翔「あと何時間かで1週間過ぎるところだったぞ。」
コンブ(作者)「許してくださいなんでもしますからぁ!(ただしなんでもするとは((ry)」
電「前回は翔さんが襲撃を受けたけど、なんとか凌いだのです。」
翔「私に筋力さえあれば...」
電「今回はこの鎮守府の艦娘さんと出会う模様!」
翔「それでは本文へ、どうぞ。」
工廠の中を歩いて回る翔と電。
乱雑に置かれた工具たち、使われた後であろう積み重なった空のバケツ。
(...ん?)
キラリ、と、月明かりに照らされたバケツの底が光った気がした。
工廠を見て回るとほんのり、微かな明かりが漏れている部屋がある。
位置的に資材倉庫だろう。
一旦女を下ろし、電を待機させる。
また襲われるかもしれない。
先ほど以上に警戒して、ガラリと一気に扉を開く。
「「......」」
中は真ん中にロウソクが置かれていて、それを囲むように四人の艦娘がいた。
一人は私をじっと睨みつけている彼女は確か戦艦、山城だ。元帥から渡された残っている艦娘のデータを覚えていた。
肩口にかかるくらいの黒髪に振袖?とスカートを合わせたような服装。頭に特徴的な帽子を乗っけているが、折れてしまっている。
一人は、電と
...電の姉妹艦の雷だろう。が、今は横になって寝ているようだ。
一人は、白に薄桃色がかった綺麗な髪の少女。サイドテールに結わえていていかにも女の子、な感じだ。
確か駆逐艦で、名前は春雨。雷に寄り添うようにして寝ている。
「......っ!」
寝ている二人を守るように薙刀を構えている艦娘が一人。
物凄い殺気を放っているが、どこか弱々しさも感じられる。
カッターシャツの上からジャンパースカートのようなものを着こなし、頭の上に赤く点滅する天使の輪?のようなものを浮かべている。
軽巡洋艦の龍田だ。少しふらついている。あの襲撃者と同じように相当疲弊しているのだろう。
空白の時が流れる。
このまま膠着状態が続いても仕方が無い。
「...私は今日から提督として着任した、鞍馬翔だ。」
「近づかないで!」
ガシャコン、という駆動音。
山城が艤装を展開し、砲門をこちらに向ける。
「それ以上近づいたら、わかるわよね?」
一投足をも見逃さないと言わんばかりの眼光でこちらを睨みつけてくる。
突き刺さる視線、重い空気。
だが、全身で敵意を容赦なく放ってくる相手に対して、翔はこんな言葉を放った。
「ほう?どうなると言うのだ?」
──── 一歩近づく。
「なっ...?!
貴方、命が惜しく無いのですか!」
「こんなほとんど密室の倉庫で君の主砲なんか撃てば、どうなるかなど考えるまでもない。いや、そもそも弾薬が切れているのではないのか?
そんでもって龍田。君の薙刀も同じだ。天井があるせいでまず振り上げることは出来ない。刺突を加えることはできるかもしれないが...
足も覚束無い君の放つ攻撃が、軍人の私に当たるとでも?」
ぎりり、と歯軋りをたてる龍田。
...かかったか?
運動神経の良い軍人ならばまだしも、弱っているとはいえ翔が艦娘から放たれる突きなど避けられる訳ないのだが、賭けに出たのだ。
そして相手にこちらを探らせる間を与えないよう矢継ぎ早に、かつ余裕を持って言葉を紡ぐ。
「...ともかく、この子は君たちの仲間か?」
一旦入り口に戻り女を運び込む。ロウソクの明かりに照らされて分かったが重巡洋艦、摩耶だ。
「貴方、摩耶さんを...!」
「いや、眠ってもらっただけだ。」
寝息を立てているのがわかるだろう、と物怖じせずに倉庫へ入り、そっと横たわらせる。
「君たちが私をどう思っているのか知らないが、私は少なくとも君たちに危害を加えるつもりはない。」
とりあえずは敵意が無いことを主張するが、そんなことを易々と信じてもらえるわけが無い。まずは...
「これを見てくれ。」
入り口から今度はバケツと布切れを持ってくる翔。そしてバケツの中の液体を布に浸し、摩耶の腕を拭う。
「え...?」
思った通り、しばらく当ててやると傷跡が薄くなり...消えた。
実はこのバケツ、翔が持参したミネラルウォーターで割った、文字通り水増しした高速修復材が入っている。
摩耶を連れてくる途中、蒸発も劣化もしない特性をもつ高速修復材を山積みのバケツから少しずつ一つに集めていたのだ。
「これをこの布に染み込ませて、傷を拭いてみてくれ。」
何枚かの布切れとバケツを置いて倉庫を出る。流石に会ったばかりの女性の身体に触れるのは...いや、会ったばかりでなくてもだいぶ失礼だ。
「私は隣の工廠に居る。何かあったら、伝えてほしい。」
と言い残し倉庫から出る。ほとんど一方的な会話だったが、それでいい。
「長い間、待たせてすまない。」
「女の子を待たせるのは、私だけにするのです」
倉庫の重い扉を閉めた私を非難する電。少々機嫌を損ねてしまったようだ。
「すまんすまん。もう少し時間をくれ...」
電気、水道、ガス。
全てが止まっているこの鎮守府では仕事をこなすどころか、人が生きるにも辛い環境だろう。
「...もしもし、今日付で第七鎮守府に着任した鞍馬です。...秘書か?夜分に申し訳ない。
私の名前を出せば分かってくれる。
黒条元帥と代わってくれ────」
電話でのやり取りを終えた翔は、次の作業に手をつける。
場所は浴場。
「翔さん、お風呂にでも入るのです?」
「いや、予想が正しければ...」
がらら、と扉を開けると水カビの臭いが鼻を刺す。
「────ふにゃあ!」
「うぐっ...やはりな。だが、こんなこともあろうかと...」
翔ですら顔を歪めるほどの悪臭に、人一倍鼻が利く電が間抜けな声を上げる。
「翔さんの先見性には、つくづく驚かされるのです。」
ぞろりと電と翔のバックの中から顔を出す『彼ら』。
やくそくしたからなー
あしたまでにおわったらー
ばーげんだっしゅのあいすー!
今日出来ることはここまで。
腕時計を確認すると二二〇〇、良い子は寝る時間だ。
「電、悪いが夕飯は無しでいいか?」
「元々艦娘はあまり食べ物を必要としないから、大丈夫なのです。.」
「ううむ...いつ聞いても心配にはなるなぁ...」
────艦娘は食料を与えなくても、相当長く生きていけると言われている。
人体...ならぬ艦体実験こそされていないものの、彼女たちが“補給”時に飲食する燃料や鋼材などは人間と同じように分解されているらしい。
しかし分解された後どういう訳か、ほぼ老廃物として排出されることが無いのに加えて、何故か彼女たちの『衣服』が修繕されるのだ。
この辺りについてまだ分かっていることは少なく、また艦娘たち自身も自分たちの身体に関しての理解が乏しいようで、謎に包まれている。
「翔さんこそ、無理しないで下さいね?」
こちらの身を案じてくれる電に罪悪感を感じつつ、適当な木材を引っ張り出す。...硬いかもしれないがこいつを枕代わりにしよう。上着を脱いで電を抱き、その上から上着を掛ける。
...腕の中にすっぽり収まるちょうどいい大きさ。ふにふにと柔らかい身体。あったかい。
「おやすみ、電。」
「おやすみなさい、翔さん。」
今日一日精神的にも肉体的にも疲れたからか、二人の意識はすぐに夢の中へ深く沈んでいった。
後書き・翔
「前回のサブタイトル予想は大きく外れたようだ。
こんな馬鹿コンブを信じてくれた読者様には申し訳ない限りだ。
まあ、リアルタイム執筆かつ、あくまで予想だから期待はしないでくれ。
次回サブタイトル予想は『夜の闇に紛れて』。
前回の予想が今回に回ったかたちだな。どうやら私の寝込みを(殺伐とした意味で)襲う艦娘が...という話にしたいらしい。
まあ、現在執筆中だ。どうか待っていただきたい。
最後に、ここまで読んでくれた読者様に最大の感謝を。それでは、また次回。」