 

 龍田が艤装を展開させる。

 その手に握った薙刀を、ゆっくりと構える。

 

 月明かりに照らされて、ぎらりと光を放つ刃を持ち上げ...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────ごそごそ。

 

 

 

 

 

 「「??!」」

 

 

 

 

 

 

 男の腹がありえない動き方をした。まるで別の生き物が居るような...

 

 「「......」」

 

 無言で目を合わせ、山城が男の上着をゆっくりとめくる。

 

 「すぅ...」

 

 艦娘が丸まっていた。

 

 「「??!!」」

 

 全ての力という力を抜ききって、幸せそうに眠っている。緩みきった口元からは一筋よだれが垂れ、小さな手はめくった上着の襟元を掴んでいる。

 

 ...この男の上で。

 

 訳が分からない。この電が男の連れてきた艦娘だろうとはすぐに予想がついた。

 

 問題はそこではない。

 

 

 

 なぜ、艦娘がこれほど幸せそうに人間と寝ているのか、である。

 

 

 

 『寝る』とは一時的にとはいえ、意識を手放し無防備を晒す行為だ。

故に今、二人は翔の寝込みを襲ったのだ(殺伐とした意味で)。

 

 

 人間が艦娘の前で、艦娘が人間の前で『寝る』だなんて。

 

 しばらく目の前の光景を受け入れることが出来なかった。

 

 山城、龍田も数年前軍学校に通った経験があるが、その当時から艦娘と人間との間の溝は深く刻まれていた。

 

 山城は『不幸が伝染る』と言われ...

 

 龍田は『うふふ~』と微笑むだけで人間は逃げていってしまった。

 

 忘れていた過去を振り払うように再度薙刀を持つ腕を振り上げるが...

 

 どうしても、手が止まってしまう。

 

「あの子たちの不幸を未然に防ぐためって、思っていたんですが...」

 

「うん。私も『あれ』と同じような奴だろうって、思っていたの。

 

 でも...」

 

 

 

 

 

 ────この人は違うかも知れない。

 

 頭の片隅に、とても小さいものの、こびり付いて取れない考えが二人を止めた。

 

 結局、二人は倉庫に戻り眠って朝日を待つことにした。

 

 この夜、二人の『人間と艦娘の関係』という常識が壊された。

 

 

 

 

 

 

 翌日。

 

「...けるさん、翔さん、起きるのです。」

 

「む...」

 

 窓から朝日が差している。腕時計は〇七〇〇を指している。

 

 よいしょ、と身体を起こした瞬間、翔に電撃が走る。

 

「ぐぁ......っ!」

 

 硬い地面に木材の枕、おまけに電を乗せて寝ていたのだ。

 

 背中や首筋が悲鳴を上げる。

 

「か、翔さん!大丈夫ですか?!」

 

 起きたと思えば再び倒れた翔を心配する電。

 

「あぁ、大丈夫だ。

 それより今日は、お前をあの子たちに紹介せねばな。」

 

 昨晩、念のために待機させていた電を彼女たちにはまだ見せていなかったのだ。

 

「ほ、他の艦娘さんがいるのですか?」

 

 不安げに問う電。

 

「あぁ、四人居た。だが心配するな。彼女たちならきっとお前を受け入れてくれるさ。」

 

「...司令官さんがそう言うのなら、大丈夫なのです!」

 

 さっきまでの不安な表情はどこに行ったのかと言いたくなる笑顔で信じてくれる電。いい子だ。

 

 扉に手を掛けたが、一旦離す。

 

流石に寝ているところに男が押しかけるのは失礼が過ぎるというものだろう。

 

 一息ついて、少々強めにゴンゴンと鉄の扉を叩き、

 

 

 

 

 

 

 

「────私だ。入ってもいいか?」

 

 声をかける。

 

 




後書き・電

「ここまで読んでくれた読者の皆さん、ありがとうございます。
少しずつ増えていくUA、お気に入り...ほんとに、コンブさんの助けになっているのです。
次のお話では、私が第七鎮守府の皆さんとの初対面なのです...
が、あまり明るいお話では無いかもしれないのです。

次回、サブタイトル予想・『いらない艦娘』。

────私は翔さんにとって、必要なのでしょうか...」

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